イアソン先生   作:這いよる混沌

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滅茶苦茶難産でした。イアソンが序盤でカイザーのことを知ってしまったので原作と異なる展開になることは分かり切っていたことですがなかなか大変ですね。
知らんぷりさせることも考えましたが、イアソンが問題を発見した場合放置するわけがないのでこうなりますよね


なんで俺はいつも不利な立場に置かれているんだ

「……嘘でしょ、ねぇホシノ先輩。先生が言ってることは嘘なんでしょ?」

「……………………」

「先生の言っている通りなら私たちがこれまでやってきたことは、全部無駄だったってことになるじゃない……」

「セリカちゃん……」

「ねぇホシノ先輩、そんなことないって言ってよ」

「…………………………」

「……先生は私たちを揶揄うためにそんな嘘をついてるんでしょ?」

「……俺が調べた限りアビドス高等学校を除いた自治区のほとんどはカイザーのものになっていた」

「そんな……嘘よ……。ホシノ先輩、自治区のほとんどがカイザーのものだなんて嘘なんでしょ?」

「…………………………」

「ねぇ!ホシノ先輩!!何とか言ってよ!!」

「ホシノ先輩……セリカちゃん……」

「私たちは、一体なんの為にッッッ!!」

「待って!セリカちゃん!アヤネちゃんシロコちゃん、私セリカちゃんを追いかけてきますね」

「……私は先生が仰っていることが事実か確かめてきます」

「……ホシノ先輩」

「…………先生も酷いね、みんなにいきなり現実を突きつけちゃうなんて。そんなことやってたら嫌われちゃうよ?」

「知らなかったのなら早く知ることができて良かっただろう。真実に気づけぬまま終わりを迎えるよりも知っている上で終わりを迎えた方が幾分かマシだ」

「……それは「大人」の考えとして言ってるの?だとしたらおじさんには理解できないや」

「ムカつくことに経験から生まれた考えだよ」

「……正直に言ってお前たちのことを調べた時には正気を疑っていた。9億なんて言う馬鹿げた額の借金に加えて自治区のほとんどを持ってかれてるのに抗い続けてるなんて破滅願望でもあるのかと思っていた」

「だがお前たちがヘルメット団の連中をカイザーが雇った傭兵と認識せずにそこら辺のチンピラとして対処しているのを見て真実を知らない可能性が出てきた」

「……だとしても今伝えるのはおかしいなっておじさんは思うよ。折角ヘルメット団の問題を片付けられて盛り上がってたのにあんなどん底に突き落とすような真似をしてさ、先生は何がしたいのかな?」

「ホシノ先輩……先生……」

「……俺はやらなきゃいけないことがあるから今日はもう帰るぞ。……また明日な」

「……じゃあね、先生」

 


 

オケアノスで初めてマスターに出会った時に魔術の魔の字も知らないクセに俺たちに歯向かう命知らずのバカだと思った

 

アトランティスで再開した時にはまた面倒くさそうなことに巻き込まれて精神をすり減らすような戦いをするつもりかと呆れた

 

絶望的な戦力差があったアトランティスで勝ち筋がそれしか無かったとはいえ、いつ死んでもおかしくない立ち回りを指示した時に文句を言うことなく受け入れた時には破滅願望があるんじゃないかって本気で思った。

 

……生き残るための術がそれしかないのならそれをやり遂げるだけと言っていたが。

 

7つ目の異聞帯で俺たちがあのふざけた蜘蛛に吸い込まれていく度に胸を掻きむしりながら謝る姿を見て、神の血を引いてるわけでもなければほんの数年前まで魔術なんてものを知らなかったただの人間が背負う運命にしては重すぎると痛感した。

 

それでもマスターには親身になってくれる「大人」(仲間)がいた。旧知の仲の奴や因縁の相手が当たり前のようにいるあの空間でアイツの力になりたいと思った英雄が沢山いた。アイツはある意味恵まれていた

 

だが……アビドスにはそんな「大人」がいない。誰もいないわけではないがあんな数じゃ0に等しいようなものだ。

 

……本当にめんどくさい。正気を失って無謀な行為をしているだけだったら言いくるめてシャーレで保護するだけだったのに、あいつらは知らなかったとはいえ本気で返済するつもりだったのだ。今は俺があんなことをいきなり言ったからバラバラになりかけてるが、そのうち立ち直って再び借金返済に取り組むのだろう。

 

……クソ、俺らしくないな。先生など柄ではないし面倒くさいからやりたくもないのに、あいつらのことを見捨てたくないと思っている。

 

「……ワカモ、シャーレで指示した通りに行動しろ」

「承知いたしました」

 


 

「……皆、おはよう」

「おはようございますシロコ先輩」

「……セリカは?」

「今日はバイトがあるそうです」

「…………先生は?」

「……来ないんじゃないかなぁ」

「……ホシノ先輩」

「せっかくみんなで盛り上がってたのにあんなこと言うってことは私たちのことをどうでもいいって思ってるんじゃないかなぁ?」

「勝手に決めつけるなクソガキ」

「おはようございます先生」

「クソガキって、先生は言葉遣いが汚い「大人」だねぇ」

「……お前が「大人」に何をされたのか、何を言われたのか知らないが、まず一つ言っておくぞ」

「……何かな?」

「お前ら全員バカだろ」

「「「………………」」」

「……可愛い後輩たちに暴言吐きに来ただけなら私は容赦しないよ」

「暴言だと?バカ言え!これは客観的なお前たちの評価だ!!」

「いいか!お前たちは物資の要請が受理されないことに対して連邦生徒会や大人が自分たちを見捨てたと思考停止したことが問題なんだ!!」

「そ、それは……」

「話は最後までよく聞け!ロクな奴がそうそういない大人に対して連邦生徒会はキヴォトスの学園を統括する組織だ。こいつらがいくら問題に追われていたとはいえ大規模自治区に存在する学園の救援要請をそう簡単に切り捨てるわけがあるか!自治区において連邦生徒会が介入できない問題が発生していると考えるのが普通だ」

「だいたい廃校寸前の学園をチンピラがここまで熱心に攻撃したところで得られるものはここの校舎ぐらいだ。どう考えても消耗した物資との釣り合いが取れていないのだから別の目的がある可能性が高い。そもそもただの不良連中の物資が常に十分にあるわけが無い。実際あいつらはカイザーに雇われてたわけだしな」

「そうだったんですか!?」

「やっぱり気付いてなかったのかよ……。他にも言いたいことは山ほどあるがまぁいい!これからセリカを回収しに行くぞ!」

「……セリカちゃんに何する気なの先生?」

「何もしねぇから睨むな!これからの作戦にはあいつの存在が必要だからな。あいつのバイト先に向かうぞ!!」

 


 

「はぁ……」

「……セリカちゃん大丈夫かい?」

「……大将、あの大将に聞きたいことがるんですけど」

「なんだいセリカちゃん?」

「大将はアビドスが、自治区が「ここがセリカのバイト先か?」ッッッ!」

「アビドスの生徒さんか。それとあんたは…」

「お前がセリカのバイト先の店長だな?俺はお前に話があってきたんだよ」

「……もしかして最近話題のシャーレの先生か?子供の前であんまり汚い言葉遣いはやめて欲しいんだが」

「うるせぇ、死んでも治らねないんだよ」

「……まぁいいか、それで話ってのは?」

「その前にアヤネ、受け取れ」

「きゃっ。えっと先生、これは一体?」

「その金で腹ごしらえしとけ。この後お前らにやってもらうことがあるからな」

「……説明もなしに私たちに何やらせる気なのかな?」

「店長との話が終わったら説明してやるからとりあえず注文しとけ」

「……なぁその話ってのはアビドスの生徒さんたちの注文を提供してからでも問題ないかい?」

「それで問題ない、俺としても油断ができん状況だからな」

「ちょっと待ちなさいよ!!!」

「……なんだセリカ」

「昨日あれだけ私たちのことをバカにしたのにまだ言い足りないわけ!?ふざけんじゃないわよ!!」

「あんな事しておいてこの後手伝えって言うの!?冗談じゃないわ!!あんたの命令なんか絶対にお断りよ!!」

「……セリカちゃん」

「……先生あんたまさか、カイザーのことを」

「……先生」

「……確かにお前の怒りは正しいものだ。俺がお前の立場ならそいつに唾を吐きかけてやるほどに正しいものだ」

「先生汚いですよ……」

「あらゆる限りの真っ当な手を尽くして取り組んでいたのに、どこの誰だかわからんやつにあんなことを言われればムカつくの当然のことだ」

「だが、だからこそあの時俺はお前たちにカイザーのことを伝えて良かったと心の底から思っている」

「まだ私たちのことを……!!」

「カイザーの連中はお前たちがひたむきに取り組む姿を見て完全に油断しきっている。やるには絶好の機会なわけだ、このタイミングを逃す訳にはいかない」

「……何が言いたい訳?」

「カイザーを潰す」

「「「「「「ッ!?」」」」」」

「カイザーを潰すだって!?正気か先生!?カイザーには大勢の兵士がいるんだぞ!?」

「それがどうした?」

「それがどうしたって先生、こっちとあっちの戦力差をちゃんと理解してるの?下手したら即全滅だよ?」

「なんだ小鳥遊ホシノ、らしくもなくビビっているのか?」

「先生がおじさんの何を知っているかは知らないけど本気で言っているの?」

「はっきり言ってお前たちがカイザーに劣っているのは人員数だけだ。立ち回りを上手くやればどうとでもなるが、多いことに越したことはない」

「その人員はどこから集めるのですか?」

「トリニティとゲヘナから集める」

「それは厳しいです先生。マンモス校であるトリニティとゲヘナに借りを作ってしまったら何を要求されるか分かりません」

「その点に関しては問題ない。アビドスとしてではなくシャーレとして要請するからな」

「……だとしても協力してくれるとは限らない」

「シャーレ奪還の際にゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会、自警団とコネができてるからその点も問題ない」

「うへぇ、私たちとしては助かるけど先生は良いの?カイザーに難癖付けられちゃうよ?」

「シャーレが持つふざけた権利を使うから問題ないだろ。というより俺もカイザーをさっさと潰したいんでな」

「どうしてですか?」

「シャーレに流れてくる問題の大半にカイザーが絡んでるんだよ。対処しても次の問題が来るのであれば大本を壊せばいいしな」

「……本気なの先生?」

「私たちのお力になってくれるのはうれしいですが、先生本当に大丈夫なのですか?」

「何がだノノミ?」

「大将さんが仰っていたようにカイザーグループと私たちの戦力差は大きいです。最悪の場合誰かがいなくなってしまうこともあり得ます」

「私もそう思います。いくら何でも不可能に近い気が……」

「いいかお前ら、一つ面白い話をしてやろう。俺が生まれ育った場所ギリシャには神がそこら中にいたんだよ」

「神さまがですか?」

「ん、面白そう」

「うへぇ、おじさんたちもうそういう話を信じる年じゃないよ先生?」

「いたんだよ本当に。あいつらは気まぐれで人間を殺すこともあれば無理難題を押し付けてくることもある。そんな中でただの人間が神を欺き討伐したのだ」

「人間が神様をですか?」

「ああ、ギリシャ生まれでもないただの人間がだ!その事実が俺は誇らしい」

「どうしてですか?神様を殺すのはあまりよろしくない気が……」

「自分たちが認めた人間以外の人間を殺そうとしていてもか?」

「それは……」

「あいつにとってギリシャの神を殺すのは目的のための通り道だったんだよ」

「神様を殺すのが通り道っていったい何が目的だったのさ先生」

「世界を救うためだよ」

「あいつは、二度も世界を救う羽目になった。まぁこの話は重すぎるからこれ以上話さないが、あの時そいつと神の勢力の戦力差は絶望的なものだった。俺たちとカイザーの戦力差以上にな」

「だが、俺たちは成し遂げた、あいつを送り届けた。その時に比べればカイザーなんぞ格下以外の何者でもない」

「だから問題ない」

「うへぇ、先生言ってること無茶苦茶だよ?……でも賭けてもいいかもね」

「ちょ、ちょっとホシノ先輩!?」

「ん、私たちならできる」

「うふふ、やってみましょうか☆」

「ア、アヤネちゃんはどうするの?」

「私も先生を信じてみようと思います」

「えぇ!?嘘でしょ!?」

「……(言ってることはめちゃくちゃ、神を殺したなんて法螺話にしか思えない。……それでも先生にはとんでもないカリスマがある。できるんじゃないかって思わせるカリスマがある)」

「なぁ先生」

「なんだ大将、気になるところがあるなら言え。説明してやろう」

「セリカちゃんに、アビドスの子たちにデカイ怪我だけは負わせるなよ」

「あぁ、任せておけ。さぁ、お前ら腹ごしらえをしろ!」

「「「「はい!」」」」

「……その、先生」

「なんだセリカ?」

「なんて言うか……その……あ、ありがとう」

「フッ、気にするな。お前たちにはこれから馬車馬の如く働いてもらうからな」

「さてセリカちゃん、注文を取ってきてくれ」

「はい!それでは、広い席にご案内します!こちらへどうぞ!」

「先生あんたは食べてかないのかい?」

「ん?ああ、俺はいらん。朝に昼食用の弁当をもらってしまったのでな」

「ハハハ、愛されてるな先生」

「勘弁してくれ……」

 

 

 

「……社長どうしたの?」

「……(何あの人、すごいカリスマだわ!)」

「くふふ、アルちゃん面白い〜!」

「わ、私が店員さんに確認してきましょうかアル様?」

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