イアソン先生   作:這いよる混沌

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地の文を追加致しました


俺の誇りを侮辱しやがって!!!

「じゃーん!」

「ホシノちゃん見て見てー! アビドス砂祭りの昔のポスター! やっと手に入れたよー!」

「この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がってたんだよねー。あ、このポスターは記念にあげる!」

「えへへ、すっごく素敵でしょー? もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって─」

「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩」

「そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!」

「は、はう……」

「こんな砂漠のド真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!? 夢物語もいい加減にしてください!」

「うえぇ、だってホシノちゃーん……ご、ごめんね?」

「……っ」

「そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだの何だの……」

「もっとしっかりしてください! あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!? もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!」

 

ビリビリッ──!

 

「……ふぅ」

「もうっ、一体何なのよ!」

「カイザーコーポレーションは、あそこで一体何を企んで……?」

「「宝物を探している」、と言ってましたが……」

「あの砂漠には何も無いはずです。でたらめを言ってるんだと思います」

「石油など、お金になりそうな地下資源は何一つ残っていません……はるか昔に、すでにそういう調査結果が出ているんです」

「だとすると、どうして……」

「いやいや、今はそれよりも借金の方でしょ! 3000%とか言ってなかった!?」

「保証金も要求してきましたし……あと一週間で、3億円だなんて……」

「……行ってくる。あそこで何をしているのか、調べないと」

「し、シロコ先輩!? 行くって、一体どこへ……?」

「PMCの施設。徹底的に準備すれば、何とか潜入できると思う。行って、何をしているのか確認する。そうすれば先生が戻ってきた時に役に立つはず」

「ま、待ってシロコ先輩! それより今は、借金の話の方が先でしょ!」

「……借金はもう、真っ当なやり方じゃ返せない。何か、別の方法を……」

「だ、ダメですよ! それではまた……」

「……私はシロコ先輩に賛成! 学校が無くなったら全部終わりなんだから、もうなりふり構ってられない!!」

「そんな、セリカちゃん……!?」

「セリカちゃん待って! そんなことしたら、あの時と同じだよ!?」

「そ、そういう意味じゃない! そうじゃなくて、でも……!」

「あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自分から進んで犯罪者になるの!?」

「わ、私は……」

「…………」

 

理不尽な金利の上昇、3億円という莫大な額の保証金の請求。これまで取り組んできた活動が全て無駄に感じてしまうほどの絶望が対策委員会を包み込んでいく。犯罪者になることなく借金返済をしていく決意が揺らぎ始めているのを見かねたホシノが後輩たちへ声をかける

 

「ほらほら、みんな落ち着いて~」

「頭から湯気が出てるよ~?」

「ん……」

「…………」

「…………」

「はい、すみません……」

「……ごめん、こんな風にしたいわけじゃなかった」

「うん、みんな分かってるよ。シロコちゃんも、いい子だからね」

「…………」

「まっ、とりあえず今日はこの辺にしとこう」

「うへ~、じゃあ解散解散~。一回頭を冷やして、また明日集まることにしようよ。これは委員長命令ってことで」

 

ノノミにアヤネ、セリカが帰宅し校舎にはホシノとシロコしか残っていない。ホシノの退会・退部届けを見つけてしまったシロコはここでホシノを止めないと後悔し続けることになると確信している。先生が意識不明の重体で動けない以上シロコ自身が何とかするしかない。ホシノが逃げ出しても動けるように構えてシロコはホシノに向き合う

 

「ん~? シロコちゃんは何かまだやることがある感じ?」

「……先輩、ちょっといい?」

「うへ~、おじさんとお話したいことがあるの? 照れるな~」

「でもさ、今日は疲れたし、色んなことがあったじゃん?」

「また明日話そう、大体どんな話かは分かってるから」

「でも、今話さないときっと後悔する気がして……」

「……大丈夫だよ、シロコちゃん。また明日ね」

「待って、ホシノ先輩!」

「…………」

 

ホシノが逃げ出してもすぐ追えるように構えていた。でも尊敬する先輩の顔を見て足が動かなかった。別れを決意した悲しい笑顔をした先輩を見てシロコは動くことが出来なかった

 

【先生、偵察に失敗して借金が増えちゃった】

【利子が9000万になって、借金の保証金として3億円を要求された】

【それにホシノ先輩がどっかに行っちゃう気がする……】

【ノノミ先輩もアヤネも、セリカも冷静になれてない】

【このままじゃみんなバラバラになっちゃう】

【……先生、どうしたらいいのかな】

【先生はあの時、後悔しないなら犯罪で手に入れたお金を使えばいいと言っていたけど】

【後悔しながらでも犯罪者になってお金を集めないと学校を守れない】

【……………】

【……先生、助けて】

 

 


 

 

シロコが帰宅したのを見届けてからホシノは、思い出を振り返るように校舎を歩き回っていた。

 

「けほっ、けほっ……うわぁ、ここも砂だらけじゃ~ん……」

「ま、仕方ないか。掃除しようにも、そもそも人数に対して建物が大きすぎて……」

「……先輩、この前ね、私たちの活動のことを褒めてくれた人がいたんだ」

「正確には卑下するなって感じだったけど、報われたみたいで嬉しかった……」

「でも、私は……」

 

 

 

 

 

「それで、いつまで隠れてるつもり?」

「……気付いていたのですね」

「そりゃ、こんなにもわかりやすく殺気を放ってるんだからわかるもんさー」

「……七囚人の一人がここに何の用?」

「……先生からの伝言をお伝えするだけです」

「本当に? あれだけの騒ぎを起こしてるあなたのことを信じろってのは無理があるよ」

「私は先生にご迷惑をかけることだけはしたくありませんので」

「【()()()()()を考えて理解した上で行動しろ】とのことです」

「それでは確かにお伝えいたしましたので、失礼いたしますわ」

「…………」

「……先生は中々の人たらしだねぇ」

「自分の立場を考えて理解しろかぁ……」

 

 


 

 

「はぁ、お疲れ様です……」

「あれ、私が一番乗り……?」

「…………?」

「これは……?」

 

机の上に置かれた一通の手紙と1枚の書類。手紙にはホシノの筆跡で【アビドス対策委員会へ】と書かれている。先輩が自分たちに手紙を書くなんて珍しいと思いながらアヤネは残酷な現実を突き付ける書類を手に取った。

 

「……嘘」

「何でっ……どうしてっ!!!!??」

 

 

アビドス対策委員会のみんなへ

まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許してほしい

おじさんにはこういう、古いやり方が性に合っててさ

みんなには、ずっと話してなかったことがあって実は私、昔からずっとスカウトを受けてたんだ

カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負ってる借金の大半を肩代わりする……そういう話でね

……うへ、中々良い条件だと思わない? おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさ~

借金のことは、私がどうにかする。すぐに全部を解決はできないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う

ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れてなくてごめんね

これで対策委員会も、少しは楽になるはず

アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私のことは気にしないで

勝手なことをしてごめんね

でもこれは全部、私が責任を取るべきこと

私は、アビドスの最後の生徒会だから

だから、ここでお別れ。じゃあね

 

 

「……これで良い?」

「……はい、確かに」

「契約書にサインも頂いたことですし……これで、ホシノさんがお持ちの生徒としての全権利は、私の元に移譲されました」

「これで正式に、アビドス高校が背負っている借金の大半はこちらで負担することにしましょう」

 

 

先生へ

先生のことだから気づいてたんだろうけど実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じてなかった

自己紹介のときにいきなり「船長が本職」だなんて言ってきた時には、「ロクでもない大人が来たな」って思ったくらいだし?

それに、みんなで盛り上がってる時に平気で盛り下げるようなこと言ってきたしね~

でも、大将から聞いたよ。不器用ながらも私たちを助けるために色々やってくれてたんだよね

今先生が寝込んでいるのも、私たちを助けるために動いてたからなんでしょ?

先生みたいな大人と最後に出会えて、私は……いや、照れ臭い言葉はもういいよね

最後に我がままを言って悪いんだけど、お願い

シロコちゃんは良い子だけど、横で誰かが支えていないと、どうなっちゃうか分からない子で

悪い道にそれちゃったりしないように、支えてあげてほしい

先生なら、きっと大丈夫だから

……あの伝言、私にはこの選択が正しいと思ったけどどうだったのかな?

 

 

「さあ、乗れ」

「……どこに行くの?」

「アビドス砂漠だ」

 

 

シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん

お願い、私たちの学校を守ってほしい

砂だらけのこんな場所だけど……私にとって、先輩と一緒に守り抜いた唯一意味のある場所だから

それから、もしこの先でどこかで万が一、敵として敵対することになったら……

その時は、私のヘイローを「壊して」

よろしくね

 

 

手紙に書かれていたのカイザーに自分を売って後輩たちの負担を減らすことにした先輩からの別れの挨拶。それを証明する小鳥遊ホシノが記入した退会・退部届け。ノノミとアヤネは理解ができず言葉を発することが出来ない。ホシノを止めることが出来なかったシロコは顔が真っ青になってしまっている。ただ納得ができないセリカが声を荒らげる

 

「ホシノ先輩っっっ!!!!」

「何なの!? あれだけ偉そうに話しておいて!! 切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分で分かってたくせにっ!!」

「こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」

「……助けないと」

「私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で……」

「落ち着いてください、今はまず足並みをそろえないと……!」

 

 

ドガァァァァン!!!

 

 

「うわあっ!?」

「爆発音……!?」

「近いです、場所は……!?」

「…………」

「……そ、そんな!?」

 

 

ドガアァァァァン!!!

 

 

「行け、行け!」

「進め!」

「うわあぁぁぁっ!?」

「早くっ、早く逃げろっ!!」

「……この自治区にはもう、退去命令が下った」

「ふふふっ、ふふふふふふふ……」

「ついに、条件は全てクリアした」

「最後の生徒会がアビドスを退学……これで実質的に、アビドス高等学校は消えた!!」

「あとは我らカイザーコーポレーションが、アビドスを吸収合併するのみ!」

「……いや、あのラーメン屋はシャーレの所有地だったな。だが、シャーレの先生は意識不明。例え目が覚めたところでそのころにはアビドスの吸収合併が完了してる。もはやシャーレなど敵ではない!」

「さあ、アビドス高等学校を占拠せよ!」

 

 

「こちらに向かって、数百近いPMCの兵力が進行中! 同時に、市街地に無差別攻撃をしています!」

「カイザーPMC!? なんでこのタイミングで……!?」

「お、応戦しないとです!! 何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごすわけには……!」

「考えてる時間が惜しい、すぐに行こう!」

「で、ですが、私たちで撃退するにはあまりにも数が……!」

「と、とにかくまずは、市民のみなさんを避難させましょう!」

「(こんな大規模な攻撃……一体どうして、急に……)」

 

 

ダダダダダダダッ!ダダダダダダダッ!

 

 

「対策委員会を発見! こっちだ!!」

「ぐあっ!」

「斥候が、もうこんなところにまで……」

「アビドス高校周辺に、カイザーPMCの兵を多数確認! すでに校内にかなり侵入されています!」

「とりあえず、学校に侵入したやつからやっつけよう! アヤネちゃん、お願い!」

「はい! 学校に侵入した敵を撃退し、安全を確保した後は、市民の皆さんの避難を!」

 

「こんにゃろっ!!!」

「…………」

「…………」

『何者かの接近を確認……カイザーの理事です!』

「ふむ。学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ」

「これは何の真似ですか? 企業が街を攻撃するなんて……いくらあなたたちが土地の所有者だとしても、そんな権利は無いはずです!」

『それに、学校はまだ私たちアビドスの者です! 進行は明白な不法行為! 連邦生徒会に通報しますよ!」

「スカウトなんて、最初から嘘だったってこと? ……いや、それよりもホシノ先輩はどこ?」

「この悪党め……ホシノ先輩を返して!」

「……くくくっ、何を言ってるのやら」

「連邦生徒会に通報だと? 面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ?」

「君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に嘆願してきたのだろう? それで、一度でも動いてくれたことがあったか?」

『…………』

「無かったはずだ。ただでさえ連邦生徒会は動けないのに、ゲヘナとのやり取りに集中しているからな」

「連邦生徒会でなくても良い。今までどこか他の学園が、君たちのことを助けてくれたことはあったか? ……そろそろ分かっただろう?」

「誰一人、君たちに手を差し伸べる者はいない。唯一の頼みの綱であるシャーレの先生も意識不明だ」

「それは……」

『…………』

「アビドスの最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノが退学した。アビドスの生徒会は、もう存在しないも同然」

「君たちはもう、何者でもない」

「……!!」

『!!』

「公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらも無いアビドスは、学園都市の学校として自立・存続が不可能だと判断……」

「仕方ないな、この自治区の主人である我がカイザーコーポレーションが、あの学校を引き受けるとしよう」

「そうだな、新しい学校の名前は「カイザー職業訓練学校」にでもしようか」

『!!』

「え……?な、何を言ってるの……!?」

「生徒会が無くても、アビドスには対策委員会がある!! 私たちがまだいるのに、そんな言い分が通じるはずがないでしょ!」

『それは……』

「……アヤネちゃん?」

『対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない……』

「……えっ!?」

『対策委員会が出来た時には、もうアビドスには生徒会が無かったから……』

「え、えっ……!?」

『数日前に先生に、連邦生徒会を通じた許可証を発行するように頼んだのですが、ゲヘナとの一件の影響で発行が停止してしまっています……』

「そうだ。所詮非公認の委員会、正式な書類の承認も下りていない。つまり、君たちの存在を示すものは何も無い」

「だが喜べ。アビドス高等学校が無くなれば、君たちはもうあの借金地獄からは解放されるのだからな」

 

 


 

 

「な、何で……何してる!?」

「どうして、どうしてアビドスを、街を攻撃するんだ!!」

「どうしてと言われましても……」

「何もおかしいことなどありませんよ、ホシノさん」

「あの借金の大半はきちんと返済させていただきますとも。それが、私たちの間に交わされた約束ですから」

「それはそうとして……あなたが退学してしまい、残念ながらアビドス高等学校にはこれ以上、公的な生徒会メンバーが残っていないようですね。それでは学校は成り立たないでしょう」

「…………!!」

「私たちが何故、あんなくだらない企業の、詐欺紛いの行為を支援していたのだと思いますか?」

「自治区の土地を奪ったところで、ブラックマーケットのような無法地帯が一つ増えるだけです」

「そんな場所は、このキヴォトスにいくらでもあります」

「しかし……もし、企業を主体とした新たな学園が誕生したら……?」

「アビドスに現れるその新しい存在は、果たしてこのキヴォトスにどんな影響をもたらすでしょうか?」

「……っ!」

「……しかし、これは単なる余興に過ぎません」

「ホシノさん、私たちの目的は最初からあなたでした」

「あなたに契約書へサインしてもらうこと、あなたに関する全ての権利を頂くこと」

「その目的のために利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションに協力していた。ただそれだけのことです」

「何か勘違いされていたようですね……誤解を招いたのなら謝罪しましょう。しかし私は最初から、カイザーの所属ではありません。「私共の企業」がカイザーコーポレーションだとは、一度も言ってないはずです」

「あなたのようなキヴォトス最高の神秘を手に入れたというのに、まさか、勿体ない形で消耗させるなんてことは致しません」

「あなたを実験体として研究し、分析し、理解する」

「この興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの」

「つまりは、そう言うことです」

「……しかしながら、少しばかり興ざめですね」

「……何?」

「私としては是非とも先生とお話をしたかったのですが、意識を失われているのであっては仕方がありません」

「先生に何をするつもりだ……!!」

「シャーレのイアソン先生。連邦生徒会長が直々に指名した大人であり、キヴォトスの外から来た者でありながら莫大な神秘を内包する人物」

「癖の強い数多の英雄を率いたカリスマと指揮能力……実に興味深い」

「まるで神秘の集合体のような方。是非とも彼と語り合いたかった!」

「ですが、ゲヘナ学園の生徒の行いで彼との会話の機会は失われてしまった」

「神秘……? 英雄……? 何を言っている……」

「キヴォトスの人間には理解できないことですから気にする必要はありません」

「……少々話過ぎましたね」

 

「……そっか」

「私は……また、大人に騙されたんだ」

「…………」

「……ごめん、みんな。私のせいで、全部……」

「シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん……」

「……ユメ先輩」

「…………」

「ごめん……」

「…………」

「私は……」

「…………」

「先生……私、先輩と一緒に守った学校を、自分の手で壊しちゃった……」

 

 


 

 

『…………』

「そんな、そんなことになったら、今までの私たちの努力が……」

「……ほう、まさか本気だったのか?」

「本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったと?」

「これは驚きだ。てっきり、最後に諦める時「でも頑張ったから」と自分を慰める言い訳をするために、ほどほどに頑張っているのだと思っていたが……」

「……っ!!」

「いったい君たちは、どうしてあんなに努力していたんだ? 何のために?」

「あんた、それ以上言ったら……」

「撃つよ?」

「で、ですが……」

『……今ここで戦って、何が変わるんでしょうか?』

「アヤネちゃん!?」

『今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています……」

『たとえ、戦って勝てたとしても……その後はどうすれば……』

『学校が無くなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私たちにはまだ、大きな借金が残ったまま……』

「……アヤネちゃん」

「アヤネ……」

『取引された土地だって戻ってきません。何より、ホシノ先輩もいない、生徒会もない、こんな状態で……』

『私たちみたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、一体何が……』

『……どうして、どうして私たちだけ、こんな……』

『ホシノ先輩、先生……私たち、どうすれば……』

「アヤネちゃん……」

 

 

ドカアアァァァァン!!!

 

 

『なっ!? き、北の方で大きな爆発を確認!』

『合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて―!!』

「何!?」

 

 

ドカアアァァァァン!!!

 

 

『東の方でも確認! 合流予定だったマイク小隊も、大量のC4の爆発で……!!』

「何が起きてる!?アビドスの連中は、ここにいるので全員のはず……!!」

 

「全く……大人しく聞いていれば、何を泣き言ばっかり言ってるのかしら……」

『……!?』

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く……」

「それが、あなたたち覆面水着団のモットーじゃなかったの?」

『……あ、あなたたちは!?』

 

便利屋68の登場に驚きを隠せない対策委員会の面々。カイザーを裏切ったとは言え、何故自分たちを助けるのか理解出来ずに困惑してしまう

 

「何をすればいいのか分からない、どうすればいいのかも分からない。やる事なす事、全部失敗に終わる……」

「ここを潜り抜けたところで、この先にも逆境と苦難しかない……」

 

「だから何なのよっっっ!!!!」

 

『え、えっ……?』

「仲間が危機に瀕してるんでしょう!? それなのに、くだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われて、それで納得できるわけ!?」

「あなたたちは、そんな情けない集団だったの!?」

「いやいや、アルちゃんその辺で勘弁してあげなよ。メガネっ娘ちゃんは繊細なんだから、こういう時もあるって」

『ど、どうしてあなたたちが……!?』

「ほら、先生も覆面水着団の顧問としてビシッと言うべきよ!!」

「俺はあんなふざけた集団に所属した覚えはねぇ!!!」

『えっ!?』

「先生……?」

「先生……!!」

「があぁっ!!?? 離れろシロコ!! 俺は病み上がりなんだよ!!!」

「先生、意識が戻ったんですね! 本当に良かった……!!」

 

数日は意識が戻ることは無いと言われていた先生の復帰に喜ぶ対策委員会と、厄介な存在が戻ってきたことに腹を立て怒りを露わにするカイザー理事。

 

「シャーレの先生……!!」

「しかしまぁ、この数日で随分と弱腰になったなお前ら」

『そ、それは……』

「…………」

「ここからどうすればいいっていうのよ……」

 

だが、イアソンが戻ってきたところで増加した利子や保証金が消えるわけでもなければ、ホシノがすぐさま帰ってくる訳でもない。変わりようのない現実に俯く対策委員会を見てイアソンはため息を吐く

 

「俺がアビドスに来た時点でお前たちの状況は最悪だった。バカみたいな額の借金に土地の権利はほとんど持ってかれてる」

「ここからどう立て直すかなんて考えたくも無いほどに詰んでいた」

「だが、お前らは諦めていなかった。問題は借金だけだと考えていたのもあるだろうが、俺が土地のことを話した後でもお前たちは進み続けた」

「やはり知っていたのか。ならばなぜ止めなかったのだシャーレの先生? 無理やりにでも転校させてやるのが大人の優しさでは無いのかね?」

「なぜ止めなかったのかだと? そんなもの決まってる。こいつらにはただアビドスを守りたいという強い意思があった」

「どれだけ絶望的な状況になったとしても諦めないと誓って走り続けていた」

「……偉そうに語っているが、周りを見たらどうだ? 彼女たちは足を止めているではないか」

「ハッ! 英雄でも何でもないただの人間が永遠と走り続けることができるとでも思ってんのか? だとしたらお前はこいつらとは話にならんレベルのバカだ!」

「人間ならば困難を目の前にした時に足が竦むことなど分かりきっているだろ?」

「戦ったところでなんの意味があるというのだ? 貴様らが我々に勝ったところで借金が無くなる訳では無いぞ!!」

「こいつらが戦っている理由を知っているのにその問の答えに辿り着けていないとはお前の底が知れるなぁ!」

「こいつらはアビドスを守るために戦ってるんだよ。アビドスを守りたいから自分たちがした訳でも無い借金を返済してるんだよ」

「戦う理由なんざ大切なものを守りたいだけで十分さ」

「それに限界まで努力して足掻いた結果ダメだった時よりも、理不尽な状況に何も足掻くことが出来ずに全てが終わる方がムカつくしな」

「だからさっさと立ち上がれお前ら」

「お前らのアビドスを守りたいって言う気持ちはカイザーの嫌がらせに屈するほど弱いものなのか!!お前たちの努力はカイザーの理不尽な行動に負けてしまうほど意味の無いものなのか!!アビドスがカイザーに奪われてしまっても悔しくないのか!!」

「あはっ、せんせーかっこいいー!それにしても、私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かした罪は重いよ? だからもうこれは……」

「ぶっ殺すしかないよねっ!!!」

「ふふっ、ふふふふふ……準備はできています、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだたくさんありますので……」

「はあ。ただ、ラーメンを食べに来ただけのはずなのに……」

「……埋めておいた爆弾で、敵の増援を遮断。その間に敵の指揮官を無力化させて、指揮携帯を崩壊させる」

「これで相手集団を一気に瓦解させる……本来なら、風紀委員会相手に使うはずの戦術だったけど解体されるかもしれないし、まあいいか」

「……おまえ、オデュッセウスとか知り合いにいたりすんのか?」

「いや、そんな人知らないけど……」

「目を開けなさい。腑抜けた状態のあなたたちに今から、真のアウトローの戦い方を見せてあげるわ。ハルカ」

「はいっ!」

 

 

ドガアアァァァァン!!

 

 

ドドドドドドドドドォォン!!

 

 

ドカアアアァァァァァァァン!!

 

 

『うわぁっ!?』

「さあ、今こそ依頼の時間ね! 頼むわよ、先生!」

「そこの腰抜けたち(対策委員会)に、今こそ真のハードボイルドの力を見せつけてやるわ!」

「無理難題を押し付けるぞ?」

「やってやろうじゃないの!」

 

その返事に満足そうな顔をしたイアソンはカイザー理事と改めて向き合う。その顔には激しい怒りがこもっていた

 

「おい、カイザー理事。俺はお前にムカついてんだよ」

「アルゴノーツを侮辱しやがったな!!! このクソ野郎が!!!」

「ぶちかますぞ!!! 便利屋!!!」




イアソンが意識を取り戻すお話は次回に持っていきます

イベストと恋愛要素は必要?

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