調月姉妹のやべー方   作:アリマリア

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 当然ながら調月姉妹にも得手不得手があり……
 平時の思考力や事務処理能力:リオの圧勝
 戦闘関連の感覚・洞察力:オリの圧勝
 となります。





調月姉妹のするでー方

 

 

 

 ユウカとアリスの問答。

 その大半は「アリスがゲーム開発部に脅されて無理やり部員にされたのではないか」というユウカの疑いを晴らすものだったが……。

 

 結果として、ユウカはアリスのゲーム開発部加入を認めた。

 

 モモイが用意した学生証の偽造はバレていたし、ユウカは優れた記憶能力でミレニアムに所属する殆どの生徒の顔を覚えている。

 故に恐らく、天童アリスがミレニアムサイエンススクールに所属する生徒ではないことは彼女にもわかっていたはずだが……。

 それでも、アリスがゲームを愛し、ゲーム開発にも前向き(?)だったことで、半ばお情けで認めてもらった形となった。

 

 オリは先日、セミナーのトップであるリオにアリスの正体を明かしたのだが、この様子だと、どうやらセミナーの中で情報の共有は行われていないらしい。

 元よりリオは秘密主義で人に頼ることを知らない性格であるため、今回もアリスについての情報共有をするつもりはないのだろう。

 ……少なくとも、アリスの「試し」が終わるまでは。

 

 そういうわけで、ユウカはアリスの正体を知らない。

 ヘイローがあること、幼い見た目をしていることあたりから、「他学園自治区からの亡命者か、昔退学になった生徒か、あるいはワケアリで戸籍のない生徒かしら」と当たりを付けるのが精々だ。

 

 ともあれ、ユウカが話した限りにおいて、アリスは「世間知らずではあるが純粋で善良で天真爛漫、ゲームが大好きな普通の女の子」のように思われた。

 故に、ユウカは自身の権限を使い、彼女を守ることを決めたのだ。

 

 ……とはいえ勿論、正規にこの学園の生徒でない者を部に所属させるのは校則違反。

 生徒会としての役割を持つセミナー所属のユウカが見て見ぬフリをするのは、職務怠慢にあたる。

 後ほどユウカはこの事態が発覚した際、ノアに「ユウカちゃんは相変わらずゲーム開発部の子たちに優しいですね」と微笑まれ、コユキに「先輩、私には仕事しろ仕事しろって言って自分はしてないじゃないですか!!」とギャーギャー騒がれ、ついでにオリにも「やーいロリコン♡ アリスちゃんに劣情を覚えるのは流石の私もあっちょっと引くっ♡」と揶揄われることになるのだが……それはともかく。

 

 

 

 ユウカがアリスの所属を認めたことにより、ゲーム開発部の人数は4人となった。

 ミレニアムサイエンススクールが規定する、部活の最低所属人数は、4人。

 つまるところ、ゲーム開発部はついに部員の所属数という廃部の条件回避に成功したわけだ。

 

 これを以て、彼女たちの今回のクエストはクリア、ゲーム開発部の平和な日常は続く……。

 

 

 

 ……と、思われたのだが。

 

「ただし、来月までに部活としての成果を証明できなかった場合、結局廃部になるから」

「「「え?」」」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ミレニアムサイエンススクールは、最新と合理を重んじる校風だ。

 故にその校則も、きちんと協議こそ経るが、かなりの頻度で変わる一時的なものに過ぎない。

 そしてその際には、関係各所に会議や資料の配布によって通達されるのだが……。

 

「今後、ミレニアム公認の部活動は、4人以上の部員を持つと同時、一定以上の活動の成果を挙げなければならない」

 

 それは数週間前、新たに制定されたルールだった。

 

 これは各部活の部長を招集した会議にて通達されたのだが……。

 会議に参加せねばならないゲーム開発部の部長は、人付き合いの苦手なユズだ。

 ロッカーからも出られないユズが、多くのミレニアムの生徒の集う会議になど出られようはずもなく、モモイが出席する予定だった。

 が、彼女はそのことをすっかり忘れてしまい、当日は近くのゲームセンターで格ゲーに勤しみ、在野のプロにパーフェクトを取られまくって意地になり涙目になっていたとのことだった。

 

 まぁ過去のことは振り返っても仕方ないよね! 未来のことを考えないと! とはモモイの言。

 その後、ミドリに「ちょっとは反省してよお姉ちゃんの馬鹿!」と言ってどつかれていた。

 

 

 

 そういうわけで、一行は一周回って本来の目標に戻ることとなった。

 部員確保を諦めたゲーム開発部が抱いていた、本来の目標……。

 

 即ち、『G-Bible』の発見と、それを使った名作ゲームの開発、そしてミレニアムプライスの受賞だ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ユウカとのやり取りからたったの数時間。

 オリと先生、そしてゲーム開発部の面々は、再び廃墟を訪れていた。

 

 今回の目的は当然、『G-Bible』の捜索である。

 前回の探索では工場地下でアリスを見つけ、安全のため(と部員数の確保のため)に連れ帰ってしまったために、結局見つけることができなかったが……。

 

 ヴェリタスの調べによれば、『G-Bible』が最後に使われた座標は、間違いなくあの工場だった。

 故に、もう一度あの工場に行き、探してみようというわけだ。

 

 

 

 前回と変わったことといえば、パーティメンバーだろう。

 

 ゲーム開発部の才羽姉妹にシャーレの先生、先生の護衛として来ているオリ。

 今回はその他にも……。

 

「探索クエストですね。アリスはシーフのジョブをランク6で取得しているため、レアアイテムドロップ率の増加が狙えます!」

「あ、アリスちゃん、今回は敵を倒すんじゃなくて、所定の場所を調べるのが目的だから……」

 

 むん! とやる気を見せる、背中に巨大なレールガンを背負った、新入部員のアリス。

 両手で愛用するグレネードランチャーを抱えて、少し怯えた様子で周りを見回している、部長のユズもいた。

 

 こうしてゲーム開発部のメンバーが勢揃い、総勢6名のパーティと相成ったのだった。

 

 

 

 そんなパーティの中で、相変わらず最後尾で殿を務めるオリは、ショットガンを持ち直しながらため息を吐く。

 

「あー、まーた廃墟来ちゃったよ……」

 

 廃墟は敵対性のロボットが放浪していたり、複雑怪奇な迷路の立ち塞がる、下手をすれば生きて帰ってこれなくなる危険地帯だ。

 その上オリにとっては、リオにすら隠している秘密が眠る場所でもある。

 あまり頻繁に来たい場所ではなかったのだが……。

 

 少なくとも、2つの懸念の内、片方は既に解消済みと言える。

 その分、オリの心はいささか軽かった。

 

「ま、今回は目的地が決まってる分迷うことはないし、戦う必要がないからちょっと気楽だけどね」

“そうだね。前回は本当に大変だったから……”

「先生の指揮あって、私と才羽姉妹いて、それでも真っ当には撃ち勝てなかったもんね。無限湧きの雑魚敵ってこわい。連邦生徒会長でさえSRT連れてかなきゃいけないわけだよ。

 ま、アリスちゃんさえいれば大丈夫だろうし、今回はそんなに心配してないけどさ」

 

 

 

 前回の廃墟探索において、一行はアリスを見つけ、連れて帰ったわけだが……。

 その際、先生とアリスを同時に護衛しなければと身構えていたオリと才羽姉妹は、工場の外に出て首を傾げた。

 

 なにせ、この工場に入るまで親の仇とでも思っているように攻撃をしかけてきたロボット群が、一切こちらに手を出して来なかったのだから。

 

 それらはこちらに詰め寄って来ることもなく、かと言って無視して放浪するでもなく、一定の距離を保ってじっと観察してきているようだった。

 一行を。……より正確に言えば、その大きな目をぱちくりさせるアリスを。

 

 結局、一行が廃墟区画を出るまでの間、たった1発の銃弾さえも発されはしなかった。

 恐らく……というか、ほぼ間違いなく、アリスのおかげで。

 

 

 

 そういうわけで、オリは安心していた。

 今回の廃墟探索では、ほぼほぼ戦闘は発生しないだろう、と。

 

 実際「あの子」やリオ、ヒマリとの会話から、アリスやこの廃墟に蔓延るロボット群の正体を大方把握しているオリからすれば、ロボットたちの反応は至極もっともだと思えた。

 

 無名の司祭たちの作り上げた、兵力増強のための「Divi:Sion」システム。

 ソレらの目的は大方、「名もなき神々の王女」の護衛とサポートだろう。

 

 つまるところ、あのロボット群にとって、アリスは守る対象でありこそすれ、攻撃する対象ではない。

 「名もなき神々の王女」……もといアリスが自らの意思で自分たちと同行している以上、オリや先生、ゲーム開発部にも攻撃が加えられる危険はないだろう。

 

 故にオリは今回、一応ショットガンこそ持って来てこそいるものの、使うつもりはなかった。

 なにせ前回も、ユウカに「またあんなにバカスカ撃って! アレ特注の弾だから高いんですよ! わかってるんですか!」と怒られたのだ。

 

 オリは体こそ常人離れしているが、心はあくまで一生徒に過ぎない。

 妹に迷惑をかけるのは心苦しいし、怒った大魔王は怖いし、笑顔の詩人はもっと怖い。

 可能な限り、今回は銃弾を消費したくなかった。

 

 

 

 ……が。

 そんな彼女の儚い望みは、この数秒後に砕かれることとなる。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「伏せて!」

 

 モモイの言葉の直後、辺りを爆音と砂塵が包み込む。

 

 大雑把に言えば人型をした、5メートル程の大きさを持つロボット……通称、ゴリアテ。

 その砲撃は、姿勢を低く保たなければ爆風に吹き飛ばされる、あるいはそうでなくとも破片に貫かれて傷を負ってしまうものだった。

 

「みんな、大丈夫!?」

「私は平気、でも思ったより火力が……先生、大丈夫ですか!?」

 

 砲撃をやり過ごした直後、ガバっと真っ先にパーティの無事を確認したユズに続き、ミドリが先生の方に視線を向ける。

 

 

 

 先生は膝を突いて姿勢を低くしながらも、未だゴリアテに視線を合わせており……。

 いつもその手に持つタブレットからは、仄かに青い粒子が舞い散っていた。

 

“うん、大丈夫。オリ、アリス、お願い!”

 

 先生の言葉と共に、いつの間にかゴリアテの足元に回り込んでいたオリが、その足を掴み……。

 

「了、かぁーいッ!」

 

 バキリと、表面が凹む程に強く握りしめ。

 遠心力のままに振り回して、背後に向かって放り投げた。

 

 巨大な鉄の塊は、アスファルトを引き剥がしながら轟音を立てて数メートルも転がり、進路にいたロボットたちを薙ぎ倒していく。

 ゴリアテが転がった後には、もはや動くものは何1つとして残らず、破壊されたロボット群の残骸が散らばるばかり。

 

 だが……。

 そうしてこじ開けた穴も、すぐさま埋められてしまう。

 

 後ろから続々と現れるロボット群は尽きることなく、倒れ伏したゴリアテの左右から、あるいはそれを乗り越えて、相変わらず一向に向かって歩みを進めてくる。

 更には倒れたゴリアテも、ややガタついた動きにはなったが、その場で立ち上がって再びこちらに砲塔を向けようと試みて……。

 

 

 

「よし、後は任せた、アリスちゃん!」

 

 しかし、ロボット群が蹴散らされ、吹き飛ばされたことでできた、十秒近い時間。

 それは彼女たちにとって、十分すぎる程のアドバンテージだった。

 

 オリが言葉を投げかけた先には、巨大な砲塔を構えるアリスの姿。

 

 そうして、今……。

 

 

 

「はい、オリ! ……光よ!」

 

 

 

 今、ロボットたちに向かって、破壊の光がもたらされた。

 

 電磁気力によってもたらされるその弾速は、マッハ20オーバー。

 エンジニア部の上半期の予算の7割と、ミレニアムが保有する凄まじい技術力、そしてアリスの文字通り人間離れした膂力、長い長いチャージ時間。

 その全てがあって初めてもたらされる、おおよそキヴォトスでも最上級だろう火力は、その進路上にあったロボットとゴリアテを、かつて動いていただけの残骸へと変えた。

 

 

 

 その破壊痕はオリの作ったものの上に重なり、ただでさえアスファルトをボロッボロに剥ぎ散らかした地面を焼き焦がしてしまった。

 まさしく高出力ビームの照射跡という光景に、一行は「おぉ……!」と声を上げる。

 

「アリスちゃん、すごい……!」

「こりゃ私が足止め係になるわけだ。広域殲滅力じゃ勝てる気がしないね」

 

 その目をキラキラさせて賞賛するミドリと、一周回って呆れた表情を浮かべるオリ。

 

 そこに、混乱した様子のユズが口を挟んだ。

 

「あ、あの、今日は襲われないって話じゃ……!?」

「うん、私もそう思ってたんだけど、何かちょっとおかしいね」

 

 オリは一行の元に歩み寄り、口元についた煤を手で拭いながら、半ば独り言を呟くように言う。

 

「襲われたこと自体もおかしいけど、何より、前回来た時と相手の攻め方のパターンが全然違う。

 前回は潜伏してから包囲しつつ不意打ちを狙ってきたけど、今回は兵力に任せて真正面からひたすら愚直に攻めて来てる。

 なんとなく、命令を下した人間……いや、命令を下した者の性格の違いを感じるよ。前回は無機質で効率的だったんだけど、今回はどことなく傲慢さとか自信が伺えるような感じだ。

 結果としては、今回の方が前回よりずっと対処しやすかったね」

“……今回ロボットを動かしているのは、前回とは別人?”

 

 先生の小首を傾げた言葉に、オリもまた顎に手を当てて悩む。

 

「うーん、どうだろ。廃墟の技術はミレニアムよりずっと進んでることもあるし、簡単に指揮系統を奪ったりできるとは思えないんだけど……うーん」

 

 そう呻ってみせながら、しかしオリの脳裏には、1つの疑惑が浮上していた。

 

 

 

 

 

 

「…………まさか、神名十文字(デカグラマトン)が動き出した?」

 

 それは、このメインストーリーから派生する、新たなサブストーリー……。

 いいや、特殊作戦の始まりを告げるものだった。

 

 

 







 最後の言葉は先生には聞き取れないくらいの小声です。
 でも超有能でとってもすごい最高のスーパーAIちゃんなら録音・解析するには十分なくらいの小声です。


(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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