調月姉妹の肉体と頭脳
エデン条約、そしてアリウス自治区平定作戦が終わって、数日後のこと。
場所は変わって、ミレニアム自治区のとある場所で……。
今、1つの戦闘が幕を下ろした。
「……ふぅ」
その戦闘の主役であったオリは、自らの頬を袖で拭う。
べったりと付くのは、機械油と汗、それから煤に若干の血。
それらの混合物を見て「うぇ」と小さな呻きを上げつつ、続けて左手に持つハンドガンをリロード、右手のスタンバトンの電源を落としながら、彼女は周りを見渡した。
そこは、ミレニアム自治区でも有数の危険地帯とされる場所、『廃墟』。
周りに散らばるのは、敵である無人ドローンの残骸が数多と、友軍機の残骸が少々だ。
オリが注意深く周りを観察していると、耳元から声が聞こえる。
『周囲に敵影なし。この局面はクリアされたわ』
「了解、状況終了。戦果は……守護者30体前後、犠牲はAMASが数機。私は無傷だよ」
『AMAS消耗率、現在17%。想定の範囲内よ。ただ、あなたに疲労が嵩んでいる。10分の休憩を』
「りょうかーい。……いやはや、無限の兵との戦いは精神的に来るね、相変わらず」
聞き慣れた声に、肩の力を抜く。
オリは今、彼女の妹をオペレーターに付け、無数の戦闘用無人機「AMAS」と共に、この廃墟地区での戦闘に携わっていた。
その目的は、周囲に散らばる無人ドローン……「無名の守護者」の撃破、間引きである。
右手のバトンを左手に持ち替え、足元に転がる球状の残骸を持ち上げ、オリはげっそりとした目線で光を失った眼球のような機械を眺める。
「無名の守護者……もう200個くらい潰したけど、一体どこから湧いてくるのかなぁ……」
半ば諦めの入ったその独り言に、耳元のインカム──シャーレで活動する時とは別の、非常に高い機能を持つ特別製のもの──から、返答が返って来た。
『現在解析中よ。今のところ、地上への搬出口が偽装されたもの含め39件、その搬出口へと繋がる通路が分岐含め181件見つかっているけれど……マップに出す必要はある?』
「いや、マップがマーカーだらけになってまともに見えなくなりそうだからいいや……」
彼女の慣れ親しんだ妹の……普段に比べてほんの少し硬い口調の調月リオの言葉。
相変わらず、廃墟のロボットは無尽蔵だ。
オリは呆れ半分、諦め半分でため息を吐いた。
……まぁ、それでもやらなくちゃいけないんだけど、と。
そう、どこか決意を秘めた口調で、呟きながら。
* * *
オリが廃墟にて、作業のように淡々と戦闘をこなしている理由。
それを知るには、もう少し、彼女の知る物語の背景を語らなくてはならない。
オリが大いに参考にしている、『あの子』が語った物語。
その中でも「メインストーリー」と呼ばれるそれは、いくつかの章に分かれていた。
先生がアビドス対策委員会、そしてホシノを救う「アビドス対策委員会編」。
ゲーム開発部と天童アリス、ミレニアムの物語、「時計仕掛けの花のパヴァーヌ編」。
トリニティとゲヘナ、そしてアリウスの三勢力が関わる「エデン条約編」。
廃校となったSRT特殊学園の元生徒たちが繰り広げる「カルバノグの兎編」。
そして……オリの「最終目標」にも関わる、「あまねく奇跡の始発点編」。
これは何も、記述通りの順番で進むというわけでもなく、時系列が複雑に絡まって展開される。
例えば、エデン条約編が3章……つまり、補習授業部の物語終了したら、聖園ミカとアリウススクワッドの物語の前に、一度カルバノグの兎編が挟まったり。
それが一段落するや否や、返す刀で再びエデン条約編の4章、聖園ミカやアリウススクワッドの物語が始まったりもする。
そして、『あの子』の話が正しいのなら……。
ミカやアリウスの話が終われば、次に始まるのは、悲劇の物語だった。
時計仕掛けの花のパヴァーヌ編、2章。
ミレニアムを、数多の生徒を確実に守ろうとする、調月リオ。
自らの存在の真実を知ってしまい、己の内に籠ってしまう、天童アリス。
そして、そんなアリスを救おうと多くの生徒たちや先生と共に立ち上がる、ゲーム開発部。
この三者が互いに対立し、そして……。
リオが悪役として打ち倒されて終わる、そんな物語。
それは一面からのみ捉えれば、勇者の仲間たちが魔王を倒し、囚われの勇者を救い出す、痛快な喜劇だったかもしれない。
けれどこれを語る『あの子』の口調は、この「次」の物語に至るまで、どこか悲し気だったし……。
リオの姉であるオリからすれば、到底受け入れられるものではなかった。
リオの行為は、たとえそのやり方が間違っていようと……常にミレニアムを想い、そこに住む生徒たちを想ってのものだったのだから。
……そして、この結末を認められないが故に。
オリは、この物語を、根本から覆そうとしている。
『あの子』曰く。
そもそも、この悲劇が発生したのは、偶発的な事故にも等しい接触からだった。
自らの過去を思い出せないアリスが、ヴェリタスに運び込まれた謎のドローンの残骸に触れ……。
「天童アリス」としての意識を失い、AL-1Sとして……つまりは「名も無き神々の女王」として目覚め、友達を攻撃してしまう。
その結果として、才羽モモイは昏倒し、数日間目を覚まさなくなる事態に陥った。
この事態を前にして、リオは保留していた──そして、保留したままであればいいと心の底で願ってもいた──天童アリスへの処遇を決定した。
即ち、AL-1Sは何時何処で目覚めるとも知れない世界の終末兵器であり、自らの総力を以てこれを排除せねばならない、と。
天真爛漫なアリスに、悪意などあるはずもなく。
彼女はただ意識を失い、その体が補佐プログラムによって動かされ、生まれた時に与えられた「
合理的なリオに、悪意などあるはずもなく。
ミレニアムや世界への大きすぎる危険性を前にして、自らの良心の呵責を踏み潰し、ミレニアムを支配し守る者としての責務を果たそうとしただけ。
敵対した2人はしかし、決してどちらが悪というわけでもなく……。
……何より、オリはこの2人の、どちらとも敵対したくはなかった。
で、あれば。
そもそもそれらの根源的な問題を……本来ヴェリタスに持ち込まれるはずの「無名の守護者」と呼ばれる無人機の残骸を、持ち込ませなければいい。
アリスがアレに触れさえしなければ、悲劇は起こらないのだから。
オリはそう考え、これを阻止すべく画策した。
その結果が、今。
「天童アリスの出処を探る」という名目でリオを説得し、彼女の戦力であるAMASと共に廃墟へ出征。
その最中に遭遇した無名の守護者を、データ回収の名目で撃破、回収して厳重に保管する、という状況なのだった。
* * *
今のところ、この作戦はリオに見破られることなく──仮に見破られていたとしても、深く追及されることまではなく──無事に遂行できている。
……しかし、あるいは当然に、何から何までがオリの計画通りに進んでいるというわけでもなかった。
「うーん……完全に誤算だな、この量は」
そう呟くオリの周囲には、30体近い無名の守護者の残骸が転がっている。
一度の戦闘でこの数。その上、この日は既に7回以上守護者の群れに出くわしている。
それは、オリの予想を遥かに上回る数だ。
「あの子」曰く、無名の守護者がミレニアムに持ち込まれたのは、偶然によるものだ、とのことだった。
偶然機能停止した個体がいて、偶然ヴェリタスがそれを見つけて保管し、偶然そこにアリスたちが訪れた。
全てが偶然によって導かれた悲劇であったのだろう、と。
……しかし。
珍しいことに、オリの前に立ち塞がる現実は、『あの子』の言葉とは離れているように思えた。
「無名の守護者、何十体か動いてる程度ならいいんだけど、何百体単位となるとなぁ。
しかも、時間が経つ毎にどんどん増加傾向にあるなんて……どうなってんだか」
そう。
無名の守護者の数、その増加ペースは彼女たちの想定を大きく越えていた。
数か月前に調査した時には、数体程度。
1か月前に出征した際に、数十体の群れ。
そして、エデン条約の事件が片付いた今、数百体が廃墟で蠢いていた。
それらは明らかに増産され続け、今やそのペースは、オリたちの対処の限界を越えつつあった。
「……どう考えても、偶然じゃない。意図的に守護者が増やされてる」
どうやら『あの子』の予言は、完全に外れてしまったらしい。
オリは右手に持っていた守護者を残骸をてきとうに投げ捨て、インカムを通してリオに話しかけた。
「さて……そんな状況だけど、どうしようかな、リオちゃん」
調月姉妹が協力して事にあたる場合、その作戦立案や状況判断はリオの役割となる。
自称姉であるオリは戦闘能力に優れるが、頭脳面ではミレニアム基準では平凡そのもの。
対してリオは頭脳面で優れるが、戦闘能力で言えば並みと言わざるを得ない。
この役割配分は当然と言えただろうし、本人たちも幼少期からごく自然とそれを受け入れていた。
今回もまた、その例に漏れることなく。
インカムの向こうで、リオはほんの一瞬だけ思考を巡らせた後、オリに答えを返した。
『……AMASの哨戒を増やしましょう。今は3日に1度のペースで行っているけれど、1日に1度のペースで行えば、もう少し処分する量が増えるはず』
「うーん、駄目じゃないそれ? だって『都市』に回す分のリソースでしょ?
それに、一時しのぎにしかならないよ。流石に万を越える十万を越えるとなると、仮にトキちゃんを回しても私たち3人じゃマンパワーが足りないと思うんだよね」
『であれば、傭兵を徴用しましょうか。単純な破壊活動ならば問題なく行えるでしょう』
「連携の取れない傭兵に廃墟は危険すぎるって。捨て駒ならともかく、実際の戦闘に使うには厳しいよ」
作戦室からリオが淡々と案を出し、実際の戦場を知るオリがその穴を指摘する。
それが調月姉妹の作戦時の在り方だった。
……が、しかし。
今回ばかりは、オリはリオに全てを伝えているわけでもなく。
これらの無名の守護者とアリスの関係、両者が触れ合うことで起きるだろうこと。
そこまでは、オリはリオに話してはいなかった。
なにせ、リオはこう見えて、かなりの心配性だ。まさしく石橋を叩きすぎて壊すタイプである。
それを話した時点で、リオがアリスを危険視、あるいは敵対する可能性がある。
オリが目指すのは、あくまでリオとアリスが平和に共存し合える未来。
故に、そこに余計なノイズは加えたくはなかった。
その上で、オリがリオに伝えたのは、これらの無名の守護者が「AL-1Sに関係する、調査が必要なもの」であり、「ミレニアムの脅威になり得る存在」であること。
これを伝えられた時点で、リオにこの問題への対処をしないという選択肢はなかった。
しかし、それと同時。
無限の物量で攻められると、リソースが限られている2人にはどうしようもなくなることは事実だった。
リオは完全に信頼できる者しか手駒にはせず、そしてそれは現状オリとトキの2人きりだ。
頻繁に作戦へと駆り出すC&Cですら、いつ裏切っても問題が発生しないよう対策しているところからも、リオの徹底的に慎重な姿勢が窺えるだろう。
だが、こういう状況においては、その孤高の在り方が災いとなる。
事に対処しようにも、リオとオリ、そしてトキの三人きりでは、どうしても限界が発生するのだ。
遥か遠方へと繋がる秘匿通信の向こうで、リオが大きくため息を吐く音が聞こえた。
『…………最悪、「都市」のリソースをこちらに回すべきでしょうね。
AL-1Sが名も無き神々の王女に目覚めてしまった時の対処として用意したものだけれど……彼女が目覚めないというのなら、それがベターな未来なのだから』
「うーん、できれば避けるべきかなぁ、それは。
だってそれしたら、リオちゃんのトンデモ横領バレちゃうじゃん? コユキの額でさえセミナークビになったんだもん、流石のリオちゃんでもセミナー会長から引きずり降ろされちゃうって。最悪退学まで行っちゃうよ?」
『ミレニアムを守れるのなら、その程度のコストは問題にはならないわ』
「私、妹が退学になるのはすっごく困るよ。多分ガチで泣く」
『…………』
黙ってしまったリオに、オリは思わず苦笑を漏らした。
昔から変わらない。
リオは極めて合理的な思考に基づいて話を進めるが、その分、合理で片付かない問題に直面するとただただ黙りこくってしまう。
滅多にあることではないが、こうなればもはや何を言っても通用しない。岩のように固まり、あらゆる言葉を受け付けなくなる。
そうやって、まるで駄々をこねるように相手の意見を認めない意固地さも、リオがオリの前でのみ見せる年相応の人間性であり……。
オリから見れば、妹の可愛げの一つだった。
「うーん……でも、おかしいんだよなぁ」
『何が?』
話の流れを変えるのも兼ねて、わざとらしくそう言ったオリに、リオが問い返してくる。
いつにない食いつきの良さに、オリは微笑を漏らしながら言った。
「ほら、数か月前に言ったじゃん? 廃墟のシステム『Divi:Sion』は、もうデカグラマトンに感化されちゃったっみたいって」
『ええ、それは聞いているわ』
「今の『Divi:sion』は、もうデカグラマトンの預言者だ。デカグラマトンの『証明』を崇拝し、そのために活動するだけのもの、のハズ。
それなのに、なんで本来の『Divi:Sion』の領分である無名の守護者作りをしてるんだろう、って」
そう。恐らくはそれもあって、『あの子』は推理を外したのだろう。
既に「Divi:Sion」は感化され、本来の機能を喪失しているはずだった。
それなのに、何故無名の守護者は増え続けている。増産され続けている。
その不可思議な謎に、リオは理論を以て切り込む。
……その言葉が、まるで先程の失態を取り返すように、ほんの欠片程度の高揚を見せているのは、あるいはオリの気のせいだっただろうか。
『その原因を切り分ければ、3種類に大別されるわね。
まず1つ、「Divi:Sion」システムは、デカグラマトンに感化されていなかった』
「それはないね。であればアリスを攻撃する意味がない。むしろ守ろうとするはずだ」
『では次に、既に感化はされており、無名の守護者の増産は止まっている。現在現れているのは、過去に生産され、待機していた個体』
「それも無理があるかな。数十体なら全然あり得たけど、数百になって、更に増えてるし。
……いや、廃墟の構造的に無理があるって程でもないけど、まぁ可能性は低いと思う」
『そう。それなら、考えられる可能性は1つよ。
デカグラマトンに感化された「Divi:Sion」が、しかし今もなお、何かしらの意図を以て無名の守護者を量産し続けている』
「そう……、なるかぁ」
名も無き神々の女王たるAL-1Sを補佐する為に作られた戦力増産システム、「Divi:Sion」。
しかし、ソレは数か月前にデカグラマトンを名乗る特異現象によって「感化」され、今や第四の預言者たる「慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者」……「ケセド」として活動している。
「Divi:Sion」と「ケセド」はそこに連続性を持ってこそいるが、しかし全く別個の存在と言っていい。
例えるなら、怪しげな陰謀論や新興宗教にハマってしまった人物の、そうなる前と後のようなもの。
以前にあった精神性や行動方針、主義主張は殆ど失われ、自らの目的のために邁進を始めている。
今のケセドに「自らの作られた目的を果たさなくてもいいのか」と問いかけたところで、『理解不能。自らは自らの慈悲と裁定に従うのみ』、とでも返って来るのが関の山だろう。
故にこそ、「Divi:Sion」の行動指針であったはずの、名も無き神々の女王の覚醒……。
そのための無名の守護者の量産をする理由は、オリには見えてこなかった。
仕方ない、改めて『あの子』と相談して、今度黒服に話しかけた時にでも聞くか。
……と。
オリが思いかけた、その時。
『……ッ、オリ、7時方向に不明な機影!!』
リオの言葉が聞こえるが早いか。
あるいは、彼女自身の直感が働くのが早いか。
オリは一瞬だけ姿勢を落とした後、刹那の内にその場から消え去る。
そして、まるでそれと入れ替わるように。
ギャリギャリギャリと、経年劣化で剥げかけていたアスファルトを巻き上げて。
彼女を囲んでいたAMASの大軍を蹴散らしながら、一機の巨大なロボットが滑り込んで来た。
ソレを端的に例えるなら、四脚の戦車、という表現がわかりやすいだろうか。
全長20メートル強、メインカラーを白で彩り、所々に薄いオレンジの光が灯る。
巨大な体は装甲を施された四つの太い脚によって支えられ、先程の奇襲を見れば、鈍重に見える風体とは裏腹に高い機能性を有していることが窺えた。
一見して分かる武装は、両脇に装備した口径10センチにも届こうかという巨大なマシンガンが二門、それから後背部に装備された6連ミサイルポッド。
時速100キロメートル近い速度で突進して来たソレは、突進の衝撃だけでAMASの包囲に穴を開け、中央へと滑り込む矢否やそのマシンガンを乱射し、残存勢力を更に削っている。
その執拗な攻撃からは、この廃墟に侵入してきた者への、露骨な程の敵意と殺意が覗いている。
手近な廃墟の3階へとその身を移していたオリは、ヒビ割れた窓からその様子を隠れ見る。
『アレは……これまでのデータにない。新たなロボット?
凄まじいマシンスペック……いいえ、もはや「都市」の補佐のない「兵装」にも等しい……!』
「……クソ、預言者だ」
呟くオリの視線の先。
その機体の頭部であると思われるそこには……。
アビドス砂漠で垣間見えたビナー、その頭部にもあった
キヴォトスにおける神秘の表象。
意思なき機械には決して現れるはずのない、それが。
『まさか……アレも?』
「うん。デカグラマトンの預言者、ケテルだ。
確か『最もきらびやかに輝く至高の王冠』、だったかな。最も弱いけど、同時に最も恐るべき預言者でもあるって言ってた」
『その意味は』
「倒すことに意味がない、そしてどこまでも強くなる。
撃破しても、無人の空挺機が機体を凄まじい速度で回収して、そこで収集した戦闘データを元に機体のパーツや武装を換装して、とんでもない速度で復活して、また出て来るんだ。
……リオちゃんにはわかんないかもだけど、ゲームの主人公機みたいなモンだよ。何度でもリトライとリベンジを繰り返しては強化され続けるから、短期的に勝って逃げ切るのはともかく、最終的な勝利はおおよそ不可能な相手」
オリが思い浮かべたのは、しばらく前、ゲーム開発部や先生と一緒に遊んだゲーム。
何度破れようと立ち上がり、機体を組み替えて挑み続けるプレイヤーは、いずれたった1人の力で全ての勢力を壊滅させる程になった。
そんな相手と戦うのは、もはや無謀というものだ。
故に、ケテルは討とうと考えてはならない。
ただデカグラマトンという本丸を倒すその時まで、可能な限り戦闘を避け、如何ともしがたい時は確実に撃破することで少しでも時間を稼ぐべきだろう。
『下手に手を出せば、相手に改修の機会を与えるだけ。相手にするのなら、万全の戦力と策を持って、撤退を許さず一気呵成に滅ぼす必要がある、と。
だから今、あなたはアレに手を出すのではなく、観察と逃亡のタイミングを計ることに専念している。
……機関部を破壊したとして、完全な修復にはどれ程かかるかわかる?』
「ごめん、わかんない。
ただ、相手は特異現象のデカグラマトンだ。一晩……はないにしろ、一週間あれば完全に換装して出て来るかもしれない。
そして、何より問題なのは……」
『何故仮称ケテルが、今、このタイミングで私たちを襲ったか。
偶然、ということはないでしょうね。以前より、デカグラマトンは私たちが守護者を撃破していたことを察知していたはず。
であれば……』
「そうだね。……2体の預言者が『結託』してると考えるべきだ」
デカグラマトンの預言者たちは、同一化されているわけでも、組織立って動いているわけでもない。
誰かによる命令で動くわけではなく、それぞれが独立しそれぞれの目的で行動しているのだ。
故に、これは協同、あるいは結託と言えるだろう。
第四の預言者ケセドが、不明な目的で無名の守護者を増産し続け。
第一の預言者ケテルが、これまた不明な目的でこれを守っている。
『……目的を探る必要がありそうね』
「だね。それも、私たちだけじゃ戦力が足りない」
『ええ、わかっている。……ヒマリに、シャーレに力を借りましょう』
視界の先、AMASの残党が散開し方々に逃げていくのを見届け……。
オリもまた、その場からどこかへと消え去った。
そんなわけで、パヴァーヌ2章の前に、デカグラマトン特殊作戦・ミレニアム廃墟編開幕。
本編だとなんだかんだ地味だし雑魚なイメージがありますが、本作においてデカグラ勢はぶっ壊れの強敵です。
なにせビナー君は単騎でアビドス制圧を可能とする上その巨体から撃退はできても撃破は不可能、ケセド君なんて無限の兵力持ってますからね。
他にもケテル君は即座の撤退と装備の換装が可能で成長していく、ホド君はミレニアムの情報インフラ全掌握してる、ゲブラ君は露骨に人を殺すのに特化した形をしてるし、白ガキはよわよわマゾ先生特効。
……デカグラ勢の設定上の強さ、ヤバない?