灼けた空の片隅   作:Noiztyu

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とても遅くなりましたが、頭空力でコーラルキメた幻覚の続きです。
短いですがお楽しみいただければ幸いです。


なんかいい感じかもしれん奴

エルカノとの技術交流、業務提携が形になりしばらくした頃。

今日も今日とて技術実証実験の日々、少し前にベリウス地方で大規模なコーラル災害があったせいで、環境情報の修正とデータ収集が忙しい。

 

そんな折になんとも耳を疑う話が届いた。

 

「ACに乗って物資輸送用大陸間カーゴランチャーで海を渡った傭兵が居る」

 

なんという命知らずだろうか、昼食でごった返すシュナイダーの社内食堂はその傭兵の話で持ちきりだ。

常人ならほぼ間違い無く発射時の負荷で命を落とし、着陸の衝撃で五体不満足になるだろう。頑丈な強化人間であっても無事なものなのだろうか?

「しかし貨物コンテナで飛ぶ空はどんな感覚なんだろうな」「思いついても実行するには危険すぎるものなぁ…」「しかし実行する程に、空への憧れを止められなかっなのだろう」「私達もその心意気は見習うべきものがあるな!」

 

やはり誰もが驚愕と称賛を口にしている。それもそうだろう、自分も信じられないという思いと湧き上がる羨望の念が止まらないのだ。

 

そんな中でふと誰かが口にした。

「その傭兵なら戦場でもLAMMERGEIERを乗りこなしてくれるんじゃないか?」

 

食堂内が静まり返り、次の瞬間には爆発した。

 

「「「「「それだぁぁぁあああ!!!!」」」」」

 

テストパイロットとして操縦している自分や同僚も同じように叫んでいた。

LAMMERGEIERとは現在技術実証実験として社内で運用している軽量四脚タイプのACだ。正直戦闘用としては実用性に疑問が残るが機動性と飛行性能は現状、他のACの追随を許さないと確信している。

しかし物資輸送用大陸間カーゴランチャーで空を飛ぶ程に「空」を、空力を愛しているであろう彼(彼女かもしれない)ならばきっと気に入ってくれるだろう。

 

だがアーキバスにも卸していない、エルカノにも仕様書の共有しかしていない、シュナイダー社内での技術実証実験機なのだ。冷静に考えれば、データ収集の為という名目を作っても機密の塊を外にだせるわけがなかった。

それでも空を、空力を愛し、不可能を可能にして見せたかの傭兵に我が社の最高の空力特性を味わって貰いたい。是非ともLAMMERGEIERでルビコンの空を舞って欲しいと考えてしまうのだ。

 

普通に考えてありえない。しかしこの熱狂は止まらずに、複数部署による連名で上申された。誰もが不可能と理解しつつ、しかしこの熱意の吐き出す先として行動を止められなかった。自分も課長に嘆願した。

 

そしてシュナイダーという会社は普通ではなかった。代表取締役を初めとした役員多数の合意により、かの傭兵への限定販売ならばと傭兵支援システムALLMINDへ交渉を行うことが決まり、申請は通ってしまったのだ。

 

それを聞いた時は「ウチの社員の最高の理解者はやっぱウチの会社なんだ!」という歓喜と「機密の塊を独立傭兵に流すとか正気か?」という疑問が同時に湧いてきたのだがそれは些細な問題だろう。

 

そしてその傭兵、登録名「Rb23 レイヴン」の元へとLAMMERGEIERは出荷された。

かの傭兵がどのような人物なのか気になって調べたのだが、「腕が立つ」以外に中々情報が出てこない。

傭兵としての実績は数多く語られているようなのだ。封鎖機構の方位を突破して星外企業へとコーラルの存在を伝えたことに始まり、複数回に渡って封鎖機構と戦闘して撃退ている。かと思えば企業が出すバラ撒き依頼を複数件こなし、アーキバスを通して我が社の依頼も複数件成功させてくれている。

主に汎用性に重点を置いているであろう中量二脚型ACに搭乗し、その時々の依頼によって複数の武装を使い分けている。

わかったのはそこまでだった。他にも幾つも手段があるにもかかわらず、物資輸送用大陸間カーゴランチャーを選ぶくらいには「空を飛ぶ」事を愛しているのだろう。しかしそれ以外の、人物像とも言えばいいのだろうか。人となりの上辺もいまいち掴めなかったのだ。

身内の人間で例えれば、親会社であるアーキバスのヴェスパー部隊、その第一隊長なんかは分かりやすい。彼はいわゆる天才肌の戦闘狂だ。アーキバスのルビコン本社へ行けば彼の興味がAC戦にしか向いていない様子がすぐにわかる。

あとは堅物企業戦士でリアリストなスネイル第二隊長様なんかもわかりやすい。嫌味ったらしく他人を軽視しがちだが、よく人を観察している。得手不得手を見て指示を与え、自分は足りない部分をキッチリ埋める。そうして組織としての最高効率を常に求めたがるタイプだ。そのせいで有能な嫌われ者ながら、相応に苦労も多いらしい。

 

まぁウチからアーキバスへ栄転して行った第四隊長のラスティさんなんかはよく分からんがすごい。あの人も天才って奴なんだろうが、浮き名はよく耳にするのはあのイケメンだしそれは当然だろう。しかし仕事もキッチリこなすし訓練もとてもストイックに行っている。あの人がシュナイダーに居た頃は仕事以外ほとんどトレーニングしている所しか見たことが無かった。話し方は気障っぽいが軽薄ではない、まさに物語の主人公みたいな人という印象だ。

 

独立傭兵レイヴン、ワタリガラスの名を持つあの人にも一度会ってみたいものだ…

 

 

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