いつかその呪いを絶てるように   作:ジュジュ

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誤字報告ありがとうございます。

前回に引き続き今回もまた一部性的なものを匂わせる描写があります。苦手な人はご注意ください。

また、感想も頂けるとありがたいです。


第13話 名声と悪評

2012年6月〇日

 

久しぶりに日記を書く。最近は色々あって書く気力を無くしていた。ちょっと12歳の子供に背負わせることじゃないと思う。俺が原因ではあるのだが、もう少しやりようはなかったのだろうか。

 

大きな出来事でいえば2つある。

 

1つ目は、特別1級呪術師になったことだ。

 

父さん曰く、本来なら高専入学後に1級呪術師の資格を取らせるつもりだったらしい。ちなみに特別1級と1級に差はない。ただ時折、特別1級はコネ頼りだの不正だのと噂されることがある。また、この特別、という称号に威圧感を感じるフリーもそれなりにいるらしいので、出来れば避けたかったそうだ。

 

俺が特別1級術師になる事になった理由は二つ。一つは俺の実力が十分1級術師の条件を満たしていること。そしてもう一つは話題作りだ、禪院との1件で付いた悪評をごまかすための。最年少での特別1級呪術師の認定はそれだけでも大きな話題になる。

 

ちなみに特別1級の資格を得たからと言って高専に行かない訳ではない。むしろ実力を示すために行ってこいと言われた。

 

あと特別1級の等級を得たことで遠くへ任務に行くことも増えた。個人的にはこれは悪い事ではないと思う。本来なら高専に入学した後に外とのつながりを作る予定だったのだが、今の時点から外とのつながりを作れるのは大きい。出来ればコネを作って、渋谷事変に向けて、色々融通が利くようにしたい。

 

2つ目は、当主候補としての教育が始まった。

 

と言ってもそう仰々しいものじゃない。当主はどういった仕事をするのかについて見識を深めたり、仕事上関わることになる人たちへの挨拶など色々だ。他には傘下の家の術師との本格的な顔合わせだったり、部下の扱い方など覚えることが沢山だ。

 

が、正直こんなのは苦じゃない。問題はこの中に含まれる『夜の作法』だ。というかこれが本命らしい。正直あれから何度もやってるが、本当に疲れる。

 

夜の作法なんてしゃれた言い方しているが、言ってしまえば、『女』だ。

糸色家は代々結婚や子供を作るのが早い家系だ。父さんは今年で32歳、祖父は今年で60歳、曾祖父は78歳だ。全員20歳前後ぐらいで既に複数人子供を作っている。俺も本来の予定なら、15歳くらいで結婚して20歳までに子供を作っていたという。それが早まっただけだ。ちなみに俺は現在12歳だが、俺の下には5人ほど弟と妹がいる。

 

前の冥冥さんとの会話にあった、相伝が産まれやすい、という話だがそれはすなわち、相伝が出るまで子供を作りまくってるのである。

 

一つ安心できるところがあると言えば、乱雑には扱っていないところだ。それやってしまったら、禪院家の事言えなくなるし。

 

…それはそれとして、ガチャじゃねぇんだぞ。

 

教育の事もあるが、それ以上に噂に信ぴょう性を持たせたいのだろう。禪院での1件で俺についた、『訳アリの女を好むモノ好き』、という噂を、『ただの女好きであり、禪院の1件も手癖みたいなもの』、という形に変えたいのだ。

 

…いや、だからって12歳に普通強要するかこんなの。

 

元々は複数人でサイクルを作る予定だったらしいが、凛さんが申し出てくれた。凛さんもそういう教育は受けているらしく、教導役としてはぴったりだろうということで許可は貰えたらしい。…俺としては複雑な気分だ。凛さんで良かったとなる反面、近しい人とそういう関係になるのは若干抵抗感があった。今では少し慣れた。…それでも傘下の家の人が偶に夜に来るが。

 

特別1級の等級取得と、この教育が合わさってしまったせいで、俺の生活サイクルは『鍛錬』、『任務』、『女』の繰り返しになっている。

 

不健全が極まってる。呪術師自体健全なのか、と言われると頷き辛いが、いくら何でもこれは酷いと思う。

 

これのせいで俺は外部から『才能はあるが、それに物言わせて女に手を出す鬼畜ショタ』と呼ばれているらしく、久しぶりに会った五条さんにからかわれた。

 

 

2012年7月△日

 

今年もこの時期がやってきた。流石に去年と比べると呪霊の報告件数は少ない。が油断は禁物。実戦では予測できないことが起こる。廃工場のような出来事が起こる可能性だってある。

 

今年から精鋭班は俺がメインとなった。父さんはあくまで補助として参加、俺の働きぶりを見るそうだ。

 

いつもこの時期になると最初に集会が行われる。全体への情報共有と挨拶が目的だ。その際、家に所属する全術師が集められる。糸色家は傘下含めて、呪術師は約30名ほどいる。内訳としては3級が7名、2級・準2級が15名、準1級が5名、1級3名となる。補助監督は10名だ。父さんからはここにいる呪術師全員の顔と名前と術式を覚えるように言われた。当主になれば戦場には出ず、基本的に後方で指示を飛ばすことになる。

 

当主になると多忙になる、とはこういう事が増えていく事なんだろう。

 

■─────■

 

「お疲れサマンサー」

 

東京高専の廊下。その端にある小規模の休憩スペースで缶ジュースを片手に呆けている弥生に五条は声をかけた。既に五条の服装は『0』時点の眼の周りに包帯を巻いた姿になっている。

 

「…前会った時、そんなハイテンションでしたっけ」

 

特別1級術師になって以降、幅広く任務を受け始めるようになっていった。またそれに伴って高専からの任務を受ける機会が増えた。関東方面の任務を受ける際は、東京高専に立ち寄る事が増え、五条とも会話をするようになっていった。

 

「教師だからね、親しみやすくしないと。逆に弥生はやつれてるじゃん、どうしたの」

 

「五条先生、俺の噂は知ってますよね?」

 

「うん、『歴代最年少の特別1級』だけど、『才能に物言わせて女に手を出す鬼畜ショタ』だっけ。この年から女に手を出すとかやるねー」

 

弥生は返す言葉が無い。それのすべてが噂ではなく、事実になってしまっている。それ以上に五条の声からするに、彼がこれを只の噂だと思い込んでることが察せられる。弥生はなんと返答していいか分からなくなってしまった。

 

「・・・・・・」

 

「…えっ、マジで手、出してんの?禪院からの風評被害消す為の方便じゃなくて?」

 

その沈黙の意味を察した五条は若干引いている。弥生が女に手を出してることではなく、それを強要している事実を何となく察したからだ。

 

「手を出さされてる、ですよ正確には」

 

弥生は念のため、話が変な方向に飛躍しないよう、訂正を行う。五条は影響力の強い人間だ。一瞬、話していいか迷ったが、口に出さないとやってられない気分でもあった。

 

「うわーマジかー。えぐいことやるじゃん、糸色も。あらかた、当主か後継者作りのための教育も兼ねてるでしょ。」

 

「五条先生も、もう20歳超えてるじゃないですか。どうなんですか、そこらへん。」

 

「いや、全然。まぁ僕の家は『六眼』さえ継承すればいい、って感じがあるからそこまで拘ってないかな。」

 

五条家はその『六眼』という体質上、最低でも血筋さえつなげれば何とかなる一族である。無下限呪術の特性を考えても、後継者という意味では、五条一人に強く拘る理由はない。それとも、五条自身がそういう話題を避けたがっているのか。

 

「羨ましい限りですよ。」

 

「…ねぇこれ、逆じゃない?僕の方が結婚して、色々生活に制約出ちゃって、それで過去を懐かしんで、君たちぐらいの年の子に羨ましいなーって普通はならない?」

 

「逆なら良かったんですけどね…」

 





呪術師は子供を作ることでしか後継を作れないのがかなり厳しいと考えています。才能8割の世界とは中々残酷です。
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