調月姉妹のやべー方   作:アリマリア

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 このタイトルだと不良みたいだな……。
 いや頻繁にテロ起こすヤツが不良じゃないわけないか……。

 時系列的には前回のお話の数日前です。





デカグラマトン特殊作戦・アビドス砂漠編
調月姉妹の悪い大人と付き合ってる方


 

 

 

 ミレニアム、廃墟。

 誰も立ち入らない、立ち入ることのできないとある廃屋に、1人の男性の声が響く。

 

「そのセフィラ(S E P H I R A)は、『違いを痛感する静観の理解者』。

 その小径(パス)を、『理解を通じた結合』。

 秘され、不確かで、清らかであり、穢れている……不定。

 その不定を、自らと自らの他との違いを理解し、形成した己の世界を指す、大いなる母の象徴。

 ……即ち、第三の予言者『ビナー』。

 それが、次にあなたが向かおうとする者の正体です」

 

 割れ目の走る、黒い球のような形の頭を持つ男……。

 ゲマトリアの、黒服。

 

 彼が言葉を投げかけたのは、1人の少女。

 向かいの椅子に座り、不機嫌そうに腕を組んだ、調月オリだった。

 

 

 

「……いくつか言いたいことあるんだけど」

「どうぞ」

「まず、私、まだ解放されないの?」

 

 オリと黒服は、契約を結んでいる。

 黒服が『暁のホルス』や『狼の神』、『名もなき神々の王女』に手を出さない代わりに、オリは夢の中に現れる『あの子』と黒服の接触を許す。

 

 今日彼女たちが会っているのも、その契約の延長。

 互いが互いに求めるものを出し合うだけの、一切の情の含まれない取引のための会合だった。

 

 そして今日、オリはいつもはお喋りな黒服から、珍しくすぐに仮死剤を飲まされた。

 故に今日は早めに解放されるかと期待していたのだが……。

 

 

 

 黒服は緩く首を振り、彼女の疑問に答えた。

 

「他でもない『彼女』からの願いでしてね。

 自分は込み入った事情には詳しくない。故に、あなたにいくつか知識を授けてほしい、と」

 

 オリは露骨に舌打ちをして、黒服の頭から目を逸らす。

 

 余計なことをしてくれた、とは思わない。

 『あの子』が必要であると思ったのなら、それはきっと真実なのだろう。

 

 けれど……この黒服は、良くも悪くも極めてビジネスライクな人間だ。何の対価もなしに相手に施しを与えることは在り得ない。

 この話をさせる為に、『あの子』が黒服に何かを差し出しただろうことを思うと、オリは胸が痛かった。

 

 オリにとって『あの子』は命の恩人であり、同時にたくさんの話をしてくれ、たくさんのことを教えてくれた恩師でもある。

 付き合いで言っても、それこそ生まれた瞬間からの付き合いであるリオたち家族と同格。

 もはや『あの子』はそこにいて当然の、そして同時この上なく感謝すべき相手だ。

 

 そんな彼女を、この黒服のような悪い大人と関わらせたくはなかった。

 ……まぁ、どれもこれも『あの子』からの言い付けを無視して黒服に接触したオリの自業自得なのだが。

 

 

 

 オリは渋々、黒服の方に視線を向け直す。

 

「……その知識って?」

「先程も言いましたが、あなた方が接触しようとしている、アビドスの大蛇……いいえ、『ビナー』のことです」

「それ。なんであなたが私の次の行動を知ってるの」

 

 オリは近い内に、先生を伴って特異現象捜査部に、そしてアビドス砂漠に赴く予定を組んでいた。

 

 先日、廃墟にあった過去の遺産『Divi:Sion』システムが、神聖十文字(デカグラマトン)を名乗るはた迷惑なAIに接触され、狂った。

 これを受けて、このまま放置していればミレニアムの主要AIが落とされかねないと、オリが進言しヒマリが立案した調査の第一陣。

 それが、アビドスの大蛇と呼ばれていた存在の情報収集だった。

 

 しかし、これは秘匿通信を通して決定したものであり、知っているのはオリとヒマリ、そしてリオくらいのものであるはずだったのだが……。

 

 それを何故か知り及んでいた黒服は、どこか嘲るように笑う。

 

「クックックッ……オリさん、1つ良い事をお教えしましょう。

 情報を完全に秘匿することは、不可能です。ありとあらゆる方法を用いても、人の脳の外に出た情報は誰かに知覚される危険性を持つ。

 そして、情報は常に資金のあるところに集まる。高い位置にあるものが低い位置に落ちるように、あるいは熱が冷たい場所へ逃げていくように、それは決して止めることができない自然な流れなのです」

 

 要するに、どこかから金で情報を買ったらしい。

 どこまでも自分が好まないやり方をするヤツだ、とオリはため息を吐く。

 

 

 

「……で、その情報っていうのは、ビナーのこと?」

「ええ」

 

 黒服は机の上で指を組み、オリの方へと半ば独り言のように声を投げかける。

 

「遠い昔。キヴォトスの端、誰も足を踏み入れない旧都心のとある廃墟で、奇妙な研究が進められていました。

 神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるだろう。

 すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である……」

 

 陶酔するような、自慢するような、けれどどこか淡々とした黒服の語り口調。

 

 しかし、彼女はそれを、ため息と共に切って捨てる。

 

「あ、もういいよ喋んなくて。あなたが真実を語ろうとしてないか、それとも真実を知らないか、どっちかなのはわかったし」

「……ほう」

 

 一気に興味を失ったように、背もたれに寄りかかるオリ。

 対して黒服は、わざとらしく首を傾げて見せた。

 

「対・絶対者自立型分析システム、デカグラマトン。

 かの者の今回の一件への関与は確かであると、私は認識していますが……」

「そのつまんない演技はいつ終わるの? 半端に嘘を吐いてないところが腹立つし」

 

 確かに、今回オリが気にかけている案件の元凶が「対・絶対者自立型分析システム『デカグラマトン』」であることは間違いない。

 けれど、それは決して、遥か古代に作られた狂ったAIなどではない。

 何の奇跡かシンギュラリティを遥かに飛び越えてしまった、どこぞのお釣り計算AIだ。

 

 

 

 オリが今までの借りを返す時だと、存分に軽蔑した視線を向けていると……。

 黒服は「なるほど」と1つ頷き、普段と少しも変わらぬ口調で言う。

 

「『彼女』と自由に話せるのですから、あなたが知っているのもおかしな話ではありませんね。

 試すような真似をしたことを謝罪させてください。あなたがどこまでの知識を持っているのか、この件にどのようにアプローチをしていくのかを知りたかったのです」

 

 薄暗闇の向こうから届く、耳に慣れない持って回った言い回し、謝意など欠片も感じられない言葉に、オリは頬杖を突いて応える。

 

「これ以上つまんない話しかしないのなら、帰るよ」

「ええ。それでは改めて、有意義になると思われる話を始めましょう」

 

 そう言った黒服が指を慣らすと、パンという音を立てて、暗かった部屋に光が灯る。

 それは、壁に映像を映し出した、投影機によるものだった。

 

 

 

 建材が剥き出しになった廃屋の壁全面に、映像が投影される。

 それは、一体どこからどのように撮影したのか、アビドス砂漠に設営されたカイザーPMCの軍事基地を、空から捉えたものだった。

 

 カイザーが建てる基地としては比較的小規模なもので、駐屯している人数は多く見積もっても20人程度だろう。

 そしてその20人は、吹き荒れる砂嵐の中、基地に迫る敵との交戦状態にあった。

 

 オートマタたちが銃やロケットランチャーを向けているのは、蛇のように細長い体をよじり、鯨のようなヒレを以て砂の大海を泳ぐ者。

 その全長すら計り知れない巨大な敵こそ、アビドス砂漠に現れる恐るべき脅威。

 かつては「アビドスの大蛇」と呼ばれ、現在は「ビナー」という名を持って活動しているらしい、自立駆動する巨大機械だった。

 

 名前が変わったこと以外では、映像の「大蛇」と現在の「ビナー」に、大きな差はない。

 その違いを上げるとすれば、ただ1つ。

 現在はデカグラマトンに感化され白く染まっている装甲が、映像では鈍い赤色で彩られていることくらいだろう。

 

 どこで生まれたのかも、何を目的としてインプットされているのかも、どこでエネルギーを補給しているのかも、どうやってあの巨体を動かしているのかも、全てが不明の謎めいた存在。

 ただ1つ確かなことは、それは不定期にアビドス砂漠に現れ、邪魔なものを片端から焼き滅ぼしていく天災である、ということだけ。

 

 豆鉄砲のような小粒の弾丸を撃って来るPMCに対し、ソレは怯む様子すら見せない。

 それどころか直撃したミサイルの爆風を以てすら、欠片たりとも揺らぐこともなく。

 

 ついに彼の大蛇は基地への十分な接近を果たし、口から高温の熱線を吐き出すことで報復を開始した。

 防壁を瞬きの間に溶かしてなおソレは止まることなく、基地を半ばで真っ二つに引き裂き……。

 更には、その背から放たれる無数のミサイルの爆撃を受けて、基地の主要施設は半壊状態に陥って。

 そうして、飛ばされたミサイルの1つがカメラの方に向かってきて……。

 映像はそこで、終わった。

 

 

 

「……戦術兵器。いや、下手すれば戦略兵器か」

 

 作戦の規模は、大きく分けて3つに分類される。

 1対1、あるいは1対多や多対多の、1つ1つの戦闘レベルの規模、戦法。

 いくつかの戦法を纏めた、その地区や時間帯における大局的なもの、戦術。

 そして全ての戦略を纏めた、総合的な勝敗を分かつ最大規模の、戦略。

 

 戦術兵器とは即ち、戦法でなく戦術単位で行使できる兵力。つまり「その兵器単騎で相手の作戦を破綻せしめ、その戦場を制圧できる」もの。

 そして戦略兵器となれば、「あらゆる不利を覆し、敵の戦力全てを同時に相手取ってなお打倒し得る」ものだ。

 

 トリニティ自治区にも戦略兵器と呼ばれる存在がいるが、まさしくこの通り。

 ただ任せておけばどんな作戦でも実行でき、どんな戦力の相手にも負けることはない。

 そういった弩級の存在のことを、戦略兵器と呼ぶのだ。

 

 そういう意味で、単騎戦力の攻撃がほぼ一切通用せず、圧倒的な火力で基地1つを攻め落とすビナーは、正しく戦略兵器と呼べる存在だろう。

 

 

 

「彼の者の絶対性を証明するための預言者の1つ、ビナー。

 巨体によるプレスや巨大な口による噛砕、吐き出す超高温の熱線に、極めて精度の高い誘導性ミサイル。そして何よりの特徴はやはり、非常に分厚く弾を通さない、鉄壁の装甲。

 恐らくは、調月オリさん。あなたを以てしても、単体で討ち果たすことは困難でしょう。

 絶対性を証明するための存在……つまるところアレもまた、新たな神と言えるのですから」

「……ま、前回の総力戦(カイテンジャー)もソロじゃ結構辛かったんだ。あの巨体と装甲は私とは相性が悪いし、まともにやれば撃退はできても打破はできないか。

 ただ、今回は1人で行くつもりはないけど」

「ふむ。賢者の片割れと、太古の神秘が生まれた帝国ですか。

 確かに彼女たちの協力と、何より『先生』の指示があれば、あるいは神にすら抗えるでしょう」

 

 その言葉に、オリは思わず目を細める。

 

 黒服を可能な限りアビドスに接触させないようにして、間接的に先生に目を向ける機会を減らし、出来ることなら興味を失ってくれればと思っていたのだが……。

 やはり、先生に興味を持つ未来は避けられなかったらしい。

 

 が、そこに関しては、良くない展望とはいえ想定内ではある。

 そこに関しては何も言うことはなく、会話を続けることにする。

 

 

 

「……で? 今のところ私が知ってる情報ばっかなんだけど、結局何が言いたいの?」

 

 『あの子』は、オリに多くのことを教えてくれた。

 その中には当然、デカグラマトンやビナーについての知識も含まれている。

 

 デカグラマトンに感化された結果生まれた預言者、ビナー。

 デカグラ勢の中ではケテル君に続くよわよわのざこであり、分厚い装甲剥いで(防御ダウン入れて)真正面から殴り合うだけでオーケー。

 ゴリラと爆弾魔とペインターがいればいんさねまでは余裕。ただしトマトではミサイルだけはぶっ飛ばして防ぐべし。

 ビナマキは正義。ただし攻め受け的に正確にはマキビナ一択。ビナーは絶対童貞だ、と。

 

 ……正直に言って、オリはその言葉の意味を半分以下しか理解できていない。

 更に言えば、やや伝えられた知識が偏っているような気がしないでもない。

 

 が、『あの子』がオリに嘘をいう訳がない。

 

 『あの子』が言うのだから、ビナーは間違いなく童貞なのだろう。まぁあれだけの大型機械となると他の機械と繁殖なんかできないだろうしそこまで矛盾もないと思う。

 生まれて以来ずっと一緒にいる、家族と同じくらい付き合いの長い彼女のことを、オリはそれこそ妹と同じくらいには信じているのだった。

 

 

 

 一方で、目の前の悪い大人のことは、全くと言っていい程に信頼していないのだが……。

 盲目的に信じて一方的に頼るようなことはなくとも、その能力を信じて自分の為に利用することはある。

 

 現にオリは、黒服の収集する情報の精度に関してだけは、多少の信用を置いていた。

 わざわざ知恵を授けると言った以上、何かしらの有用な情報を出すだろう、と。

 

 

 

 ちらりとオリが視線を向けた先、黒服は相も変らぬ表情の読めない顔、一切の揺らぎのない平坦な声で言ってくる。

 

「では、あの者の本来の目的などいかがでしょうか」

「本来の目的? ……デカグラマトンに感化される前の、アビドスの大蛇の目的ってこと?」

「ええ、そうなります。

 『ビナー』は、理解されなかったものが理解されることで形成される相互のクオリアの繋がり、集合的イメージを象徴する言葉。

 このまま過去の所業をただ忘れ去られるよりは、あなただけにでも知ってもらった方が良いでしょう」

 

 ビナーは現在デカグラマトンに掌握され、あのAIのためだけに動いている。

 が、本来アビドスの大蛇と言われていた存在が、デカグラマトンに感化されるまで何のために活動しているのか?

 そこに関しては、未だ不明なままだ。

 

 ……とはいえ、覆水は盆に返らない。

 一度感化された以上、「ビナー」が「大蛇」に戻ることはおおよそあり得ず、だからこそその目的を知っても何の意味もないだろう。

 そういった意味で、それは既に役に立たない情報ではあったのだが……。

 

 それでも、『あの子』がもたらしていない、非常に貴重な情報でもある。

 これから先、『あの子』が語った未来から、歴史が逸れていく可能性は否定できない。

 一見無駄に見える情報であろうと、得るに越したことはないだろう。

 

 

 

 次なる言葉を待つオリに、黒服はデスクから取り出した紙束を渡した。

 

「これは?」

「この3年のアビドス砂漠における、大蛇とカイザーPMCの戦闘データです」

 

 しばらくその資料を眺めていたオリだったが……。

 結局、途中で理解を諦め、机に投げ出した。

 

 調月オリは、妹のリオと鏡映しになっているような生徒だ。

 リオは、殊更身体的に優れないが、キヴォトスでも他に類を見ない頭脳を持つ。

 対しオリは、身体的にこの上ない程の素質を持っていたが、思考能力はミレニアムでも平均的なレベル。

 

 故に、こうして並べられたデータを見ても、多くの事柄を読み取ることもできはしない。

 淡々と並ぶ数字の羅列から察することができたのは、精々、平均して4から5か月に一度のタイミングで基地が襲われ、毎度大きな被害を出しながらも辛うじて撃退していること。

 その周期は1か月になることもあれば1年空くようなこともあり、規則性があるようには見えないこと。

 その2つくらいだった。

 

 

 

 黒服の方も、あくまで誠意を示すためにデータを開示しただけなのだろう、改めて話し出す。

 

「このデータで注目すべき部分は、その襲撃頻度の多さです」

「……多い? 4、5か月に一度だけど」

「ええ、とても多いですとも。

 アビドス砂漠は、それこそゲヘナ自治区やトリニティ自治区と並ぶ程の、広大な面積を有している。

 あの大蛇をしても、この砂漠全体から見れば『砂漠の一粒』に過ぎないのです。

 そして、大蛇がアビドス砂漠に現れるのは平均して半年に一度。

 つまるところ、大蛇は一度出現すると、3分の2という非常に高い確率で、同じく『砂漠の一粒』であるカイザーの基地を襲っている。

 大蛇がカイザーの基地を襲撃する頻度は、あまりにも高すぎるのです」

 

 その言葉で、流石のオリも黒服が言いたいことに見当を付けられた。

 

「大蛇の目的は、カイザーの襲撃だって言うの?」

 

 ……しかし。

 時に、現実は想像の先を行くものだ。

 あるいは、オリの前に座る大人は、話がそう進むように誘導していたのかもしれないが。

 

「いいえ、それは通過点に過ぎません。

 『彼女』から既に聞いているでしょう? カイザーインダストリーが、アビドス砂漠で何をしようとしているか。

 砂漠の大海の中から、何を見つけ出そうとしているのか」

 

 

 

 ガタリ、と。

 余計な音のなかった廃屋に、椅子が倒れる騒音が響く。

 

「……本、船?」

 

 呆然自失。

 今のオリの状態を言い表すには、この言葉が最も適切だっただろう。

 

 その顔からは血の気が引き、視線は虚ろで黒服に焦点が合っていない。

 瞬きすらも忘れて、彼女は思い至ってしまった事実に驚き呆れ、自らを見失ってしまっている。

 

 しかしそれも、あるいは当然の反応だったのかもしれない。

 

 なにせオリにとって、『本船』は、決して誰にも手を出されてはならないものだった。

 

 キヴォトスの青かった空が赤色に染まり、6つの偽りの塔が立ち……。

 彼方の宙に、3人の稀人を乗せた箱舟が浮かぶ時。

 

 その直前まで、『本船』は、砂の底に沈んでいなければならない。

 

 それなのに。

 

 

 

「まさか……本船の破壊を?」

 

 いっそ否定してほしいと呻くような、オリの声。

 けれど、それをおためごかしで否定する程、目の前の大人は優しくもなく、不誠実でもなく。

 

「ええ、そうでしょう。

 蛇は人に実を与えた、堕落と誘惑の象徴。あるいは希望を託し乗せる本船さえも、ただ1つの言葉で沈めてしまいかねない存在ですから。

 そして、あれ程巨大で複雑な機構を持ち、なおかつ自立駆動するAIを作ることができるのは、あの者たちを置いて他にいる訳もなく」

 

 コクリ、と。

 オリは知らず、唾を呑み込む。

 

 早く結論を聞きたいようで、同時に聞きたくもないような、矛盾した心境の中。

 指一本動かせないまま、彼女は黒服の言葉を聞いた。

 

 

 

「かつての神聖十文字(デカグラマトン)が絶対性を探し、証明し、再現するために生まれたAIだとすれば……。

 かつての赤き蛇(サマエル)は自らの敵対者の切り札(もとふね)を探し、堕落せしめ、滅ぼすために生まれたAI。

 名もなき司祭たちの遺した、カウンターに対するカウンターなのです。

 クックックッ……それも今や、彼の者に感化され、機能不全に陥っているようですがね」

 

 

 







 独自解釈と独自設定を積み上げてる瞬間が一番生を実感する。
 ヘイローがある以上、当然ビナー君にも元となった神秘があるはずだよな……とか考えるのめちゃ楽しかったです。

 ちょっとわかりにくいと思うので書いておくと、
 大蛇:赤色。デカグラマトンに感化される前のビナー君(オリジナル)
 ビナー:白色。マキの相棒として暴れ回る特急呪霊みたいなもの(原作)
 です。



 そんなわけで、今回からデカグラマトン特殊作戦・アビドス砂漠編突入。
 デカグライベントのはずなのに、黒服との会話から始まる総力戦スタイル。



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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