今際の際で反転術式が使えるようになった夏油傑 作:非術師は猿
乙骨の自らを生贄とした呪力の制限解除によって放たれた一撃は、私の右腕を吹き飛ばした。
当然のことながら、腕以外も無事で済むはずがなく、だれが見ても死に体。
それでも足掻く。生き残りさえすればまた何度でもやり直せる。
しかし、足音とともに現れたのは五条悟。
そして、悟に殺された。
百鬼夜行は完全に私の負けと言わざるを得なかった。
――――――暗く、深い、闇の中
自らの死を強く認識する。想い返すは、自らの大義。呪術師同士が互いを慈しみ、敬う。
そんな世界を作りたかった。
そして、その記憶と反発するように湧き上がる、自分の、青かった頃。
弱きを助け強きを挫く。
そう、悟に言った教室。その言葉は、自分に対しての呪いの言葉だった。
矛盾する思想。自分の中の意思が、負の感情が、呪力が衝突する。
負と負がぶつかり正となる。
太陽のような、温かな光が私自身を包み込む――――!!!
「ハハハ…これが…反転術式…。今際の際で習得するとはね。」
世界は因果から乖離する。夏油傑が反転術式を会得したことによって。
「悟がハイになってたのもわかる気がするな。確かに気分がいい。」
私はかつてないほどの万能感を感じる。いままでできなかったことができる、そんな気がする。
「そうだね…悟の真似でもしようか。」
『術式反転・呪霊構築』
呪霊を取り込み使役する。その逆は、呪霊を生み出すこと。自らの呪力と引き換えに、呪霊を生み出した。
2級レベルの異形が私の前に現れる。
その呪霊を取り込む。
「成功だ。感覚はつかめた。次は少し準備をしよう。」
そうつぶやき、私は全速力で呪術高専を飛び出す。目に付いた一般人を先ほど生み出した呪霊に喰わせる。
「今日一日術式を使用できなくなることを代償に術式反転の出力を最大限底上げせよ。」
縛りを結び、呪霊構築を行う。
すると、現身のように自分そっくりの呪霊が現れる。今しがた作った呪霊は、私自身を模した呪霊。そして、先ほどの一般人にこいつを受肉させれば…。
「ハイレタハイレタハイレタハイレタ!!!!」
呪力をほとんど持たない一般人が受肉に抗えるわけがない。受肉して私になった呪霊を呪力を込めて殴り飛ばす。
グエッとカエルがつぶれたような声を出して絶命した。
あえて呪霊操術を使えるように呪霊をデザインし、自分の傷と同じ位置を負傷させた。悟のことだ。自分が殺したからと慢心して回収は学長たちにやらせることだろう。悟以外なら偽装の死体だと気づかないはずだ。
呪術高専に戻り、自分の死体を置いてまた外に出る。
「偽装は完璧だ。次こそは確実に手に入れる…!折本里香!」
『極の番・うずまき』によって呪霊はすべて失った。しかし失ったものばかりでない。反転術式、そして『術式反転・呪霊構築』は乙骨、あるいは悟にすら勝てる可能性を秘めているはずだ。
「私の大義は…いつか実現させてやるさ…」
そうつぶやき、走り出した。
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「本当に死んでるとはね。夏油傑。…もう聞こえてないか。」
白い脳のような形状をした何かが日本語を喋っているのはほとんどの人が恐怖を抱くであろう。
彼の名は羂索。肉体を乗っ取る術式を持ち、夏油傑の肉体を乗っ取るためにやってきたのだった。
そして、偽装用の夏油傑の肉体に入り込むが…
「あれ?ずいぶん呪力総量が落ちてる…?」
曲がりなりにも千年生きてる術師。呪力が弱まっていることを即座に認識した。
「まあ、呪霊操術は使えるみたいだしどうにかなるか。」
彼の思惑は乖離したこの世界でも行われようとしていた。
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