【呪術廻戦外伝】特別1級呪術師 禪院将宗 作:まぜこみごはん
この男との出会いは、禪院将宗の人生を大きく変えた出会いとなります。
前編、中編、後編にわけます。
イケメン、大男と会う
これは昔の頃の話だ。
俺は10歳の頃に拾われた。
禪院家の禪院甚壱によって。
親父と出会ったキッカケはまた次回話そう。
今回の話は禪院家のある男との出会いについてだ。
禪院家に拾われた俺は、まぁ大変だった。
養子なんてものは過去の歴史からも見ても誰一人としてもらったことがない。
そんな俺が突然禪院家の養子に迎えられたのだ、周りの禪院家の人間は面白くなかったんだろう。
人を見る目線ではない憎悪に満ちた顔、ある奴は殺気満々。
そんな状態であっても、親父は見て見ぬフリだし、当主様も特に何もしようとしない。
しかしこんなことは俺は別によかった、いや、拾われただけでも運がよかった。
豪勢な飯、綺麗な衣服、自分の部屋、風呂、布団。
上げたらキリはないが環境は依然と比べても数倍マシだった。
最初に来た時は涙が止まらなかったな、我ながら当時は泣き虫だったと思う。
今のように、当時の俺は自分に対して卑屈なところがあった。正確にいえば、あのころの俺はすべてに絶望していたんだよ。
―――――思い出したくない、思い出したくない、思い出したくない。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
――――――――――――――。
突然悪かった、嫌なことを思い出してしまってね。
そんなわけで俺はある日、夕方ぐらいだったか。人の視線が嫌になって、裏山に逃げたことがある。
今思えば10歳のガキが夕方に一人で裏山になんかに入ったらどうなるか、バカでもわかるが、俺は迷子になった。
時間がたつにつれて暗くなってもきたし、森からくる風の音も恐怖が増してしまう。
俺はもちろん泣いていた、次第に風も強くなってきて、天気も悪くなって雨が降はてきたんだ、最悪なことは続くもんだよな。
俺は無我夢中で走った、走って走って走って、走りつくした。
どこか身を隠れられる場所さえあればその時はよかった、あの時は死を覚悟したよ。
そして突然神様が活躍しだした、洞窟のようなものを見つけたんだ。そこなら雨宿りもできるし、濡れることはない。
問題は視界が暗かったし、どこまで続くのかわからない道、俺はひたすら前に進んでしまった、それが間違いだったのも知らずに。
『はぁ……はぁ……』
当時は今ほど体力もなかった、とうとう歩き疲れたのかその場にとまって座り込んでしまう始末だ。
怖かったのもあったが、ここから人の視線を受けることもなく静かに過ごせる、とふと思いこんでしまうぐらいには、俺はかなりの弱気だった。
本当にどこまでも俺は、弱かった。
それが仇となったんだろう。
キミ、ダァァァレェェェ???
後ろからそんな声が聞こえた、俺は声すら出なかった。
俺は呪霊の巣に自ら進んでいたことに気が付かなかったんだ、見た目は黒髪の長い髪、見るも醜い大きな口、両腕は鋭い刃、姿は蛇女に近い怪物。
そんな姿を見て俺はまた走った、死にたくなかったからだ。
人間の言葉を話せるレベルなら、おそらく準1級以上なのは確実だった。
10歳のガキが殺せるわけもなく、俺は逃げるしかない―――この時の俺は呪力は持っていたが、呪力を引き出すことがなぜかできなかった。
そんな俺が呪霊を殺せるわけもない、ただ俺は逃げるしかなかった。
『来るな……来るな……来るなあああああああああああああああああ』
マッテェェェェェェェェェェェ
アイツにとって俺はいい餌、簡単に俺を殺せるはずなのに、こうして追いかけているのは遊んでいるからだ。
あの時のことは今でも忘れない。
いった通り、俺に体力なんてものはなく、次第に走る力も失った。
そのせいか石に躓いてコける始末だし、本当にこの時の俺はイケメンからかけ離れた存在だった。
その隙を逃すはずもなく、呪霊は俺の目の前にたった、どことなく笑っているのも見えるし、今からでも俺を細かく刻みたくて仕方ないのだろう。
『いやだ……いやだ死にたくない、死にたくない、死にたくない……』
俺は体をうずくまった、本当に惨めだった。
無力の自分が恥ずかしくてたまらなかった、いっそのこと早く殺してくれ、と願ってしまったが、死にたくないと口にしてしまった。
本能では生きたいと感じている、だがここから俺はどうすればいい?
涙が止まらなかった、そんな情けない俺を見てゲラゲラと笑っている呪霊が酷く憎かった。
アソボウヨ?
そんな声なんて聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない。
耳を塞いでしまった、そんな様子を見て、答えなかった俺が悪かったんだろう。
刃を俺の右脚に向けて刺してきたのだ。
『ァァァァァアアアアアアアアアア!!!』
痛かった、とても痛い、突き刺さる音、骨に達したか、痛みと恐怖で我を失いそうになった。
右脚からは出血をして、このままでは出血多量で死ぬだろう。
俺が一体何をした、俺が一体何をしたっていうんだ……こんなところで死にたくない、俺は……
みんなのためにも生きなくちゃならないのに
『誰か……誰か……』
アソボウヨオオオオオオオオ!!
『たす……けて、助けてくれぇええええ誰かあああ!』
『なら俺と遊んでくれるか?』
とっさに声が聞こえた、どこからともなく。
鋭い音が一瞬、肉を切るような音だ、そんな音が聞こえた。
痛みと恐怖で体を動かせなかったが、目の前の光景を見ることはできた。
呪霊の首が一刀両断され、目の前に立っていた大男が呪霊の首を持っていた、
俺はその男を見つめてしまった、その男の視線、体格、風格。すべてがまるで鬼神のような、その姿に圧倒され、俺はただ見つめることしかできない、彼に俺は恐怖を抱いてしまった。
『なんでこんなところに餓鬼がいやがんだ? おい答えろ、誰だお前』
その問いに答えたかったが、話すことができなかった。
『……チッ、話すこともできねぇのか、まぁいい、目的は果たしたからな…』
この男はおそらく呪霊狩りをしていたんだろう、目的が果たしたのなら俺を助ける義理はなかったんだ。
その大男は立ち去るように前に進む。
俺は生きたかった、俺は生きたかったんだ、必死に口を開けた、必死に声を出したんだ。
『……けて……』
『………あ?』
声が聞こえてきたせいか、大男は後ろを振り向いた。
その視線からはとても今から人助けするような男ではなく、どことない殺意、俺はその姿に怯えてしまったが、俺は生きるためにこの男に助けてもらうしかないんだ。
『助けて……ください。お願いしま……す』
『どうして俺がお前を助けねぇといけねぇんだ? 理由がねぇな、メリットもねぇ』
『お願いします……お願いしますお願いします』
『……ハッ願うだけじゃ助けられねぇな、お前は俺に何を提示できる?』
大男が近づいてきて、俺を見下すようにそう説いてきた。
提示……助ける理由ということは、何かこの男に差し出さなくてはいけないだろう、俺にもっているものは何もない……
『何もない……俺には何も……』
『ひねり出せ、死にたくねぇのならな』
強い言葉で俺に投げかけてきた、おそらく次考えを出さなかったら俺は見捨てられて死ぬだろう。
俺に持っているもの――わからない、俺は何も持っていないからだ、何か……何かをひねりだすんだ、生きるためにはそうするしかない。
長く考えて、一つだけ、たった一つだけあった。
見つけた俺の表情をみて、大男は深くニヤついた、同時に俺はちょっと腹立たしかった。
『俺は禪院家の人間です……助ければ何か……もらえると思います』
『禪院? テメェみたいな餓鬼いるわけが………あ』
大男は何か思い出したようだ。
思い出したその大男は、何か考えがまとまったのか、少しずつ表情が崩れて笑い出してしまう。
その姿を見て俺は何もいえなかったが、『え………』と少し引いてしまったのもある。
『あの不細工の養子ってのがお前かよ!禪院の奴らが養子をとるなんざ、ありえねぇと思ってたが……こりゃ吹っかければ、かなりの額はとれるか』
大男は何をひらめいたのか、自らの衣服を引き裂いて、右足に止血するために巻いていく。
その手際は見事なものだった、突然ことで驚いた俺は焦っていたが、そのまま片腕で抱きかかえられ、外へと向かっていく。
『あの……助けてくれるんですか?』
『状況が変わった、テメェは利用価値がある、だから助ける、よかったな餓鬼。』
何がなんだかよくわからなかったが、助けられたのは事実だった。
『ありがとう……ございます…ッ』
『………』
油断すればすぐに泣きそうになる、そんな姿を見て大男はただ黙ったまま進んでいく。
『お名前を聞いてもいいですか……?』
『答える義理もねぇが……まぁいずれわかることか。』
『禪院甚爾だ』
これは俺のあり方を教えてくれた人との物語である
呼んでいただきありがとうございました。
今回はかなり短いですw
禪院甚爾との出会いは将宗の人生を変えていきます。
中編はかなり長くなる予定です。