「すごーい! 本当にゲーム強いんだね」
「ふん。こんなの能力に頼ってるだけじゃないですか」
「ふははは。ホシノさん? 嫉妬は見苦しいですよ。勝ちは勝ち、負けは負け。クソザコナメクジは大人しくカードを切りなさい」
「この後の戦闘訓練覚悟しておいてくださいね? クソつよ幽霊さん?」
今俺はホシノとユメ先輩とトランプをして遊んでいます。え? どうしてそんな状況になったかって? そんなの能力のせいにきまってるじゃーん。
「おう! 俺が一回でも勝ったらデートだからなホシノ!」
「……まだそれ言ってるんですか」
「当たり前だろ? 理由がないのに戦闘訓練なんかやりたいくないでーす。第一俺は能力使えば……」
「カイト君?」
ユメ先輩が途端に怒気を放つ。
反射的に自分のお股を見てしまい、ホシノのバカにするような目を向けられる。お前のせいでこっちは人の殺気が尿意なんだよ! バカ! トラウマメーカー!
……あれから一週間ぐらい経った。入学手続きを済ませた俺は二人に境遇や能力のことを打ち明け今は学校単位で面倒を見てもらっている。
今ガンラックに立て掛けてあるアサルトライフルも二人から譲り受けたものだ。
「それにしても最初会った時はビックリしちゃった。銃も持ってないしヘイローの形も途中で変わるし」
「突然泣き出してまた漏らすし」
「ホシノ? 人の黒歴史を掘り起こすのは辞めようか」
「はいはい。適応が無いと私が怖くて仕方ない誰かさんのためにカードきりますよ」
「あんまり強い言葉を使うなよ? 泣くぞ?」
ちなみにアビドスに来てからほぼ毎日俺は泣いている。
能力を把握する過程でユメ先輩にガチギレされて1回。ホシノとの戦闘訓練で48回。殺気で4回。泣き虫とあだ名を付けられないだけ奇跡みたいなものだ。
「とにかくカイト君は能力を使わずに戦えるぐらいにならないとね」
「出る目が0~7で3以外はどんな能力か分かりましたし能力使っての戦闘ぐらい良くないですか?」
「それで戦闘中にそいつ出たらどうするんですか……」
そいつと指を刺された幽霊はニコッと会釈するだけだ。
今日のルーレットの5番目、初手天元
背後に佐為が現れゲームが凄く強くなる。
使えば使うほど素のゲームセンスも上がる。
という能力のもの。ただ佐為は喋らないし範囲も囲碁だけではなくゲーム全般と広め。ただルーレットの中では最も戦闘向きとは言えない。
「戦闘をゲームと捉えれば!」
「カイト君がゲームと認識しないとその幽霊は現れない。そう言ったのはカイト君だよ?」
「少なくとも銃撃戦がゲームと言えるぐらいまでは私がしごきますよ」
「ホシノお手柔らかに、ね?」
「さぁ? クソザコナメクジは力加減が苦手なので約束は出来ないですね」
その後アホほど撃たれた。泣きたい。
貰ったアサルトライフルとまだまだ慣れない盾を投げ出し地面に寝転がる。俺の6番目の能力とホシノの戦闘スタイルが似ていることからアサルトライフルと盾という装備になった。
しかし俺はニュータイプでは無かったようで同じ機動戦士スタイルでも幾分もトロい。
と頬に冷たい感触が当たる。スポドリだ。
「どうぞ」
「わりぃ、サンキュー」
二人して木陰に腰を下ろす。心地いい風が俺たちの間を通り抜けていく。
「動き前よりも良くなったんじゃないですか?」
「ああ。ホシノのお陰だよ。盾の使い方はまだ掴めないけど」
「カイトはまだ盾を持ってますからね。弾丸を受け止めるんじゃなくて流すことも覚えてください」
「へーへー」
上体を起こしてスポーツドリンクを流し込む。熱を持った喉が冷やされる。
俺もホシノもボーッと遠くを見つめる。なんてことない時間。
「おっ。見ろよ、ビナーじゃね? あれ」
「結構近いですね」
「アビドスってなんていうか平だよな。近くに見えても何十キロも離れてるだろ?」
「建物も人も居ないですから。こんな所に来るのなんて物好きくらいです」
「それか学校やそこに居る生徒が大好きな人だな」
最近知ったことだが意外とホシノは身内には甘いのだ。入学届を出し、学校で寝泊まりしているうちに警戒の眼差しは無くなって行った。本質は今のホシノと変わらないのかもしれないな。
「なんでカイトはアビドスから出ていかないんですか?」
前言撤回。
「え? 嫌われてる?」
「そうじゃなくて普通出ていくでしょ。こんな何も無い学校居たって損ばかり、いつ無くなるかも分かってないのに」
「……無くならないよ」
だって知ってるもん。バニーアスナに釣られて始めた俺をブルアカに夢中にさせたのはアビドスなんだぜ。ホシノの笑顔なんだぜ?
「案外数年後には後輩増えて俺らも先輩って呼ばれるさ」
「何を根拠に……」
「さぁね? ピエロ曰く人生は分からないから面白いらしいぜ。さ、訓練再開だな」
【ホシノ視点】
私はコイツが嫌いだ。本当に意味が分からないから。あの時だってそうだった。カイトが入学して3日目アビドスはヘルメット団からの攻撃を受けていた。
「へっ。今日こそお前らにはこの学校から出てって貰うぜ!」
「鬱陶しい。いい加減諦めてください」
いつも通り私とユメ先輩で迎撃する。私が注目を引き付けその間にユメ先輩が後方を削ぐ。いつも通りのシンプルな戦闘だった。あの瞬間までは。
「う、うわぁぁぁ!!」
悲痛な叫び声がすぐ背後から聞こえた。私もユメ先輩も居ないはずの場所から。
あの男はまだ銃撃戦もままならないはず。だが同時に摩訶不思議な能力も使う。正直あの適応能力を使用して戦えば私も勝てるかどうか怪しい。そんなものを突然突きつけられればヘルメット団も溜まったものではないだろう。もう1つの能力ならばそもそもダメージを負えば勝手にテレポートさせられるだろう。
今だから言えるが私はそれを狙っていた。連日の襲撃それに伴う物資不足がここ最近の悩みの種だったから。もしかしたらあの男の不気味さが獣よけになればいいぐらいには考えていた。
だが現実は予想を上回る。
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「わ、私は関係ない! 今日は雇われただけで」
「う、うぇぇぇぇ」
明らかに異常な雰囲気が戦場を支配していた。嫌な予感は加速する。
「言っておくけど殺したのは私じゃねぇーからな!」
ヘルメット団の1人がそう言った。その瞬間まるで映画のワンシーンのように人垣が割れ集団の中央が見えた。
仰向けに倒れた、ヘイローの消えた生気のない正真正銘の死体。
誰の目に見ても明らかに進藤カイトは死んでいた。
「カイト!!」
すぐに周りの敵を蹴散らし彼の元へ急ぐ。脳はとうの昔に彼が死んでいることを認識しているのに、ついさっきまで怪しいから囮にしようと考えていたのに、私の心は彼の死を望んではいなかった。
「カイト! カイト!」
「何があったの? ホシノちゃん。突然ヘルメット団の動きが止まっ……カイト君?!」
こういう時どうすればいいんだっけ? 人工呼吸、心臓マッサージ、電気ショック……。浮かんでくる蘇生のアイデアは全て無意味だと知る。
彼の眉間には弾痕があった。おそらくライフルによって撃ち抜かれた証だ。
「誰だ」
「っ! ホシノちゃんダメ!」
たとえ3日しか居なくて素性も知らない男だとしても進藤カイトはアビドスの生徒だ。
「誰がやった」
周囲の視線が一人の生徒に移る。青い顔をしたその生徒はスナイパーライフルを携えていた。
ユメ先輩が腰に抱きついてくる。
「ホシノちゃん! ダメ」
「離してくださいユメ先輩! たかがチンピラ風情すぐに……」
殺せます、そう呟くはずの口は息を飲むだけだった。
「……いったー。やっぱり死ぬのって痛いな〜。亜人みんなバンバン死んでたけど永井君も佐藤さんもヤバいやつだったんだな」
するとまた別の場所でヘルメット団が吹き飛んだ。まるで見えない何かに殴られたように何人もの生徒が投げ飛ばされていく。
「カイト?」
「お? おぉー! 俺遂にホシノに名前呼んでもらえたー! やった。やりましたよユメ先輩! 入学3日目で馴れ馴れしいかもしれないけどやっぱり嬉しいよね。うんうん」
そう言うとカイトは銃を構え直した。
「よーし。この嬉しさ胸にいっちょやりますか」
カイトがヘルメット団に向かっていくのを私もユメ先輩も放心しながら見守っていた。
その間彼は13回死んだ。時に心臓を撃ち抜かれ、時に血を大量に流し、時に爆弾で吹き飛ばされ血と泥によってぐちゃぐちゃになった服と非対称に体は何度も元に戻る。
彼が死ねば死ぬほどヘルメット団は士気を落とし最終的には悲鳴や嗚咽を漏らして撤退して行った。
「ふぅいー、辛勝辛勝。初めての能力実践だったけど何とかなってよかったー。二人とも大丈夫ですか?」
「…………カイトこそ何とも無いんですか?」
「無い無い。今回の能力は亜人って能力でさ。数字は4なんだけど簡単に言うと体の耐久値が弾丸1発で死ぬくらいまで下がるんだけど死ねば傷や疲れがリセットされるって能力なんだよね。あと透明な幽霊も操れるおまけ付き。まだ3つしか能力分かってないのに当たりばっかりで俺嬉しい〜」
「……でもさっき痛かったって」
「ん? ああ、そりゃ腕吹き飛んだりしたら痛いに決まってるじゃん。でも慣れだよ慣れ。永井君もそう言ってたし。それに俺的には二人に怪我が無い方が嬉しいよ」
「ねぇカイト君」
ユメ先輩はゆらりと立ち上がった。私だから分かる。ユメ先輩本気で怒ってる。
「もしね。私とホシノちゃんが死んじゃうかカイト君が死んじゃうか、どっちかしか選べないとしたらどっちを選ぶ?」
「そんなの決まってるでしょ」
そんなの決まってる。自分の命だ。きっと私だってそうする。
「ホシノとユメ先輩の為なら喜んで死にますよ」
「え?」
「何ホシノそんなに意外か? 俺だって自己犠牲の精神くらい持ってるよ。というかたった今死ぬほど死んできたのに」
「じゃあなんで今私やホシノちゃんが泣いてるか分かる?」
言われて初めて気がついた。いつの間にか泣いていたのか、私は。
「砂が目に入ったからかと……もしかして何かされたんですか? ちょっとヘルメット団追いかけ「カイト君」……はい」
「正座」
「……はい」
その後カイトは小一時間くらいガチ説教を受けた。
次第にカイトもユメ先輩もボロボロになるまで涙を流し、無計画に能力を使わないことを約束していた。
戦闘訓練が始まったのもその出来事がきっかけだった。
それにしてもあの能力意味不明だけどカイト自身もチグハグだ。
死ぬことや外傷には疎いくせに私やユメ先輩の気持ちには敏感で。それなのにいつも何が原因かを履き違えている。まるで怒られること自体を恐れているみたいな……。
「おまたせ。待った?」
「いえ、私もちょうど来たところです。それより本当に着いてくるんですか?」
「もちろん。ホシノの夜間パトロールなんてレアイベント逃す訳にはいかないからね」
「わかりました。それでは行きましょうか」
夜間パトロールと言っても実はそんなにすることが無い。それもこれもトラブルの大半がヘルメット団だったからだ。彼女たちは今活動を自粛しているらしい。
当の本人は隣で星が綺麗だなー。なんてうわ言を述べている。
「なぁ俺結構強くなったよな?」
「そうですね。少なくとも一人でヘルメット団の小隊を足止めくらいは出来るのでは?」
「だったらホシノに勝つ日も近いな」
「ちなみに私はヘルメット団とも戦えます」
「まさかの組織!?」
「そうです。だからデートなんてさっさと諦めることですね。それにこんな可愛げの無い同級生よりユメ先輩を狙ってみたらどうですか?」
すると突然彼が足を止める。周囲を警戒していたが特に敵の気配は無かったし……なんだ? 彼の息を吸い込む声が聞こえる。
「俺はホシノとデートしたいのぉぉぉぉぉ!」
反響する山もないのにやまびこが聞こえ…………。
「な、何言ってるんですか!」
「うるさい! たとえ何光年かかろうと俺はホシノとデートするんだ」
「光年は時間じゃなくて距離です」
「関係ない。俺はアビドスの中ならホシノが1番好きなんだ!」
「アビドスの中って二人だけじゃないですか!」
「今はな!」
本当に意味が分からない。
「それにさ。俺はホシノの笑顔が見たいんだ。飛びっきりのやつをな。それまでは死ねないね」
「だったらカイトの前で意地でも笑いません」
「な、何?! それは困る。死活問題だ。この際馬鹿にするような笑い方でもいいから笑っててくれ」
「嫌です。それより今はパトロール中なんですから気を引き締めて下さい」
「おいコラ。置いてくな。待って走るのはやっ」
あの時なんで泣いたのか分かった気がする。
この時なんで笑顔を隠すために駆け出したのか分かった気がする。
分からないのはこの気持ちの名前がなんなのかだけだった。
転生賽子(ダイスピエロ)一覧
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1???
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6???