イアソン先生   作:這いよる混沌

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遅くなってしまい申し訳ごぜいません。ようやく書き上がりました
アンケートにお答えいただきありがとうございます。
当作品では恋愛要素はなしでイベストをはさみながら進めていこうと思います!!

地の文が難しい……戦闘描写が難しい……


アルゴノーツは最強なのだ!!

アビドス高校から少し離れた場所に数多くの生徒が集結している。ゲヘナ学園からはキヴォトス最高戦力の一人である空崎ヒナと風紀委員会、万魔殿の議員が乱れることなく隊列している。トリニティ総合学園の生徒は現場にこそいないが演習地点で砲撃支援がいつでも行える状態に入っている。そこに対策委員会と便利屋68、先生が到着した。

 

その瞬間この場にいた生徒全員に緊張が走る。これまで見てきた先生からかけ離れた威圧感を放ちながら歩く姿に多くの生徒が呼吸を止めてしまう。最も英霊が放つ本気の圧は空崎ヒナですら冷や汗をかいてしまうのだから仕方がないともいえる。

 

だがそれ以上に頼もしさが湧いて出てくる。この人がいれば決して負けることはないだろうと、目的を果たせずに終わるなんてことにはならないと思えてくるカリスマ。

 

「空崎ヒナ、ここの音声はトリニティにも届いているんだよな?」

 

「ええ、問題なく届いているわ。……それともう少しだけリラックスしてもらえないかしら? ここにいる生徒の大半が先生の圧に気おされて上手く呼吸ができてないわ」

 

「そうか、わるいな。お前ら少しばかり肩の力を抜け」

 

イアソンのその言葉を聞いてようやく呼吸を再開する生徒たち。全員の息が整うまで約5分ほどかかったがこの程度のロスであれば問題ないと考えたイアソンは何も言わなかった。

 

「ここにいる連中は俺たちとともにアビドス高等学校の生徒小鳥遊ホシノの救出とビナー討伐に挑むわけだが、一つだけ忠告をしておく」

「死をしっかりと恐れた上で死ぬ気で戦え」

 

「どういうこと先生?」

 

「俺たちはただの人間だ。物語の主人公のように世界から祝福されているわけでも、最後に必ず勝つことが確約されているわけではない。だからこそ己の限界をしっかりと見極めて戦え」

 

「風紀委員会と万魔殿は空崎ヒナの指示のもと行動しろ!! だが空崎ヒナの戦闘スタイルの都合上戦闘時は天雨アコの指示に従え!!」

 

「「「「はい!!」」」

 

「ええ、分かったわ」

 

「トリニティはアビドス砂漠に配置されているカイザーの小隊をとにかく爆撃しろ!! 連中の悪事に関しては証拠を押さえてあるから好きなだけぶっ放せ!!」

 

『承知いたしました』

 

「便利屋は別ルートでPMC基地を襲撃して施設を根こそぎ奪え!! 対策委員会は俺とともに小鳥遊ホシノを取り戻す!!」

 

「セリナ!!」

 

「はい! お呼びですか先生?」

 

「うわあ!? 急に出てこないでよ!? びっくりするじゃない!!」

 

「ご、ごめんなさいセリカさん!」

 

「お前は負傷した生徒をとにかく治療しろ。救護騎士団で動ける人材はお前以外にいるか?」

 

「団長とは今連絡が取れませんが、他の子でしたら何人かはこちらに呼べます」

 

「4名ほど連れてきてくれ。最悪人数不足になってもビナーさえ討伐すればアイツが協力するだろうしな」

 

「医療に関係されている方ですか?」

 

「医療に関係してるというか、医療を生み出した存在だな」

 

「もしかしてアスクレピオス神ですか!?」

 

「なんでヘラクレスは知らないのにアスクレピオスのことは知ってんだよ!!?? いやまあアイツが認知されていることは船長として鼻が高いが、だとしてもヘラクレスより知名度があるのはおかしいだろ!!! 」

「まぁいい!! 各自の役割は把握したな!! 小鳥遊ホシノ救出作戦を開始する!! タイムリミットは今日の正午までだ!! 各自任務が完了したらPMC基地に集合しろ!! あのいけ好かないクソ男をぶっ飛ばしに行くぞ!!」

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 


 

 

『二時の方向にカイザーPMCの兵士を発見。一個大隊の規模です、委員長』

 

「ありがとうアコ、片づけてくるわ」

 

『イオリ、九時の方向に小隊を3つ発見しました。一つ一つ確実に処理してください』

 

「了解アコちゃん。行くぞお前たち!!」

 

「「「「「おおー!!」」」」」

 

『チナツは負傷者の治療に専念してください。いくら私たちの耐久が高いとはいえ、カイザーが扱う武器の性能はバカにできませんので』

 

「了解ですアコ行政官」

 

『万魔殿の議員たちはチナツの護衛をお願いしますね』

 

「ああ、承知した」

 

「私たちが割り振られた区域の兵は全て処理する。先生には近づけさせない、行こう皆」

 

「「『はい!!』」」

 

 


 

 

『みなさん、大丈夫ですか?』

 

「全っ然大丈夫よアヤネちゃん!」

 

「まだまだ行けますよ~!」

 

『先生に教えていただいた座標まであと少しです!!』

『……っ! 前方に敵を発見しました!! 距離は2㎞、もうすぐ接敵します! みなさん、対応の準備を……』

 

 

ドゴオォォォォン!!

 

 

『!? あれは……!! L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!!』

 

「ってことは!!」

 

「もしかして!!」

 

『あ、あはは……わ、私です……』

 

「やっぱり!! ヒフ──」

 

『ち、違います! 私はヒフミではなく、ファウストです!!』

 

『……あはは』

 

「わあ、ファウストさん!! お久しぶりです!! ご自分で名前を言っちゃってましたが、そこはご愛敬ということで☆」

 

『あ、あれ!? あぅぅ……!』

 

「おいヒフミ」

 

『せ、先生! 私は決してヒフミではなく覆面水着団のファウストで……』

 

「お前何が普通の生徒だ!! がっつりティーパーティーと繋がりあったじゃねえか!!!!」

 

「うそ!?」

 

「そうなんですか!?」

 

「びっくり」

 

『あ、あれはナギサ様が私によくお声をかけて下さっているだけで……』

 

「それを世間一般的に繋がりがあるって言うんだよ!!! お前そんな立場でブラックマーケットを歩き回るなよ!!!! この間ナギサと話したときにあの時お前を助けてなかった場合のことを考えて肝が冷えたんだよ!!!」

「他にも言いたいことはあるが今の砲撃は助かった!! もう三発ほどぶち込んでやれ!!」

 

『で、ですが榴弾砲にも限りがありますし……』

 

「あとでシャーレに領収書もってこい!! 補充に必要な資金は連邦生徒会から出してやる!!」

 

『わ、分かりました!……あぅぅ、本当に大丈夫なんでしょうか

 

『目標の地点に到着しました! この辺りに、ホシノ先輩が閉じ込められているはずです! この周囲のどこかに、きっと……!』

 

「……ここって学校? この痕跡……多分学校、だよね?」

 

「砂漠の真ん中に学校……もしかして」

 

「……趣味の悪いことをしやがる野郎だなクソ男」

 

「人聞きの悪い事を言う男だな先生は。そうともここは、本来のアビドス高等学校本館だ」

 

『……!! 気を付けてください!!』

 

「あんたは……!! どこまでも私たちのことをバカにして!!」

 

「よくぞここまで来たものだ、アビドス対策委員会」

 

『敵の増援多数……! この数字……おそらくこの辺り一帯の全兵力が……』

『カイザーPMCはきっと、ここで総力戦に持ち込むつもりです……!』

 

「砂漠化が進行し、捨て去られたアビドスの廃墟……ここが、元々はアビドスの中心だった」

「……かつてキヴォトスで一番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている」

「ゲマトリアは、ここに実験室を立てることを要求した」

 

『実験室……!?』

 

「そんなことよりも、ホシノ先輩はどこですか!」

 

「あの副生徒会長なら、向こうの建物にいる」

「もしかしたら、すでに実験が始まっているかもしれないが……」

 

「……っ!」

 

「彼女の元に行きたいのであれば、私たちのことを振り切って行けば良い。君たちにそれができるなら、の話だが」

 

「ああ、ありがたくそうさせてもらうさ」

 

『先生……!?』

 

「この数を相手にするのはちょっとキツイわよ!?」

 

「……この状況を理解していないのかね、先生?」

 

「いいえ、状況を理解していないのはあなたの方です」

 

「狐坂ワカモに……貴様ら……!!」

 

「な、なんで……ここにカタカタヘルメット団がいるのよ!?」

 

『……カタカタヘルメット団だけじゃありません。これまでアビドス高校にちょっかいをかけてきたヘルメット団全員がここにいます……!!』

 

突如として現れた狐坂ワカモと数多のヘルメット団。その彼女たち全員がカイザーPMCに怒りの感情を向けている。

 

「先生とワカモの姉御から教えてもらったんだ。あんたらが本気で学校を守っているって。アビドスが大好きで何が何でも守り通したくて必死に足掻いてるんだって……」

「私たちがやって来たことはあんたらの思いをバカにするようなものばっかだ。今更謝ったって許してもらえるなんて微塵も思っていない」

「私たちは学校がつまらないとか、勉強に追いつけなくて学校を退学したバカの集まりだ。……それでも、それでも越えちゃいけないラインが分からなくなっちまったわけじゃない!!」

「ここは私たちとワカモの姉御に任せて先に進んでくれ!! 絶対にこのふざけた大人をぶっ飛ばしてやる!!」

 

「あたしたちにあんなにアツい連中を殺させようとしやがって絶対に許さねぇぞ!!」

 

「……そういうことですので、皆さん早く小鳥遊ホシノを救出してください」

 

「今更謝ったって……でもアンタたちにここは任せるわ!! 行きましょう、先輩、先生!!」

 

『ワカモさんに、ヘルメット団の皆さん……よろしくお願いします!!』

 

「対策委員会ィィ!!!! これまでありとあらゆる手段を講じてきた!!!! それでも貴様らは、滅びかけのあの薄汚い校舎に最後まで残り、しつこく粘って、借金を返済しようとしてきた!!!!!」

「あれほど懲らしめたのに!!!! 徹底的に苦しめたのに!!!! 毎日毎日楽しそうに!!!!!! シャーレの先生が来てからは特に顕著になって私をイラつかせてきた!!!!!!」

「貴様らのせいで!!!!! 私の計画があぁぁっ!!!!!!!」

 

「あなたの人生計画が破綻しようが私には関係ありませんが、先生への侮辱は許しません……!!」

 

ワカモの愛銃から放たれる弾丸がカイザーPMCの右腕を貫く。

 

「がああぁぁ!!!」

 

「ワカモの姉御に続け!!! 先生とアビドスの先輩をバカにしやがったあいつを絶対に逃がすな!!!」

 

「(先輩……?)先生、ホシノ先輩のところに行こう!」

 

 


 

 

『ねえ、ホシノちゃん。私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、これは夢なんじゃないかなって思って、何度も頬をつねったの』

『ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩がそばにいてくれるなんていう夢みたいなことが、本当に嬉しくて……』

『うーん、上手く説明できてないかもしれないけど……』

『ただ、こうしてホシノちゃんと一緒にいられることが、私にとっては奇跡みたいなものなの』

 

『……毎日毎日、こうして一緒にいるじゃないですか』

『昨日も今日も、明日もそうです。こんな当たり前なことで、何を大袈裟なことを』

 

『はぅ……だって……』

 

『【奇跡】というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ』

 

『……ううん、ホシノちゃん。私は、そうは思わないよ』

『ねえ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも可愛い後輩ができたら、その時は――』

 

「……ごめんなさい、ユメ先輩。私はあなたとの約束を……」

 

「先輩はすぐそこにいるはずです!!」

 

「ん、壊れない……もう一度……」

 

「あ、アヤネちゃん!? どうしてここに!?」

 

「シャーレに貸してもらったヘリで! ホシノ先輩は!?」

 

「ここです! でもドアが開かなくて……!!」

 

「ええい、俺に代われ! ドアなんざぶっ壊せばいいんだよ!!」

 

 

ドカアアアァァァンッ!!!

 

 

ちょっ、危ないわよ先生! また怪我しちゃうじゃない……って壊れた!? 先生いつからこんな怪力に!?」

 

「ゲヘナとトリニティに俺の名前が知れ渡ったことで知名度補正が働き始めたんだよ!」

 

「何言ってるかよくわかんないけど、これでホシノ先輩を助けられるのよね!? 行きましょう!!」

 

「(一体、何が……)」

「(体が自由に……? 夢でも見てるのかな……)」

「(みんなの声が聞こえたし、夢か……)」

「(声……)」

「(こっちの方、かな……)」

「(夢でもいいから……最後に、もう一度だけ……)」

 

 

ガチャン!

 

 

「「「「ホシノ先輩!!!!」」」」

 

「あ、あれ……どうやって……」

「どうして……だって、私は……」

 

「小鳥遊ホシノ」

 

「せ、先生……? ど、どうしたの? そんなに怖い顔をしちゃって……」

 

「お前は自分がどれだけ愚かなことをしたのかわかっているのか!!! アビドスの指揮官たるお前が諦めたらこいつらがどうなるのかなんてわかりきった話だろ!!!」

 

「で、でもあの時の私にはこれしか……」

 

「身を捨てて得られるものなどそんなにない!! しぶとく立ち回って生き残ってこその人間だ!! 現状を変えられるのも大切なモノを守れるのも生者のみに与えられた特権だ!! お前はそれを自分勝手な解決方法を選んで捨てやがった!! これほど愚かな指揮官なんざ生まれて初めて見た!!」

 

「……先生、その辺りにしてあげたら?」

 

「いいや、まだ言い足りない!!! だがここでどれだけお前に説教したところでお前に【諦める】という選択肢が残っている以上無駄な話だ!!」

「だから俺はお前から【諦める】選択肢を奪いあげる」

 

「……へ?」

 

「アビドスが抱える問題は、深刻な砂漠化・在校生の不足・土地の所有権・借金の4つだ。俺が前者二つを片付けてやる。だからお前はアビドスの最後の生徒会として後輩の面倒を見続けろ」

 

「……いやいやいや、在校生の不足なんてどうやって」

 

「ヘルメット団をアビドスの生徒として編入させる」

 

「うそでしょ!?」

 

「わあ、後輩に同級生、先輩がいっぱいですね☆」

 

「ノノミ先輩!? あいつら私たちに散々迷惑かけてきたじゃない!!」

 

「うへぇ!? どういうことなの!? おじさん全然理解できないんだけど!?」

「先生! どういうこと!?」

 

「あいつらはお前らがいる学校で新しく学びたいそうだ。お前らの学校に通えるのなら更生するってよ」

 

「だ、だとしても砂漠化なんてどうやって解決するのさ!?」

 

「今から見してやるよ。さあPMC基地へ移動するぞ」

 

 


 

 

小鳥遊ホシノ救出作戦が開始されてから少したったころ、英雄たちはある地点に固まっていた。

 

アビドスを蝕む怪物を打ち倒すための招集に応じた船員はアタランテ、メディア・リリィ、ヘラクレス、アスクレピオス、ディオスクロイ、カイニス、テセウスとこれでもかという豪華メンバーである。

 

「それにしてもアタランテが冷静なのは珍しいね」

 

「……ただでさえ我の強い奴らが応じたというのにアーチャー霊基の自身を押し退けてバーサーカー霊基でヘラクレスが応じたせいで私も冷静にならざるを得なかっただけだ。本当ならば今すぐにでもカイザーPMCのクビを獲りに行っているところだ」

 

「あはは……でも、正直ビナーには同情しちゃうね。ただでさえ厄介なヘラクレスがいるというのにメディアの補助を受けたバーサーカー霊基の彼を相手することになるんだから」

 

「……ふん、子どもたちを苦しめてきたのだ。当然の報いとして受けさせるべきだ」

「メディアよ、ビナーの居場所は掴めたか?」

 

「ええ、探知しました。これよりビナーをカイザーPMC基地へ誘導します」

 

「誘導するっつってもどうやんだよ?」

 

「アタランテに敵視の魔術をかけることで誘導します。その際に時間調整のためにカストルとポルクス、テセウスにはビナーの前方で適度に攻撃をしてもらいます」

 

「まかせてくれ、メディア」

 

「……なぜ我らがお前の指示に」

「兄さま……!!」

 

「イアソン様ならきっとこうします。いえ、確実にこの陣形で行くでしょう」

 

「……奴の顔に免じてしたがってやろう」

「ええ、あの子どもたちに導きの光を灯して見せましょう」

 

「ヘラクレスとカイニスにはビナーを後方から攻撃してもらいます」

 

「いいぜ、このカイニスがぶっ壊してやるぜ!」

 

「■■■■■■■!!!!!」

 

「僕は何をすればいい?」

 

「アスクレピオスには私とともサポートに徹してもらいます」

「それではみなさん配置についてください。ヘラクレスは私が合図を出したらここを全力で攻撃してください」

「それでは行きます!! やりなさいヘラクレス!!」

 

「■■■■■■!!!!!」

 

ヘラクレスの剛腕から放たれる一撃は大地を激しく揺らし、砂漠に身を潜めていた巨大な蛇を大地へ弾き出す。休眠状態からたたき起こされ脳ユニットが混乱状態に陥っているなか、ビナーが捉えたのは異常なまでに目を奪われる緑色の少女(アタランテ)。そんな彼女が走り出すとともにビナーの巨体も動き出す。

 

少女を追いかけ始めてから数十分経ってようやくビナーの脳ユニットは異常事態であることを認識し始めた。自らの前方で動いている生命体はあの少女に加えて三体いるというのにどういうわけか視線をずらすことが出来ない。一刻も早く生体制御を脳ユニットから自動制御ユニットに切り替えてここから離脱すべきなのに後方から迫りくる神秘からの攻撃を避けるためにはこのまま前進するしかないストレス。

 

それに加えてこの砂漠地帯(アビドス)に本来ならいるはずのないはるか遠方(オデュッセイア)の神秘がいることを処理しきれずオーバーヒート状態になっていた。

 

そんな状況の中、とある施設を目視したビナーはようやく自らの運命を悟るのだった。

 

 


 

 

「先生! 無事小鳥遊ホシノを救出できたのね」

 

「ありゃりゃ、ゲヘナの風紀委員長ちゃんまで協力してくれてたなんて……申し訳ないな~」

 

「……以前より元気がないようだけど、何かあったの?」

 

「ホシノ先輩は自分勝手な行動を先生に思いっきり叱られちゃったんです」

 

「私たちも一言いってやろうとは思ってたんだけど……あそこまで怒る先生を見たら何にも言えなくなっちゃったし」

 

「おーい!! 先生!! せんぱーい!!」

 

「あなた様ただいま帰還いたしました」

 

「ワカモさんもヘルメット団のみなさんもありがとうございました!」

 

「……私はまだ認めてないからね」

 

「行動で示していくから見ててくれ先輩!」

 

「先輩!? 私1年生なんだけど!?」

 

ヘルメット団と対策委員会が盛り上がってるのを横目に、暗い表情をしながら歩いてくるワカモに声をかける

 

「よくやったワカモ。あのクソ男はどうなった?」

 

「申し訳ございません、取り逃がしました」

 

「いや、むしろナイスだ。お前らがあいつを仕留めていたら今後の予定がだいぶ狂ったからな」

 

「……あなた様の意図を正確に判断できるよう精進いたします」

 

「勘弁してくれ……。もうじき12時になる、アビドスを除いた人員を集めて来てくれ」

 

「承知いたしました」

 

「アビドスを除いた人員ってどういうことよ。私たちじゃ頼りないってわけ?」

 

「アビドスの問題なのですから私たちが取り組まない訳には行きません!」

 

「まだまだやれるよ、先生」

 

「アヤネの言う通りこれはアビドスの問題なのだからお前らを作戦から外す訳には行かないのだが⋯⋯勝手に行動したバカを監視する役が必要なのでな、お前らはビナーの討伐を見届けろ」

 

「こんなところでも迷惑をかけちゃうとは……ほんとうにごめんねみんな」

 

「そういうわけだからこいつをちゃんと見張っておけ」

 

「先生、全員揃ったわ」

 

「じゃ俺は最後の一仕事をして来るわ」

 

「あなた様私たちは何すればよろしいでしょうか?」

 

「なんでも言ってくれよ先生! バッチリこなしてみせるぜ!!」

 

「ゲヘナの連中にはすでに言ったが弾幕を展開してくれればそれでいい」

 

「そんなもんで大丈夫なのか? ワカモの姉御からはとにかくデカい相手だって聞いてるんだが」

 

「お前らが出過ぎるとかえってあいつらの邪魔になるんだよ」

 

「……それはヒナ委員長であってもですか?」

 

「間違いなく初対面であわせることなんて無理だろうな」

 

「……一体どんな人たちなんですか?」

 

「説明するより実際に見た方が早いんだよ」

 

『先生! ビナーの姿を確認しました!』

 

「空崎ヒナ! ワカモ! 人員の配置に関してはお前らに任せるぞ!」

 

「ええ、任せて」

 

「承知いたしました」

 

 


 

 

PMC基地に現れた巨大な蛇に驚いて思考停止している生徒たちをよそにイアソンは船員たちに指示を出してゆく

 

「イアソン! 言われた通り連れてきたぞ!」

 

「アタランテはそのまま突っ走れ! お前が立ち止まったら破綻する!!」

 

「テセウスはアタランテの補助をしろ!」

 

「任せてくれイアソン!」

 

「カストロとポルクスは宝具を使ってビナーの体勢を崩せ!」

 

「行くぞポルクス!」

「ええ、兄さま!」

 

瞬間二人の身体が光に包まれてゆく。その幻想的な光景に皆の視線が一斉に集まる。

 

「畏れよ……」

「崇めよ……」

「天にて輝く者、導きの星!」

「我らは此処に降り立たん!」

「「―――双神賛歌(ディオスクレス・テュンダリダイ)!!」」

 

カストロの盾とポルクスの剣のコンビネーションがビナーを貫き、その巨体を大きく傾けさせる。

 

数時間におよぶ追跡や強烈な神秘攻撃によって機械生命体であるビナーは自らが死ぬ運命にあることを悟り、使命や存在意義を放棄してでも生き残る生への執着を獲得していた。だが先程の攻撃(宝具)に加え空崎ヒナたちによって展開される弾丸の包囲網のせいでまともに行動ができず、ただ蹂躙されていく。鋼鉄の肉体も大柄の狂人と海の神秘を纏う少女によって破壊され、骨格が顕になってしまっている。

 

あまりに一方的な光景にヘルメット団やゲヘナ・トリニティの生徒はおろか対策委員会すら可哀そうな目でビナーを見ている。

 

しかし、イアソンは慢心することなく着実にビナーを仕留めにいく。

 

「ビナーを上空に思いっきりぶっ飛ばせ! カイニス!」

 

指示を受けたカイニスはビナーから離れ、十分に加速できるだけの距離をとる。

 

「ああ! カイニスが参る! オレは自由だ! 海も、大地も、俺を繋ぎ止めることは出来ぬ! 見るがいい!」

飛翔せよ、わが金色の大翼(ラピタイ・カイネウス)!!」

 

黄金の翼を持つ鳥へ変化したカイニスは加速を続け数トンはあるであろうビナーの巨体を見事上空へ吹っ飛ばした。

 

「……チッ、いってぇな。おい、イアソン! 言われた通りやってやったぞ!」

 

「よくやったカイニス! さあ最後の一押しだ!」

 

そう叫びながらイアソンは懐から大人のカードを取り出し、天へ掲げる。

 

聖杯もどき(大人のカード)!! メディアとヘラクレスにとびっきりの魔力を送れ!!」

 

強烈な光を発しながら大人のカードから魔力が発生し、それらがメディアとヘラクレスに注がれていく。

 

「メディア! その魔力を使ってヘラクレスの狂化を解除しろ!!」

 

「―――!! ええ! わかりました! イアソン様!!」

「このメディアが、あなたにかけられた狂気を取り除き全力で強化します! 神話に名高き英雄の絶技を見せつけてあげなさい!」

 

神代の言語によって構築された魔術と大人のカードが狂気を取り除き、ヘラクレスに理性と知性を蘇らせる。

 

「⋯⋯狂気に包まれた霊基でありながらお前とこうして言葉をかわせるとわな」

 

「ブチかませ! ヘラクレス!! ギリシャ最強の力を見せてやれ!!」

 

「ああ、任せろ」

 

上空から落下してくるビナーを睨みながら大剣を構える姿は正しく英雄と呼ぶに相応しく、この場にいる誰もがこの後の光景を想像することが出来た

 

「――――射殺す百頭(ナインライブズ)!!」

 

ハイスピードで繰り出される9連撃の斬撃がビナーに襲い掛かる。その速度は空崎ヒナですら見切れぬ程である。

 

瞬きする暇もなくビナーはギリシャ最強の英雄の絶技によってバラバラになってしまった。

 

「はは……」

 

イアソン(先生)ヘラクレス()を最強と呼んでいたこともあってこうなることは一応予想していたが、それでも長い事自分たちを苦しめていた元凶をこうも簡単に仕留める姿を見て小鳥遊ホシノ()は黒い感情が湧き出てしまう。

 

「(先生がもっと早くアビドスに、キヴォトスに来てくれてたらユメ先輩は……)」

「(……やめよう。先生もよく分からないうちにキヴォトスに来てたって言ってたし)」

「(何より、ユメ先輩との思い出(別館)はみんなが守ってくれたんだから)」

 

「……これで砂漠化が何とかなるのよね?」

 

「……先生、どうなんでしょうか?」

 

「そうだな。明日には落ち着いてると思うぞ」

 

「「「「やっっっったああぁぁぁ!!!!」」」」

 

「そうだ! ホシノ先輩!」

 

「な、何かなセリカちゃん? おじさんもう悪い事してないよ?」

 

「おかえり!!」

 

「ああっ、セリカちゃんに先を越されてしまいました! ホシノ先輩、おかえりなさい、です!!」

 

「おかえり、ホシノ先輩」

 

「ホシノ先輩、おかえりなさい!!」

 

「本当は先輩を救出した時に言いたかったんだけど、先生がすごく怒ってたから言えなかった」

 

「……邪魔して悪かったな」

 

「まぁ私たちの言いたかったことだいぶ代弁してくれたから許してあげる……ってどこ行くのよ?」

 

「ああ……後始末?」

 

「後始末って、ビナーのですか?」

 

「それもあるが……大人の仕事ってやつだ。俺は空崎ヒナとかワカモに一言言ってから帰る」

「アスクレピオス」

 

「僕に何か用か?」

 

「お前はここに残ってケガ人の治療をしてやってくれ」

 

「もとよりそのつもりだ。お前がやろうとしていることに僕は必ず必要というわけではないからな」

「何より僕は医者だ。患者を治すことこそ僕の役目だからな」

 

「まぁ詳しい話は明日アビドス高校で話すからちゃんと小鳥遊ホシノを連れて来いよ」

 

そう言ってイアソンはアスクレピオスを除いたアルゴノーツメンバーとともにアビドス砂漠から去っていった。

 

 


 

 

カイザー理事は8人の男女に追い詰められていた。

 

「ク、クソッ!! 近寄るな貴様ら!! お前たちがやろうとしていることは立派な犯罪だぞ!!」

 

「お前がそれを言うのか? なんともまぁ滑稽な姿だなぁ!!」

 

「子どもたちを苦しめてきた汝に救いがあるとでも?」

 

「れ、連邦生徒会に属する貴様が犯罪行為を行えばどうなるか分かっているのか!?」

 

「連邦生徒会ィ?? なぁアーチャー、連邦生徒会ってなんだろうなぁ?」

 

「この世界の自治組織とかでは無いか?最も我らとは何の関係もないがな。なぁセイバーにランサーよ?」

 

「そうだな、そんな組織微塵も知らねぇな」

 

「ああ、人間が作り出した組織など微塵も知らん。なぁ妹よ」

「ええ、兄さま」

 

「あはは、そうだね。僕も聞いたことないや」

 

「き、貴様ら! 一体何が目的な⋯⋯ッッッ!?」

 

カイザー理事の発言を遮るかのように光弾が放たれ足元に着弾する。恐る恐る光弾が飛んできた方向へ顔を向けると、怒りを一切隠す事なくこちらを睨んでいる少女がいた。

 

「黙りなさい。⋯⋯この男が、この男が!!」

 

「ヒッ、ヒィィィイ!!!」

 

燃え上がる感情を抑えることなく自分に近づいてくる少女に、カイザー理事は完全に怯えてしまっている。

 

「待て、キャスターよ」

 

「⋯⋯何故ですか、バーサーカー。貴方だってこの男を許せないはずです!!」

 

「⋯⋯キャスターの言う通り、私もこの男を許せぬ。だがここで、感情のままに動けば計画が破綻してしまう」

 

「そのままキャスターを窘めておいてくれバーサーカー。さてお話しようぜカイザー理事」

 

「ぐうう!! 先生……!!!」

 

「だから知らねぇって。まあいいか。お前にはとある提案を持ちかけに来たんだよ」

 

「て、提案だと……?」

 

「ここに来る途中でUSBを拾ってな? 確認したところお前らがこれまでアビドス高校及びアビドス生に行ってきた悪事がまとめられたんだよ」

 

「なっ、何!? おい、待て、話をしよう!!」

 

「だから今話してんだろうが。俺たちが勝手にお前を裁くのは良くないから、この後警察組織に持っていこうと思うんだが……これに関して取引をしないか?」

 

「と、取引?」

 

「アビドス高校の借金の金利を正常に戻し、アビドス自治区の土地の権利を正常価格で販売するしてくれたら警察組織にそこらへんは反省してたと伝えてやるよ」

 

「ふ、ふざけるな!! そんな取引に誰が応じるか!! ……ッッッヒィ!!

 

カイザー理事の首元に3つの剣が当てられる。下手なことを言えばこいつらは躊躇うことなく自分の首を切り落とすという確信があった。

 

「わ、分かった!! 応じる!! だから、私を殺さないでくれ!!」

 

「お前らもうやめていいぞ」

 

先生に似た男がそういうと首元から剣が離れていく。

 

「さて、たった今正常価格になったアビドス自治区の土地の権利だが全部買わせて貰うぞ」

 

「こ、ここに書類がある! それにさっさと記入して出て行ってくれ!!」

 

カイザー理事は震えた手で男に書類を渡し、受け取った男はスラスラと記入していく。

 

「……これでよし。じゃあな明日の警察とのやり取り頑張ってくれ」

 

そういうと男はエレベーターへ向かっていく。男の指示に従っていた7人の男女も彼とともにエレベーターへ向かうかと思いきや振り返りカイザー理事を取り囲む。

 

「な、何故だ!? 取引には応じた!! 金利も戻した!! 土地の権利も売った!! まだ何かあるのか!?」

 

「……私たちはお前に一つ言っておくことがある」

 

「「「「「「「何も知らないお前(汝・貴様・貴方・テメェ・君)がアイツを侮辱するな」」」」」」」

 

「次同じようなことをしたら私たちはお前を容赦なく殺す。我が友が止めたとしても殺す。分かったな」

 

そう言って男女は理事室から出て行った。

 

 


 

 

ビナー討伐の翌日、小鳥遊ホシノはアヤネ、セリカ、ノノミとともに登校していた。

 

「うへ~、みんな警戒しすぎだよ。もう逃げないって」

 

「先生にちゃんと連れてくるようにと言われてますから」

 

「そもそも一人で勝手に行動した先輩のことを信用できないわ」

 

「セリカちゃんに嫌われちゃたかぁ。おじさん悲しいよ~」

 

「なっ、嫌いになったわけじゃないわよ! ただまた一人でどっかに行くかもしれないから見張ってるだけ!」

 

「もう!ホシノ先輩、セリカちゃんをからかっちゃダメですよ!」

 

「そういえば、先生は土地の方も何とかすると仰っていましたがどうなさるんでしょうか?」

 

「またポケットマネーで買収するとか?」

 

「⋯⋯だとしたら受け取れないかなぁ」

 

「どうしてですか?」

 

「先生がカイザーみたいなことをするとは思ってないけど、先生のお金で買ったんだからそれは私たちの土地じゃなくて先生の土地になっちゃってるでしょ?」

 

「⋯⋯確かにそうね。でも他に解決方法なんてある?」

 

「⋯⋯例えばさっきから見えてる建物が何とかしてくれるとかでしょうか?」

 

ノノミが指差す方向にはここにいる全員が敢えて触れていなかった巨大な石で作られた四角錐型の建造物が建てられていた。それも1つではなく5つである。

 

「あんなの昨日まで無かったわよね?」

 

「そうですね⋯⋯あれは先生が作ったのでしょうか?」

 

「なんにせよ先生が今日説明すると言ってたんだし早く学校へ行こっか〜」

 

4人がアビドス高校へ到着するとヘルメット団に囲まれてどうしたらいいか迷っているシロコの姿が見えた。今まで何度も戦ってきた相手に尊敬の眼差しで見られている状況にさすがのシロコも上手く対処出来ていない姿にホッコリしていると、4人に気づいたシロコが走ってくる。

 

「みんな、おはよう」

 

「おはよう、シロコ先輩」

 

「おはようございます、シロコ先輩」

 

「おはようございます☆ シロコちゃん」

 

「おはよ〜、シロコちゃん」

 

「ちゃんとホシノ先輩が来てて安心」

 

「も〜、シロコちゃんまで。おじさん拗ねちゃうよ〜」

 

「あはは⋯⋯そうだ、シロコ先輩。あの建物何か分かりますか?」

 

「私も知らないからアヤネたちに聞こうと思ってたんだけど⋯⋯」

 

「シロコ先輩も知らないとなると、やっぱり先生が関係してるのねあれ」

 

「お前らちゃんと揃ってるか?」

 

「やっと来たわね先生。全員揃ってるわ」

 

「ホシノ先輩をちゃんと連れてきました☆」

 

「それじゃ、ちゃんと説明してよね」

 

「いいぞ。何から聞きたい?」

 

「まずはあの変な建造物についてよ!! 何よあれ!?」

 

「あれはアビドス自治区に必要なものだ」

「アビドス自治区は企業名やお前らの神秘、土地の環境からみて汎人類史におけるエジプトであると俺は考えた」

「いくらビナーを討伐したとはいえ、砂嵐をどうにかしなきゃいけない。ここまではいいな?」

 

「いやいや! 汎人類史にエジプトって何よ!? わけわかんないんだけど!?」

 

「セリカちゃんの言う通りよく分かりません……」

 

「簡単にいえば俺が生まれた所の近くにアビドスと似た環境があったんんだよ」

「話を続けるぞ。砂嵐をどうにかしようにもアルゴノーツには天候を操作する宝具を持った奴なんざいない」

「ならエジプト関連のやつに頼ればいいわけだ」

 

「先生の人脈ってすごいね~。それじゃアレはその人が?」

 

「違うが?」

 

「ええ……それじゃどういうことなの?」

 

「エジプトに関係する奴との縁なんざあるわけがないのでな、とにかく悩んだ」

「そうして俺はお前らを使えばいいと考えたわけだ」

 

「私たちを……ですか?」

 

「ギリシャもエジプトも神の存在が強いんだよ。で、お前らの神秘はエジプトの神に近しいわけだ」

「お前らを祀る神殿を造れば地脈も安定するだろうってことでピラミッドを昨日作ったんだよ」

 

「ピラミッドは神様を祀る処なのですか?」

 

「基本的には王の墓所としての側面が強いのだが、生贄を捧げる場でもあったんだよ。生贄を捧げるのは怪物や神がほとんどだから上手く作用してくれて助かったわ」

 

「それ結構むちゃくちゃなこと言ってない?」

 

「そもそもこの世界の神秘は歪だ。神秘が【どんな性質を持つのか】よりも【どう解釈できるか】を重視してやがる」

「だから俺はピラミッドを【神を祀る神殿】として解釈した」

「つい先程まで観測してたが砂嵐はもう発生してねぇ。したとしても自然現象程度になってるはずだ」

 

「⋯⋯とにかくもう砂漠化については心配しなくていいわけね」

 

「ああ、それでいいぞ」

 

「というか数時間であの大きさのピラミッドを5つも建てられるものなの?」

 

「そんなのアルゴノーツ全員で建てたに決まってるだろ」

 

「先生の船員ってあれが全員じゃなかったの!?」

 

「それでは次は私が。アビドス自治区の土地の権利はどうなりましたか?」

 

「それについてはこれを読め」

 

「これは⋯⋯連邦生徒会からですか?」

「⋯⋯えっ!? せ、先生!!」

 

「何が書いてあったのアヤネちゃん!?」

 

「私たちにも読ませてください!」

 

その書類には連邦生徒会がアビドス自治区の全ての土地の権利をカイザーから購入しアビドス高等学校へ譲渡することをこれまでの不誠実な対応への謝罪とお詫びとすることが記載されていた。

 

「先生これって⋯⋯」

 

「まず俺はアビドス自治区の砂漠化が始まった頃から現在までの連邦生徒会の対応を調べた」

「それがまぁ酷いもんで。2年前ぐらいになってようやく支援を始めるとかどうなってんだ?」

 

「嘘でしょ!? そんなにアビドスは放置されてたの!?」

 

「ホシノ先輩、どうなんですか?」

 

「⋯⋯そうだね、ここに連邦生徒会の人間が来るようになったのは確かに2年ぐらい前からだよ」

 

「(俺が来ることを想定した上での対処だったってことは黙っておくか)」

「(あまりに不自然すぎる)」

 

「最初は俺とシャーレのポケットマネーで全ての権利を購入し、お前らに譲渡することを考えていた」

「だが、小鳥遊ホシノの発言からこの方法ではダメだと考えた」

「小鳥遊ホシノ、俺は土地の権利を俺個人の力ではなく、社会の仕組みとして取り戻したぞ」

 

「⋯⋯先生の嘘つき。昨日は自分が解決してやるって言ってたのに」

 

「そりゃ大人は嘘つきだからな」

 

嘘をつかれたというのに笑みを浮かべる小鳥遊ホシノと自慢げに笑うイアソン。そんな微笑ましい状況に申し訳なさそうにノノミが声をかける。

 

「最後にどうしても確認しておかなければ行けないことがあります! アビドス対策委員会の公認化についてはどうなりましたか?」

 

「そういやそうだったな、ホレ」

 

「ありがとうございます!」

 

「それからホシノ、お前にはこれを」

 

「アビドス高校生徒会の公認化って⋯⋯先生、これ」

 

「アビドス対策委員会の公認化の過程で梔子ユメのことを知った」

 

「⋯⋯!! そっか⋯⋯」

 

「梔子ユメに起きたことについてはここでは何も言わない。だが、お前が真実を手に入れるために行動する際に少しばかりは役に立つだろうからな」

 

「⋯⋯本当にありがとね、先生」

 

「あと銀行強盗に関してはヴァルキューレから厳重注意を受けてるから二度とやんなよ」

 

「さすがにもうやらないわよ。ね、シロコ先輩?」

 

「⋯⋯もちろん」

 

「本当に大丈夫なんでしょうか⋯?」

 

「おーい! 先輩! 先生! 話が終わったならBBQしよーぜ!!」

 

「野菜に肉、飲み物も沢山用意してあるぜ!!」

 

「⋯⋯念の為に聞いておくけど、お店から盗んだりしてないよね?」

 

「なっ!? そんなことするわけないっすよ! 犯罪じゃないっすか!」

 

「だってさ、シロコちゃん」

 

「⋯⋯反省してる」

 

「それじゃ先生、行こっか〜」

 

「いや、お前らだけで行ってこい」

 

「どうしてよ? ⋯まさか、大怪我でもしてるの!?」

 

「ちげぇよ、もう時期来るだろうしな」

 

「来るって誰が?」

 

「先生! 無茶をしていないようで何よりです!」

 

「うわぁ!? どこから出てきたのよ!?」

 

「再検査受ける約束しててな。BBQはお前らだけで楽しめ」

 

「さぁイアソン早くトリニティに移動するぞ」

 

「はいはい。⋯⋯おい待てなんでまだアスクレピオスがいるんだよ!?」

「お前ら今日の朝退去しただろ!?」

 

「どういう訳か僕はまだ退去しなくて済むそうだ。ビナー討伐が終わったのだからキヴォトスの医学がどれほどのものか見て回るべきだ」

 

「まぁいいか。それじゃあなお前ら」

 

「バイバイ、先生」

 

 


 

 

第一章 没落砂漠都市アビドス

 

不屈の乙女

 

都市再興




ようやくアビドス編完結です!
3章に関しては原作の展開によっては書くといった形にさせていただきます。
2〜3本幕間を挟んでミレニアム1章に入ります!

イベストと恋愛要素は必要?

  • イベストだけ
  • 恋愛だけ
  • どっちも必要
  • どっちもいらない
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