調月姉妹のやべー方   作:アリマリア

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調月姉妹のやべー方 vs. HIERONYMUS(1)

 

 

 

 ──トリニティ自治区、古聖堂、地下。

 

 そこで、全てが終わった。

 

 

 

 この物語の中核を担っている、補習授業部が。

 彼女たちや先生と共に戦った、トリニティの正義実現委員会が。

 たったひと時とはいえトリニティを信じ肩を並べた、ゲヘナの風紀委員会が。

 そして、救援に駆け付けた、覆面水着団……アビドスの廃校対策委員会が。

 

 黒い雲から染め直された青空の下。

 改まった契約により混乱するユスティナ聖徒会とアリウス分校の生徒たちに立ち向かい……。

 

 

 

 そうして、敵勢力の中核、アリウススクワッドのメンバーが逃げ込んだここ、古聖堂の地下で。

 

“アズサ、行こう”

「……うん!」

 

 アズサは先生と共に、アリウススクワッドのリーダー、錠前サオリに挑み。

 

 

 

「私はもう……一人じゃない!」

 

 

 

 ……かつては、そしてこの事件の中でも。

 ただの一度も勝てなかったサオリを、正面から撃破した。

 

 その背を押したのは、先生の指揮であり……。

 そして同時、彼女を送り出してくれた、数多の生徒たちの想い。

 

 アズサ1人では、きっとどうあっても、サオリには勝てなかっただろう。

 けれど、トリニティに来て、補習授業部で、海に行って、戦場の中で……。

 

 時をかけて培ってきた、絆。

 数多の想いと思い出が、彼女の心と体を軽く、そして強くしたのだ。

 

 

 

 かくして、アズサの単発式のアサルトライフルの銃弾が、サオリの体の芯を捉え。

 

「う、くっ……!」

 

 サオリが耐え切れず、膝を付き。

 

 2人の決戦は……。

 この、キヴォトスを揺るがすテロ事件は、全て終わった。

 

 

 

 ……終わる、はずだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 けれど、しかし。

 

 遥か彼方で、木偶の姿を取った、一人の大人が呟く。

 

「素晴らしい……。

 知性と品格、礼儀と信念、そして培ってきた経験と知恵……」

 

 恍惚に震えるのは、2つの頭を持つ木彫りの人形。

 キヴォトスに巣食う、ゲマトリアの一員……マエストロ。

 

 アリウスに、より正確にはその上にいる大人に複製(ミメシス)の力を貸した張本人であり……。

 同時、その対価として、トリニティの地下にあった『教義』の複製を獲得した者。

 

「やはり、そなたならば……私の『崇高』を理解してくれるに違いない……!」

 

 まるで子供が描いた絵を自慢気に見せびらかすように、芸術家が自らの作品を披露するように、あるいは、同志に素晴らしいものを共有しようというように。

 マエストロは、おおげさな動きと共に、『ソレ』を起動し。

 

 終わるはずの物語に、1つの文脈が挿入される。

 阿慈谷ヒフミが塗り替えた青春の物語に、あるべきでない追加分(エクストラ)が付与される。

 

 

 

 ……けれど。

 最後に、マエストロは、ポツリと呟いた。

 

「一つ、残念なことがあるとすれば……。

 黒服がこれ以上、あの者を抑制することはできないであろうことか。

 先生よ。そなたの真価が見えるのは、暫し先のことになりそうだ……」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 アズサにとっての因縁の相手であり、先生にとっての問題児。

 錠前サオリの撃破と共に……状況は、思わぬ方向へと進む。

 

 この事件の主犯である、アリウス分校の生徒。

 目深にキャップを被ったサオリと、半ばで割れたマスクを着けたアツコ。

 先生はひとまず、何故こんなことを起こしたのか、彼女たちの事情や都合を聞こうと、歩み寄ろうとし。

 

 

 

 まるで、それを遮るように。

 洞窟の奥、光の差し込まない影から、ナニカが生じた。

 

 

 

 ぬるりと、その空間に現れたのは……。

 巨大な、人型の、荘厳なナニカ。

 そうとしか認識できない、不可思議な存在だ。

 

 ただ、1つ、明確に理解できることは。

 ソレが目の前の生徒たちを優に壊滅させ得る恐るべき存在である、ということだけ。

 

 

 

「こ、これは……」

「……まさか、あの『教義』が完成した?」

「どういうことだ……!?」

 

 アズサも、アリウス分校の生徒も。

 その存在に、あるいはその埒外の存在感に、目を見開き、震えた。

 

 目の前のソレは、文字通り、次元が違った。

 

 これまでの戦い全てが子供の小競り合いだと思えてしまう、桁違いの威圧感。

 ただそこにあるだけで首を垂れてしまいそうになる、超常的な荘厳さ。

 

 子供たちの戦争に持ち出すべきものではない……。

 まさしく、大人の使う決戦兵器。

 

 

 

 それを目の当たりにした先生の脳裏には、1か月前に見た巨大な兵器の存在がよぎっていた。

 

 アビドスの砂漠を泳ぐ、デカグラマトンの預言者、ビナー。

 途轍もない巨体と火力、そして装甲を持っていた戦略兵器であり……。

 対策委員会と特異現象捜査部、そしてビッグシスターから兵器を供与されたオリが力を合わせ、ようやく撃退した相手。

 

 目の前の存在は、まさしくあのビナーと同格、同等の相手だ。

 

 ……そして、今。

 二校が協力し、その最高戦力が集っていたあの時と違って。

 

 目の前の存在を打倒できるだけの戦力は、ここにはない。

 

 

 

“……どうやら、反則みたいだね”

 

 先生は、状況を俯瞰し、判断する。

 

 これまでの物語において、こんな存在の気配(伏線)はなかった。

 降って湧いた天災と言うにはあまりにも作為的なタイミングで、露骨に過ぎる存在感。

 これが、外部からの……大人の干渉によるものだということは、もはや疑うべくもない。

 

 故に、先生は。

 

“出さないで終わらせたかったけど……”

 

 生徒たちを守るために。

 懐から、1枚のカードを取り出した。

 

 

 

 それは、『大人のカード』と呼ばれるモノ。

 

 持ち主の存在を、時間を、運命を、人生を売り渡し……。

 その対価として、然るべき『奇跡』を起こす、等価交換装置。

 

 

 

「せ、先生……それは?」

 

 先生の隣にいるアズサでさえ、それに戸惑う。

 その手に持つカードは、尊く得難い……それと同時、決して触れてはいけないモノであるような、そんな空気を醸し出していたから。

 

 勿論、アリウススクワッドのメンバーの困惑は更に顕著であり、2人の顔は歪み。

 

 一方で、遥か彼方からここを見ていた木偶人形は、更なる歓喜に打ち震えて。

 

 

 

 ……けれど。

 

 

 

 

 

 

「駄目だよ」

 

 

 

 

 

 

 先生のカードが、真価を発揮する、その直前。

 

 その手から、カードが消えた。

 

“え……?”

 

 そして、思わず戸惑いの声を上げる先生の視線の先。

 まるで目の前の存在から先生を守るように、いつの間にか、1人の生徒が背を向けて立っている。

 

「全くさぁ……護衛に付いてたハルカちゃんは上の戦場にやっちゃうし、想像以上のハイペースで攻め入っちゃうし、ギリギリ間に合ったけど肝が冷えたったら。

 まぁ、こんな『反則』が出てくるなんて思いもしないだろうし、兵は拙速も神速も尊ぶもの。先生視点だと至極妥当な選択だけどさ……ふー、間に合って良かった」

 

 人差し指と中指に先生の『大人のカード』を挟み、プラプラと揺らしながらそう言ってくる、その声。

 それを、先生はよく知っていた。

 

 その持ち主は、このキヴォトスに来てから最も長い時間を共に過ごして来た生徒であり。

 この、トリニティとゲヘナ、アリウスの集う戦場に、現れるハズのない生徒。

 

“……オリ?”

「イエス、あなたの調月オリです! お久しぶり、先生!」

 

 そう言って、ミレニアムのビッグシスターの自称姉、調月オリは振り返り……。

 

 ニコリと、先生にとって見慣れた笑みを浮かべた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 調月オリは、トリニティとゲヘナに、そして勿論アリウスにも、深い関わりを持っていない。

 

 先生が最初に彼女に会った時、トリニティのハスミや、ゲヘナのチナツは、彼女のことを知らなかった。

 だが、調月オリ程良くも悪くも注目を集める生徒も、そうはいないだろう。

 

 それなのに何故彼女たちが知らなかったのか。

 疑問に思った先生が、後日オリに訊いたところ……。

 

『あー、実はリオちゃんが私の情報封鎖してるんだよね。

 本当の戦力は無暗に外に見せるものじゃないとかなんとかで、私はC&Cの陰に隠れた秘匿戦力やらせてもらってる。

 特にミレニアム以外の二大校への隠蔽はかなり徹底してて、私も接触を持たないようにってかなり強く言われてるんだよね』

 

 ……と、そんなことを話してくれた。

 

 彼女は先生が出会った初日からサンクトゥムタワーの外壁をよじ登り、外面のガラスを破って不法侵入したわけだが、そんな状態で情報封鎖などできるのだろうか、と。

 当時の先生はそんなことを思ったのだが……。

 

 今大事なのは、オリはトリニティとゲヘナと接触を持っていなかった、という事実だ。

 

 更に言えば、アビドスの覆面水着団として、ファウストの危機に駆けつけたというわけでもないらしい。

 彼女は今も仮面を被っていないし、覆面水着団とも名乗らなかった。

 

 そもそも本人曰く「私は所属してるようなしてないようなよくわからない、お情け団員って感じ」らしいので、招集もかからなかったのかもしれない。

 ……もしくは、オリの立場を鑑みたホシノが、敢えて今回は声をかけなかった可能性もあるが。

 

 

 

 とにかく、調月オリは、今回のエデン条約と、全くと言っていい程に関係がない。

 

 精々が先生に雑談混じりの小さなアドバイスをした程度で、この事件に介入する理由も大義名分も……そんな気配(文脈)は欠片もなかったのだ。

 

 ある意味において、目の前の『反則』と同様に、ここにいるはずのない相手。

 調月オリを見て、先生は目を見開く。

 

“なんで、君がここに……”

「んー、微妙な問いかけ。生徒が先生を守るために奔走するのは当然でしょう?

 ……って、なはは。そういう意味じゃないよね。わかってるよ」

 

 彼女は楽しそうに、愉快そうに笑った後……。

 一転、申し訳なさそうに眉をひそめる。

 

「むしろ、私としては『遅れてごめんなさい』なんだけどね。

 先生が困ってる肝心要のタイミングで手を貸せなかったのは、本当、慙愧に絶えないよ」

“それはいいけど……そうじゃなくて”

「あはは、そうだよね、気になるコト多すぎるよね……。うん、流石にそろそろ誤魔化すのも限界かなーってオリちゃんも思います。

 でもまぁ、説明とかは後で。相手が『あるはずのないものを持ってくる反則』を使うなら、こっちだって『いるはずのない生徒が参加する反則』もアリってことで納得をば」

 

 困ったような表情を浮かべるオリに対し、先生は思わず眉を寄せた。

 

 

 

 肝心要のタイミング……。

 まるで、前もってそれが来るのがわかっていたかのような言い方。

 

 反則……。

 生徒たちの間のやり取りではない、大人による横槍を知っているような言い方。

 

 そして何より……。

 

「本当は、私がいるべきじゃないんだろうけど……いくら先生の決断でも、今『コレ』を使わせるわけにはいかないからさ。

 大事なものを擲って奇跡を起こす。正に尊い自己犠牲だけど……『みんなのお姉ちゃん』としては、そんなみんなが悲しむ展開、許せないし?」

 

 その右手に握られている、先生の『大人のカード』。

 その何たるかを、オリは知り得ているらしかった。

 

 そして、それを教えられるような存在は、1人しかいない。

 

 

 

 ……もはや、疑うべくもない。

 

 彼女の背後、夢の中に潜む、『あの子』。

 不可解な程に広い知識を持つ存在。

 

 ソレは、きっと……。

 

 調月オリにとって、良くない存在だ。

 

 

 

“オリ。後で話を聞かせてもらうよ”

「わかってる。けど、今は……」

“うん。力を貸してくれる?”

「当然! 私はそのためにここに来たし……きっとそのために生まれたんだから!」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 改めて、先生は洞窟の奥に鎮座するモノに目を向ける。

 

 どこから湧き出て来たかもわからない、巨大なナニカ。

 ローブを羽織った、四つの腕を持つ人型に近い存在。

 その背後には後光を表すような煌びやかな装飾が施され、一組の手は体の前で祈るように組まれている。

 

 先生の常識に照らし合わせれば、どことなく宗教や石像を思わせる姿形。

 オリの言ったように、これまでの物語には全く関係しない、無理やりに挿し込まれたあるはずのないものとしか思えない。

 

 今はこちらの様子を窺っているのか、動かずにいる巨大な敵。

 そこに向いた先生の視線を察して、オリは口を開く。

 

「アレは……どこぞの大人が複製(ミメシス)で完成させた、トリニティに眠ってた教義。

 古代に訳された教義の恐怖(Terror)の側面を複製し、受肉させた人工天使、聖徒の交わり(COMMUNIO SANCTORUM)の最初の一体。

 その名を、ヒエロニムス。私たちの、敵だよ」

“……それは、『あの子』から聞いた知識?”

「その辺はおいおい。今は目の前の事態に対処しないと。

 ……ただ、こんなこと言っといてなんだけど、今注意すべきはアレそのものじゃないんだよね」

 

 

 

 あるいは、オリの自らを暴く言葉に反応したのか。

 

 先生とオリ、アズサとアリウスの生徒たちの視線の向く先。

 影から生まれるように湧き出て来たソレ、ヒエロニムスは、ゆっくりと動き出し、腕を振るった。

 

「なっ……?」

 

 その驚愕の声は、アリウス分校の生徒、サオリのもの。

 戦場において迂闊とも言えるそれは、しかし彼女の立場からすれば当然と言えただろう。

 

 ヒエロニムスの腕の動きに従うようにして、虚空から現れたのは……。

 つい先程、先生の策略によってコントロールを失った、ユスティナ聖徒会の複製だったのだから。

 

 

 

 オリは落ち着いてハンドガンを構え、相手の動きを見やりながら、後ろにいる先生とアズサに話す。

 

「アリウス……そこの秤アツコが握ってた、古きエデン条約に基づく戦力、ユスティナ生徒会の複製。

 それ自体は、さっきの先生の宣言で大幅に弱体化した。

 ……けどね、複製(ミメシス)の能力って、一度恐怖(Terror)を掌握したら、後は自由に作ったり動かしたりできるんだよ。

 力を間接的に貸し与えられただけのアツコにはできないっぽいけど……その力を持ってる大人自身や、アリウスの上にいるマダム(・・・)には、できる」

「ッ、お前どこまでッ!?」

「サッちゃん、駄目!」

 

 本来誰も知らないはずの情報。

 それに警戒を深めたサオリがオリに銃を向けようとし、横にいるアツコに止められる。

 

 既に、アリウスは敗れている。……少なくとも、この戦局においては。

 これ以上彼女たちが抵抗しても、無駄に傷を増やすだけで……。

 

 ……何より。

 警戒を深めたサオリと違って、アツコは突然目の前に現れた生徒に、不気味さを感じていた。

 

 ずっと見ていたはずの場所に、予兆なく一瞬で現れた謎の能力。

 本来知り得ないはずの目の前の戦略兵器を、自分たちの上にいる大人を知っている事実。

 そして、おおよそ生徒が立ち向かうべきでないヒエロニムスを前に、平然と対応する気でいること。

 

 あまりにも不可解で、あまりにも不条理なその存在。

 既にこの場から逃げる気でいたアツコは、可能な限り彼女を刺激したくはないと考えていた。

 

 ……そして、実際、それが正しい選択であったと。

 彼女は、これからその目で確かめることになる。

 

 

 

 オリはチラリと彼女たちの方に視線をやり、しかしすぐに存在を無視するように逸らし、話を続けた。

 

「要するに、今湧き出てるヤツらはエデン条約とは完全に別件。だから弱体化もしてないんだ。

 そして、往々にしてそうなんだけど、クソ強クソデカ戦略兵器より多数の軍勢の方が脅威なんだよね。一点集中飽和攻撃なんてされたら、私も釘付けにされちゃうし。

 だからといって、無限に湧いてくる軍勢なんかにまともに対応してると、ヒエロニムス本体を撃破できずに千日手になるわけだけど。

 ……最適解は、やっぱり先生のカードで学園の垣根を越えたたくさんの生徒を召喚して、一点突破なり薙ぎ払うなり、適切な対応を取ることだと思うよ。そんなことはさせないけどさ」

 

 召喚されたユスティナ聖徒会の複製(ミメシス)が、オリに……その背後にいる先生とアズサに向けて、銃を構える。

 

 アサルトライフル、スナイパーライフル等の、多種多様な火器。

 それら全てが、オリが感じ取れるだけの少なからぬ圧──黒服の言葉を使うなら、「恐怖(Terror)」というヤツだろう──を帯びている。

 一斉に撃たれれば、並みの生徒は耐えきれないだろう脅威だ。

 

 しかし、だからと言って彼女たちを先に排除しようとしても、倒しても倒しても無限に湧き出るわけで。

 それらを盾として、巨大で火力を持ったヒエロニムスと合わせて、相手の戦力を磨り潰す……。

 それが、この陣を組んだ者の考えだろう。

 

 そうして軍勢は容赦なく、計画通りに、洞窟内に銃声を轟かせ……。

 

 

 

 ……しかし。

 

 

 

 

 

 

「まぁでも、ご安心を。

 あの複製(ミメシス)だけなら、私でも対応し得る範囲だからね」

 

 

 

 

 

 

 その声が発されたのは、直前に彼女が言葉を発したのとは、全く別の位置。

 

 ヒエロニムスの正面に立っていたはずの3人は、しかし次の瞬間、大きく左方向にズレた位置にいた。

 

「な……?」

“これは……”

 

 戸惑うアズサと先生。

 いつの間にか2人の両手を掴んでいたオリは、勝気に笑う。

 

「相手は生身じゃないし、全力全開でやっちゃうよ!」

 

 そう言って、彼女は2人の手を離し。

 その場で脚を後ろに回して……。

 

 

 

 次の瞬間、オリの姿は消え。

 

 消えた標的を探し、改めて銃を向けたユスティナ信徒たちは……。

 

 尽く。

 その頭部を著しく損壊させ、塵となって消えた。

 

 

 

 少し遅れ、何か所かから同時に、重い衝撃音が響いて来る。

 

 そして、後方でスナイパーライフルを構えていた、頭を失くした信徒の1人。

 そこから、吹き飛ばされるように先生たちの方へと跳んで来たオリは、手足を地に付けて勢いを殺し。

 

 己の為したことに、満足そうに頷いた。

 

「よし、若干痛いっていうか下手すると自傷エグいけど……6、7人くらいまでなら同時にイケそうかな」

 

 

 

“今のは……!?”

 

 ほんの刹那の出来事だった。

 先生には知覚できない須臾の内に、オリはその場から移動、5人いたユスティナ聖徒会の頭を()()()()た……らしい。

 

 しかも、先生の目には残像すらも残っていない。

 まるで瞬きをしている間に事が済んでしまったかのように、気付けばユスティナ聖徒会は壊滅していた。

 

 突然の事態に驚く先生に、オリは振り返ることなく告げる。

 

「私のEXスキル(わざ)のちょっとした悪用、いわゆる和マンチってヤツ?

 ご覧になったように、ユスティナ信徒の方は私が好相性だ。アイツらがまた湧き出てくるたびに私がすぐ潰しましょう!」

 

 何でもないことでも言うように、オリは語り……。

 

 しかし、直後に肩をすくめる。

 

「……ただ、やっぱり自分でやると負荷エグいんだよねコレ。いくら聖徒会倒したって無限に湧き出てくるわけだし、このままじゃ消耗戦は避けられない。

 その上、あのヒエロニムス、ちょっと厄介で……さっき蹴った感じ、私の攻撃あんまり通らなそうだったんだよね」

 

 そうして、チラリと、後ろを振り返り……。

 

「だから、協力してくれないかな。先生……それに、白洲アズサちゃんも」

「わ、私……?」

 

 あまりにも想定外な事態の連続に困惑していたアズサに、目を向けた。

 

「そう、君。……だって、この物語は『君たちの物語』なんだもん。

 やっぱり、部外者じゃなくて君たちの手で終止符を打つべきだよね」

 

 

 







 あくまで模擬戦でありじゃれあいでしかないホシノ戦では見せなかった、EXスキルをフル活用する同時複数回攻撃。これが今のオリの本当の全力。
 なんと一撃一撃が並の生徒なら神秘防御を貫通する威力(ただしホシノならアザができる程度で済む)。
 通常攻撃が即死威力で複数回攻撃のお姉ちゃんは好きですか?



 初心者の壁、メインストーリーヒエロ君。今回は大人のカード縛りでお送りします。



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
 ちょっとスケジュールの余裕がなかったとはいえ、酷い誤字が目立ちました。以後気を付けます……。
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