「お待たせいたしました、お客様」
「なにが「お待たせしました」よ! 本当に待ったわよ! 6時間も! ここで!!」
「融資の審査に、なんで半日もかかるの!? 別にうちより先に人も居なさそうだったのに!」
「私の連れは待ちくたびれて、そこのソファーで寝ちゃってるし!」
「私どもの内々の事情でして、ご了承ください」
「……ところで、アル様。あなたはそのような態度を取れる状況ではないと思うのですが?」
「あ、うう……」
「当局の助けが必要なら、辛抱強くお待ちいただくことも大事かと。……あ、それとお連れの方ですが、そちらでお休みになられては困ります」
「セキュリティ。あの浮浪者……いえ、お客様を起こして差し上げなさい」
「ほら、起きた起きた!」
「むにゃ……うはっ!? なになに!?」
「……!!」
「ああっ……す、すみませんっ、居眠りしてすみません!!」
「…………」
「さて、では一緒にご確認を。お名前は……陸八魔アル様。ゲヘナ学園の2年生ですね」
「現在、便利屋68の社長、ですか……この便利屋は、ペーパーカンパニーではありませんか? 書類上では、財政が破綻していますが?」
「ちゃ、ちゃんと稼いでいるわよ! まだ依頼料を回収できていないだけで……」
「それと、従業員は社長を含めて4名のみですが、室長に課長、そして平社員……肩書きの無駄遣いでは? 会社ごっこでもしているのですか?」
「そ、それは……か、肩書きがあったほうが仕事の依頼を……」
「あとですね、必要以上に事務所の賃貸料が高いです。財政状況に合った物件を見つけていただかないと」
「ちゃ、ちゃんとしたオフィスのほうが……仕事の依頼を……」
「…………」
「アル様。これでは、融資は難しいですね」
「えっ、えっー!?」
「まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますが」
「は? はああ!?」
「(ムカつく……もう大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら?)」
「(……いや、それはダメね。ここからお金を持ち出せたとしても、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。あちこちにマーケットガードがいるし……)」
「(……でも、もしかすると、実はたいしたことない連中かもしれない。私たち4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も……)」
「(……はぁ、やっぱ無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ……)」
「(くそっ、何よこれ、情けない……キヴォトスいちのアウトローになるって心に決めたのに。私は……)」
「(融資だのなんだの……こんなつまらないことばかりに悩まされて……)」
「(私が望んでいるのはこれじゃない……何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー……)」
「(そうなりたかったのに……)」
「……様、アル様!」
「わ、わわっ!? は、はいっ!? ……えっと、何か言った?」
「融資の承認は下りませんでした。お力になれず申し訳ありません」
「え、ええっ!? ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「な、何事ですか? 停電!?」
「い、一体誰が!? パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」
「銃声っ!?」
「うわっ! ああああっ!」
「うわああっ!」
「なっ、何が起きて……うああっ!」
「手筈通りにさっさと仕留めるぞ!」
「全員その場に伏せなさい! 持っている武器は捨てて!」
「言うこと聞かないと、痛い目にあいますよ☆」
「あ、あはは……みなさん、ケガしちゃいけないので……伏せてくださいね……」
「ぎ、銀行強盗!?」
「非常事態発生! 非常事態発生!」
「うへ~無駄無駄ー。外部に通報される警備システムの電源は落としちゃったからねー」
「ひ、ひいっ!」
「ほら、そこ!! 伏せてってば! 下手に動くとあの世行きだよ!?」
「みなさん、お願いだからジッとしててください……あうう……」
「うへ~ここまでは計画通り! 次のステップに進もうー! リーダーのファウストさん! 指示を願う!」
「えっ!? えっ!? ファウストって、わ、私ですか? リーダーですか? 私が!?」
「リーダーです! ボス! ちなみに私は……覆面水着団のクリスティーナだお♧」
「なんだそのダサすぎる名前!! もう少しマシな名前考えろ!!」
「うわ、何それ!! いつから覆面水着団なんて名前になったの!? せん……フォックスの言う通りダサすぎだし!」
「…………」
「うへ、ファウストさんは怒ると怖いんだよー? 言うこと聞かないと怒られるぞー?」
「あう……リーダーになっちゃいました……これじゃあ、ティーパーティーの名に泥を塗る破目に……」
「こいつの言う通りファウストは非常に恐ろしい奴だぞ。冷酷無比、悪逆非道、微笑みの仮面の下には気に食わぬ相手を容赦なく蹴落とすことを考えている。明日を拝みたいなら、どうするべきかわかっているよな?」
「ひいぃっ!!」
「わ、私はそんなことしてません!!」
「落ち着けファウスト。脅すときはこれぐらいやっとくべきなんだよ。というかこれお前のことじゃなくてトリニティの大半の説明しただけだぞ。それでこの反応は、トリニティのことが怖くなってくる」
「あれ……あいつら……」
「あ……アビドス……? それに、先生?」
「だよね、アビドスの子たちじゃん。知らない顔もいるけど。……ここで何やってるんだろ? それも覆面なんかしちゃって」
「ねっ、狙いは私たちでしょうかっ!? それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?」
「いあ、ターゲットは私たちじゃないみたい……あの子たち、どういうつもり? まさか、ここを……?」
「もー、アルちゃんは何してるのさ」
「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと」
「さあ、そこのあなた、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の……」
「わっ、わかりました! 何でも差し上げます! 現金でも、債券でも、金塊でも、いくらでも持ってってくださいっ!!」
「そ、そうじゃなくて……集金記録を……」
「どっ、どうぞ! これでもかと詰めました! どうか命だけは!!」
「あ……う、うーん……」
「あー……脅しすぎたかあ……」
「…………」
「(や、ヤバーい!! この人たち何なの!? ブラックマーケットの銀行を襲うなんて!)」
「(どう逃げるつもりかしら? いや、それ以前に、こんな大胆な計画を立てちゃうアウトローが、未だに存在するなんて!!)」
「(めちゃくちゃ手際いいし、超プロフェッショナル。まるでこのためだけに生まれてきたみたい。ものの5分でやってのけたわ!)」
「(かっ、カッコイイ……! シビれるっ! これぞまさに真のアウトロー! うわあ……涙出そう!)」
「全然気づいてないみたいだけど……」
「むしろ目なんか輝かせちゃって」
「はあ……」
「わ、私たちはここで待機でしょうか?」
「……あの子たちを手助けする理由も、銀行に助太刀する理由もない。それに社長が今あんな状態だから……とりあえず隠れていよう」
「は、はい……」
「あの、シロ……い、いや、ブルー先輩! ブツはは手に入った?」
「あ、う、うん。確保した」
「それじゃ逃げるよー! 全員撤収!」
「アディオ~ス☆」
「け、ケガ人はいないようですし……すみませんでした、さようならっ!!」
「や、やつらを捕らえろ!! 道路を封鎖! マーケットガードに通報だ! 一人も逃すな!」
「た、大変です!!」
「今度は何ですか!!」
「マ、マーケットガードの大半が……災厄の狐の襲撃に合ってしまい動けないとのことです!!」
「なっ!? なんてタイミングの悪い……!! ゴリアテはどうなんですか!」
「最低限の人員とゴリアテは襲撃を回避することが出来たようで、現在奴らを追っています!」
「覆面水着団め……!!」
「なんか後ろの方ですごい爆発が起きてるけど大丈夫なのこれ!?」
「問題ないからちゃんと前を向いて走れレッド! そらまた来たぞ!!」
「よいしょっとー。こっちの方を爆発する感じじゃないからいいけど、よく断言できるねーフォックスさん」
「もしかして、また部員さんに助けていただいたのでしょうか?」
『今回私たちが行っているのは立派な犯罪行為ですから、協力してくださるとは思えませんが……』
「そこのところどうなの?」
「あとで説明してやるからちゃんと戦闘に集中しろ!」
「はひー、息苦しい。もう脱いでいいよね?」
「のんびりしてらんないよー、急げ急げ。追っ手がすぐ来るだろうからー」
「あの爆発のおかげで道路の封鎖まで余裕がありますが……できるだけ早く離れましょう」
「こっち、急いで」
「あの、シロコ先輩……覆面脱がないの? 邪魔じゃない?」
「天職を感じちゃったっていうか、もう魂の一部みたいなものになっちゃって、脱ぎたくないんじゃなーい?」
「シロコ先輩はアビドスに来て正解だわ……他の学校だったら、ものすごい事をやらかしてたかも……」
「そ、そうかな……」
「そうに決まってるだろ、お前はアビドスが適任だよ」
『……!?』
『…………』
『封鎖地点を無事突破。この先は安全です』
「やった! 大成功!」
「本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて……ふう……」
「シロコちゃん。集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」
「う、うん……バッグの中に」
「まあ、バッグの中にあるにはあるな」
「先生もシロコ先輩もどうしたのよ」
「……へ? なんじゃこりゃ!? カバンの中に……札束が……!?」
「うえええええっ!? シロコ先輩、現金盗んじゃったの!?」
「ち、違う……目当ての書類はちゃんとある。このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで……」
「どれどれ……うへ、軽く1億はあるね。本当に5分で1億稼いじゃったよー」
「やったあ!! 何ぼーっとしてるの! 運ぶわよ!」
「…………」
『ちょ、ちょっと待ってください! そのお金、使うつもりですか!?」
「アヤネちゃん、なんで? 借金を返さなきゃ!」
『そんなことしたら……本当に犯罪だよ、セリカちゃん!!」
「は、犯罪だから何!? このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金なんだよ! それがあの闇銀行に流れてったんだよ!」
「それに、そのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない! 悪人のお金を盗んで、何が悪いの!?」
「…………」
「私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方がいいと思います」
「ほらね! これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」
「確かにそうだな。これだけの金があれば一気に借金を減らせるな」
「ほら! 先生もこう言ってるんだし!!」
「ただ一生犯罪者としての肩書を背負いながら生きていくことになるがな」
「え?」
「善人から盗もうが悪人から盗もうが、犯罪に変わりはない。それに一度一線を越えてしまえば二度と健全な生き方をしていた頃には戻れないぞ」
「なんか説得力あるねー先生。もしかして本当にワルだったりしたの?」
「俺を善人だと思っているなら考えを改めなおせ。俺が歩んだ道は当時の倫理観的にはそこまで問題ではなかったが、現代では立派な犯罪だ」
「何より俺はそういった生き方しかしらん。ただ俺はその生き方に後悔したことはないし、最も誇らしいことだと思っている」
「お前らが盗んだ金で返済しても心残りが何もないというならその金を借金返済に使えばいい。だが悪人からとはいえ盗んだ金を使うことに少しでも罪悪感があるのならやめておけ。お前らは返済方法を選ぶ余裕があるのだからな」
「それは……」
「ふむふむ……シロコちゃんはどう思う?」
「……自分の意見を述べるまでもない、ホシノ先輩が反対するだろうから」
「へ!?」
「さすがはシロコちゃん。私のこと、わかってるねー」
「私たちに必要なのは書類だけ。お金じゃない」
「今回のは悪人の犯罪資金だからいいとして、次はどうする? その次は? 毎回悪人の犯罪資金を盗めるわけじゃないからね」
「…………」
「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは、きっと平気で同じことをするようになるよ。」
「…………」
「そしたら、この先ピンチになった時……罪悪感を感じながら「仕方ないよね」とか言って、やっちゃいけないことに手を出すと思う」
「うへ~、このおじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー。そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。それに罪悪感が積りに積もって倒れちゃうかもしれない」
『…………』
「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードに頼ってたはずー」
「……私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて……」
「先輩の気持ち、わかります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスではなくなってしまう……」
「うへ、そういうこと。だから、このバッグは置いていくよ。頂くのは必要な書類だけね。これは委員長としての命令だよー」
「うわああっ!! もどかしい!意味わかんない! こんな大金を捨ててく!? 変なところで真面目なんだから!!」
「うん、委員長としての命令なら」
「私はアビドスさんの事情をよく知りませんが……このお金を持っていると、他のトラブルに巻き込まれるかもしれません」
「災いの種、みたいなものでしょうから……」
「あは……仕方ないですよね。このバッグは、私が適当に処分します」
「ほい、頼んだよー」
『……!! 待ってください! 何者かがそちらに接近しています!』
「……!! 追っ手のマーケットガード!?」
「いや、それはない。あいつからマーケットガードの大半を処理したと連絡が入ってるからな」
『先生のおっしゃる通りマーケットガードではないようです』
『調べますね……あれは……べ、便利屋のアルさん!?』
「だろうなぁ……」
「はあ、ふう……ま、待って!!」
「……!!」
「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから……」
「なんであいつが……?」
「撃退する?」
「どうかな。戦う気がないって相手を叩くのもねえ」
「こいつアウトローが好きなんだよ。大方さっきの強盗劇が刺さったんだろ」
「ええ……」
「お知り合いですか……?」
「まあねー、そこそこー」
「あ、あの……た、大したことじゃないんだけど……」
「銀行の襲撃、見せてもらったわ……。ブラックマーケットの銀行をものの5分で攻略して見事に撤収……あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ」
「ほらな、言った通りだろ?」
「喜ぶべきなの……かな……?」
「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことが出来るなんて……感動的というか」
「わ、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」
「そ、そういうだから……な、名前を教えて!!」
「名前……!?」
「その、組織っていうか、チーム名とかアルでしょ? 正式な名称じゃなくてもいいから……私が今日の雄姿を心に深く刻んでおけるように!!」
「うへ……なんか盛大に勘違いしているみたいだねー……」
「……はいっ! おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」
「のっ、ノノミ先輩!?」
「頼むからあのクソダサい名前だけは言うなよ……!!」
「ちょいちょい先生、言い過ぎだよ」
「私たちは、人呼んで……覆面水着団!」
「……覆面水着団!?」
「や、ヤバい……!! 超クール!! カッコ良すぎるわ!!」
「…………」
「うへ~本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー」
「なんか妙な設定を付け足してる!?」
「つかその設定だと俺やばい奴じゃねえか!! 野郎のスクール水着とかただの拷問だろ!!」
「そうなんです! 普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!」
「そして私はクリスティーナだお♧」
「「だ、だお♧」……!? きゃ、キャラも立ってる……!?」
「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如くの魔境を行く。これが私らのモットーだよ!!」
「な、なんですってー!!」
「……何してるの、あの子たち……」
「わー、アルちゃんドはまりしちゃってるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」
「もういいでしょ? てきとうに逃げようよ!」
「それじゃあこの辺で。アディオス~☆」
「行こう! 夕日に向かって!」
「夕日、まだですけど……」
「…………」
「よし! 我が道の如く魔境を……その言葉、魂に刻むわ! 私も頑張る!」
「…………」
「…………」
「事実を伝えるべきなんだろうけど……いつ言おうか?」
「面白いからしばらく放置で」
「あ、あの……」
「このバッグ、どうしましょう? あの人たちが置いて行ったみたいなんですけど……」
「ん? これはまさか……覆面水着団が私のために……?」
「いや、それはないわ……ただの忘れ物じゃない?」
「結構重いよ? 何が入っているんだろ」
「……!!」
「ひょええ!?」
「!! こ、これは……!!」
「……あれ? 現金のバッグ……置いてきちゃいました」
「えーっ!?」
「うへ~いいんじゃない? どうせ捨てるつもりだったんだし。気にしない、気にしない」
「うん。誰かに拾われてるでしょ、きっと」
「ですよね☆ お金に困ってる人が拾ってくれるといいですね」
「あはは……良いことしたって思いましょう。お腹を空かせた人が、あのお金でお腹いっぱいになれると思えば……」
「うう……もったいない……どう考えてももったいなさすぎる!! まったくもう、みんなお人好しなんだから!!」
「ええええーっ!?」
「うわわわわーっ!?」
「これって……」
「……?……もしかしてこれで、もう食事抜かなくてもいいんですか?」
「なあああああにいいいいいーーっ!!??」
「覆面水着団がアビドスだったですってええ!!??」
「あはははー、アルちゃんショック受けてるー! 超ウケる!」
「はあ……」
もうじき風紀委員会との対決に入れそうでワクワクしてます。イアソンとアコは相性悪そう
イベストと恋愛要素は必要?
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イベストだけ
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恋愛だけ
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どっちも必要
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どっちもいらない