調月姉妹のやべー方   作:アリマリア

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 ビナー君の登場演出ありえんカッコ良くてすき
 デカグラ勢の中で一番好きまである





調月姉妹のやべー方 vs. BINAH(1)

 

 

 

 大蛇、もといビナーは、非常に強大な相手である。

 全長恐らく100mを優に超える巨体、しかしそうありながらかなりの高速で這いまわり、各種攻撃手段も充実、その上表面装甲は並みの徹甲弾では貫けない程に強固だ。

 

 攻守ともに隙のない、まさしく戦略兵器と呼んで差し支えない存在だ。

 少数の生徒たちだけでは対抗できない可能性が高い、本来は連邦生徒会が直々に出向かねばならない程の脅威である。

 ……とはいえ、連邦生徒会長が失踪し、未だ機能不全を起こしている現在の連邦生徒会では、とても頼りにはならないだろうが。

 

 2年前のアビドスは、全生徒を動員し、残っていた資材の殆どを擲って、部外者であるオリと彼女の持ち込んだ物資を使い込んで、かろうじてこれを撃退することができた。

 結果として、それがまた借金を膨らませる原因となってしまい、アビドスをまた一歩廃校へと近付けてしまったのだが……それはともかく。

 

 その時に対して、今回作戦に参加する生徒は、たったの8人。

 オリが持ち込んだ決戦兵器はあれど、2年前に比べて人員も足りなければ資材も少ない状態。

 

 ビナーを相手にするには、あまりに状況が良くない。

 

 

 

 ……と、一見、そう思えるのだが。

 

 それらの不利条件をすべてをひっくり返し得るのが、先生の存在だ。

 

 

 

「先生の指揮、噂には聞いております。お手並み拝見、といったところでしょうか?」

 

 作戦開始直前、くすりと不敵な笑みを浮かべるヒマリ。

 

 彼女とエイミはまだ先生と知り合ったばかりであり、その指揮を受けたことはない。

 故に、聞こえて来る噂も、その全てが本当だとは思っていなかった。

 

 なにせ、それらには荒唐無稽なものが多すぎるのだ。

 例えば、オリ1人を指揮して、全長20メートル以上の巨大ロボットを解体した、とか。

 例えば、たった5人の生徒を指揮して、ブラックマーケットの銀行の厳重な警備を潜り抜けて重要な不正書類を奪取した、とか。

 

 つい先日の、リオとヒマリが作った試しの機会、ゲーム開発部の一件。

 アレで最終的に勝ったのは、ゲーム開発部とエンジニア部、ヴェリタスの複合チームだった。

 である以上、そちらに付いていた先生が、一定以上の作戦指揮能力を持っていることは間違いない。

 

 だがだからと言って、巨大ロボの解体だとか、少数精鋭でブラックマーケットの銀行を攻めるだとか、そんな荒唐無稽な噂を聞いても、頭から信じようという気にならなかった。

 ヒマリはファンタジックなことが好きではあれど、その思考はどこまでも現実的なのである。

 

 

 

 ……が。

 

 そんなヒマリの肩に、手を置く少女が2人。

 

「ヒマリ。気持ちはわからなくもないけど、その態度は『そ、そんな……ここまでの力を……!?』的な三下ムーブに繋がるからやめた方が良い」

「おじさんもやめた方がいいと思うよ~。だいじょーぶ、先生ってすごいからさぁ、騙されたと思って信じるところから始めよ?」

 

 オリとホシノは、それぞれ訳知り顔で首を振る。

 

 特にホシノの方は、先生のことを疑ってかかった結果、大人パワーと聖人っぷりを理解らせられた身。

 なんなら、先生のことを完全に信じることができず、一度は踏み外しそうにすらなったのだ。

 その時は変な大人(・・・・)が介入してきて未然に済んだが、同じような失敗を犯しそうな生徒を無視はできなかった。

 

 そんな、どこか鬼気迫る2人の言葉に、ヒマリは当惑しながらも頷く。

 

「え、ええと……いえ、そうですね。確かに、関係性を始める際には信じるところから始めるもの。

 改めまして先生、今回の作戦指揮、よろしくお願いしますね?」

“うん、任せて”

 

 そう応える先生の手に、握られていたタブレット端末。

 そこから、人知れず、青い燐光が漏れ出した。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そんな会話の、おおよそ1時間後。

 

 アビドス砂漠の西区に、デカグラマトンの預言者ビナーが現れる。

 

 砂漠に呑まれ老朽化した道路を食い破るように出現したそれは、おもむろにどこかへと移動を開始しようと動き始める。

 

 

 

 ……それと、時を同じくして。

 

“今”

 

 生徒たちのインカムに、先生の言葉が届き。

 

 

 

 

 

 

「外しはしない」

 

 

 

 

 

 

 直後。

 

 1km離れた廃屋から放たれる、耳をつんざく爆音と、まぶたすら貫いて目を焼く閃光。

 マッハ40オーバーで放たれた巨大な砲弾はソニックブームを巻き起こし、廃墟化した街の施設を片端からめくり上げ、破壊しながら、砂嵐を切り裂いて目標へと迫り……。

 

 轟音を上げて、着弾。

 

 ビナーの細く長い体を覆っている分厚い不可思議な装甲は呆気なく食い破られ、その体に10センチ大の風穴が生まれる。

 

 並みの機械であれば、その時点でスクラップになってもおかしくはなかったのだが……。

 流石は古代に作られたオーパーツと言うべきか、その1発では致命傷とはいかず。

 

 そのあまりの衝撃によって、ビナーの処理能力にオーバーフローを起こして焼き切らせ、巨大な体のコントロールを失わせるに留まる。

 

 

 

 しかし、特異現象捜査部、アビドス対策委員会、そしてシャーレの合同チームにとって、それこそが本当の狙いだった。

 

『着弾及び装甲の貫通、 一時戦闘不能(グロッキー)状態を確認しました! 皆さん、お願いします!』

 

 次に聞こえてきたのは、遠方で状況観察とサポートに努めるアヤネの声。

 更にそれに次いで、ビナーの体が崩れ落ちる衝撃音と凄まじい爆風、舞い上がった砂埃が戦場を襲う。

 

 だが、その程度に怯む生徒は、この場に1人もいなかった。

 

 荒れ狂う砂の嵐の中、まるで天から見下ろしてでもいるかのように迷いなく駆け抜ける、青と黄の光。

 その目は既に敵を捉えた。ならば迷う必要はなし。

 キヴォトス最高の神秘、暁のホルスは、皆を守るため左手に盾を構え、誰よりも前へと走る。

 

「それじゃ、行くよー! エイミちゃん、続いてね!」

 

 

 

「了解、移動開始」

 

 彼女の声に続くのは、特異現象捜査部、和泉元エイミ。

 

 ミレニアムのビッグシスターが、入学してすぐ直々に指名して特異現象捜査部に所属させた彼女は、1年生どころか、ミレニアム全体で見てもトップクラスの戦闘能力を持っている。

 それこそ、やろうとすればC&Cに所属し得た、そしてその頂点に立てただろうと思える程だ。

 

 単純な身体能力こそオリやネル程優れてはいないが、彼女の体の動かし方の効率性、状況分析能力を含めて見れば、あるいは彼女たちに比肩し得る程だ。

 

 今も、吹き荒れる砂嵐の中、インカムから入る先生とヒマリの声に従い、迷いなくビナーの元へと足を進めている。

 

 

 

「うげっ、砂が口に入った!」

「セリカ、急がないと」

 

 そんな2人の背を追うのは、セリカとシロコ。

 2人はホシノのように身体的に強いわけでもなく、エイミのような高い分析能力も有してはいない。

 故に、(FRONT)に出てビナーの攻撃を受けるわけにはいかず、前は2人に任せるしかない。

 

 ……けれど。

 

「シロコ先輩こそ大丈夫!? 今回の作戦、シロコ先輩にかかってるって言ってたよね!?」

「ん、問題なし。しっかりドローンも整備してきた」

 

 この吹き荒れる砂嵐の中、先導する2人に会話を交わしながら付いて行ける程度には……。

 いいや、暁のホルス、小鳥遊ホシノと肩を並べて戦える程度には。

 彼女たちもまた、間違いなく精鋭なのだ。

 

 

 

 一方、前線(STRIKER)に出ている4人から、おおよそ100m。

 廃ビルの天井にて、戦場を見つめる集団がいる。

 

「ビナー、再起動始まりました。クラッキングを試みていますが……情けない話ではありますが、経過は芳しくありません。6秒後に再起動します」

「皆さん、ビナー再起動します、ご注意を! 皆さんから見て向かって右方、高架下のパネル前に支援物資を届けますので活用してください!」

“ホシノ、あと2歩右を走って。エイミはペースを落として左の柱の裏へ。シロコとセリカは絶対にエイミより前に出ず牽制射撃開始”

 

 ヒマリ、セリカ、先生は彼女たちを援護するため、状況の解析と指示出しを行い。

 その横で、ノノミは油断なくマシンガンを構え、3人の警護を行う。

 

 

 

 そして更に離れて、ビナーより1km。

 壁に空いた大穴の奥、廃屋の闇の中に潜んだオリは、『サムス・イルナ』のリロードを行っている。

 

 空いた右手でレバーを引くと、銃身の一部が開き、中から現れた黒焦げになった物体が音を立ててコンクリートに転げ落ちる。

 彼女はそれに目をやることもなく、支柱に取り付けてあった2つ目の電源装置を銃身に入れ込んだ。

 

「『サムス・イルナ』再装填中。バッテリーモジュールリロード、充填開始。並びに導体レールのクールダウンシーケンスに入る。射撃可能までの予測時間は2分だよ」

『了解。予定通り、次弾は温存してください。発射タイミングは先生の指示で』

「オーケー」

 

 次弾の装填を行いながら、オリはスコープを覗き込む。

 ミレニアムの科学技術の粋を集めたそれは、非常に高い精度で1km先の景色を映し出し……。

 

 

 

 そこでは、再起動を果たしたビナーと、ホシノやエイミたちが交戦を始めていた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 当然の話ではあるが、攻撃というものは、その種類と相性によって脅威度を変える。

 広範囲爆撃(はんいこうげき)が、突出した個人には有効打にならないように。

 一点火力集中(たんたいこうげき)が、数の多い軍勢を駆逐できないように。

 適した攻撃手段があるかどうかは、勝敗を分ける非常に重いファクターとなる。

 

 そしてその点において、アビドスの蛇、改めビナーは、非常に優秀なマシンと言えるだろう。

 

 対軍には、その口部から発する合金すら溶かす超高温の熱線と、何十何百というミサイルの嵐。

 対個には、巨大かつ強力無比な噛砕と、巨体を活かした体当たり。

 

 まさしく、どのような状況にでも対応できるワンマンアーミーだ。

 

 いくらキヴォトスの生徒であれど、銃弾も爆弾も通じない相手は如何ともし難い。

 その攻撃も非常に苛烈で、並みの生徒であれば下手をするとヘイローすらも危ないだろう。

 

 故に、彼女たちだけでは、この脅威に対処できない……。

 

 

 

 ……はず、だった。

 

 

 

 しかし。

 

 敵を見つけたビナーが、その大口を開き、生徒に迫る。

 床のコンクリートを破砕しながら迫るその顎に、しかし生徒は逃げようとすることもなく……。

 

“ホシノ、避けられない。受けて”

 

 ただ、それを受け止める。

 

「ぐっ……なかなか、重いねぇ!」

 

 ビナーの顎は、当然ながら機械仕掛け。

 その噛砕能力はコンクリートも粉々にする程だ。当然人体だって、一度挟まれてしまえばただでは済まないだろう。

 

 しかし、その生徒……小鳥遊ホシノは、違う。

 左足と盾を持つ左手をビナーの口に突き入れて、渾身の力を入れ、それが閉じるのを阻止する。

 手足にかかる極度の負荷に、ホシノの体は多少の悲鳴は上げるが……それでも、決して断ち切れることはない。

 

 そして、荒れ狂う突進の勢いを、右足で強く地面を踏みしめることによって静止。

 ザリザリと音を立て、30メートル余りでその勢いを完全に殺し切った。

 

 

 

 次いで彼女は、その巨大な口内に右手のショットガンを突っ込み、何度か打ち込む。

 

 ビナーの表面装甲は非常に強固だ。

 ホシノの持つショットガンでは、よくて傷を付けることが限度で、それを貫くことができない。

 あるいはその口内、人間における体内にあたる部分であれば、装甲も薄いのではないかと思っての行動だったが……。

 

 その狙いは、ガンガンと鳴るけたたましい反射音によって、瓦解する。

 どうやらビナーは、口の中にまでも分厚い装甲を纏っているらしい。

 

 「そもそも、何かを食べる必要もなさそうな機械が、なんで口なんて付けてるんだか」とホシノが眉をひそめたところで……。

 ビナーが、再び動き出す。

 

 

 

 自身に対する有効打を持たないホシノに対して、ビナーはその顎の力を強めた。

 いくら頑健なホシノでも、ビナーがその巨体に宿る総力を込めれば、それに抵抗する術はない。

 

「ぐっ……ふ、ちょっとこれは……!」

 

 ゆっくりと、彼女の左手と左足の間に開いた距離が、近づいて行く……。

 

 ……が。

 

“エイミ、左手にある自転車を思い切り投げて”

 

 それに対し異を唱えたのは、先生と、もう1人の最前線(F R O N T)メンバーだ。

 

 ガシャンという何かの衝突音と共に、ビナーの顎の力が一瞬だけ弱まり……。

 ホシノは咄嗟に身を引いて、口の中から半身を抜き出した。

 

 見れば、ピンクの髪をたなびかせたエイミが、何かを投げたように体をよじっている。

 どうやらビナーはその予期せぬ衝撃に、一瞬だけ顎の力を弱めたらしい。

 

「あっぶないあぶない! 助かったよ、エイミちゃん!」

「気にしないで。先生、次の指示を」

 

 エイミが尋ねる声に、インカムの向こうの先生が応える。

 

“もう少し耐えてほしい。行ける?”

「うん、まだまだ! 先生の指揮があって、エイミちゃんと2人でスイッチしながらなら、あと3分はいけるよ~」

「あと3分44秒が限界。そこからは攻撃もまともに避けられなくなる」

“わかった。アヤネに追加で救援物資を届けてもらうね”

 

 

 

 鉄火場に立っている2人の後方では、シロコとセリカが遮蔽物に隠れながら射撃を行っている。

 とはいえ、まともな銃では、ビナーの強固な装甲を貫くことはできない。

 多少意識をそちらに傾かせることで、最前線(F R O N T)に立つ2人の負担を減らすくらいのことしかできないのだ。

 

 先生の指示通りとはいえ、あまりに停滞した状況に、セリカの心に焦りが生まれる。

 彼女はインカムを切り、少し離れた自販機の裏に隠れているシロコに声を投げかけた。

 

「あーもう、ほっとけない! ホシノ先輩も戦ってるんだから、私たちも出るべきじゃない!?」

「駄目だよ、セリカ。先生に言われたでしょ、『まだ目立ちすぎないように』って」

「わかってるけど! うー、イライラする!」

 

 

 

 一方、後方で作戦指揮を執っている一団にて。

 

“エイミ、素で回避は無理だ。右手の盛り上がったコンクリートに滑り込んで、引き付けて回避。

 ホシノ、セリカ、次は熱線が来る。左手に退避を開始、最低でも20メートルは離れて。

 シロコ、4秒後に射撃開始。マガジンが切れるまで撃ち続けて、気を引き付けて”

 

 タブレット片手に生徒たちに指示を飛ばす先生に……。

 より正確には、まるで近い未来を知っているかのような、戦場を俯瞰しているかのような、その指示の正確さに。

 

 自作の半物質コンソールを操作していた明星ヒマリは、思わず目を見開く。

 

「先生の指揮……噂は聞いてはいましたが、まさかここまでとは」

「ふふ、ヒマリさん、オリ先輩に言われた通りの反応しちゃってます☆」

「ま、まぁ、最初に見るとびっくりしちゃいますよね……」

 

 ドローンを飛ばしながら、苦笑するアヤネ。

 実際彼女たちも、先生のこの指揮に驚かされ、そして救われたことがあった。

 

 しかし、彼女たちはもう、先生の指揮を知っている。

 

 故に、アヤネもノノミも、ホシノもセリカもシロコも、そして当然ながらオリも。

 

 緊迫し、苛立ち、あるいは苦戦しようとも。

 微塵たりとも、自分たちの勝利を疑ってはいなかった。

 

 

 







 ブルアカアニメめっっっちゃ良いやんけ!
 偶然アビドスを取り上げるタイミングが被ってなんだか嬉しい。あとみんな思ったよりフィジカルで戦ってたり、ホシノが盾を鈍器として使ってたりで先生ニッコリです。解釈一致。
 ヨースター一社提供でスポンサーからも口出しされないし、制作が世界観にすごく気を遣ってるのがわかるし、ついにソシャゲアニメが成功する日が来たのか……!?



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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