イアソン先生   作:這いよる混沌

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お久しぶりです。
大学の課題に追われ、場面の切り替えに悩み、両親が離婚しかけててんやわんやしていたらこんなにも時間が経っていました……

一気に寒くなってきましたねぇ。作者はこの間ヒートショックであの世に行きかけました。


決戦!セミナー・C&C!

ゲーム開発部とヴェリタスが鏡を取り戻すためにセミナーを襲撃するという旨をイアソンから伝えられたユウカは特に取り乱すことなく「迎え撃って見せましょう」と答えてその場を離れたのだが、内心ではイアソンの【先生】として誠実な姿勢を貫いてくれたことに喜んでいた。

 

元々襲撃されることはなぜか先生に対して変な執着心を見せていたヴェリタスの部長から伝えられていたが、イアソンの『先生として生徒同士の健全なぶつかり合いに対しては中立の立場でいる』という発言は早瀬ユウカの心に深く刺さったのだ。

 

セミナーでの役割に対して強い責任感を抱いているユウカだが、純粋な心を持っているあの子たちに廃部を宣告することは心苦しいものであり先生から非難されることやマイナスな感情を抱かれることも覚悟していた。

 

だが、彼はそういったことはせず、強いて挙げるのなら自身の失言を咎められた程度であった。そんな先生が、最高のゲームでミレニアムプライスに挑むのは間違った行為ではないとはいえ片方に肩入れするのは【先生】として間違っていると考えてセミナーが襲撃されることを伝えてくれたことが何よりも嬉しかったのだ。

 

最も鏡が没収された経緯まで知らなかったようで、念のために教えると膝から崩れ落ちた姿を見て先生のプライベートが心配になったのだが。

 

そんなやり取りから2日経ち、遂にセミナーとゲーム開発部・ヴェリタスの戦いの火蓋が切られた。

 

 


 

 

イアソンの予想通り、セミナーはC&Cを雇っていたのだが配置やぶつかる場所まで予想が当たっていたことに一同は戦慄するも鏡奪還のために作戦通りに戦いを始める。イアソンが唯一難色を示した角楯カリンについてはモモイが交渉の末に協力を約束してくれたエンジニア部が対処した。アリスの工作によってミレニアムの電源が落ちたと同時にゲーム開発部は押収室に向かって一斉に走り出す。何回もルートを確認したおかげか想定よりも早く押収室に到着することが出来たのだった。

 

「急いで鏡を探そう!」

 

「気持ちは分かるけど物音立てすぎだよお姉ちゃん!」

 

「……! ありました! 【鏡】を入手しました!」

 

「さっさとここから出よう! 私たちの勝利は目の「よォ、こんなところで何してんだ?」ひぃっ!?」

 

扉の向こうにいた存在を目にしたモモイは凄まじい速度で扉を閉めようとするが、それを遙かに上回る速度で美甘ネルが右足を突き出して妨害する。

 

「ユウカから念のために警戒しとけって言われたんだが、なるほどな」

「アカネたちの対処やこの部屋までの移動ルート。どれもお前らからしてみれば理想的な動きだ」

「これが噂の先生の実力ってやつか?」

 

突っ込んだ片足だけで扉をこじ開けたネルが笑みを浮かべながら後ずさりするモモイたちへ近づいていく。絶望的な状況に陥ってしまったことで錯乱し始めたミドリたちを見て、半ばやけになりながらモモイは先生の評価に関して訂正を求める。

 

「せ、先生はゲーム開発部に肩入れしているわけじゃない!」

「私がネル先輩達にはどうやっても勝てないから助けてって、生徒の立場を利用して頼み込んだだけなの!」

「だ、だから、先生は……」

 

モモイの言葉にネルは凶暴な笑みを浮かべながら、怯える後輩の肩を掴む。

 

「白旗上げるかと思ってたんだが、中々根性あるじゃねぇか」

「用意してもらった作戦を最大限活用できてる時点で十分立派だ」

「だが、ここで終わりだ」

「あと数十秒早ければお前たちの勝ちだったんだがな」

 

「いいえ、あなたはアリスが処理します」

 

相手のオーラに少しばかり震えながら、勇者は最強の前に立つ。

 

「お前がうわさの新入生か」

「確かに中々強そうだが、あたしはそう簡単にはやれないぜ?」

 

不敵な笑みを浮かべる最強に、新米勇者は啖呵を切る

 

「あなたを倒してアリスたちはゲームを完成させます!」

 

その言葉を聞いた最強はより凶暴な笑みを浮かべながらアリスを決戦地へと連れていく。言い切った直後に絶望的な状況がさらに絶望的になったことに気付いた勇者は冷や汗をダラダラとかきながら覚悟を決めたのだった。

 

 

 

「……今のアリスのセリフってフラグみたいじゃなかった?」

 

「なんでそんな事言うの!?お姉ちゃん!?」

 

この状況で絶対に言うべきでは無い発言をする姉を鬼のような形相で咎めるミドリを見て、ユズは笑みをこぼす。皆、アリスが勝つと信頼しているが故の余裕なのだろう。

 

「……ははは、きっと大丈夫だよ。うん、きっと……」

 

……本当に余裕なのだろうか。

 


 

 

見晴らしのいい通路に案内されたアリスは、美甘ネルとたわいない会話をした後に戦闘を開始した。

 

「中々やるなぁ!お前!」

 

「せやぁ!!」

 

天童アリスは現代文明を遥かに上回る技術によって生み出された少女であり、その肉体に秘められたポテンシャルはキヴォトス最強格に匹敵するほどである。

 

事実、天童アリスは美甘ネルと互角にやり合えている。

 

だが、あと数分もすれば天童アリスの負けが確定する。天童アリスと美甘ネルの間に存在する巨大な壁。どれだけポテンシャルが高くともこればかりは覆すことは出来ない。

 

「くぅぅ……!!」

 

【勇者はどんな相手だろうと諦めない】と鼓舞するも、肉体に組み込まれた計算機は【敗北】以外の結末を弾き出せない。

 

「アリスは勇者なんです……」

「勇者として諦める訳には……」

「(勝てないのに?)」

 

その瞬間アリスの体勢が大きく崩れる。そんな隙を最強が見逃す訳もなく弾幕の雨が降りかかる。

 

被弾しながら光の剣を身体の前に持っていき盾として扱う。ナノマシンが肉体を再生するとはいえ、あの数秒で蓄積されたダメージは大きく現在の再生速度では防御に専念するしかなくなってしまった。

 

『負けちゃったとしても大丈夫だよ』

『G.Bibleが無くてもゲームを作ることはできるから』

『それに廃部になったとしても、みんなで集まれば怖くないから』

 

ユズから言われた言葉をふと思い出す。そうだ、負けたとしても全てが終わってしまう訳では無い。ゲームを作るネタは既にあるのだからGが無くてもゲームは作れるのだ。

 

気が緩み、盾として構えた光の剣が傾いていく。アリスは身体から力が抜けていくのを実感しながら目を閉じていく。失望と怒りで顔を歪めた最強の背中から目を逸らしながら。

 

「(諦めてしまっても……別に問題は……)」

 

『勇者として1番大切なことだぁ?』

『1つ挙げるなら、――――――』

 

その言葉を思い出した少女の姿は爆音と共に消えていた。

 

 


 

 

戦場に爆音が鳴り響く。消化不良のストレスをどう発散しようかと歩き出していた美甘ネルは不機嫌そうに少しだけ振り返る。久しぶりに満足のいく戦いができると楽しんでいた。こいつはどこまで食らいついてくるのかとワクワクしていた。結局戦いを諦めるようなムカつく奴だった。そんな奴に用はない。どうせあの武器が倒れたことで床がわれ───────

 

「がああああッッッ!!!!!」

 

痺れるような痛みに耐えながら愛銃を構え周囲を警戒するも、人の気配は一切しない。先程の戦いで負った傷が響いたのだろうと吐き捨てる。

 

───待て、アイツはどこに行きやがった?

 

「何が起きてッッッッ!!!!」

 

背中に広がる鈍い痛みと浮遊感に一瞬混乱するも、すぐさま落ち着きを取り戻し着地する。つい先程まで自分がいた場所に目をやると、そこには光の剣を大剣のように構えた勇者が立っていた。

 

「ハッ! さっきとは顔つきが随分違うじゃねぇか!」

 

「先生はアリスに『悔いが残らないように足掻くこと』が勇者としていちばん大切だと言いました」

「あの時のアリスはこの言葉をよく理解できませんでした。でも、今なら分かります」

「この戦いに負けても即バッドエンドにはなりません。最終的にミレニアム・プライスで結果を出せばアリスたちの勝ちです」

「でも、この戦いでやれることを全てやりきらないと悔いが残ります」

 

「いい顔してんな! だが、気持ちだけであたしを倒せると思ってんのか?」

 

「先生は勇者に召喚者、操舵手と複数のジョブをこなしていました。なら2代目勇者であるアリスも複数のジョブをこなせるはずです!」

 

そう言いきったアリスは美甘ネルに急接近し、その巨大な銃を振り下ろした。

 

「(ッ!? アビドス砂漠に現れた蛇型ロボを破壊した半裸の巨人と同じ────!)」

 

 


 

 

目を覚ました時に向けられた感情。連れて行ってくれた部室。一緒にゲームをプレイした時に感じた温かさ。廃部の危機。最強という壁。

 

色んなことを学んだ。色んなデータが集まった。

 

アビドス砂漠に現れた先生の親友の戦闘モーションを見た日の夜、本機のプログラムが私に質問をしてきた。

 

『疑問。生命体AL-1Sはどうなりたい?』

 

『……アリスは、みんなを守りたい。ユズたちが伸び伸びとすごせる居場所を守りたい』

 

アリスがそう答えるとプログラムはそれ以降何も言わなかった。ただ、あの必殺技をひたすらに再現しようとする夢を見た。

 

睡眠中に延々と繰り返し練習した高速の9連撃は、威力こそ遙かに劣るが完成された動きになっていた。

 

「再現出力15%。疑似宝具 偽・射殺す百頭!!!!」

イベストと恋愛要素は必要?

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