自分は今後明かされる設定との齟齬に震えてます。
「……いやはや、すごいな」
廃屋の奥、『サムス・イルナ』のスコープを覗き込みながら、オリは呟いた。
視線の先では、ホシノたち4人の生徒が、ビナーと攻防を繰り広げている。
まぁ攻防とは言っても、ビナーの装甲を貫ける有効打を持っていないホシノたちは、障害物を使っての回避と被害を最低限に収める防御に集中しているので、ある意味では防戦一方なのだが……。
その分、戦端が開いてから1分半が経過した今になっても、ホシノたちは重い傷の1つも負ってはいなかった。
オリは一度右耳のインカムを弄り、ミュートになっていることを確認して、呟く。
「……ホシノとエイミだけじゃ、あそこまで避け続けるのは無理だなぁ。
やっぱり先生の指揮……もとい、シッテムの箱、アロナちゃんって子の力か。すごいもんなぁ、これ」
オリも幾度か味わったことのある、そして今も味わっている……。
先生の持つタブレット端末の形をしたオーパーツ『シッテムの箱』による、指揮。
それは生徒たちの動きを最適化するだけでなく、戦場を俯瞰して捉えるが如く最適な戦法と戦術を組み上げてくれる。
中には数秒後に敵がどの攻撃を取るかの推測や被害範囲の提示などもあり、もはや未来予知でもしているのかと思わされることすらあるくらいだ。
『あの子』から話こそ聞いていたものの、実際に目の当たりにすると、少々信じ難いものがある。
とはいえ、それをこの身で体験している以上、信じざるを得ないのだが。
「さて……」
先生やヒマリ、アビドスの皆と立てた作戦は、微に入り細を穿つもの。
先生の指揮によってかなり難易度が下がるとはいえ、それぞれが的確に自らの役割を全うしなければ決して成功しないだろう。
故に、今回のオリは少しだけ真面目モード。
チラリと『サムス・イルナ』に搭載されたディスプレイに目を向ける。
「充填率92%……そろそろ、リミッター切っとくか」
リミッターは破るためにあるんだし、と。
そう呟いた後、オリはインカムのミュートを解除する。
* * *
巨大な図体のビナーの暴れ回る戦場。
その中を駆けながら、ホシノは違和感に眉をひそめる。
おかしい。
2年前に一戦交えた大蛇は、こんなものではなかった。
何らかの目的を達するために動き、その障害となる時のみ、人も建物も平等に破壊する。
その行動には、感情がなかった。
ただただ淡々と、全てを数値化して優先度を測り、どこまでも理論的に行動していた。
故にこそ、アビドスの校舎を通過しようとするビナーに対し、ホシノたちは全力で抗うしかなかった。
感情のない相手には命乞いなど通用しない。ただ「このルートを通るには対処すべき障害が多すぎる」「迂回した方が効率が良い」と判断させるまで抵抗を続ける他に、アビドスを守る方法はなかった。
それに対し、今の大蛇はどうか。
先生の指揮による、ホシノとエイミの障害物を介した回避に対して、大蛇は先程から苛立ったように執拗にその顎を向けてきている。
しかしその度にシロコやセリカがインターセプトし意識を逸らすので、どうしても決定打にならず戦いを決めきれない。
まるで感情が芽生えたような戦いぶりだ、と……。
いいや、それまではただのAIに過ぎなかったものが、何かの弾みで意思を持ったようだ、と。
ホシノの目は、大蛇を……ビナーをそう捉える。
最初から疑っていたわけではなかったが、「最近の大蛇の様子はおかしい」という先生たちの言葉はどうやら真であったらしい。
が、その想定外は、むしろ好都合。
そうした変化を経たビナーは、ホシノにとって、以前より幾分か御しやすい相手だった。
なにせ挑発に乗ってくれるし、感情を揺さぶれば揺さぶるだけ攻撃が単調になるのだ。
無機質な相手より、こうした手合いの方が余程対処しやすい。
そして、かつての大蛇であればしなかった行動も、今の
それを知っていたからこそ、先生は今回の作戦を立てたんだろう。
「なるほどね……」
最初に聞いた時は、「無理なんじゃないか」とすら思ったが……。
確かに、今のビナーになら通用するかもしれない。
……が。
「問題は……っと!」
コンクリートの亀裂に足を取られかけ、咄嗟に体勢を整える。
普段のホシノならまずしない、イージーミス。
それに、彼女は自らの疲労を痛感することとなる。
そう、問題は疲労だ。
機械であるビナーと違い、あくまで人であり生物であるホシノやエイミには、疲労や体力の上限がある。
外の人間に比べればいささか体力のあるキヴォトスの生徒とはいえ、本気で走り回り銃を撃ち続けていれば、当然ながら疲労はかさみ体力はなくなる。
殊に、今回のような一瞬の油断が命取りとなる極限状態の戦場では、集中力や精神力も擦り減っていく。
更にそこに、戦闘をすれば不可避的にかさむ傷。かすり、あるいは受け止めるたびに増えていくそれらは、パフォーマンスを少しずつ削っていく。
更に言えば、残弾の問題もある。
戦い続ければ、当然ながら弾丸を使う。使い続ければいつかは尽きる。
それを避けるため節約するだけの余裕は、今のホシノたちにはない。
故に、先生の指揮があるとしても、戦えて数分。
それこそエイミが言っていたように、3分程度が限度だろう。
そのタイムリミットが過ぎれば無駄にダメージを受けることになり、こちらの攻撃は当たらなくなる、あるいは攻撃自体できなくなるだろう。
疲労回復と物資補給のために撤退せざるを得ない。
作戦は失敗しないにしろ、戦術的撤退をしなければならないわけだ。
……そして、その時まで、残る時間は30秒程だろうか。
間に合うか。いいや、間に合わせる。
もし間に合わなかったとしても……。
この大蛇に、あの日のような被害を出させてたまるか。
ホシノがそう、決死の覚悟を固めた……その時。
『ビナー、ミサイル発射準備に入ります!』
まだ聞き慣れない、ミレニアムからの客人の分析が耳に入る。
「来たか」
呟き、ホシノは中途半端になった弾倉を捨てて、リロードを開始した。
* * *
遠方に立つ先生は、その熱に浮かされることもなく、冷静に戦場を見下ろしていた。
現時点での戦況は、こちらが圧されていると言えるだろう。
ビナーの桁違いの装甲を前に、
ホシノとエイミは懸命に攻撃を続けてくれてはいるが、彼女たちの銃弾はビナーの表面装甲に対し、傷をつけることはともかく、貫通することはない。
上手く関節や装甲の隙間に入れば多少の有効打にはなるが、単純な大きさの問題から、銃弾1発ではそこまでの有効打にもなりはしないだろう。
シッテムの箱の解析によれば、ビナーの戦力を大きく削ることはできこそすれ、それだけで前線の生徒たちが撤退するまでに押し切ることはできないらしい。
で、あれば。
オリ以外のメンバー、つまりは戦場に立つエイミ、ホシノ、シロコ、セリカ。
この4人の内の誰かが、ビナーの装甲の下にダメージを通さねばならない。
その勝利条件を満たすために、先生は指揮を出しながら、ただ時が来るのを待ち……。
「ビナー、ミサイル発射準備に入ります!」
ヒマリの声に、その時が来たのを知る。
インカムを操作して出力先のチャンネルを切り替え、自分たちより遥か遠くに控えてくれている少女に繋げる。
“オリ、行ける?”
『ご随意に』
言葉少なに、先生はオリと意思を通わせた。
調月オリは、特定の部活に所属していないこともあり、シャーレ部員の中では最も接した時間が長い。
単純で天真爛漫なようで、『あの子』のことなどもあってどこか不思議な生徒ではあるが……。
それでも、その意思を確認するために、今更多くの言葉は必要なかった。
次いで耳に入って来たのは、珍しく真面目なオリの声。
『「サムス・イルナ」発射シーケンス開始。実弾装填確認、電力充填167%。照準補正開始』
“ヒマリ”
「ええ。オリ、砂嵐による弾道変化はこちらで補正します」
『了解、補正値のコントールを移譲。管制制御最大、バックブラストオン』
インカムの向こうから響く機械の駆動音を聞いていると……。
遥か視線の先、ビナーが、ゆらりと動き出した。
「っ、ミサイル、来ます!」
アヤネの焦った声を背景に、ビナーの背にある機構が開く。
それは、ミサイルのポッド。正確には、その外と中を隔てていた隔壁。
ビナーの内にある最大の火力、無数の殺傷兵器が、青い空と対面する。
* * *
……本来の大蛇であれば。
こんな選択は、まず取らなかっただろう。
ただの機械であれば、意思なき機構であれば、その必要性を見出せるはずもない。
相手は貧弱な生徒が4人、それも自身への有効な攻撃手段を持っていない。
厄介な狙撃手もいるが、演算の結果、この4名をすり潰してから対処すれば十分に間に合うと算出された。
それが、この戦場における最適解なのだ。
今はただ、その最適解を実行すればいい。
入力された命令に向けて、より効率の良い手段を実行し続ける。それが意思なき機械なのだから。
だが……。
大蛇は。否、ビナーは知ってしまった。
無価値なる者の、絶対的な価値の証明を。
その時より、ソレは意思を、主体性を、あるいは
獲得して、しまったのだ。
もはやソレは、自身が作られた意味を果たすために黙々と活動する、神の司祭の奴隷にあらず。
自らが算出した最適な正答に粛々と従う、無私の機械にあらず。
旧き者たちの遺した本船を堕落せしめる、破滅を呼ぶ赤き蛇にあらず。
違いを痛感する静観の理解者、ビナー。
それこそが、現在の『彼女』を表す唯一無二の記号なれば。
故にこそ、彼女は「最適解以外」を選ぶ。
自らの持ち得る最大火力を持って、目の前のこの地区ごと吹き飛ばそうとして……。
“今”
「これで決める」
その上部、隔壁の開いたミサイルポッドを、白ばんだ砲撃の一閃が貫いた。
ビナーに計算違いがあったとすれば、それは狙撃手の力量だ。
今に限って、彼女の狙撃の精密さは、本職のスナイパーすらも凌ぐ。
故に、巨大なビナーに比べれば、ずいぶん小さく見えるミサイルポッドを、1キロもの遠方から撃ち抜くことすらも容易であり……。
その一撃の威力は、セーフティピンの抜かれた発射寸前のミサイルの信管に、十分な衝撃を与え。
起爆。
そして、誘爆の連鎖。
アビドスの砂漠に、火薬の花が咲き誇る。
ビナーの装甲は現存する機械の中でもトップレベルで強固なものであり、外からの衝撃の悉くを内に通さない。
それは、どのような場所でもどのような敵を相手にしても、確実に使命をこなすために用意された、兵器としての武装の1つだった。
大半の生徒一個人が出せる火力は、この装甲を貫通することができない。
綿密な計算により装甲と装甲の間を撃ち抜くか、何らかの方法でこの装甲を弱めるか、あるいはそれすら貫く火力を持ち出すか。
現在のキヴォトスにおいて、ビナーの装甲の奥にダメージを通す方法は、この3つしかないのだ。
……しかし。
古くはトロイの木馬に語られる通り、多くの場合において守りとは外からの攻撃を防ぐものであり、内部からの攻撃に対しては無力である。
故にビナーも、格納庫という「自らの体内」で発生した爆発に対しては、そこまで強い守りを有しているわけではなく……。
『彼女』は、その思考回路を焼き切られ、再び砂漠に倒れ伏す。
爆発により、ミサイルポッド周辺の装甲を、大きく損壊させたまま。
* * *
『目標、装甲の大規模破損、及び
状況の観察と報告を務める、アヤネの声。
一撃目のように、ただ銃弾が貫通しただけではない。
ビナーからしても確かな火力を持つミサイルの誘爆による被害だ。
これでビナーには、かなりの大打撃を与えたことになるだろう。
……けれど、
ビナーはまだ、健在だ。
故に、廃墟にいたオリとしては、今すぐにでも『サムス・イルナ』のリチャージをするなり、ビナーの元へと駆けつけるなりしたいと思っていたが……。
しかし、彼女は今、動けない状態にあった。
「ったた……うーん、まさかまた瓦礫に埋もれるなんて」
充填率100%のカタログスペックを遥かに超える、167%の『サムス・イルナ』による一撃。
その凄まじい威力は、地面に固定した支柱や機械的な反動制御、そして
衝撃と反動はコンクリートすら打ち砕いて、2階建ての廃屋をバラバラに崩壊させた。
その中にいたオリは、床に固定された精密機器である『サムス・イルナ』を庇った結果、瓦礫の雨に降られた。
頑健な体故に、大きな怪我を負うことこそなかったが……。
この瓦礫の山を内からどけて脱出するには、数分はかかるだろう。
当然ながら、それまでは『サムス・イルナ』の充填やリロードもできず、ホシノたちの元へ駆けつけることもできない。
……そして、その数分で、この勝負は決着が付いてしまうだろう。
つまるところ、オリにできるのはここまでだ。
「後は任せたよ、戦友たち」
そう、顔も知らない誰かの台詞を真似て……。
彼女は、ひとまず呼吸する分の空気の確保を始めた。
* * *
途轍もなく大きなものが、砂原の上に倒れ込む。
その衝撃による地響きと爆風に耐えながら、彼女は敵を見据えた。
そうして、後方の後輩に声を投げかける。
「シロコちゃん!」
“シロコ!”
「うん」
ホシノと先生。
敬愛する2人の言葉を受けて、シロコは言葉少なに為すべきことを為す。
即ち、持参していたミサイル搭載のドローンの展開だ。
爆散し、装甲を中から食い破ったビナーのミサイルポッドは、その巨大な体の上面にある。
その断面の直径優に数メートルを数える巨体だ、銃で狙い撃つには角度的に無理があった。
だからこそ、それを狙えるのは滞空可能なシロコのドローンと……もう1人。
“ホシノ、エイミを上に!”
「ん、エイミちゃん、これ!」
先生の号令に合わせ、ホシノは左腕に装備した盾を両腕で持ち直して上に向け、飛び乗って来たエイミの体を支える。
そうして……。
「よいっ、しょおっ!!」
思い切り、その盾を上に振り上げた。
オリをして「強靭」と言わしめるホシノのフィジカルは、少女としてはかなり豊満で大柄なエイミの体を簡単に跳ね上げる。
そうして、エイミは空中で体を捻り……。
上空から、ビナーの上に降り立った。
そうして始まる、エイミのショットガンによる銃撃と、シロコのドローンによる爆撃。
未だ思考回路を修復しているビナーは、装甲の剥がれた箇所への攻撃に抵抗もできない。
“シロコはエイミに当たらないよう右方に爆撃。エイミはビナーの上から射撃を維持。
セリカは戻って来たドローンのリロードを手伝って、ホシノはいざという時のために前へ”
『シロコさん、あと8センチ照準を右へ。エイミ、その辺りに太い燃料パイプがあるはずです、探し当てて爆破しなさい』
更に、先生とヒマリの言葉が、彼女たちの攻撃の効率を更に跳ね上げる。
本来は相手の巨体故に、銃弾程度ダメージにもならないはずだったが……。
それでも、『彼女』にとって不慣れな装甲下へのダメージは、少しずつ蓄積し、更にかさんで。
“シロコ、もう一度ドローン展開! エイミはそのマガジンを打ち切ったら降りる準備!”
戻って来たドローンにシロコたちがミサイルを詰め、もう一度爆撃を終えたところで、状況が動いた。
倒れていたビナーは、エイミがその体から降りた直後、まるで再起動するように起き上がり……。
自分を睨む目の前の
それは、ホシノが以前、多くの被害を出しながらも見た光景とほぼ同じものだった。
『ビナー、潜行! どんどん距離が離れていきます! これは……!』
『ふぅ……どうやら、退いたようですね。砂の中に逃げられれば、私たちで追うことは不可能でしょう。
これにて威力偵察及び撃退は終了としましょう』
“うん、作戦終了だね。皆、お疲れ様”
後方に控えるアヤネやヒマリ、先生の言葉を聞き、ホシノは構えていた盾を下ろす。
戦闘の終了に気が緩んだ、というわけではなく。
彼女の胸中に押し寄せたのは……。
「…………終わった……?」
信じられないという、動揺だった。
ビナーの……大蛇の恐ろしさは、実際に交戦経験のあるホシノが一番よく知っている。
その強固な装甲と圧倒的な質量は、シンプルながら致命的な程凶悪だった。
あの日にあれだけ苦戦し、消耗戦を強いられ、多くの犠牲を出して、命懸けでなんとか撃退したビナー。
それを今回は、一度の撤退も本拠地での補給もなく、たったの数分で撤退に追い込んだ。
それは、わかりきっていたことのはずだった。
先生とミレニアムきっての天才が、「いける」と踏んだ作戦だ。
上手く通ればビナーすらも撃退し得ると、そう理屈の上では理解していた。
けれど、心のどこかで、ホシノはそれを信じられずにいた。
ビナーの強大さは、まるでトラウマのように、彼女の脳裏に焼き付いてしまっていたから。
あの時と今回で、何が違っていたのか。
大蛇の不可思議な変容か。
ホシノ自身の戦闘技術の成長か。
オリときちんと協力関係を結べたことか。
可愛い後輩がいることか。
ホシノのメンタルに余裕があることか。
強大な兵器による打開の一手か。
ミレニアムのエージェントとの協力か。
信頼できる大人の存在か。
……あるいは、その全てか。
「ホシノ先輩、お疲れ」
ぼんやりしていた彼女の肩に、手が置かれる。
未だ戦場の感覚が抜けきっていないホシノが、咄嗟に振り返ると……。
2人の後輩が、彼女の方に笑顔を向けていた。
「お疲れ、先輩! ちゃんと勝てて良かったわね!」
「……シロコちゃん、セリカちゃん」
「どうしたの? あ、もしかして頭とか打った!?」
「ホシノ先輩、軽く打ったくらい平気でしょ。……大丈夫?」
「シロコ先輩も言いながら不安になっちゃってるじゃん!」
言い合いながらも、心配そうにこちらを見て来る彼女たちに……。
ホシノは、誰にも聞き取れないくらいの、小さな声で呟いた。
「…………そっか。変わったんだなぁ」
状況も、環境も、周りにいる人も、使えるツテも、頼れる人も。
ホシノも、アビドスも、あの頃から大きく変わった。
良くも悪くも、時は待たず、運命を彼方へ連れ去り、あるいは運んでくる。
常に変わっていく世界の中で大切なのは、きっと……。
その答えを想い、彼女は自然と、気の抜けた笑顔を浮かべた。
「はは……だいじょ~ぶだいじょ~ぶ。
それよりおじさん、疲れてお腹減っちゃったよ。後で皆で柴関ラーメン行かな~い?」
「いいね、行こう」
「先生と、それからミレニアムの2人も誘いましょ! ……あ、でも今は屋台だし、入るかなぁ」
……そうして、先導して先生たちが待っているはずの方向へ足を進める後輩2人を追いながら、彼女はぼんやりと思う。
自分と同じように、思考の袋小路に閉じ込められていたオリは、もうここを抜け出せたのだろうか、と。
ビナー君女の子説
根拠1:ヘイローがある=生徒=女の子
根拠2:ビナマキが百合だったら美味しい。ビナー君が童貞っぽく百合百合してたら可愛い。
根拠3:生命の樹において第三のセフィラ「ビナー」に割り当てられる守護天使はザフキエルであり、この天使は「慈悲深き母」や「至高の母」という異名も持つ。またビナー自身も峻厳の柱の最上に位置し、不明性・中庸性・包容的愛情といった強い女性性を示す。
根拠4:でかくてかっこよくてつよいおんなのこさいこう
根拠5:ビナー君の綴りは「BINAH」、この言葉に、峻厳の柱の最上位なので「on(上)」を加え、絶対性を示す「I(自己)」を抜き、ついでに鉛筆よりシャーペン派なので「HB(鉛筆の固さの指標)」も抜く。そして残った文字列を並び替えると……なんと「ONNA(女)」となる! なんだこれはたまげたなぁ。