「ゴホッ、ゴホッ……い、一体何が……?」
「ケホッ……これは一体……」
「ゴホッ……ゴホッ……せ、先生、大将!! 無事かしら!?」
「……いてて、俺は無事だ。お嬢ちゃんたちは?」
「私たちは平気……それより先生は?」
「あーいってぇ……わかってたことだが、ギリシャ神話が知られていないだけでここまでステータスが下がるのか」
「つーか、なんでここが攻撃されてんだよ。ここシャーレの所有地だぞ? まじで把握してないのか?」
「せ、先生!! 無事だ……」
「あー……陸八魔か? 悪いが今全身がバカみてぇに痛ぇから後にしてくれ。カイザーローンから購入した時点で顧客データ自体はあっちにもあるのだから、本社の連中が確認していたのか?」
「ちょ、先生!! 今そんなこと言ってる場合じゃないよ!?」
「先生……血だらけだよ……」
「うるせぇ、わかってる。今はだれが砲撃してきたのか考えるべきだ」
「わ、私が爆弾を埋めたせいで先生が大けがを……」
「ご、ご、ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「……爆弾を離れたところに片付けるように指示しなかった俺のミスでもあるから気にする必要はない」
「で、ですが……」
「だったら、追加の依頼だ」
「……え?」
「柴関ラーメンを襲撃した敵を撃退する。報酬金は500万でどうだ?」
「この前の依頼の時から思っていたけど、先生ってお金持ちなんだね」
「……基本的に使わないから増えて言ってるだけだ」
「いいわ、その依頼任せなさい」
「ほう、思い切りがいいな。だが相手はお前らが警戒していた風紀委員会だ。それでも受けるのか?」
「当然よ、風紀委員会にどんな理由があったとしても関係のない人に怪我を負わせようとしたんだもの」
「くふふ、アルちゃんかっこいいー。それじゃ先生? 指揮のほうお願いね」
「先生の指揮がどんなものか、期待してるよ」
「本当に大丈夫なのか先生? ひどい出血だが……」
「この程度どうとでもなるさ。あんたは巻き込まれないように下がってな」
「……死ぬんじゃないぞ」
「そんなこと言われなくてもわかってるさ」
「目標着弾しました」
「よし。歩兵、第2小隊まで突入」
「便利屋が災厄の狐と関りがあるかもしれないとはいえ、説明もなしに砲撃はいくらなんでも……」
「説明? 必要か、それ?」
「…………」
「うちの厄介者どもを取っ捕まえるための労力が惜しい。無理矢理にでも言いくるめて叩きのめすべきだ」
「そもそもここら一帯はカイザーの土地になっているんだから、民間人がいたところでカイザー関係者に決まってる。配慮する必要なんかない」
「……ちょ、ちょっと待ってください。イオリ」
「ん?」
「着弾地点に民間人が映りました。確認中ですので、お待ちください」
「柴関ラーメンの大将さんと……え……!?」
「……あ、あの方は……まさかシャーレのイアソン先生!?」
「ん? シャーレ? なんだそれ?」
「……ちょ、ちょっと待ってください。あの出血まさか……」
「……この戦闘、行ってはいけません!」
「どういうことだ?」
「便利屋、こっちに接近……きゃあ!!」
「あいつら……!! やるぞ!」
「待ってくださいイオリ!! このまま戦闘を行えば外交問題に繋がってしまいます!! いえ、イアソン先生に大怪我を負わせてしまった時点でエデン条約に大きな影響が出ることは確定しています。ですのでこれ以上問題を大ごとにするわけには……!!」
「はあ? 何を言って……」
「うわああっ!?」
「きゃああっ!!」
「ダメです、便利屋への対処が追いつきません! 普段よりも何倍も相手にしにくいです!!」
「はあ!? なんだって!?」
「……想像以上ね」
ヒナ抜きの風紀委員会とはいえ、これまでの何倍も簡単に風紀委員会を相手にできている現状にアルは驚いていた。シャーレの先生の指揮能力についてはアビドスと戦った時、ブラックマーケットで銀行強盗を目撃した時に把握していたつもりだったが、いざ実際に自分たちが指揮を受けてその凄まじさを体感する。
「いやぁ、すごいね先生の指揮」
「確かにこれは、レベルが高すぎる」
「か、簡単に相手を倒せますね」
自分があこがれる道についてきてくれている3人も同じように驚いていた。未来でも見えているかのように相手の動きに合わせて攻撃と回避の指示を出してくれるおかげで、こちらはほとんど攻撃を受けることなく相手を倒せている。だが何よりも驚いたのはこのレベルの指揮を死にかけている今の状態で行っていることだ。土壇場のバカ力でやっているようには見えない。まるで何回も同じような状況で指揮を行ってきたかのような慣れを感じてしまう。
「ハルカ、そこの集団をぶち抜け!!」
「はいっ!!」
「くっ……!! この違反者共め……!!」
「ムツキ! さっき仕掛けた爆弾起動しろ!!」
「オッケー! 喰らえ~!!」
「うわああ!!」
「お、おい!? お前たち……!!」
「最後の仕上げだ。アル、ぶち抜け!!」
先生の指示を受けて私は愛銃を敵の大将に向ける。これまでの戦闘の中で一番緊張していたというのに、意外と手が震えることはなかった。これが大人の力なのだと、感動しながら私は決め台詞を吐く。
「チェックメイトよ」
「な、なに!? 私たちが負けただと?!」
「こんなに簡単に勝てるなんて……」
「す、すごいですね先生」
「よお、久しぶりだなチナツ」
「先生……申し訳ありませんでした。すぐに治療を……」
「今はそんなことどうだっていい」
「良くないわよ先生!? ちゃんと治療しないと!!」
「お前らどういうつもりでここを襲撃した。これがゲヘナの答えってことか?」
『それは私から答えさせていただきます』
ギリシャみたいな格好してんなこいつ……いや、学生でこの格好はギリシャ越えてるんじゃないか? それともあれか? キアラみたいなやつなのか?
「アコちゃん?」
「アコ行政官……?」
『こんにちは、シャーレの先生。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します』
『今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいですか?』
「アコちゃん……その……」
『イオリ。反省部文のテンプレートは私の机の、左の引き出しにあります。ご存じですよね?』
「…………」
「お前が行政官の甘雨アコね……あと変な事考えるなよハルカ」
「す、すみませんっ!!」
「別に怒ってねぇよ……」
「調べた限り指揮系統や風紀委員長の秘書みたいなことをやっているそうだな」
『あら、御存じでしたか。それなら話は早いですね』
「だとしても、風紀委員の連中の緊張具合はおかしいけどな」
「だ、だれが緊張してるって!?」
「虚勢の貼り方がヘタクソだな。今度からは演技の訓練もしてやるといいと思うぜ?」
『お気遣いいただきありがとうございます。しかしこちらもそんな無駄な時間を取るわけにいきませんから』
「無駄ねぇ……」
『それにしてもアビドスのみなさんはいらっしゃらないのですね』
「んなことどうだっていいだろ、さっさと武器を下して本題に入れ」
お前が何をしたいのかは知らんが、さっさと本題に入れ!! 自分でいうのもアレだがそろそろあいつが俺の状況に気付きかねん……!!
『まあいいでしょう。全員武器を下してください』
『先ほどまでの愚行は、私の方から謝罪させていただきます』
「なっ、私は命令通りにやったんだけど!? アコちゃん!?」
『命令に、【まずは無差別に発砲せよ】なんて言葉が含まれていましたか?』
「い、いや……状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入。戦術の基本通りにって……」
『ましてや
……ん? 今こいつ他の学園自治区の付近と言ったか?
「ねぇカヨコっち、ここってシャーレの所有地なんだよね?」
「先生はそう言ってたけど……」
「私たちゲヘナ風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました」
「そのためなら外交問題なんざ気にしないと?」
『……? この範囲であればまだ違法行為とは言いきれないでしょうし……やむを得なかったということでご理解いただけますと幸いです』
『ですのでシャーレの先生にはそこにいる便利屋をこちらへ引き渡して風紀委員会としての活動に、ご協力いただけると助かるのですが』
「せ、先生……」
「…………」
「…………」
「…………」
「俺は今こいつらを雇ってんだよ。だから諦めな」
『これは困りましたね……うーん……こうなったら仕方ありません。本当は穏便に済ませたかったのですが……』
『……ヤるしかなさそうですね?』
「ハッ! 仕方がないと言わんばかりだが元々そのつもりだろお前?」
『…………』
「確かに便利屋の実力と引き起こした問題を考えれば他の自治区まで狙いに来るのはあり得ない話じゃない」
「そんな、ほめ過ぎよ先生!」
「アルちゃん……」
「社長……」
「だがゲヘナにはこいつらよりも対処すべき問題児集団が二つあるはずだ。総被害額で考えれば取りしまるべきは便利屋じゃなくてあの問題児共を積極的に相手にするべきだ」
「しかし、お前らはそうしなかった。いやできなかった。お前ら風紀委員会の戦力の大半を占めている風紀委員長空崎ヒナがいないからあいつらの相手は出来ない」
「だからと言ってここまでしてでも便利屋を取り締まる理由はそうそうない」
「例えば、連邦生徒会と繋がりが深く政治的効力の強いシャーレの先生が力を貸しているアビドスで便利屋が活動しているとかでなければな」
「というより、お前らの活動記録と思いっきり手法が違いすぎる。独断専行とかそんなもんだろ。カヨコはどう思う?」
「……先生の頭のキレはすごいね。私も概ね同じ考え。こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない」
『…………』
「それに、私たちを相手するにしてはあまりにも多すぎるこの兵力。他の集団……アビドスなんかとの戦闘を想定していたとすれば、説明がつく」
「とはいえ、アビドスは全校生徒集めても5人しかいない……なら結論は一つ」
「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまで来たんだ」
『……ああ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。のんきに雑談なんかしている場合ではありませんでしたね……』
『まあ、構いません』
「!?」
「……おいおい、まじかよ。あれだけのことをしておいて俺を狙ってるとか正気か?」
『事の次第を説明しましょう……きっかけは、ティーパーティーでした』
『もちろんご存じですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会です』
『そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている……と。そんな話が、うちの情報部から上がってきまして』
「当初は私も【シャーレ】とは一体何なのか、全く知りませんでしたが……ティーパーティーが知っている情報となれば、私たちも知る必要があります』
『それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました』
「(確認するのが遅くないです……?)」
……指揮官に該当する者が敵対勢力がそれに干渉したのを知ってから報告書の確認したのか
『連邦生徒会長が残した正体不明の組織……大人の先生が担当している、超法規的な部活』
『どう考えても怪しい匂いがしませんか?』
『シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません』
『ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです』
『ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で……といった形で』
「…………」
「…………」
「……お前の言いたいことはよくわかった」
『ご理解いただけたようで何よりです。それでは送迎の手配を……』
「誰がお前みたいな三流以下の指揮官の管理下で庇護なんか受けるんだよ、痴女」
『……はい? 状況をよく理解しておられないのですか?』
「お前はさっきシャーレのことを
『…………』
「指揮官ってのは全員の命を預かる立場だ。知らない、想定していないなんて言い訳が通用する立場じゃねぇ」
「俺がチナツとシャーレ奪還を行ったのは一ヶ月も前の話だ。それを昨日確認した? 敵対関係にある学校の生徒会が情報を仕入れたから? ふざけてんのかお前」
「お前みたいな怠慢しかしてねぇ指揮官の庇護下なんざ命がいくつあっても足りる気がしない」
「そもそも俺は今アビドスで仕事してんだよ。順番を守ることぐらいガキでもわかるだろ」
「何より
「便利屋、戦闘続行だ」
「ちょっ!? 本気なの先生!? この数は無理があるわよ!?」
「うるせぇ、こんなのどうとでもできる」
『……ゲヘナの風紀委員会は、必要でしたら戦力を行使することもあります。私たちはその判断をすれば、一切の遠慮をしません』
「……うわー、これはさすがにヤバそうだよ」
「オデュッセウスもケイローンも、アルテミスもいねぇアトランティスなんざ可愛いもんだ。さっさと終わらせるぞ」
「がっ、頑張ります!!」
「仕方ないか……」
……正直、血が足りねぇ気がするがここで負ければすべてが破綻する。こいつらに連れて行かれちまうと積みが発生する……!!
『……いいでしょう、それでは。風紀委員会、攻撃を開始ます。便利屋を制圧して、先生を安全に確保してください』
『先生はキヴォトスの外部の人なので、怪我をさせないように十分注意を』
「ダメです、アコ行政官!! これまでの発言が敵対表明として捉えられても反論できません!! これ以上続けてしまえばさらなる外交問題になってしまうため、先生と戦闘してはなりません!! それに先生が今どのような状況であるのか理解していないのですか!?」
『先生の状態ですか……? 中々こったコスプレをしていらっしゃいますね。大怪我を負ったかのようなコスプレをしてまるでこちらに非があるかのように仕立てるなんて』
「そうではありません!! 先生は私たちの攻撃で実際に……」
「先生!! 大将から爆発に巻き込まれたって!! って、血だらけじゃない!?」
「先生、ひどいけがじゃないですか!?」
「便利屋が先生の方にいることを考えるとあなたたちががやったんだね……!!」
「今すぐ治療をしないと……!!」
『……どういうことですかチナツ?』
「今すぐ先生から離れなさいゲヘナの風紀委員会」
「うわあっ!?」
「ぐあっ!?」
「な、なんだ!? ……!! お前は災厄の狐!?」
「ぐっ!? うぅ……っ!」
「……ワカモか」
「ああ、あなた様。なんて酷いお怪我……。あなた様が襲撃されてしまうなんて、このワカモ一生の不覚です」
「……それで、あなた方ゲヘナ風紀委員会が先生に仇なす者ですね」
『……狐坂ワカモ。便利屋とではなくシャーレの先生と繋がっていたわけですか。先生これはどういうことでしょうか』
「黙りなさい。先生があなた方の行いに何もおっしゃらなかったため私も我慢していましたが、許すことなどできません」
「あなた方は先生に、シャーレへの宣戦布告を行いました」
『……はい? 何を言っているのですか?』
「……本当に哀れな方ですね。教えて差し上げましょう。あなた方が砲撃した柴関ラーメン近辺はシャーレの所有地であり、その砲撃によって先生は全身から血を流す大怪我を負ったのです」
『…………え?』
「はあ!?」
「…………」
かなりアンチ・ヘイト的要素が強いため、後日修正するかもしれません
イベストと恋愛要素は必要?
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イベストだけ
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恋愛だけ
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どっちも必要
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どっちもいらない