あちらでも未完ですがこちらでも掲載。序盤は同じ展開ですが、途中で思いついたけれど没にしたIFルートに進みます。
没にした理由は、私の筆力で書ききれるかという悩みだったのですが…思いついた案のほうがより面白いように思えたので挑戦。
完走目指して頑張ります。
本作は「本好きの下剋上」の二次創作となります。
作者は、web版読了済み、書籍版、コミック、ファンブック共に既刊分読破していますが、間違いや矛盾など多くあると思います。本編ネタバレも含みます。
他作品の影響を受けています。ネタ被りもあると思います。
設定が判らない部分は捏造もしていますので、苦手な方はブラウザバックでお願いします。
大丈夫だという心の広い方のみ、次にお進みください。
かつての景色
そこは、見た事がない場所。
四角くて山よりも高い建物が並ぶ街。
黒くてひとつの凸凹もない広い道。
その道を、色鮮やかな四角いモノがいくつも並んですごいスピードで整然と走る。
そして、これもまた見た事がないくらいに大勢の人が街を歩き回っているのが見える。服装は色々だけれど、なんだか薄着だったり、女の人なのに髪を結ってないどころか、短くしている人までいて驚く。ありえない。
そう思うと同時に、相反する気持ちも湧いてくる。
これが日常の風景だと。そんな人通りの多い場所で、決まって『私』はテーブルを出していた。
『魔法陣』が刺繍されたテーブルクロスを掛けて、小さめの箒で軽く『お掃除』集中力アップと『場』を清浄にする水晶をセットすれば準備は完了だ。
毎日手入れしている愛用のカードを並べて、軽いウォームアップ代わりにシャッフル。ワンオラクルで今日の運勢を占う。
――――運命の輪の絵柄に、何かが起きる予感がした。
夢だけど、夢じゃなかった
目が覚めたベッドの中で、思わずそう呟いた。好きだった映画のセリフだったけど、本当にそうとしか言いようがないこの現実……確かあの映画では踊りたくなるほど希望に満ちたセリフだったのに、今の私はとてもあんな風にはしゃいだりは出来ない。出来ればもう一度眠って、そのまま永遠に目覚めたくないくらいに。
「そうだ、夢だ……これは、夢。ちょーリアルな夢ってことで」
自分に言い聞かせるようにして上布団を被りなおして寝転ぶ。遠い場所で鐘の音が響いてきたけど、無視。
「お嬢様、起床の時間で御座います」
鐘の音の残響が残るくらいの正確さでやってきた側仕えは『私』が生まれた頃からお世話になっている。時間には正確に。遅刻などもっての外という彼女を前に、布団で籠城していた私はあっけなく上布団を奪われた。
「いやぁぁぁあああ!寝かせてセレネーディア!私一生眠りたいの!」
「なにを仰いますかお嬢様!シュラートラムにいつまで囚われておいでです!既に光の女神は訪れましたよ!」
ごねる私とセレネーディアとの攻防戦は、いつも通り私の完敗で幕を閉じたのだった。
私は、フェデリカ。エーレンフェストに住む中級貴族の娘……と同時に『日本』で生きた成人女性としての記憶もある。
今朝見た夢、あれではっきりと思い出したというか…今まで忘れたというか。『日本』で生きた記憶の延長線上に『私』がいるという感じ。私には、誰かを乗っ取って体を動かしているという感覚も無ければ、フェデリカとして生きた記憶が邪魔だと思う気持ちもない。
「要するに、転生ってことよね。これ」
隠し部屋で一人呟く。朝、あのまま起きて朝食を食べたものの、正直喉を通らなかった。
寝汚いのはいつもの事ですが、今日は特におかしいというセレネーディアの言葉と、実際に魔力の流れが速すぎて気分が悪かったのもあって、今日のお勉強は無し。お医者様に診て貰い、安静にすることを約束して隠し部屋に引きこもっての、今である。
考えを整理したかったのと、挙動不審すぎるのに今の身分では常に誰かが傍にいる生活だったから、誰も入ってこれない隠し部屋でしか考え事も出来ない。ノート……というか、紙自体がとても高価なので書いて整理する事も出来ないのだ。
せめてもと、字の練習用に使っている石板と石筆で浮かんでくる事を書いては消し、消しては書いて今までの事を整理する。
「今まで教えれてきた事と『私』の記憶と比べても……ここ、エーレンフェストよね?『本好きの下剋上』の……え?もしかしなくてもあと20年以内に崩壊するの?」
『私』は生前占い師だった。と言ってもどっかのTVに出たりする有名な人じゃなくて、平日は普通の仕事をしつつ、週末とかに駅前や大き目な商店街やどこかのイベント、もしくはwebでメール越しに相談者さんと向き合う感じの、兼業占い師。
学校卒業して入った職場がブラックすぎて、その帰り道偶然路地占いを見付け、気紛れに相談した。その時見たカードの鮮やかさ、そして、カードを使いながらも私の話を聞いてくれた占い師さん。
既に深夜近い時間だったけど……路上で大泣きした。その時の私は、ほんとに心も体もしんどかったんだと思う。
それから踏ん切りがついたかと言われるとそうでもなく、結局は体を壊すまでその職場に勤め続け、ある日ついに吐血。救急車で運ばれて緊急入院。それでも即戻ってこいという上司に流石に無理ですと返事して、その場で辞める事になった。自主退職という形で入院費は自己負担、残っていた有給も全部無し、退職金も雀の涙だったけど……正直、スッキリはした。
いや、スッキリしたのは……そのへんのやりとりを聞いてた看護師さんにアドバイスを貰って、元職場を労基に訴え、有給も退職金も満額貰えた上、入院費も保険適応になったお蔭かもだけども。
で、入院はしたけどある程度治療が終わり、痛みが落ち着いてくると今度は暇になり、次の仕事をどうするのかという不安も湧き上がってきた。
その暇な時間でたまたま見つけたweb小説が『本好きの下剋上』で、次の仕事については、やっぱりあの鮮やかなカードと、優しい占い師さんが忘れられず、かなり無謀だと自分でも思いながらだけど、占い師を目指す事にした。
退院後、その占い師さんを探し出して仕事について話したら、苦笑しながらも相談に乗ってくれた。
初心者向きのカードや教本、雰囲気の出る小物の数々、あとは、占い師として相談者に対する姿勢みたいな心構えの部分や、ぶっちゃけ儲かるのかどうかって話まで。
流石に最初から、占いで食べていこうとは思わなかったから、退院後は普通に職に就きながら、余暇には占いの勉強。友達を占う事からはじめて、ある程度コツが解ったらSNSでの活動。そこで同業と知り合って情報を交換。イベントに行ってみたり、許可をとって路上で占いをしたりしていた。
……死因は、路上で占ってる時に、暴走した車が突っ込んできて轢かれたせいだったけどね。
「ってことは、結局私は『兼業占い師』のままだったって事か……」
重たい溜息をついて、手にした布で石板をふき取る。もう手は真っ白けだ。部屋を出たら絶対怒られそうな予感に二つ目のため息が漏れる。
とりあえず、現状は把握できたけど……本当に、夢だったらいいのに!!