イアソン先生   作:這いよる混沌

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イアソンが意識不明、話に登場しない回のサブタイトルは生徒に喋っていただきます


決して許しませんわ

「先生は大丈夫でしょうか……」

 

 

ドンッ!

 

 

バタンッ!

 

 

「!!? 今の音は!?」

 

「いたた……痛いじゃ~ん、どしたのシロコちゃん」

「……いつまでしらを切るつもり?」

「うへ~、何のことを言ってるのか、おじさんにはよく分らないな~……?」

「……嘘つかないで」

「嘘じゃないって~……ん?」

「ホシノ先輩! シロコちゃん!? どうしたんですか!?」

「ん、その……」

「いったい、何があったんですか……?」

「……ホシノ先輩に、用事があるの」

「…………」

「……悪いけど、二人きりにして」

「うーん、それはダメです☆」

「…………」

「対策委員会に、「二人だけの秘密♡」みたいなものは許されません。何といっても、運命共同体ですから」

「……でも、」

「ですので、きちんと状況の説明もしてくれない悪い子には……お仕置き☆しちゃいますよ?」

「う、うーん……」

「それに喧嘩をしてたら先生が困っちゃいますし」

「どちらかと言うと面倒くさがりそうだけどね~」

「……えっとねえ、……実は、おじさんがこっそりお昼寝してたのがバレちゃったんだよね~」

「私の怠け癖なんて、今に始まったことじゃないとは思うけど、おじさんもここ最近ちょ~っと寝すぎだったかも。まあ、それで少しばかり叱られちゃったのさ~」

「あ、う、うん……」

「にしたって、そんなに怒らなくてもいいのに~。シロコちゃんは真面目だなあ」

「ま、人にはそういう時もあるよね~。そろそろ集まる時間だし、行こっかー」

「……ん」

「……先生、私たちどうなっちゃうんでしょうか」

 

「うへ~……」

「…………」

「…………」

「ただいまー、って何よこの雰囲気?」

「何かあったんですか……?」

「ううん、何でもないよー」

「ならいいんだけど」

「先生のほうはどう?」

「まだ数日は意識が戻らないって……」

「……そっか」

「そういえば、先生がカイザーから柴関ラーメン近辺の所有権を購入した時のお話をシャーレの部員さんからお聞きしたんです」

「現在アビドス自治区の殆どがカイザーのものになっていますが、正式にはカイザーコンストラクションがその所有権を有しているそうです」

「カイザーコンストラクション……カイザーコーポレーションの系列ですね……」

「これで明確な敵が判明したって訳ね」

「……でも、どうするの?」

「どうするって、何言ってるのよシロコ先輩! アビドス自治区の所有権を持ってるカイザーコンストラクションを倒せばいいに決まってるじゃない!」

「先生抜きで?」

「そ、それは……」

「私たちがここまでこれたのは先生が手を貸してくれたからであって、私たちだけじゃどうすることも出来なかった」

「…………」

「…………」

「…………」

「……アビドス砂漠に偵察に行こう」

「ホシノ先輩?」

「あの時風紀委員長ちゃんが教えてくれたんだけど、アビドス砂漠でカイザーコーポレーションが何かを企んでるんだって」

「アビドスの砂漠で……」

「カイザーコーポレーションが……」

「何かを企んでる……?」

「そ、そんなことをどうして、ゲヘナの風紀委員長が……」

「それに、どうしてホシノ先輩に……?」

「それが元々先生に伝えるつもりだったらしいんだけど、「先生がまともに会話できる状態じゃないから」だってさ」

「なら、早速行きましょう!」

「今回は先生がいらっしゃいませんので、カイザーとの戦闘は避けなければなりません。偵察が済み次第速やかに撤退しましょう」

 

「……先生」

 

【先生、ホシノ先輩のバッグの中に退会・退部届が入ってた】

【問い詰めてみたけど、はぐらかされちゃった】

【バッグを漁ったこと自体はホシノ先輩にバレてると思う】

【先生も時々ホシノ先輩の動向を気にしてたからなんとなく気付いてるかもしれないけど、ホシノ先輩は隠し事をしてる】

【今日私たちはこれからアビドス砂漠で何かを企んでいるカイザーの偵察に行ってくる】

【帰ったらまた連絡入れるね】

 

「……大丈夫、先生はきっと戻ってくる」

 

 


 

 

『ここまでは列車でくることが出来ましたが、ここからの移動手段は徒歩しかありません』

『少し進めばもうアビドス砂漠……このアビドスにおける砂漠化が進む前から、元々砂漠だった場所です』

『普段から壊れたドローンや警備ロボット、オートマタなどが徘徊しているので、危険な場所なのですが……』

『今回先生がいらっしゃらないため、比較的速やかに処理するしかありません。皆さん今一度火器の動作チェックをお願いします』

「『アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが一体何を企んでいるのか……』

『偵察して、確かめることにしましょう』

「……けどさ、アヤネちゃん。よく考えると、その情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。それってなんかおかしくない?」

「いくら風紀委員長とはいえ、どうして他の学園の生徒が、うちの自治区のことをそこまで知ってるわけ?」

『うーん、あくまで推測に過ぎないけど……ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に秀でてるって聞いたことが……』

『だから、アビドスみたいな小規模な学校では考えられないような情報網を持ってる、とか……?』

「ま、そういうこともあるのかもね~」

「だからってうちのこと調べてどうするつもりだったのよ……」

「先生へ情報を渡してシャーレとの繋がりを作ろうとしたとか?」

「それはないんじゃないかなあー」

『委員長という立場でしたら、風紀委員会が把握している情報は全部集約されているでしょうし……』

「ま、行ってみたらそれを含めて、きっと色々わかるでしょ」

「じゃ、引き続き進むとしよっか~?」

 

「ここから先が、捨てられた砂漠……」

「砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、ここから先は私も初めてです……」

「いや~、久しぶりだねえこの景色も」

「先輩はここに来たことあるの?」

「うん、前に生徒会の仕事で何どかね~」

「もう少し進めばそこにはなんと、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」

「え、オアシス? こんなところに?」

「うん、まあ今はもう全部干上がっちゃったんだけどね~。元々はそんじょそこらの湖より広くって、船を浮かべられるぐらいだったとか」

「ま、私も実際に見たことはないんだけど~」

「船……先生が聞いたら喜びそう」

「そういえば初めて会ったときに船長が本職って言ってたわね。それなのに先生になるってどういうことよ」

「でも、現代じゃ犯罪だってこの間仰っていましたからまともな船長ではないのかもしれませんね」

『海賊とかでしょうか?』

「いやー、あの感じで海賊はないんじゃない? 物語でよくあるフックとかつけてなかったし」

「……先生、大丈夫かな」

「…………」

「…………」

「…………」

「……砂祭り、私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人が集まるって」

「そうそう、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるよりも何十年も前のことだけど」

「へえ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんなにすごいお祭りが……?」

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ~。その時はこんな砂埃もなかったし。ところでアヤネちゃん、まだ目的地は遠そう?」

『ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間がかかりそうです』

『見たところ、この辺りは特に何も無さそうですが……』

『とりあえず、引き続き警戒しつつ前進してください』

 

「はあ、先生がいなくなるだけでこんなにも戦いにくくなるのね……」

「先生が来る前の戦い方に戻っただけなのにやり辛い」

『私たちだいぶ先生に頼りきりになっていたんですね……』

「まあまあ、先生は私たちのこと強いって言ってくれたんだから落ち着いて対処すれば問題ないと思うよー」

「……それにしても、ドローンにオートマタか……」

「この辺り、何でかこういうのよく集まるんだよね」

『……っ!? 皆さん、前方に何かあります!』

『砂埃で、まだはっきりと姿が見えないのですが……!』

『巨大な町……いえ工場、あるいは駐屯地……? と、とにかく、ものすごい大きな施設のようなものが……?』

「……こんなところに施設? 何かの見間違いじゃなくて?」

「今のところ、こっちからは干からびたオアシスしか見えてないけど……」

『恐らく見間違いではないと思うのですが……とりあえず、肉眼で確認できるところまで進んでみてください!』

 

「…………」

「何これ……」

「この張り巡らされてる有刺鉄線、優に数キロメートル先までありそう……」

「工場……? 石油ボーリング施設、ではなさそうな……一体何なのでしょう、この建物は……?」

「こんなの、昔は無かった……」

 

 

ダダダダダダダッ!ダダダダダダダッ!

 

 

「うわっ!? なになに!?」

「侵入者だ!」

「捕らえろ、逃がすな!」

『前方から、正体不明の兵力が攻撃を仕掛けてきています!』

「よく分からないけど、歓迎の挨拶なら返してあげた方がよさそうだね?」

「じゃ、派手に行こっか~!」

 

「うへ~、結局何なのこいつら?」

「そんなに強くないけど邪魔っていうか、めんどくさいっていうか……なんか、今まで戦ってきたやつらの中でもひと際【厄介】って感じ」

「何なのでしょうか、この方たちは……それに、こんなところで一体何をしてるんでしょうか?」

『施設に、何らかのマークを発見しました!』

「これって……」

『少々お待ちください、今確認を……』

『……確認が取れました。このマーク、この集団は……』

「……カイザーPMC」

『っ!?……はい。ホシノ先輩の仰る通り、カイザーPMCです』

「カイザー……? こいつらもカイザーコーポレーションってこと!?」

『はい、カイザーコーポレーションの系列会社で……』

「もうどこに行ってもカイザー、カイザー、カイザー! 一体何なの!?」

「それに【PMC】ということは……」

「え、何かマズい言葉なの?」

「PMCとは、民間軍事会社のことです……」

「ぐ、軍事……!?」

「…………」

『ヘルメット団のようなチンピラとはレベルが違います。本当に組織化されたプロの……文字通り、軍隊のようなものです!』

「……!」

「軍隊ぃ!?」

「退学した生徒や不良の生徒たちを集めて、企業が私設兵として雇っているという噂がありましたが、まさか……」

『お話はそこまでにして今すぐ撤退を! 万が一バレたら……』

 

 

ヴイイイィィィーーン!!

 

 

「け、警報音……!?」

「これ、何だか大ごとになりそうな予感なんだけど……」

「これは……ヘリの音……?」

「それに、この地面の揺れ……恐らく戦車」

『大規模な兵力が接近中! こちらを包囲しに来ています!』

『仰る通り、装甲車以外にも戦車やヘリまで……ものすごい数です!』

『包囲が完成する前に離脱してください! まずは急いで、その場所から脱出を……!』

『先生のようには出来るわけではありませんが、私がサポートします!』

 

「はぁ、はぁ……」

「……ふぅ」

「キリが無いなあ、これは……」

『……さん、聞こえますか? 包囲網を抜け……また……』

『……が不安定……早く……退却……』

『……が……接近……』

 

「……絶体絶命?」

「包囲されちゃったかー……」

「…………」

「侵入者とは聞いていたが……アビドスだったとは」

「な、何よこいつ……」

「…………」

「(あいつは……)」

「まさかここに来るとは思っていたが……まあ良い」

 

「生徒会長がいない今、副会長であるあなたが借金を返していく、ということでよろしいでしょうか? 小鳥遊ホシノさん?」

「それとも……私の提案を受け入れますか?」

 

「(あの時の……)」

「勝手に人の所有地に入り、暴れたことによるこれらの被害。まるでどこかの学園の風紀委員会のようだな」

「これらすべての被害額を君たちの学校の借金に加えても良いのだが、まあ、大して額は変わらないな……」

「あんたは、あの時の……」

「……確か、例のゲマトリアが狙っていた生徒会長……いや、副会長だったか?」

「……ふむ、面白いアイディアが浮かんだ。裏切った便利屋やヘルメット団を雇うよりも良さそうだ」

「便利屋が裏切った……?」

「……あなたたちは、誰ですか?」

「……あの男と違ってまさか私のことを知らないとは。アビドス、君たちならよく知っている相手だと思うがね」

「私は、カイザーコーポレーションの理事を務めている者だ」

「そして君たち、アビドス高等学校が借金している相手でもある」

「!!」

「……嘘っ!?」

「では、古くから続くこの借金について、話し合いでもするとしようか」

「アビドスが、借金している相手……」

『か、カイザーコーポレーションの……』

「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ」

「今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている」

「それにしても、君たちの先生はどこをほっつき歩いているのかね?」

「私有地に無関係の者が侵入することの重大性をよく知っているのだから、君たちにしっかりと教育しているものだと思っていたのだが」

「お前……!!」

「シロコちゃん落ち着いてください!」

「黒服から警戒すべきだと指摘されたが、案外大したことのない奴だったな。あの男が率いていた船団と言うのもどうせろくでもない奴らを寄せ集めたようなものだろう」

「(黒服が……?)」

「先生のことを何も知らないあんたが、先生のことをバカにするな!!」

『セリカちゃんも落ち着いて!』

「……ふぅ。要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことで良い?」

「……ほう」

「そうよ! 便利屋……はあんたたちを裏切ったらしいけどヘルメット団を仕向けて、ここまで私たちを苦しませてきた犯人があんたってことなんでしょ!?」

「ふむ……?」

「あんたのせいで私たちは……アビドスは……!!」

「やれやれ……最初に出てくる言葉がそれか」

「勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員たちを攻撃し、施設を散々破壊しておいて……」

「……くくっ、面白い」

「だが、口の利き方には気を付けた方が良い。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。ます君たちは今、企業の私有地に対し不法侵入しているのだということを理解するべきだ」

「……!」

「……っ!」

「さて話を戻そうか……アビドス自治区の土地だったか、確かに買ったとも」

「だからどうした? 全ては合法的な取引。記録も全てしっかりと存在している」

「その証拠に君たちの先生は、ラーメン屋近辺の土地をカイザーコンストラクションからしっかり買い取ったのだ」

「まるで、私たちが不法な行為でもしているかのような言い方は止めてもらおうか。わざわざ挑発をしに来たわけではないのだろう?」

「ここに来たのは、私たちがここで何をしているのか気になったからか? どうしてアビドスの土地を買ったのか、その理由が知りたいのか?」

「それならば教えてやろう、私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているのだ」

『……!』

「……そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!!」

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力についての説明がつかない」

「この兵力は、私たちの自治区を武力で占拠するため。違う?」

「……数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち。数百トンもの火薬に弾薬」

「たった5人しかいない学校のために、これほどの用意をするとでも?」

「冗談じゃない。あくまでこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時のためのもの。ただそれだけだ、君たちのために用意したものではない」

「君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ……例えばそう、こういう風にな」

「……私だ……そうだ、進めろ」

「な、何……? 急に電話……それに「進行」って、何のこと?」

「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

 


 

 

プルルルー

 

 

「……?」

『こちらカイザーローンです。現時点を持ちまして、アビドスの信用評価を最低ランクに下げさせていただきます』

「!?」

『変動金利を3000%上昇させる形で調整。それらを諸々適応した上で、来月以降の利子の金額は9130万円でございます』

『それでは引き続き、期限までにお支払いお願いいたします』

「はい!? ちょ、ちょっとそんな急にどうして……!?」

 

 


 

 

「きゅ、9000万円!?」

「……くっくっくっ」

「これで分かったかな。君たちの首に賭けられた紐が今、誰の手にあるのか」

「……!」

「ちょっ、嘘でしょ!? 本気で言ってんの!?」

「…………」

「ああ、本気だとも。しかしこれだけでは面白みに欠けるか……」

「そうだな、9億円の借金に対する保証金でも貰っておくとしよう。一週間以内に、我がカイザーローンに3億円を預託してもらおうか」

「この利率でも借金返済ができるということを、証明してもらわねばな」

『そんな……!』

「……っ」

『そんなお金、用意できるはずが……今、利子だけでも精一杯なのに……』

「ならば、学校を諦めて去ったらどうだ?」

『!!』

「自主退学して、転校でもすれば良い。それで全て解決するだろう、そもそも君たち個人の借金ではない」

「学校が責任を取るべきお金だ。何も君たちが進んで背負う必要は無いのではないか?」

「そ、そんなこと、できるわけないじゃないですか!」

「そうよ、私たちの学校なんだから!! 見捨てられるわけないでしょ!」

「アビドスは私たちの学校で、私たちの街」

「ならばどうする? 他に何か、良い手でも?」

「……みんな、帰ろう」

「ホシノ先輩……!?」

「……これ以上ここで言い争っても意味が無い、弄ばれるだけ」

「ほう……副生徒会長、さすがに君は賢そうだな」

「……ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな」

「…………」

「では、保証金と来月以降の返済についてはよろしく頼むよ。お客様」

「ふふっ、ふははははは……!!」

「存外悪くない時間だったな。さあ、お客様を入り口まで案内してさしあげろ」

「…………」

 

 

 

 

「……指示通り録音完了いたしました。先生の大切な思い出を侮辱したあの男、どうしてくれましょうか」

イベストと恋愛要素は必要?

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