いつかその呪いを絶てるように 作:ジュジュ
2011年1月■日
新年を迎えた。糸色家の正月は意外と一般の家庭とそこまで変わりはない。最初の新年の挨拶こそ仰々しいものだし、昼食は各家の人が集まって新年会が行われたが。そこで俺も正式に挨拶をすることになった。流石に緊張したが、特に問題はなかっただろう。
その後は炬燵でゆっくりしながらテレビを見ている。気づいたら寝てしまっていたが、寝ている間に奏さんと凛さんが俺の頭の上にミカンを積んでいた。…まぁ元気そうだからいいか。
あの夏以降、凛さんとたまに会うようになった。彼女も高専卒業後には糸色家に帰ってくるらしく、今の予定だと俺のお付きの人になるらしい。
3が日を過ぎるといつも通りに戻る。とはいえこの時期は呪術師としての仕事はさほど忙しくはない。とはいえこれは俺がまだ子供だからだろう、祖父や父さんは呪術師としての仕事は勿論、表の仕事関連の事もあるので忙しそうだった。
2011年4月〇〇日
少し間が空いてしまった。あれから時間があるときには父さんや凛さんの付き添いで1級呪霊と戦うことが増えた。今のところ問題はない。あと、以前までは素手だったが今は短刀を使っている。素手での呪力強化をメインとした戦闘が十分だと判断されて、術式をメインで戦うようになったからだ。
短刀を呪力と術式で強化し、攻撃力を上げたり、刃にまとった呪力を飛ばし遠距離攻撃もできるようになった。
確かに以前よりは強くなっている。だが…この先が見えない。もしかしたらここで終わってしまうんだろうかという焦りがある。以前は感じた成長の余地というのが昔より感じることができなくなった。
呪術師としてワンランク上に行くに、鍛錬以外では二つ。一つは黒閃を決めること。あれを決めると決めないでは呪力への理解度が段違いだという。俺はまだ訓練でも実戦でも出したことはない。
もう一つは死に際に呪力の核心をつかむこと。死に際に呪力は爆発的に上昇するらしい。その際に呪力の何たるかを理解できるらしい。だが、これはあまりにも危険すぎる。というか好んでなりに行くものではない。
どちらにしろこちらが狙って行えるものではない。焦りはあるが、今はできることをしよう。
2011年6月△日
術式の制御練習の繰り返しだ。最近は『断』を体に纏うことで防御力を上げる練習をしている。ただこれに関しては使いどころが限られる。単純な物理攻撃に関しては呪力強化での防御の方が優秀かもしれない。もう少し対象を広げられれば何とかなるかもしれない。
父さんに相談すると、炎などの防御に有効らしい。あとは呪力を障壁のように広げてそこに付与することで大きめの防御としても使えるらしいが…。これにはもう少し練習が必要だろう。
あと『絶』についても聞いたが、父さんや祖父も使えないらしい。やはり実用できたのは初代だけだという。あとは4代目と6代目の当主が『絶命の縛り』を用いることで一度だけ使用できたと記録されている。今度初代当主が残した他の文献を見せてもらえることになった。
2011年7月◇日
呪術師としての繁忙期に入った。今年は世間では色々あった為、去年よりも呪霊が湧いている。窓からの報告が既に去年よりも多い。高専側とも協力して情報収集を行っているが1級呪霊の確認報告もすでに何件か挙がっている。
繁忙期の糸色家がどのように行動しているかも少しまとめる。まず所属している呪術師を全員集め、戦力バランスを考え、班分けを行う。1班大体2~4人で構成され、それぞれが中部地方の各地に配置、範囲内の呪霊を祓っていく、というのが基本的な流れだ。だが、所属している呪術師の実力は準1級~3級と幅広く、1級呪霊を相手にするには不安がある。
その対応をするのが精鋭班だ。1級術師を中心に実力者が集められたその班は、1級以上の呪霊が確認された場合に現地に赴きその対応を行う。それ以外にも付近の呪霊を祓い、また、戦闘で傷つき、呪術師が離脱した班の穴埋めも行うなど中々多忙だ。
俺も今回その精鋭班に行くらしい。実力としては十分だそうだが…少し不安だ。一応去年と同じく、父さんと凛さん、奏さんが一緒にいるが…油断はしないようにしよう。
2011年 7月◇△日
流石に疲れてきた。こんなに呪霊が湧くとは思ってなかった。連日移動と戦闘を繰り返している。他からも連絡が続いてる。もうこの時期は仕方ないらしいが、それでもこれほど多いのは久しぶりだそうだ。高専の人とも協力しているが、向こうも手一杯らしい。
2011年8月○○日
俺は、昨日の出来事を、生涯忘れることはない。
糸色家は中部地方を中心に活動していると思ってください。