イアソン先生   作:這いよる混沌

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お久しぶりです。就活やバイトで更新が遅くなりました。もうしばらく亀更新になりそうです。申し訳ありません…


正面衝突

「再現出力15%。疑似宝具 偽・射殺す百頭!!!!」

 

 

高速の9連撃をもろに受けた美甘ネルは後方へ激しく吹っ飛ばされ壁に激突する。

 

「(クソッ……、バカみたいな鉄の塊を4発も顎に入れやがって……!!)」

 

光の剣を顎に4発叩き込まれたことに加え、壁に激突した時の衝撃で彼女は脳震盪を引き起こしていた。防御することに必死だった姿は消え去り、歴戦の戦士を彷彿とさせる身のこなしで絶技を己に叩き込んできた後輩から目を離すことが出来ない。

 

「(もう1発あれを叩き込まれたら、あたしは負ける…!!)」

 

ミレニアム最強の称号を得てから、1度も敗北することは無かった。学園間の大きなトラブルに繋がるため禁止されているが、己と同じ称号を与えられた者との戦いでなければ決して有り得ないと考えていた。しかし、その考えをぶち壊す勇者(後輩)が現れた。10年かけても再現することは出来ないだろうと諦めた大男の絶技を再現した勇者(後輩)が、王者の首を刈り取ろうとしている。初めて感じるプレッシャーと恐怖に少しばかりネルの身体が固くなる。

 

「(全く……面白れぇじゃねか!!)」

 

だが、それ以上にネルの心は燃え上がっていた。敗北するかもしれない恐怖よりも、自分に届きうる後輩が現れたことを心の底から楽しんでいるのだ。

 

「(あとちょっとで動けそうだが、……どうしてあいつは攻撃してこねぇ?)」

 

銃を握り直しながらネルはアリスの方を注視する。距離が離れているため断定はできないが、どうやらあのふざけた銃を大剣のように構えながらこちらが動けるようになるのを待っているようだ。

 

「(あいつ、あの大技を叩き込んできた時にびっくりしてやがったな……)」

「(つーことは、土壇場であんな大技決めたってワケかよ。ますます面白ぇ……!!)」

 

脳の揺れが完全に治まったネルは、愛銃を構え直しアリスに近づいていく。ネルはC&Cの任務において一度も手を抜いたことはない。当然任務中に発生した戦闘においても手を抜いたことはないが、セミナーから任務のたびに修繕費について怒られているため無意識のうちに手加減をするようになっていた。しかし、急成長を果たした強敵を前にネルの思考から「手加減」という言葉は消え去っており、獣如き獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「さっきの大技なかなか良かったぜ。だが、あの一撃であたしを仕留められなかった時点でお前の勝ち筋はさらに細くなったぜ?」

「あたしが脳震盪で動けずにいたときにアレを叩き込んでりゃまだ可能性はあっただろうによぉ!」

 

「アリスたちにとってネル先輩は突破すべき壁であって、どんな手段を使ってでも倒さなければならない敵ではありません」

「アリスはあの必殺技を敵を倒すためでなく、みんなを守るために使いたいのです」

「それに勇者は動けない対戦相手を攻撃するような戦い方をしませんから」

 

そんな言葉を最後に、静寂がこの場を支配する。両者ともに生々しい傷が至る所に見られ、尋常ではない痛みがはしっている。だが、2人にとってこの痛みはどこか心地よかった。美甘ネルにとっては自身を此処まで追い詰める強敵と戦えていることを証明する痛み。天童アリスにとっては自分を受け入れてくれたゲーム開発部の為に全力で戦っていることを証明する痛み。

 

2人はその痛みを噛みしめながら向かい合う。両者の集中力は極限まで高まっており、。

 

戦闘の衝撃に耐えきれなくなった照明が外れ、叩きつけられると同時に両者はぶつかり合う。

 

「このあたしにフェアな勝負で勝つってか!? その言葉後悔すんなよ!!」

 

「アリスはみんなの居場所(ゲーム開発部)を守って見せます!!」

 

 


 

 

今回の騒動において中立の立場でいることを選択したイアソンは、狐坂ワカモ・調月リオ・飛鳥馬トキと共に視聴覚室でゲーム開発部とセミナー・C&Cの戦闘を観戦していた。

 

モモイたちが想定以上の根性を発揮し理想的な立ち回りをしてみせたことにワカモは仮面越しでも伝わるほど誇らしげな表情を浮かべており、世間に流れている災厄の獣とは異なる様子にリオとトキは驚愕しながらも微笑ましく感じていた。

 

そんなワカモの姿につられて視聴覚室に和やかな空気が流れていたのが、アリスがヘラクレスの宝具を―――あらゆる面で劣化したものであっても―――再現してから、非常に重苦しい空気が流れている。

 

「……先程アリスが放った大技は先生がアビドス砂漠で召喚した巨人が使っていたものを再現していませんか?」

 

そんな空気に耐えきれなくなったであろうトキがイアソンに語りかける。同じ疑問を抱いていたリオもイアソンの方を向き、彼の答えを待っている。

 

「……ああ」

 

イアソンの答えは非常にあやふやなものだった。否、答えと表現することさえもできないただの相槌だった。そんな姿をみたリオの背筋には冷や汗が流れている。先ほどまでの柔らかい表情が消え去り、海賊のイメージに近しい恐ろしい雰囲気に包まれているイアソンに怯えながらも声を出そうとした瞬間。

 

「天童アリスが怪しい動きを見せた瞬間に、俺が何としてでも殺す」

 

「ちょっと待って頂戴先生!! 貴方のその発言はあの日話し合った内容と矛盾しているわ!」

「確かに私は彼女が()()()()()()()()()を起こした際にヘイローを破壊することを提案したわ! それに対して貴方はそのラインに該当しない問題に関しては監視に留めるべきと提案した!」

「でも今の貴方はそれを全てひっくり返す恐ろしい決定を口にしているのよ! 私はセミナーの会長として、生徒である天童アリスを理不尽な攻撃から守る義務があるわ!」

 

イアソンの発言に食いかかるリオ。数分前の穏やかな空気は完全に消え去り、一触即発の状態へと変貌してしまった。2人の側近であるトキとワカモはいつでも戦闘に入れるように装備を構えている。

 

「あの戦闘の何が貴方にそんな決断をさせたの?」

「確かにあの巨人の絶技を再現できるほどのスペックがあることは注意しなければならないでしょうけど……」

 

「それだよ、俺が殺すべきだと判断したのは」

「ヘラクレスの宝具を再現できる時点でアイツは危険すぎるんだ」

 

「……どういうことかしら?」

 

「ヘラクレスのあの宝具は武器や特別な何かがなければ成立しない訳じゃない。ヘラクレスが辿り着いた武の極地そのものだ。アビドスでヘラクレスが宝具を使用した瞬間をヴェリタスが偶然見かけて録画したものを天童アリスに見せたんだろうが、あれは見様見真似で再現出来る次元のものじゃない。それなのにあいつはヘラクレスの流派を再現している」

「無論、ヘラクレスと同等の威力には至っていない」

「だが、もしもヘラクレスに匹敵するまでアイツが成長したら」

「もし、アイツがキヴォトスに生きる生命に無差別攻撃をするような事態に発展すれば大惨事は免れない」

 

アビドス砂漠で巨大機械生命体を粉々にした巨人。それに匹敵する力を得たアリスが暴走し民間人を襲う。そんな恐ろしい未来を想像したリオは言葉が詰まってしまう。

 

「そもそも宝具を再現できる生命体を作り出せる技術を持った連中が何を考えてアリスを生み出したのかが分からねぇ」

「今すぐにでもアリスに自白剤等を飲ませて情報を引き出すべきだろうが、廃墟で目を覚ました時の反応を見る限り何も知らないだろうな」

 

「本気で言ってるの先生!?」

 

 


 

 

アビドス砂漠で指揮を執ったとき以上の冷酷な姿に、ワカモは初めてイアソンに従うことを躊躇し始めていた。ワカモにとって大切な存在はイアソン(先生)だけであり、彼の邪魔になる存在を排除することが自身の役割だと考えていた。しかし、自身に怯えながらも話しかけてきたり、ゲームに誘ってくれる少女たちと触れ合うことで他者と交流することを気に入ってしまった。そんな時間を作ってくれた一人を主が始末しようとしている。

 

彼女の脳内は「主に従うべき」と「主に背き友を守るべき」の二つに支配されていた。どちらを優先するべきか思考している間も先生と調月リオの討論は続いていく。

 

「以前の冷静な判断はどうしたの!? 今の貴方は自分の都合や予測だけで周りを巻き込もうとしているのよ!」

 

「同じ場所に存在していたとはいえ、あのふざけた機械はアリスの事を認識していた。しかも何か企んでたみたいだしな」

「あれだけ怪しい経歴を持っていた上に、ヘラクレスの技術を再現しやがったんだ。早急に対処すべきだろ」

 

どこまでも冷たく冷酷な意見を出すイアソンといくらなんでも行き過ぎていると反論する調月リオ。

 

ワカモはふと自身に似た立場である飛鳥馬トキが何を考えているのか気になり、彼女へ視線を向ける。彼女は調月リオと同じ主張のようだが、主であるリオの意見に従っているようには見えず、()()()()()()調()()()()()()()()()()()ように見えた。

 

自身の感情、信条、似た境遇の飛鳥馬トキの選択、思い出を加味した上で狐坂ワカモは決断を下した。

 

「そこまでです、先生。今のあなた様の凶行を見過ごすことは出来ません」

イベストと恋愛要素は必要?

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  • 恋愛だけ
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