イアソン先生   作:這いよる混沌

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大学の授業が忙しくて更新が遅れてしまいました。申し訳ございません

いつも誤字報告ありがとうございます!

最近熱いですね……皆さん、水分補給と塩分補給を忘れずに!


難しい問題ばかりだ……

気絶から覚醒したイアソンは、モモイたちからことの経緯を聞いていた。

 

「……お前らが作ったゲームを試しにプレイさせたら、ゲーム自体に興味を持ったのはまだ分かる」

「だが、ゲームで扱われていた言語を習得してそれをそのまま日常会話に用いるようになったのは理解できん」

 

「理解できないって言われても、今話した通りなんだもん! ね! アリスちゃん!」

 

「はい! アリスはゲームを攻略してモモイたちの【仲間】として合流しました!」

 

最後の希望にすがるようにワカモの方を向くも、お手上げ状態という反応をされてしまい頭を抱えるイアソン。

 

「ポセイドンにしろ、アルテミスにしろ、機神ってのは何かしら運命の存在ってのがいるもんなのか?」

 

「そういえば先生が来る前にアリスの学生証を作りに行ったら、昨日の時点で作られてたんだよね」

「先生、何か知ってる?」

 

「……昨日お前らと別れた後にセミナーの会長とアリスについて話し合ったんだよ」

「そこでアリスをミレニアムの生徒として受け入れるって決まったんだよ」

 

「そうだったんだ! ありがとう先生!」

 

アリスが問題を起こした際の対処について話すべきかまだ判断しきれないイアソンは、部屋の隅っこで縮こまっている少女の方へ目を向ける。

 

「………………」

 

「………………」

 

お互い無言で見つめ合う状況に耐えきれなくなった少女が口を開く。

 

「あ、あの……この間はありがとうございました、先生」

「わ、私たちの、思い出を、宝物って言ってくださって……本当に嬉しかったです」

 

「別に感謝を言われるようなことじゃないだろ。自分の大切なモンをガラクタ呼ばわりされるのはムカつくしな」

「それで、お前はこの間ロッカーで物音を立ててたやつで合ってるか?」

 

「は、はい。ゲーム開発部部長の花岡ユズです」

「そ、そうだ。先生も良かったら私たちのゲームを遊んでみてください」

 

「……俺は世辞とかは言えないんだが、いいのか?」

 

「は、はい。酷評されるのはつらいですけど……先生に遊んでみて欲しいんです」

 

「……はぁ、コントローラーはどこだ?」

 

「今すぐセッティングするから待ってて先生!」

「……よし! 準備おっけー!」

 

[コスモス世紀2345年、人類は劫火の炎に包まれた……]

[チュートリアルを開始します]

[まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください]

 

「ほう、王道ファンタジー系の作品か。チュートリアルに入るのが少し早すぎる気もするが悪くないな」

「さてBボタンを押して装着か」

 

最初のゲームオーバー地点にどんな反応をするのか楽しみにしているモモイとアリス、不安そうなミドリとユズ、イアソンがゲームを遊んでいるのを楽しそうに見ているワカモ。

 

「………………」

 

ボタンを押さずに何か考えているイアソンに疑問を抱く5人。数秒立ってからイアソンはBボタンでなくAボタンを押したのであった。

 

[武器を装着しました]

 

「ええっ!? 先生、なんでAボタンを押したの!?」

 

「指示に従ってたら死ぬとかそんな感じだろ? 悲しいことに単純に従ってるのが気に食わないとかで殺されるような場所で生活してたからなんとなく分かるんだよ」

 

「一体どんな場所で過ごしていたんですか……」

 

[エンカウントが発生しました!]

[野生のプニプニが現われた!]

 

「さぁ先生! RPGの大事な要素である戦闘に入ったよ!! Aボタンで攻撃して!!」

 

「Aボタン攻撃は……【秘剣つばめ返し】……」

「(このつばめ返しってあのアサシン(佐々木小次郎)が使ってたやつと同じなのか……?)」

「(だが2回攻撃と表示されている以上、あのふざけた対人魔剣とは別物だよな)」

「(そもそも無双ゲームとかでもない限り、あんなバグ技が初期攻撃になるわけないか……)」

「まぁいい。バトル面の爽快感を楽しませてもらおうか!」

 

[ッダーン!]

[攻撃が命中、即死しました]

<GAME OVER>

[プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力……ふっ]

 

「………………」

 

肩を震わせながら頭を抱えるイアソン。そんな姿を見てこれまで言われてきた感想を思い出してしまうゲーム開発部の面々。

 

「(スライムもどきが銃を使ってくることに文句を言いたい……!!)」

「(だが、あのふざけた特異点たち(夏・ハロウィン)のせいでこの状況に違和感を感じない俺が嫌になる……!!)」

 

そんなゲーム開発部の不安を他所にイアソンは常識が通用しない特異点を思い出していたのであった。

 

「……せ、先生? 大丈夫ですか?」

 

「アリスもここで一度ゲームオーバーになったので問題ありません! コンテニューをしましょう!」

 

「ま、まぁこういう形式のゲームも新鮮でいいじゃないか」

 

「声が震えておりますよ、あなた様」

 

 

 

ゲーム開始から約2時間、イアソンはテイルズ・サガ・クロニクルのエンディングを迎えていた。

 

「ど、どうでしたか? 私たちが作ったゲームは……」

 

「シナリオライターの語彙力やワードセンスが気になる処が多々あったが、キャラクターの立ち絵や戦闘時のバランスは問題なかった気がするぞ」

「少なくとも俺はこのゲームをクソゲーだとは思わない」

 

「「「やっっったぁぁぁ!!!」」」

 

モモイたちが自分の感想に喜んでいるのを見ているとワカモが近づいてくる。

 

「あなた様のことを疑うわけではありませんが、ほんとうにあのゲームがクソゲーではないと?」

「私あの子を監視している際にも見ていましたが、中々ふざけたゲームですよ?」

 

「まぁぶっちゃけあのゲームを現実化したような世界で生きてたせいで感性がバグっている可能性は捨てきれない」

「ヒロインの設定とかほとんどギリシャで見たことあるぞ」

 

「あなた様が生まれ育ったギリシャ……いつか行ってみたいです」

 

「割とマジでやめとけ、いろんな意味で」

 

神も人間も等しく下関連でロクでもないギリシャにワカモのような美形の少女が行けばどうなるかなど考えるまでもない。

 

「あ、そうだ先生! これからアリスの武器の調達とミレニアムの案内をするんだけど一緒に来る?」

 

「アリスの武器ねぇ……」

 

「アリスの、武器……」

 

「キヴォトスの生徒は、みんなそれぞれ自分の武器を持っているの」

「だから、アリス専用の武器を見繕ってもらわないとね」

 

「アリスの専用武器……勇者の装備ですね!」

 

分かりやすく喜んでいるアリスを見てイアソンは武器の所有を認めるべきか思考する。

 

「(キヴォトスの治安が終わっている以上、自分の身を守る装備は必要だ)」

「(だが、危険性が無いことを証明できていない以上無条件で持たせるわけにもいかねぇ)」

「で、どこで調達するんだ?」

 

「エンジニア部だよ。あそこならミレニアムで一番手っ取り早くちゃんとした武器が調達できるし」

 

「エンジニア、部……ですか?」

 

「機械を作ったり、修理したりする専門家たちのことを、ミレニアムでは【マイスター】って呼んでるんだけど」

「エンジニア部はそのマイスターがたくさん集まってる、ハードウェアに特化した部活なの」

 

エンジニア部の大まかな説明をするミドリと、それに補足を加えるモモイ

 

「機械全般に精通してるのはもちろん、武器の修理とか改造なんかも担当してる部活なんだ」

「多分、使ってない武器とかが色々と残っているじゃないかな」

「というわけで、早速行ってみよっか!」

 

「あなた様、私は一度シャーレへ戻ります」

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

「いえ……その……廃墟から戻ってからシャワーを一度も浴びれていないので」

 

「あー……行ってこい」

 

「申し訳ございません。終わり次第すぐに戻ります」

 

 


 

 

エンジニア部の作業室に移動したゲーム開発部一行はマイスターである白石ウタハとアリスの武器について話し合っていた。

 

「……なるほど、だいたい把握できたよ」

「新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と」

「そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね」

「ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ」

 

そういって白石ウタハはたくさんの武器が並べられているエリアを指さす。

 

「そっちのほうに、私がこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある」

「そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ」

「私は先生と話したいことがあるから、気になったことがあればヒビキやコトリに聞くといい」

 

「……そういうことらしいから、しっかりと観察して疑問等があったら躊躇わずに全部聞いとけ」

「わからないことがある状態で選ぶなんて以ての外だからな」

 

「やった! ありがとう、先輩!」

 

そういうとモモイたちは試作品の方へ向かっていく。子ども特有の元気さに呆れているイアソンに白石ウタハが話しかける。

 

「あらためて自己紹介をしよう。私は白石ウタハ、ミレニアムのマイスターさ」

「あなたがシャーレのイアソン先生、であっているかい?」

 

「あってるぞ。……それで、お前は何を話したいんだ?」

 

「先生は高度な機械生命体が存在する場所で生活していたと風の噂で聞いてね」

「それが本当なのか聞きたかったんだ」

 

「どこから漏れたんだよ……。その通りだが、そんなこと聞いてどうするつもりだお前」

 

「もし私たちの技術で再現できる領域なら先生にジャッジをしてほしくてね」

 

「冗談でもそんな恐ろしい発言をしないでくれ。いや、するな。そして二度と考えるな」

 

生前あんな連中に死ぬほど迷惑かけられたというのに、二度目の人生でも同じ目に遭うなど勘弁してほしい。そんな切実な願いが顔に出ていたのか、白石ウタハが申し訳なさそうに謝ってくる。

 

「そ、そこまで辛い話題なのか……知らなかったとはいえ申し訳ないね」

 

「いや、俺も大人げない反応をした。すまないな」

「そういや、ここはスマホ類は使っても問題ないか?」

 

「問題ないけど、どうかしたのかい?」

 

「明星ヒマリに謝罪のメールを送らなきゃいけなくてな。本当は昨日シャーレに戻った時点で送るべきだったんだが、とにかく疲れてたのもあって寝てしまったんだよ」

 

「へぇ、あの【全知】にそんな対応をしたのかい? さすがにヒマリも驚いただろうね」

 

「あんなスパムメールでしか見たことのない書き出しでまともに対応できるわけねぇだろ」

 

「それは、そうかもしれないね」

「……ところでアリスの武器の説明書は必要かい?」

 

「……気付いてたのか」

 

「一応ね。あの会長が自分だけで新入生の手続きをしたからには何かあると思ったんだ」

「ちなみに詳細については教えてもらえるのかな?」

 

「無理だな。俺も調月リオもアリスに関しては慎重に対応すべきと考えている」

「俺に関する噂が出てた以上警戒を説くわけにいかん」

 

「それもそうだね」

「さて、あの子たちは何に決めたのかな?」

「……おや?」

 

「おい、なんだあのふざけた鈍器は」

 

2人はアリスがとある武器に目を奪われていることに気付く。そのデカさに鈍器としか考えられず、口に出してしまったイアソンにウタハが訂正する。

 

「あれはエンジニア部の下半期の予算、その内の約70%近くをかけて作った野心作さ」

「その名も【宇宙戦艦搭載用レールガン】さ!」

 

「バカだろお前ら」

 

自信満々に答えるウタハと辛辣な返しをするイアソン。しかしながらアリスがあの武器に興味を持った以上、自身も話に混ざるべきだと考えた両者はアリスたちの所へ向かう。

 

自身がウタハから説明されていたように、コトリという少女から説明を聞いたモモイたち。

 

「宇宙戦艦、って……また何かとんでもないことを……」

 

「前にも、確かコールドスリープしようとして、「未来でまた会おう」って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」

 

「お前らやっぱりバカだろ」

 

モモイとミドリにすら呆れられている光景を見て、【エンジニア部=頭のネジが吹っ飛んだ集団】という式がイアソンの中で形成されていく。

 

「……その【未来直行エクスプレス】なら、今でもよく使っているよ」

「……まあ、冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと先の未来にまで送れるようになったから、失敗ではないさ」

 

「使い道の割に、名前が大袈裟!」

 

「話を戻しますとエンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!」

 

「(宇宙戦艦ねぇ……あんまいい思い出がねぇな)」

 

「このレールガンは、その最初の一歩です。大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」

 

「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくる!」

 

「さすがミレニアムのエンジニア部! 今回は上手く行ってるんだね!?」

 

「ふっふっふっ、もちろんです! と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……」

 

「えええっ!? なんで! 期待したのに!」

 

「いつものことながら技術者たちの足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです……」

「このレールガンを作るだけで下半期の予算があれだけかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら……」

「それに加えて、現在ヴェリタスと資材のやり取りを行っているのですが……それが中々に難航してて」

 

「何があったんですか?」

 

「彼女たちの立場や顧客との信頼の為に詳細は伏せるが、所有していた機械が突然意味不明の単語を話すようになったみたいなんだ」

 

「…………ん?」

 

「その単語は神様の名前や汎人類史といった規則性が無いものでね」

「そういえば、彼女たちは先生にこのことで相談したいと言っていたね」

 

「いやだーーー!!!! ぜっっっったいに関りたくない!!!! もう今日はシャーレに帰らせてもらうぞ!!!!」

 

突然大声を上げてダッシュで帰宅しようとするイアソンに驚く少女たち。そんな中以外にも一番早く正気に戻ったモモイがアリスに指示を出す。

 

「アリス! 先生を捕まえて!」

 

「分かりました。クエスト【先生の捕獲】を開始します!」

 

大人げなく英霊のスペックで走るイアソンと謎に包まれた肉体を行使して追いかけるアリス。イアソンが作業室の扉を開け、一歩を踏み出そうとした瞬間、視界が天井を捕らえていた。

 

「……は?」

 

「パンパカパーン! アリスは先生を捕獲しました! クエスト達成です!」

 

アリスはイアソンを掴んだと同時に垂直方向にその腕を上げていたのである。その力は凄まじく76㎏のイアソンを震えることなく片腕で持ち上げている。

 

あまりの光景に作業室にいた全員が絶句してしまう。自身のバイブルであるゲームと同じようにクエスト達成時の感謝の言葉がくると思っていたアリスは、誰も口を開かない光景に不安そうな顔になる。

 

それを察知したイアソンがアリスに声をかける。

 

「ふっ、逃げだそうとしたメンバーをこうも簡単に捕まえるとはな。さすがは今代勇者と言った所か!」

「気に入った! 海賊話に加えて魔王討伐の話もしてやろうではないか!」

「そういうわけで、優しく降ろしてくれたまえ勇者よ」

 

「分かりました! それではおろしますね」

 

イアソンとアリスの会話が終わってからようやく我に返った少女たちは二人の方へ走っていく。

 

「すごいね先生。あの場面でああいった対応ができるとは」

 

「こんなもの褒められるようなものでもない」

「さて、アリスの武器はどうする?」

 

「アリスは、あの武器が欲しいです!」

 

元気よく宣言したアリスにエンジニア部は嬉しそうに笑う。

 

「あれは私たちのロマンが詰め込まれたビーム砲でね」

「正式名称は【光の剣:スーパーノヴァ】!」

 

「ひ、光の剣……!? アリスはこの武器以外考えられません!」

 

「この武器は基本重量140㎏、工学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬発的な反動が200㎏を超えるんだ」

「安全の為にも渡すわけにはいかない……と考えていたんだけど」

「先ほどの光景を見ればその心配はないかもね」

「試しに持ってみて欲しい」

 

「わかりました! ……んん! 装備できました!」

 

「やっぱりね。ヒビキ、アリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」

 

「分かった。……前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

「うわ、何だかものすごい武器をもらちゃったね! ありがとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「いや、お礼にはまだ早いさ」

 

モモイとアリスは感謝を伝えるが、ウタハの発言に固まってしまう。

 

「え?」

 

「さて……ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボット、全部出してくれるかい」

 

「……うん」

 

「えっと……ウタハ先輩? なんだか展開がおかしいような……」

 

「この武器はその重量のせいでちゃんとしたデータが取れていないんだ」

「だから、実戦データを取らせてほしいんだ」

「もちろんデータが取れたら持って行って構わないさ」

 

「そういうわけで私たちと勝負です!」

 

 


 

 

「これは……素晴らしいね」

 

「アリス、その【光の剣】はあらためて、あなたの物です!」

 

「わぁ、わぁっ……!」

 

「ふぅ、とりあえず良かった」

 

「それを使いこなせるなんて、本当にすごいね……」

 

「というか先生! なんで指揮してくれなかったの!?」

「アビドスですごい指揮をしてたって聞いてたんだけど!?」

 

戦闘に入っても一切指揮を出さなかったイアソンにモモイがかみつく。アリスと初めて会った時の対応もあってか彼女からの信頼はかなり低くなっているようだ。

 

「お前らが戦ったのはちゃんとしたデータを取る為だろ?」

「これは他人の指示が無くても自分でちゃんと武器を扱えるのかという確認も兼ねているわけだ」

「そこに俺が口出ししてデータを乱すわけにもいかんだろ」

 

「ぐぐぐ……言い返せない」

 

「アリス、こっちにおいで。さっき言ってた改造を施すから」

 

「分かりました!」

 

 

 

「先生、少しいいかい?」

 

「……なんだ?」

 

「先ほどの戦闘で興味深いデータが取れたんだ」

「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体感バランス、強度や出力はもちろん、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体……いや、機体」

「つまり、彼女は最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによって【自己修復】することを前提として作られた体を有している」

「その目的はきっと……【戦闘】なんだろう?」

 

「……そのことをあいつらに言うなよ」

 

「だが、知らずにいるよりも知っていた方が……」

 

「あの二人は感情的に動きやすい。今はその要素を除外しておく必要がある」

「俺の方でユズにある程度のことを言っておくから心配するな」

 

「そうか……助けが必要になったらいつでも言ってくれ」

 

「……そんな事態にならないのが一番だがな」

 

そういったイアソンの顔には嫌われ役として立ち回る覚悟が浮かんでいた。

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