死に戻り+直死の魔眼を持った男   作:全智一皆

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序章「七死転生」

 

 

■  ■

「―――」

 

 ふと、目が覚めた。

 誰も彼も居ない草原、木の葉や花々を撫でる風で瞼を開く。

 青い空。

 其処には、自分だけが居る。

 

「……」

 

 世界には、死が溢れていた。

 青い空にも。緑の地にも。

 草木にも。花にも。

 あれもこれも。そう―――この天地を見下ろす、太陽にさえも。

 この眼に映る景色全てに、確かな終わりが刻まれていた。

 まるで、白に色濃く残った黒の様に。

 

「消えなかったか…」

 

 小さく、吐き捨てた。

 恨む様に。憎む様に。

 淡々と。吠える事もせず、ただ一言で、心の中で燃え続ける感情(ソレ)を表した。

 死に満ちた世界は、嗚呼…なんて醜く、酷いものだろう。

 しかし、まぁ…酷いのは自分か。

 滑稽か。或いは、無様か。

 こんな事になったのは、こんなモノを視る羽目になったのは―――全て、自分自身の所為なのだから。

 

「……」

 

 むくり、と、体を起こす。

 ゆっくりと起こした体は、小さなものだった。

 かつての大きな体はなく、幼い子供の体が此処には在った。

 脆く、弱い。小さな、小さな子供の体だ。

 そんな子供は、しかし、誰もが視る事の適わない死を視続けている。

 

「―――哀れだな」

 

 鼻で笑う。

 嘲る様に、己を嗤う。

 重たい腰を上げ、立ち上がれば、先程よりも広く綺麗な(死ばかりの)景色が眼に映る。

 此方に来る人影が見えた。自分と同じくらいの少女が、歩いて来ている。

 

「やっと見つけた…またこんな場所でサボって」

 

 呆れた様に、黒髪の少女は頭を振っていた。

 記憶を辿る。少女を探す。

 この少女は誰だろうか。この子供は誰だろうか。

 

『クレア』

 

 見つけた―――それが、彼女の名前だ。

 

「クレア…か」

「そうよ。他に誰か居る?」

「居ないな。ところで、何か用か?」

「はぁ…時間になっても、貴方が来ないから探してたのよ、バカ」

「…あぁ、修行か。そうだったな、すまない」

「いいから、さっさと行くわよ。遅れた分、しっかり動くから」

「あぁ、そうだな」

 

 眼に視えるソレ()から眼を背き、少女の後を追う様に踏み出す。

 さて。

 此処では、何処まで生きていられるのだろうか。或いは、何度死を繰り返すのだろうか。

 考えれば考えれる程に―――何も考えたくないと思う。

 

「……貴方、何かあったの?」

「どうした、いきなり」

 

 歩きながら、問いかけれる。

 クレアという少女から、僅かに不信感が漏れた。まるで、見知らぬ人を見ているかの様だ。

 だが、それは事実だ。

 しかし、それを答える訳にはいかない。

 仮に答えたとして―――荒唐無稽な話しにしかならないのだ。

 だから、答えはしなかった。

 

「なんか…雰囲気が違うから。まるで、別人みたいに」

「そうか?」

 

 自然を装い、とぼける様に。

 処世術の一種というよりは、演技と言った方が近しいかもしれない。

 仮面を造る、自然を装う。どれも、手慣れたものだ。

 

「悪い夢でも見たからかな。あまり良い気分じゃないのかもしれない」

「ふーん……ちなみに、修行をサボっていい言い訳にはならないわよ」

「それは残念だ」

 

 困ったと、肩を竦める。

 修行は疲れる。気苦労が凄まじい。

 誰かを殺さない様にするのは、難しいから。

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