長い通路を進むと七神リンにエレベーターで移動することを告げられる。内部はガラス張りになっており【キヴォトス】とやらの空が良く見える。地球が白紙化していた時の空の青さには劣るが澄んだ青が広がっていた。あいつは元気にやれてるだろうか。
「改めまして、【キヴォトス】へようこそ。イアソン先生」
「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります」
「きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……」
「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう」
「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」
「おい、ちょっと待て。今数千の学園が集まっていると言ったか?」
「ええ、そうですね。何せキヴォトスは学園都市ですから」
「冗談じゃない! 俺は船長だ!! 先生など少しもやったことなどない!! そもそもこういうのはケイローン教授がやる事だろうが!!!」
「…………すみません、イアソン先生。ケイローン教授とはいったい誰の事なのでしょうか?」
「は?」
「先生のお知り合いの方でしょうか?」
「ちょっと待て!? お前知らないのか!? ギリシャの英雄を育てあげ、人が神の力を持たなくても生きていけるための術を授けたケンタウロスの賢人ケイローンを知らないのか!!??」
「すみません、ギリシャというのも分かりません」
「嘘だろ!!?? おい七神リン!! お前はさっきこの都市をキヴォトスと言っていたな!! ではこの惑星の名はなんだ!!?? 地球という惑星を知っているか!!??」
「地球ですか……。すみません、初めて聞いた単語ですね」
「…………うそだろぉ……」
「あ、あのイアソン先生? 大丈夫ですか?」
「これが大丈夫に見えるならお前はギリシャで生きていけるよ……」
高確率で人理焼却や地球白紙化よりもめんどくさいことに巻き込まれたじゃねぇか!! ふざけるな、なんで俺がこんな目に!! というか連邦生徒会長ってやつは何してくれやがる!!! 自分で何とかしろよ!!! そんな風に悲観しているとエレベーターが目的の階に到着した音が聞こえた。
「着きましたね。お手をお貸ししましょうか?」
「いや、必要ない」
何とか体を奮い立たせてエレベーターから降りる。まだ確定したわけではない、七神リンは俺のことを先生と呼んでいた。つまり俺はこれからケイローン教授のように生徒に授業をすればいいわけだ。なにもふざけた特異点に発生するトンチキじみた敵と戦うわけでもなければあのふざけた蜘蛛のような奴と戦うわけではない。よしだいぶ落ち着きを取り戻せてきたぞ、さすがは私だ。
「なんだこのざわつきは? これから何か行われるのか?」
到着したのはレセプションルームのようだが、似つかわしくないほどの喧騒に包まれている。アルゴノーツが結成するときもこんな風にざわついていたなと懐かしさを覚える程のうるささだ。はっきり言ってここから退出したい。
「ちょっと待って! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」
「…………うん? 隣の大人の人は?」
「主席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」
「…………(青髪の女はなんというかダメ男にドップリハマりそうな性格をしていそうだ。黒髪の女はポルクスと同じ、いやそれ以上にデカいな。そしてブロンドヘアーの女だが……ギリシャじゃ一番やばい女に違いない!! 間違いなく自分は愛人でも構いませんとか言うに決まってる!! そして銀髪の女はまだしゃべっていないが一番まともそうだ)」
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」
「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています」
「今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」
今なんかとんでもないこと言わなかったか、この女?
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ!」
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ! この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
「おい、ちょっと待て七神リン!! 今混乱が起きてるとか言わなかったか!!?? しかも数千ものレベルで!!?? 矯正局から脱走!!?? 治安の維持が難しくなるレベルで!!?? 挙句の果てには武器の不法流通が2000%!!??」
「…………先生、一度落ち着いてください」
「こんな状況で連邦生徒会長とやらは何をしてるのだ!!??」
「この人言う通りです!! こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ合わせて! というよりこの人は誰ですか!!」
「…………。まず連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「……え!?」
「……!!」
「やはりあの噂は……」
「ハァ!?」
「結論から言うと【サンクトゥムタワー】の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」
「認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」
「はい」
そういうと七神リンは俺の方を向いた。おいちょっと待て、何か猛烈にいやな予感が!!
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「俺は先生をやるんだよな七神リン? 先生の仕事ってのは生徒に勉強を教えることだよな!?」
俺はケイローン教授とは違って弱いんだよ!!! 俺にできるのは指揮とセイルをうまく扱うぐらいのことなんだよ!!!
「この方が?」
「ちょっと待って。この人先生なんですか!? というかどなた何ですか!?どうしてここにいるんですか!?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」
「はい。こちらのイアソン先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「俺一回もあったことも話したこともないのに!!??」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……? それに指名された本人は連邦生徒会長と面識がない……? ますますこんがらがってきたじゃないの……」
「はぁ……まあいい。私はイアソンだ。言っておくが私は先生ではなく船長が本職だ。そこを間違えないようにしておけ」
「こ、こんにちは、先生。ん? 船長? まぁいいわ、私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」
「誰がうるさいって!? わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生!」
「お、おう、よろしくな」
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
「連邦捜査部【シャーレ】。単なる部活ではなく、一種の超法規機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入することも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」
「なぜ、これだけの権限を持つ期間を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……」
「おい、【すべての学園の生徒たちを、制限なく加入することが可能】と言ったか?」
「えぇ、部活動規則にそう記載されていました」
「正気か? 連邦生徒会長のやつは」
「先生?いったいどういう意味ですか?」
「いいか早瀬ユウカ、シャーレってのは学園に所属する生徒を制限なく加入させることができるわけだが、万が一この情報が漏洩すれば連邦生徒会に因縁のあるやつが息のかかった連中を生徒としてシャーレに送り込むことだって可能だ。そうなればどんどん浸食されて食いつくされるわけだ。こんな大都市を取り仕切っていた奴ならばこれぐらいすぐにわかるはずだ」
「…………話を戻しますね」
「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に【とある物】を持ち込んでいます」
「先生を、そこにお連れしなければなりません」
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
そういうとモモカと呼ばれた女が映る映像が浮かび上がってくる。ここ最低でもギリシャと同じ技術力あるのかよ。
『シャーレの部室? ……ああ、外郭地区の? そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ……?」
「おいおい、そんな脅かしはいらないぞ」
『えーっとあなたが先生かな? 脅かしじゃないよー。矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』
「……うん?」
「おいおいおいおい、嘘だと言ってくれ」
『嘘じゃないよー。連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』
『まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』
「……」
そうして切られた連絡に震えている七神リン。絶対にめんどくさいことになるからさっさと退散したいが、私の経験上アレを放っておくとさらにめんどくさいことになるので何とかしなければ。
「あー……その、大丈夫か、七神リン」
「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
「……(いや絶対大丈夫なわけがない、むかしこんな感じになったメディアが爆発したことがあったからな)」
そうして何かを思いついたように早瀬ユウカたちの方を見る七神リン。あー今回のストレス発散はこいつらが付き合うことになるわけか。いやぁ大変だなお前らも。
「……?」
「な、何? どうして私たちを見つめてるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!? ど、どこに行くのよ!?」
いやぁ本当に大変だな諸君。私はここで落ち着くまで待っているとしよう。
「先生? 何をしていらっしゃるのですか? 先生も行きますよ?」
「ハァ!? おいちょっと待て!? 私は指揮官だ!! 前線に行ってどうする!? って力つよ!?」
次回戦闘描写ですけどうまくいくかなぁ……指揮に関しては原作先生よりも上手いことは間違いないんですけど私がそれを表現できるかどうか
イベストと恋愛要素は必要?
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イベストだけ
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恋愛だけ
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どっちも必要
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どっちもいらない