90年代後半の日本球界を沸かせた一人の投手がいた。
“渡久地 東亜”-----彼は剛速球投手でなければ変化球投手でもない。いや、ある意味変化球投手だな。「3つのストレート」を駆使して打者を翻弄、時には野球選手らしからぬ行動をし相手はおろか味方すら欺き激怒させることがあったが勝負には真剣だった。彼は野球選手であるのと同時に天才勝負師だった。1年間だけしかいなかった選手だったが俺らはそんな選手から野球を教わった。
--------全国中学校野球選手権大会 決勝
???:(結構やばいな)
俺こと
雷鴉:(最後は内角低め....)
内角低めのサインをだしミットを構える。ピッチャーもうなずき投球モーションに入る。
スパンッ!
雷鴉:(お見事....だな)
「ットライーク!!バッターアウト!!」
審判からの宣告を聞いてメンバーがマウンドに駆ける。俺もゆっくりとマウンドに歩き、歓喜の輪に入った。
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???:「雷鴉ぁ~!!」
表彰式が終わって宿舎に帰ろうとしているときに大声で俺を呼ぶ声が聞こえた。
???:「さ、沢村君、ま、周りに、迷惑、だよ」
声のしたほうを見ると2人の男子がやってきた。
雷鴉:「栄純、廉の言う通り少しは周りのことを考えろ」
俺のもとにやってきたのは同じ師匠に野球を教わった沢村栄純と三橋廉だった。栄純は同じ長野県であいつがいる赤城中とよく練習試合をしてた。長野予選でも準決勝で修峰と当たるはずだったんだけど3回戦で味方のエラーでサヨナラ負けしたんだ。三橋は群馬県の奴だが長期休みによく長野に来てて俺や栄純と一緒にキャッチボールした仲だ。小学5年からは俺がリトルが忙しくて会ってなかったから4年半ぶりの再会になったわけだな。
栄純:「そんなことより俺らより先に優勝しやがってー!!さすが俺たちのライバルだな!!」
三橋:「そ、そうだね。ゆ、優勝おめでとう」
栄純と廉が笑って優勝を祝してくれた。
雷鴉:「まぁ素直に受け取っておくよ。それにしても廉、久しぶりだな。元気だったか?」
三橋:「元気だった、よ。さ、さっき沢村君にも、話してたけど、三星はお、俺のせいで、負けちゃった。」
雷鴉:「知ってるよ。見に行ってたから。けどあれは廉のせいじゃない」
ちょうど長野予選が終わって3日後に廉の従姉妹である瑠里ちゃんが「三星の試合がある」と言われ、群馬まで見に行ってきた。試合はひどいものだったがな。キャッチャーが廉の投球を引き出せていない。味方も廉の援護をしていない。あれじゃ勝てる試合も勝てないわ。
栄純:「なにぃ?!雷鴉見に行ってたのか?!俺も誘えよ!!」
雷鴉:「誘ったじゃねぇか。そしたらお前東京に行くって言ってただろ」
栄純:「あぁ!!あの日か!!」
雷鴉:「あの日、児島さんも来てたから一緒に見てたんだ。栄純、もったいないな」
ぐぅ....と栄純は唸った。
児島さんとは俺らに野球を教えてくれた渡久地さんと同じ埼玉レオンズの4番を打ってた国民的打者である児島弘道のことだ。渡久地さんが投球技術しか教えられないからと児島さんに打撃技術を教えてくれるよう頼んでくれたらしく俺・栄純・廉は児島さんに打撃を教わって以来、交流がある。児島さんが教えてくれたおかげで打撃もそれなりに習得できた。
三橋:「こ、児島さんもき、来てくれてたんだ.....不甲斐ない試合、しちゃった」
雷鴉:「児島さんも言ってたけどあれは廉のせいじゃねぇよ。あの試合の敗因はどう考えてもキャッチャーとかだろ。内野に至っては怠慢プレーだったじゃねぇか」
三橋:「そ、それでも.....」
廉が俯いちまった。廉は責任感強いから余計マウンドにこだわるんだよなぁ。そこが廉のいいところであり、悪いところでもあるんだけどね。
???「あ!!栄純こんなところにいた!!」
観客席へと続く階段から女の子が下りてきた。
雷鴉:「蒼月さんも来てたんだ」
彼女は蒼月 若菜さん。栄純と同じ赤城中の女子選手でミート力がすごいから練習試合ではよく苦しめられた。いつも栄純と一緒にいるから彼女かと思ってたけど「幼馴染だから」って否定してるんだよね。
若菜:「雷鴉くん、優勝おめでとう」
雷鴉:「どうも。蒼月さんは相変わらずのようだね」
若菜:「それってどういうことよ?それと三橋君久しぶり」
三橋:「ひ、久しぶり。そ、蒼月さんげ、元気そうだね」
若菜:「栄純のせいで毎日疲れてるけどね」
栄純:「どういうことだ?!」
若菜:「そのまんまの意味よ!!あんたのせいで毎回毎回....」
三橋:「そ、蒼月さんも大変だったんだね」
まぁ栄純は毎回変なところでやらかすからな。修峰に来てたら......来ても蒼月さんに助けを求めてたかも。赤城中に行ってくれてある意味よかった。
???:「十六夜君....だよね?」
栄純と蒼月さん、廉のやり取りを見ていたら声をかけれられた。
雷鴉:「君はさっきの.....宮田東中の4番打ってた榊君....だっけ?」
榊:「覚えてくれてたんだ。僕は
雷鴉:「どうも。君もナイスホームランだよ」
榊:「ありがとう。優勝チームのキャッチャーからそういわれると光栄だよ」
宮田東中の4番ショートで決勝戦でも修峰からホームランを打った榊君が声をかけてきた。
栄純:「あれ?雷鴉、そいつ誰?」
栄純が俺と榊君が話してるのを気づき、聞いてきた。
三橋:「この人、宮田東中のよ、4番の人だよ」
雷鴉:「この人は宮田東中の榊大輝君だ。榊君、この二人は俺の友人で.....」
榊:「赤城中の沢村栄純君に三星学園の三橋廉君.....でしょ?二人ともすごいピッチャーだから気にしてたんだ」
栄純:「俺も有名になったな!!」
三橋:「お、俺なんかま、まだまだだよ....」
二人は全中準優勝の4番に気にかけてもらえて照れてる。それより.....
雷鴉:「で、その榊君は俺に何の用かな?」
榊:「そうだね.....沢村君に三橋君もいるからちょうどいいや」
「「「?」」」
榊:「君たち高校はどこに行くか決めた?」
高校かぁ.....。さっき全中終わったから全然決めてないな。
雷鴉:「俺はまだ決めてないな」
三橋:「お、俺もまだ.....」
栄純:「つかそんなこと聞いてどうするんだよ?」
確かにな。今大会で準優勝したんだから高校なんていろんなところから推薦来るだろ。聞く必要なんてないだろ。
榊:「.....君たち、下剋上.....起こしてみたいと思わないかな?」
下剋上?
榊君は微笑みながら続けた。
榊:「甲子園の深紅の大優勝旗.....僕は手に入れたい。けど強いところ行っても面白くない。もちろん弱いところも面白そうだけど確率が低い。なら堕ちた古豪を復活させるほうが面白いって思ったんだ」
栄純:「結局お前の面白さかよ」
俺たちは黙って聞いていたけど栄純が思ったことを言った。
榊:「確かに僕の面白さによるものだね。でも下剋上できたらかっこいいと思わない?すでに僕のチームから僕を含めて3人、3位だった千葉代表立花中から2人決めてくれたよ。どうかな?やってみない?」
下剋上か.....面白そうだな。
雷鴉:「栄純に廉はどうする?俺はこの話に乗るけど?」
栄純:「雷鴉は乗るのか.....なら俺は.....お断りするわ」
三橋:「お、俺もこの話はき、却下で....」
栄純は大体予想できてたけど廉も断るのか。少し意外だな。
榊:「理由を聞かせてもらってもいいかな?」
栄純:「初めは雷鴉と同じ学校で優勝狙うのもいいかと思ったさ。けどこの間、青道にスカウトされて青道に行って来たらちょっと刺激されてな」
三橋:「俺は家庭の事情が....それにたぶん沢村君も一緒、だと思うけど....」
栄純:「三橋もか!!実際これが主な理由だけど.....」
栄純&三橋:「「雷鴉(十六夜君)を倒して優勝する!!」」
そんなことだろうと思ったよ。昔っからお互いにライバル視してたからな。
榊:「“十六夜君を倒す”....ね。それも面白そうだね。本当なら3人とも入ってほしかったけど2人にフラれちゃったから十六夜君だけで我慢するよ。ということで十六夜君、これからよろしくね」
榊君は落胆したあと俺のほうを見て右手を出してきた。
雷鴉:「ああ、よろしく」
俺も右手を出して握り返す。
すると榊君は何かを思い出したかのように
榊:「そうそう、修峰中からは君のほかに2人はいることになってるから」
2人....ってことはあいつらか.....あいつらも物好きだな。
そういえばどこの高校か聞いてなかったな。
雷鴉:「どこの高校にするか決めてるのか?」
榊:「静岡の“海皇学園”に決めてるよ。あそこの校長とも話はつけてあるから近日中に静岡に来てもらうことになるけど」
雷鴉:「わかった」
海皇学園か......
榊:「じゃまたその時に。沢村君と三橋君もまたいつか会おう」
そう言って榊君は帰って行った。
栄純:「負けないからな」
三橋:「俺も、負けない、から」
栄純と廉は真剣な目を俺にぶつけてきた。
雷鴉:「俺も負けるつもりはない」
若菜:「結局みんな別々かぁ....3人とも頑張ってね。応援してるから」
雷鴉:「なら蒼月さんも青道か海皇に来ればいいんじゃね?それか廉のところか....」
若菜:「嫌だよ、遠いし。私は長野に残るわ」
蒼月さんはどうやら俺たちが同じ学校でプレーするところを見たかったみたいだけどこればかりは仕方ない。俺ら3人はライバル同士なんだから。
こうして俺は全中優勝と同時に甲子園の優勝旗を目指して下剋上を起こすことを決めたのだった。
どうでしょうか?
気に食わない部分もあるでしょうがそこは目を瞑ってください。
これからもよろしくお願いします。