馬鹿はサイコロしか振らない。   作:グルヌイユ

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拙い英語は全部Google様翻訳です。

誤字報告ありがとうございます。


ホシノ超満点笑顔計画

 アビドス生徒会室で1人と一匹? が唸っていた。

 理由は簡単、デートをどうすればいいか真剣に悩んでいるからだ。

 スチルでさえも見たことが無い過去おじさんのスマイルが見たいがために全力でなけなしの脳みそをフル回転させている。余白のインク出るか試したグルグルも滑らかアク○ボールペンだわ。

 

「というわけで俺はここで0を出します」

「あ、ああ。デートプランを適応して捻り出そうとしてんのね。俺様的にはなんでもいいけどよー。やっぱりこういうのは気持ちじゃねぇーの?」

 

 ダイスピエロが口出した理由は目の前の紙だろう。チラシの裏にデカデカと書いたホシノ超満点笑顔計画。

 デート先が水族館であること以外何も決まっていない。

 当日の段取りや言葉掛け金銭なんかは正直微塵も自信が無い。でもさでもさ、借金返済と生活でカツカツのアビドスなわけですよ。奢らない男はカッコ悪いなんて考えも生前の主義であってキヴォトスじゃ無効だ。

 あ、そうだ! 

 

「とりあえずマコラ出して金欠とデートプランに適応して貰おう」

「世界一寂しい他力本願だな」

「やかましい。俺の能力の一部です」

 

 ふっふっふっ人生は所詮運よ。既に1度死ぬという大凶は引いてるけど。

 

「おはよー! カイト君来てたんだ、早いね」

「ドゥルルル──」

「ユメ先輩またカイトが勝手に能力使ってますよ」

「それについてはごめんだけど、地面に叩きつけるまでの容赦無くない? ピエロ泣いちゃうよ」

 

 バレないようにメモ帳代わりのチラシを他の資料と混ぜ渋々ピエロを消す。ダイスピエロの出現条件は名前を呼ぶことだが消す条件は俺が思うか時間経過だ。ま、能力発動以外で呼ぶ必要が無いからな。

 

「まーた勝手に呼び出そうとして。ダメでしょ? 昨日ホシノちゃんに負けたからには当面の間は許可を取ってから、ね?」

「どうせ今だって能力を悪用しようとしたに違いありませんからね」

「ぐぬぬ……」

 

 だって彼女無し=年齢の人間がデートプラン考えるなんて能力使わないと無理じゃん。

 

「それよりも早く会議をしましょう。せっかくアビドスも3人になったのに依然として治安も借金問題解決していません」

「そーだね。今はカイト君効果でヘルメット団が大人しくしてるとはいえそれがいつまで続くかも分からないし」

「もう1回カチコミに行けばいいのでは?」

「なんでヘルメット団刺激するんですか……抗争でも始めたいんですか?」

 

 そうはいってもこっちは今ユメ先輩が何故か隠したメモをチラチラ見ているせいで気が気じゃないのよ。

 

「いっその事ヘルメット団を生徒に勧誘するのはどうですか? 学校を退学した奴もいるんじゃないか?」

「うーん、前までならいいアイデアだったんだけどね……」

「カイトと学園生活を送ろうものならトラウマレベルになると思います」

「ホシノさん内角エグリ過ぎてそのコメントデッドボールよ。俺一塁まで行っちゃうよ」

 

 ユメ先輩も否定してくれないし、悪かったです! ちょーっと新しい能力と佐藤さんの戦い方に感化されて無茶しました。自分の体は大切にします! 

 

「とにかく!」

 

 ユメ先輩の視線をチラシから移すため半ば強引に前に出た。黒板に今のアビドスの問題点を箇条書きしていく。

 

「砂漠化による人口減少、それに伴う借金。そして学校としての自治能力低下による治安悪化。これに優先順位を付けるなら──」

 

 あ、チョーク折れちゃった。脳内でミカが折るねって言ってる。

 

「備品は大切にして下さい」

「途中までは良かったのにね……」

「と、とにかく治安問題は俺とホシノのパトロールで現状維持! アイデアを出すなら人口問題と借金地獄ですよ! 借金は皆でバイトや依頼をこなしながら返してますけど焼け石に水。人口に至っては今も減る一方ですよ」

「そう! だから私ね。考えたの!」

 

 ユメ先輩が勢いよく書類の束からチラシを引き抜く。

 な、なんでぇ。もしかしてデートプラン公開処刑ですか? 見えそうで見えない裏のメモ欄にヒヤヒヤしながらユメ先輩の動向を待つ。

 

「ジャジャーン。ホシノちゃん、カイト君見て見てー! アビドス砂祭りのポスター! やっと手に入れたよー!」

 

 砂祭りでいろ! いいか? 裏返すなよ? ワンチャン俺血祭りになっちゃうから! 

 

「この時はね。オアシスみたいに湖が広がってたんだよねー。あ、このポスターはホシノちゃんに記念に上げる。カイト君の分も絶対見つけてくるから!」

「は、はい。タノシミニシテマスネ」

 

 なんで元凶に渡っちゃうのー! しかも巧妙に裏面が見えないし、わざとか? ワザとやって二人でからかってる? もしかしてデートもドッキリか? 

 

「えへへ、すっこく素数でしょー? もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって──」

「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩。そんなもの、あるわけないじゃないですか、それよりも現実を見てください! 

 

 わぁー。振るな、丁重に丁重に。裏見えちゃからホシノステイ。

 

「は、はう……」

「こんな砂漠のド真ん中に、もう大勢の人なんて来るはすがないでしょう!? 夢物語もいい加減にしてください!」

「ユメ先輩だけに、つって。痛って! 撃つことねぇだろ危ない」

「カイトは黙ってて下さい」

「うええ、だってホシノちゃーん……ご、ごめんね?」

 

 空気はひえっ冷えだけど俺も今ひえっ冷えだよ。どうやってホシノから上手くあの紙を取り戻そうか。

 

「か、可能性はゼロじゃないんだし一旦落ち着けよ。な? とりあえずそれは俺が預かるからさ」

「そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだのなんだの……」

「おーい? ホシノー。話聞こえてる?」

「もっとしっかりしてください! あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!? もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!」

 

 そこからの俺を一言で言うならゾーンに入った、だ。

 極限まで高められた疑惑、緊張感。そしてバレた時の羞恥心は男子高校生を迸らせるには十分であった。

 ホシノがゆっくりとチラシを掲げる。予備動作から推測して破こうとしているのだろう。それならいい。しかしもし仮にチラシの裏が目に付き手が止まれば? 

 彼女はこう呟く。ホシノ超満点笑顔計画? と。

 無理死ねる! 

 

 ホシノがチラシに手をかけビリビリという効果音のBの音が鳴ったその瞬間チラシは彼女の手から消えた。この日初めて俺はホシノに勝ったのだ。

 

「……ふぇ?」

「カイト君?」

「ふ、二人とも落ち着いて下さい! まずユメ先輩、現実的にはホシノの方が正しいです。今の俺たちに夢物語が必要じゃないとまでは言いませんが話し合いたいのは明日、今日、この後から具体的に何をするかです。仮に砂祭りをするにしてもアビドス周辺のお店やお客さんのニーズを汲まずに開催したら人口減少はもっと進みます。まずは現状を把握して一歩一歩地道にやってきましょうよ!」

「カイト、裏に……」

「次にホシノ!」

「ひゃい!」

 

 手に取るように分かる動揺。赤面する耳、不味い。こんな真面目な雰囲気とコメントの後なのにユメ先輩が不思議そうな顔でこっちを見ている。落ち着け。立て直そう。

 

「お前の言うことは正しい。けど正しいだけじゃ人は生きていけないだろ? 熱くなる気持ちも分かるけど仲間の声も聞こえないようじゃダメだぞ?」

「う、うん」

 

 歯切れわっる。いつものツンツンホシノはいづこへぇ〜。

 勘づいたユメ先輩はにこにこしながら右手を差し出した。

 

「カイト君チラシ出して?」

「とにかくこのチラシは俺が貰います! もう欲しい位です!」

「仲間の声も聞こえないようじゃダメだぞ?」

「ユメ先輩……」

 

 俺は渋々後ろ手に持っていた砂祭りのポスターを返した。なんで疑問に思わなかった。生徒会室のそれも机の中央に置かれてたら重要な物だと思うよな。なんで裏が白いかどうかしか興味持たなかったんだよ。なんならインク出るかどうかも試しちゃったよ。

 

「ホシノ超満点笑顔計画? カイト君が考えたの?」

「はい、昨日の戦闘訓練後にホシ──」

 

 先程までとは打って変わって俺が地面に叩きつけられる。

 

「カイトのいつもの戯言ですよ。ユメ先輩」

「ホシノちゃん? 可哀想だからカイト君を離してあげて?」

「いや、あの……」

「ホ・シ・ノ・ちゃん?」

「………………はい」

 

 さっきとは色違いの修羅場だ。俺が何したって言うんですか。

 

「二人とも聞かれた事だけ答えて? カイト君この計画はなんのために?」

「はい。昨日ホシノとの戦闘訓練後に前から言ってたデートを承諾して貰えたのでその計画です」

 

 目下に浮かぶ破顔した喜色と恥ずかしがる照れ顔。

 あーこんなはずじゃなかったのに。

 

「ホシノちゃんはどうしてデートする気になったの?」

「いや、あの……」

「珍しいな。いつもキリッとしてるホシノがこんな……」

「カイト君は黙ってて」

「はい」

 

 俺としてもそれは気になる。どうして了承してくれたのかはずっと気になってたから。

 

 でも答えは隣に立っていた。

 

「こ、答えたくありません」

 

 視線を何度もユメ先輩に移しては俯き、目には若干の涙を浮かべて頬を高揚させたホシノはいつか見た画面の中よりも比べ難いほど可愛かった。

 

 あっわやば尊。

 I’ve been living for this moment.

 Hoshino is my wife.

 Do you have any objections? 

 

 するとユメ先輩はふふふと笑ったかと思うと抱きついてきた。床が硬いことは既に経験済みなので二人が当たらないよう身を呈しつつみんな揃って倒れた。

 

「こーんないい後輩が居てくれて私は凄く嬉しい!」

「ちょ、ユメ先輩離してください」

「sure.I'm getting to understand Abydos is eden.」

 

 尊さを噛み締めてたら2時間目まで寝てた。なんだ夢オチかよと思ったら議題がホシノ超満点笑顔計画になっててもう1回寝た。

 

 下校時間を告げるチャイムとカラスの合唱を聞きながらユメ先輩と帰路に着く。ホシノが居ないのは定期的に居なくなる日があるからだ。黒服の所にでも行っているのか、はたまたただの昼寝か。それは分からない。

 

「今日はありがとね?」

「……俺の純情をさらけ出すことに感謝されていると言うならしばらく実家に帰らせて頂きます」

「そっちじゃなくて!」

 

 結局対策会議はユメ先輩による俺とホシノのデートプランでもちきりになり、恥ずかしがりながらも何とか当日の段取りを定めた。

 

「ホシノちゃんが砂祭りのポスター破ろうとした時止めてくれてありがとう」

「どういたしまして? で合ってますか?」

「合ってるよー! ……なんかさあの時ポスターを破ってたらホシノちゃんきっと後悔してただろうなって」

「あー」

 

 思い当たる節はある。暗く切ない顔をしてユメ先輩の死体を発見したホシノのスチル。

 なんならポスター破るシーンって今日だったのか。意識してみたら凄く原作壊してない? ま、いっか。

 

「例え後悔したとしてもホシノには支えてくれる人が居ますから大丈夫ですよ」

 

 まだ見ぬ後輩や先生なら破れたポスターぐらいまた貼り直すだろう。

 

「その中にはカイト君も居てね?」

 

 砂埃が目に入ったせいでユメ先輩が見えない。

 ユメ先輩の死因はまだ明らかになっていなかった。でもそれはまるで遺言じゃないか。

 暗闇の中手探りでユメ先輩の手を握る。そして小指を立てて結ぶ。

 

「分かりました。約束します。絶対ホシノの傍に居るって」

 

 結んだ指切りは解け視界が回復するとユメ先輩はいつもと変わらぬ笑顔だった。

 

「その前にデート頑張らないとね!」

「頑張ります」

 

 

 この日からちょうど1ヶ月後アビドス高校の在校生は1人減ることとなる。

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