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―――見慣れるべきではないものに慣れたことは、誰にも明かした事はない。
死。あらゆる場所、あらゆる存在に刻まれた終わり。
ただ誰にも視えないだけで、ただ誰にも理解出来ないだけで、死は常に其処に在り続けている。
七度の死を経験し、遂に彼は死を理解した。それに伴い、その眼もまた死を視る様になった。
『直死の魔眼』――――――ある世界において、そう言われるモノ。魔眼というよりは、超能力に分類される特殊な力。
モノの死を視る眼。常人には決して宿らない、宿ってはならない眼。
死を見慣れた。ソレを見飽きた。他の魔眼所有者ですら、そうならなかった領域。至ってはならない筈の世界。
幾度も死んで、繰り返し、死を視続けた。その果てに、慣れた。慣れてしまった。
だから分かる―――眼の前の少年は、自分と似ていると。
「お前は悪い奴だよ、シド」
「えぇ…?」
困惑する様な顔をするは、シド・カゲノー。
クレアの弟にして、弟分。
そして―――今の自分より、圧倒的に強い力を持っている男。
「強さを隠し過ぎるのは不味い。いつかバレるぞ」
「強さって…僕は別に強くなんかないよ、シキさん」
「謙遜は止せ。いや、お前のそれは謙遜というよりは嘘だな。幾ら演じても―――その
―――ぶるり、と。僅かにシドの体が震えた。
極彩色の瞳が、死を視る魔眼が、その魂の傷を見抜く。
死を視られている。魂を視られている。自らが経験した死を。その傷を。
死ぬ事を恐れた事は一度もない。だが―――コレは、想像以上に。
「あー…もしかして、シキさん
「まぁ、そんなところだ。かれこれ…何回目だろうな。七つの世界を生きて、其々七回死んで、この眼を手にして、それから何回……うん、忘れた」
「えぇ…適当過ぎない?」
「いちいち自分の死を数えていたらキリがないからな。ただ自分が死ねない事を憶えていれば、それだけで十分だ」
いわゆる、死に戻り。
例え死んでも、
だが同時に、それは死ねない呪いでもある。
彼が生まれついてからその身に宿した
その結果として、眼を手に入れたのだ。手に入れたくもなかった眼を。
「慣れるべきものと慣れるべきでないもの。俺は慣れるべきでないものに慣れてしまった、それだけの事だ」
(言葉に重みがあるな。シキさんは僕よりも多く異世界転生して、そして何度も死を経験している。僕の先人という訳か…んでもって、結構ガチだなぁ…)
転生と死亡の繰り返し。シドにしてみれば、それは羨ましい事この上ないのだろう。
だが、他人の視点で考えれば生き地獄も同然だ。
死んでも生き返り、やり直される。死にたくても死ねず、繰り返される。
シキが背負うそれは、シドにも想像し難いものだ。
たった一度しか死んでいないシドと、七つの死と幾つもの世界を経験したシキ。
その差は、まさしく泥雲だろう。
「夢を志すのは良い事だ。それに走るのも。だが、それに伴うモノを忘れるな」
「伴うモノって?」
「それはいつか分かる。お前が夢を諦めないのなら、自然と」
お前は、お前の周りに居る人達を決して忘れるな。
それが有る事で、広がる世界がある。