死に戻り+直死の魔眼を持った男   作:全智一皆

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第二章「少年と少年」

 

■  ■

 ―――見慣れるべきではないものに慣れたことは、誰にも明かした事はない。

 死。あらゆる場所、あらゆる存在に刻まれた終わり。

 ただ誰にも視えないだけで、ただ誰にも理解出来ないだけで、死は常に其処に在り続けている。

 七度の死を経験し、遂に彼は死を理解した。それに伴い、その眼もまた死を視る様になった。

 『直死の魔眼』――――――ある世界において、そう言われるモノ。魔眼というよりは、超能力に分類される特殊な力。

 モノの死を視る眼。常人には決して宿らない、宿ってはならない眼。

 死を見慣れた。ソレを見飽きた。他の魔眼所有者ですら、そうならなかった領域。至ってはならない筈の世界。

 

 幾度も死んで、繰り返し、死を視続けた。その果てに、慣れた。慣れてしまった。

 だから分かる―――眼の前の少年は、自分と似ていると。

 

「お前は悪い奴だよ、シド」

「えぇ…?」

 

 困惑する様な顔をするは、シド・カゲノー。

 クレアの弟にして、弟分。

 そして―――今の自分より、圧倒的に強い力を持っている男。

 

「強さを隠し過ぎるのは不味い。いつかバレるぞ」

「強さって…僕は別に強くなんかないよ、シキさん」

「謙遜は止せ。いや、お前のそれは謙遜というよりは嘘だな。幾ら演じても―――その()は消えないものだ」

 

 ―――ぶるり、と。僅かにシドの体が震えた。

 極彩色の瞳が、死を視る魔眼が、その魂の傷を見抜く。

 死を視られている。魂を視られている。自らが経験した死を。その傷を。

 死ぬ事を恐れた事は一度もない。だが―――コレは、想像以上に。

 

「あー…もしかして、シキさん()転生者?」

「まぁ、そんなところだ。かれこれ…何回目だろうな。七つの世界を生きて、其々七回死んで、この眼を手にして、それから何回……うん、忘れた」

「えぇ…適当過ぎない?」

「いちいち自分の死を数えていたらキリがないからな。ただ自分が死ねない事を憶えていれば、それだけで十分だ」

 

 いわゆる、死に戻り。

 例え死んでも、中間地点(セーブポイント)まで時間が巻き戻り、再びやり直す。ある種の時間遡行である。

 だが同時に、それは死ねない呪いでもある。

 彼が生まれついてからその身に宿した特典(呪い)。それこそが、死に戻りだった。

 その結果として、眼を手に入れたのだ。手に入れたくもなかった眼を。

 

「慣れるべきものと慣れるべきでないもの。俺は慣れるべきでないものに慣れてしまった、それだけの事だ」

(言葉に重みがあるな。シキさんは僕よりも多く異世界転生して、そして何度も死を経験している。僕の先人という訳か…んでもって、結構ガチだなぁ…)

 

 転生と死亡の繰り返し。シドにしてみれば、それは羨ましい事この上ないのだろう。

 だが、他人の視点で考えれば生き地獄も同然だ。

 死んでも生き返り、やり直される。死にたくても死ねず、繰り返される。

 シキが背負うそれは、シドにも想像し難いものだ。

 たった一度しか死んでいないシドと、七つの死と幾つもの世界を経験したシキ。

 その差は、まさしく泥雲だろう。

 

「夢を志すのは良い事だ。それに走るのも。だが、それに伴うモノを忘れるな」

「伴うモノって?」

「それはいつか分かる。お前が夢を諦めないのなら、自然と」

 

 お前は、お前の周りに居る人達を決して忘れるな。

 それが有る事で、広がる世界がある。

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