永い夢   作:基幹世界からの手紙

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      part3 真っ赤な嘘で出来たメモ

俺の名前は奥村大誠。タイセーって呼ばれてる。

 

この世界には、様々な"能力"が存在している。

 

魔法だとか、異常現象だとか、アノマリーだとか、幽霊だとか、神だとか、呪いだとか、エラーだとか、奇跡だとか、好きに呼んでくれて構わないし、みんな自由に名前を付けているが、少なくとも俺は能力と、名付けている。

 

この世界にはあらゆるものに能力が与えられうる。人、物、場所、数字、時間、概念とか、能力を持つ対象はかなり幅広い(というか制限が無い気がする)。

 

そしてそれらの能力は完全にランダムに決定される。

 

例えば俺は、現在自分が居る地点で過去に起きた事象をタイムラプス形式で見れる能力を持っている。

 

しかし能力といってもそんなに単純なものではなく、

 

この能力が認識している時間の概念は、既存の相対性理論と矛盾しているし、

 

映し出されるスクリーンの境界線がなぜ光量の影響を受けずに水彩画調なのか謎で、

 

映し出されるタイムラプスは可変フレームレートで、なんでカクつくのか条件が不明。

 

たまに能力が使用できなかったりするんだが、なぜ使用できないのかその原因を探ることは原理的に不可能(ちょっと古い例えだが、俺の能力には不完全性定理みたいな状態と、確率解釈しかできない状態の2つによるものだから)だと研究機関ANOMATROLの文書で明かされる始末。

 

能力の使用可能期間も、使用可能回数もわかってない。

 

もっといえば"奥村大誠が能力を使用する、かつペットボトルを咥えていれば奥村大誠のところへ空間を捻じ曲げない情報だけのワープができる能力者"がいたりもする。俺はそいつと仲が良い。まあそいつの文化も言葉も一切わからないんだが。

 

 

この世界の大半のやつは自分の能力を正しくわかってない。

 

 

この世界の大半のやつは、「生まれるのが早すぎた」「生まれるのが遅すぎた」「その能力を発動するためのスイッチや物理量がこの宇宙には存在しなかった」「能力の使用可能回数が0や虚数に設定されていた」「奇跡的に発動条件が嚙み合わない」「他人に永久に能力を無力化されていた」だったりして、自分が能力者だと気付かないまま一生を終える。

 

他の能力や実験結果をうまく応用して、自分の能力をおおよそ把握する事は出来るが、それが使えないパターンも多いし、判明してもよく分かんない事なんてざらにある(ちなみに俺の能力をちゃんと理解するためには、人類が未だに発見していない新たな幾何学の分野が必要らしい)。

 

けど世界ってのは理不尽なものでね。

 

"犬"であれば何にでも変身できるやつ(犬だと認識していれば実際に犬じゃなくてもよい)。

 

好きなタイミングで半径14光年を抹消するやつ。

 

周囲に理想の空間を作り出し、その空間内部であれば神になれるやつ。

 

有限速度のレーザーを放ち、指の形で冷却モードや拡散モードも放てるやつ。

 

肩の右上っぽい神経を動かすと暫く自身の存在を否定するよう歴史を改竄するやつ。

 

触れた相手の頭蓋骨を若干ピンク色に染めるやつ。

 

自分含め全ての時間を3か月停止するやつ(そいつ以外の時間停止能力者は動ける)。

 

まあもう挙げればキリがないってくらい、やべー奴らが徘徊してるのがこの世界だ。

 

けど能力が強いからといって一概に最強になれるわけじゃない。

 

観察力、洞察力、頭の良さ、こぶしの強さ、武器の扱いの上手さ、豪運、外的要因、それまでにしてきた準備、練習量、執念、はたまた頭蓋骨の色まで...。

 

能力以外にもあらゆるパラメータが存在していて、それらが複雑に絡み合った結果、勝負に勝てるのか、生き残れるのか、何かを成し遂げれるのかが決まっている。

 

それに、それら全てが真っ直ぐな定規で測れるようなものだとは限らず、もっといえばジャンケンのように循環した非線形性をもっていることもある。

 

大した能力では無い、というか無能力者なのに、このイカれてて無秩序な世界を統治している天才や怪物を、俺は何人も知っている。

 

そいつらは人間と同じ見た目なだけで、中身は人間のそれとは何もかもが違う構造になっているんだと...信じたい。

 

裕福さや治安に関してはやはり地域差が大きい。国境のようなものはほぼしっかり定められていない。

 

大抵は巨大な力や権力や資産をもつ組織がその地域を支配しているのだが、中には少人数で大きな領土を占拠しているところもあるし、ただただヤバい現象が不規則に発生するせいで一人を除いて誰も住めないところもある。

 

...。

 

なんか凄い客観的な事実を淡々と述べてきたように思われるかもしれないが、

 

この世界に客観的な事実なんか存在しない。

 

全ては俺、まあつまり奥村大誠から見えた出来事や感想や解釈を元に構成したのであって、あろうことかそれを俺の頭で考えて、そして俺の言葉で表現しているのだから、至る所に俺が介在している。

 

自分が幻覚を見ていない保証だってない。俺は今、交通事故にあったショックでこんな世界を想像しているだけなのかもしれない。誰しもがする予想や考察は、きっとその全てが間違いで的外れなんだろう。

 

下手すればこれはただのフィクション世界の話なのかもしれない...。

 

蜃気楼だとか仮想世界だとかで済んだのならまだマシな方で、

 

実はこんなところ...。

 

いや、やめよう。

 

今日はなんだか気が滅入ってきた。ただでさえ現実は美しく辛いのに。

 

今日はもう筆を置く。




ケミィ「腹が減ったのなら、神に祈ってる場合じゃなくて、さっさと食料を探しに行くことだな。それが最も現実的なアプローチさ。死んだのは神が助けてくれなかったからじゃない、この宇宙に適した立ち回りじゃなかったからだ。」
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