前話と今回でセリナのアスクレピオスへの敬称が異なっていますが救護中はアスクレピオスのことを先生と呼びそうなので意図的に変えています
カリンのエミュが難しい⋯⋯
アスナが抱えてる不調に関しては具体的な名前を使用してトラブルに発展することを防ぐためにふわっとした設定でやらせて頂きます
今回も短めです
身体に異常なしと判断されたイアソンだが、大事をとって数日の入院が決められていた。そんな彼の元に1人の少女が訪れる。
「おはようご主人様! 今日もいい天気だね!」
「⋯⋯頼むから声量を下げてくれ。俺が怒られる」
「あっごめんねご主人様」
彼女の名前は一之瀬アスナ。イアソンのことをご主人様と呼ぶミレニアムサイエンススクールの3年生である。
「⋯それから俺の事をご主人様と呼ぶのをやめろ。街中で呼ばれたら説明しなきゃいけなくなるだろ」
「えー、ご主人様はご主人様なんだもん」
彼女がイアソンのことをご主人様と慕うようになったのは3日前に起きた出来事が関係している。
「⋯⋯これで再検査は終了です。結果が出るまでそれなりに時間がかかるのと不測の事態に備えて救護騎士団本部で安静に過ごしてくださいね先生」
「ハイハイ、わかったわかった」
「⋯⋯イアソン、わかっているんだよな?」
「お前がいるこの状況で医者の指示を無視するわけないだろ⋯⋯」
「だが、散歩ぐらいはいいよな? ずっと病室に籠ってるなんざ俺はゴメンなんだが」
「アスクレピオス先生、どうしましょうか?」
「⋯⋯それぐらいなら別に構わない。だが絶対に暴れるなよ」
「ああ、それじゃ早速散歩に行かせてもらう」
「⋯⋯全くアスクレピオスのヤツめ、俺が健康体なことぐらいわかっているだろうに」
「いや、この状況であいつが検査しない方がおかしいか」
独りごちりながらトリニティ自治区を散歩するイアソン。お嬢様学校地区なだけあり、周りには見るからに高級そうな店ばかりだ。どこのお店にも学生がいるが聞こえてくる会話に心からの言葉は無く、誰もが相手をどうやって蹴落とすか思考しているのが腹の探り合いで生き抜いてきたイアソンには丸分かりだ。
「(どうしてトリニティの学生はこんなことばっかり考えてんだ?)」
「(やっぱ
そんなことを考えつつ所々で起きている面倒事を回避していると*1路地裏に繋がる小道を見つけた。一見何の変哲もないただの小道であるというのに、ここで選ぶ選択が己の運命に大きく関わるとイアソンの直感が叫んでいる。
「(どうする? この小道を進むべきか?)」
「(戦闘なんかが起きれば間違いなくアスクレピオスに絞められる⋯⋯!!)」
「⋯⋯ワカモ」
「お呼びでしょうか、あなた様」
「この小道を進む。万が一の際は敵を殲滅してくれ」
「承知致しました」
警戒しながら奥へ進む二人。先生と二人きりな状況に喜んでいるワカモに対してイアソンは思考を巡らせていた。
「(どういうことだ?
「(いやそれはあり得ない。そんな嘘をついた所でリンにうま味は一切ない)」
「(だがそれ以上に……
「(アイツがトリニティに来ている可能性はあるが、限りなく低いはずだ)」
「(一体何がどうなってやがる……?)」
「お待ちください、あなた様。この曲がり角の奥に人の気配があります」
「……進むぞ。そいつには色々と聞かなきゃいけないことがある」
「承知いたしました。5秒後に突撃いたします」
「5……4……3……2……1……!! 抵抗はせずにこちらの……これは……!」
曲がり角の奥には他自治区の制服を着た少女が倒れていた。急いで脈を確認しセリナへ連絡を入れるイアソンと周囲を確認するワカモ。
「おい! セリナ! 人が倒れてる! 場所はトリニティ○✕区△□○路だ!」
「脈は異常なし! 制服はミレニアムサイエンススクール! 外傷は見た感じ無い!」
「お前! 自分の名前は分かるか!? 手足は動かせるか!?」
「名前……名前……私は……アスナ。手足は……あれ? 手足ってどうやって……動かすんだっけ……?」
「名前の確認はできたが手足の動かし方がわからなくなっている! 恐らく脳関係だ! アスクレピオスを使え!」
「ワカモ! 周囲に敵はいるか!?」
「いえ、近くには誰もいないようです」
「どうなってやがる!? とりあえず俺はユウカに連絡をしてくる! ワカモはアスナのことを見守っていてくれ!」
「ええ、お任せ下さい」
「(優しい人だなぁ……あの人に何か恩返しできたらなぁ……)」
アスナと名乗った少女は朦朧とする意識の中はそんなことを考えていた。
「アスナ先輩と連絡が取れなくなったと思ったらトリニティの路地裏に倒れているとは……」
「ユウカから聞いたときはびっくりしましたが、噂の先生が見つけてくださったとは」
「今度会う時に改めてちゃんとお礼をしなくてはなりませんね」
「……アスナ先輩大丈夫かな?」
「脳に異常があるかもしれないって……」
「先生曰く頼りになるお医者さんがいらっしゃるようですから、きっと大丈夫なはずです」
「……っとここがアスナ先輩の病室ですね。……失礼します。アスナ先輩だいじょ……」
「助けてくれてありがとー!! ご主人様!! 私、ご主人様が居なかったら危なかったかも!!」
「だあぁぁああ!!! 離れろ!! ワカモがすげぇ目でこっち睨んできてるし騒ぎすぎてアスクレピオスや他の連中が怒ってんだろうが!!!」
「あと俺は学生にご主人様と呼ばれて喜ぶような性癖なんざ持ち合わせてねぇ!!」
「お前たちここは病室だぞ……! いい加減静かにしろ……!!」
病室は非常にカオスな状況になっていた。病室にいる二人の男性のうち先輩が抱き着いている男性が恐らくシャーレのイアソン先生だと判断し声をかける。
「すみません、あなたがシャーレのイアソン先生でしょうか?」
「お前らがC&Cの生徒か! 頼むからこいつを離してくれ!! このままだと俺が学生にご主人様呼びさせる変態扱いにされる!!」
「⋯⋯その、アスナ先輩。話が進まないから1度先生から離れませんか? 先生も困っていらっしゃるようですし」
「それもそっか。ゴメンね先生。助けて貰えたのが嬉しくって抱きついちゃった!」
「⋯⋯なぁアスクレピオス、俺もう自分の病室に戻っていいか?」
「ダメに決まっているだろう。治療を施す前にお前が面倒を見ると言ったのだからな」
「なんであんなことを言ったんだ俺は⋯⋯」
「アスナ先輩の面倒は私たちが見るから安心して先生」
「治療と言えば、アスナ先輩はもう大丈夫なんでしょうか?」
「彼女が罹患していた疾患についてはこの後カルテを用いて詳しく説明するが、かかりつけ医についても話し合うぞ」
「でも、アスナ先輩の様子を見るに治ってるような気が⋯⋯?」
「初期症状の段階で処置できたからな。だが医学に絶対は存在しない。長期的な目線で治療を続けるべきだ」
「君たちキヴォトス人は特徴である頑丈さを理由に大怪我になってから医者にかかるという愚かさを抱えている。軽度であったとしても医者にかかり、医者の言うことを絶対に守れ」
「何より専門機関を頼ることを怠るなよ。探して得られる情報は患者よりも医者の方が圧倒的だからな」
「色々とありがとうございます、アスクレピオスさん」
「ふっ、僕としても大きな収穫があった。君たちキヴォトス人の特徴である頑丈さは神秘に由来しているものであり、肉体を構成する要素の1つとして組み込まれている」
「それに君たちの頭上に浮かぶヘイローは接触こそ出来ないが、僕たちで言うところの霊核と同じ役割を果たしている」
「キヴォトス人とは実に面白い生態をしている⋯⋯!」
「あなた様、あのお方は一体何を仰られているのでしょうか?」
「あいつは医学の発展をめざしてるからなぁ⋯⋯ま、新しい知識を得た時にこうなるんだよ」
「はぁ⋯⋯」
「もうこの際ご主人様呼びは認めるから街中ではやめろよ?」
「ありがとうご主人様! 気を付けるね!」
なお退院後に普通に街中でご主人様と呼ばれて誤解を解くために走り回ったイアソンであった。
ミレニアムサイエンススクール、ヴェリタス休憩室にて一人の少女が頭を抱えていた。
「うーん……どうしようかな」
「あれ? ハレ先輩どうしたの? ため息なんかついちゃって」
「マキ……それがアテナ3号の様子がおかしくてね」
「どんな風におかしくなっちゃったの?」
「定期的に意味のない言葉をしゃべるようになったんだ」
「例えばどんなの?」
「うーんと……【ゼウス】、【ヘラ】、【アルゴー号】、【アルゴノーツ】、【
「ゼウスやヘラはアテナ3号とも関わりのある名前だからまだ分かるんだけど……残りの4つはよく分からないんだ」
「うーん……あたしも聞いたことないなぁ」
「一応再起動すれば元に戻るんだけど、しばらくしたらまたしゃべり出してね……」
「さっきメンテナンスをしてみたんだけど特に異常は見つからなかったんだ」
「……なら噂の先生を頼ってみようよハレ先輩!」
「噂って……あのシャーレの先生?」
「そうだよ! 前にユウカ先輩が言ってたんだけどシャーレの先生ってギリシャ?出身なんだって! それにギリシャって神様や女神様と縁が深いらしいよ!」
「神様や女神様とも……そうだね、今度時間があるときに頼ってみようかな」
そんな(イアソンにとって本当に勘弁してほしい)案件が少女たちの中で誕生したのだった
アルゴノーツってアテナに祝福されてるんですよね……アテナ3号のアテナはギリシャの女神……あっ……
イベストと恋愛要素は必要?
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恋愛だけ
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どっちも必要
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どっちもいらない