【呪術廻戦外伝】特別1級呪術師 禪院将宗    作:まぜこみごはん

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どうもはじまりました。


3部構成で考えていたのですが、長くなりそうなので過去編の長編とします。


甚爾くんと将宗くんのつながりを深く出したかったので、1話前から考えていたお話となります。



イケメン、師を得る

あれから数日がたった。

 

 

俺は脚を負傷するも幸いなことに大きな怪我に見舞われることなく、数日も立てば歩けるようになっていた。

まぁその後は親父にはこってりと絞られ、ご当主様はそれをみて笑いが絶えない様子であったが、無理もないだろう、いい笑いものだ、俺は。

 

 

 

ともわれあの時は俺は弱すぎた。

誰かの力を得なきゃ、生きていられないただの弱虫小僧。

自室の布団で大人しく寝ていることしかできない、情けない餓鬼だった。

 

 

 

『………もう昼、か』

 

この日はあまり寝れなかった、目が覚めていたし、寝ようと思っても寝れない。

時間が過ぎてゆき、昼になってしまったようだ。太陽の光と、鳥のさえずり、暖かな空気がその証拠だろう。

 

 

俺は久しぶりに外の空気を吸いたくなった、この淀んだ感情も少しはマシになるかもしれないと、そう思った。

 

 

禪院家の屋敷は広く、庭も広い。

禪院家の歴史は古く由緒正しき家系というのもあり、敷地面積も相当なものだ。

こんなところに初めて来たときは、以前住んでいた村と違っていたのもあり、衝撃を受けたことも鮮明に覚えている。

 

 

俺は庭に立ち寄った。

池には鯉が数匹泳いでいる、一匹一匹色合いも違うし、大きさも違う。

自由に泳いでいるし、その動きも不規則なところが、俺の興味を誘った。

 

 

 

こんな風に俺も自由に泳げたら――少しはマシな人間になれたのだろうか。

 

 

 

『おいこんなところで何をしている! さっさと部屋に戻れ』

 

 

急にふと声がかけられた、5人くらいの禪院家の関係者だろうか、男5人組が近づいてきた。

おそらくは俺の監視役の人間だろう、親父が頼んだのだろうが、俺を見る目線は人間に向けられるものではなく、いつも通りの憎悪を向けられた目線だ。

 

 

 

『申し訳ございません、外の空気を吸いに少し外に出たのですが……』

 

 

 

『貴様のような人間が勝手に出歩いていいわけないだろう!? まったくご当主様は見ず知らずの薄汚い子供を何故養子に迎えたのか、理解ができない!禪院家の歴史に泥を塗るつもりかあのお方は』

 

 

男たち5人は俺を囲むようにして、今にも俺を叩き潰さんとしている。

大人5人で囲まれれば、子供ができることは何もない。

この時の俺は誠心誠意の土下座を見せることしかできなかった。

 

 

『申し訳ございません申し訳ございません申し訳ございません』

 

 

『フン酷く醜いものだな…さて、諸君体を洗ってあげなさい、汚らわしい体を洗うのも監視役の務めだからな…何、ご当主様や甚壱様も理解して下さる。』

 

 

『な……何をするんです、やめて、やめて!』

 

 

大人二人が俺の体を掴み、俺のをもう一人が池に向けて抑え込んできた。

この時の俺は無力だった、水中での呼吸も苦しく、このままではおそらく息耐えて死ぬだろう。

死ぬわけにはいかないのに――なんだかもう、どうでもよくなってきた。

 

 

 

ここで俺は死に楽になりたかった。

本気でそう思ってしまい、徐々に抵抗している体も落ち着いてきたのが証拠だろう、次第に呼吸もできなくなってきた。

 

 

ああ本当に―――――ごめんよ、みんな。

目的は果たせそうにない。

 

 

 

 

『楽しそうなことしてるな、俺も混ぜてくれるか?』

 

 

『なっ!?』

 

 

突如して水面から激しい音が聞こえてきた。

池に何かが落ちたのだろう、突然と身を軽くなったし、抑えられていた体も自由になった。濡れた顔を両手で吹き、視線もややぼやけているが、その正体はハッキリとわかった。

 

 

 

『甚爾さん……?』

 

 

『数日ぶりだな弱虫小僧、いいお遊びしてんじゃねーか』

 

 

『きっ貴様、甚爾!! 自分がしたことがわかっているのか!?』

 

 

将宗は池の方を見ると、大人5人が池に入っていた、そして殴られた影響なのか顔が腫れているし、無残な状況なのは目に見えてわかった。

しかも起こったのはたった数秒、数秒で大人5人を仕留められるほどの実力者―――やっぱり、この人は強い。

 

 

 

『知らねぇな? 俺もテメェらのお遊びに加わっただけだ、濡れる奴が一人じゃつまらねぇだろ?』

 

 

 

『こんなことをしてタダで済むと……』

 

 

 

『あ? よく聞こえねぇよ……もう一回いってみろ 』

 

 

彼から伝わる威圧感と視線、触れれば殺すといわんばかりの殺意だ――その威圧感は空気をも変えている。

大の大人が委縮するほどだし、俺もこの時の甚爾さんは怖かった。『ハッだせぇな…』と小言を残し、俺の前へと歩いてきた。

 

 

『おい餓鬼、ちょっと面貸せ』

 

 

『え?ちょっ、ちょっとまってくださ……ちょおおおおおおお』

 

 

突然と体を掴まれて、猛ダッシュでどこかに連れ去られてしまう。

これもしかして俺、誘拐された?

 

 

とマジで思いました、はい。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

『……このぐらい離れればいいだろ』

 

そう言って連れてこられたのは、俺が怪我を負った山奥付近。

まさかまたここにつれてこられようとは思ってもいなかった、そういって雑に降ろされ、この男の雑すぎる行動に苛立ちを初めて覚えてしまった。

 

 

今思えばあの時、一発殴っておけばよかったと思っている。

 

 

 

『な…なんですか。俺をどうする気ですか?』

 

 

『あ? どうもしねぇよ』

 

 

『え?』

 

 

『………』

 

 

『………』

 

 

『つまんねぇなお前』

 

 

『いや、話進まないから! 理由くらい話してくれてもいいんじゃないでしょうか!?』

 

 

思わず、男に向けてツッコんでしまった。

もしかしたら禪院家に来てから、初めてここまで緊張なく話せたかもしれない。いや男に対しては恐怖心があるにはあるのだが、この人はどこか他の禪院家の人とは違うからだ。

 

 

それもそうだろう、あの後自分なりに少しこの人のことを調べてみた。

 

 

禪院甚爾

 

 

確かご当主様の兄の息子、年はおそらく17か18あたりだったはずだ。

生まれながら強大な力を得る代わりに何かを強制的に犠牲にする縛りをもって生まれた人間――天与呪縛の影響を受けていると聞いた。

 

 

呪力がない人間……禪院家では忌み嫌われる存在だ、皮肉にも俺と同じで。

今思えば彼とは共通点は割とあったかもしれない。

 

そんなことを思っていたからか、なんとなく他の禪院家の人間より、この人のほうが話やすいと直感的に思ってしまった。

嫌いにはなれなかったんだ、甚爾さんは――。

 

 

 

『理由? あ―そうだな理由……お前、このままでいいのか?』

 

 

『………』

 

 

俺は何も言い返さなかった、あんな姿を見せれば思うところはあるだろう。

 

 

『テメェがのたれ死のうが、その辺の呪霊に殺されようが、禪院家の腐った野郎共に殺されても、俺には心底どうでもいい、テメェには利用価値があったから、この前は助けてやったがな。ただな、テメェのその面みるとイラつくんだよ、何かあればいつでもくたばってやるって面、そして何かに絶望している面……イライラするぜ』

 

 

突然と俺の首を絞めだして、首を持ち上げる。見えなかった、あまりにスピードにこちらも回避することができなかった。

 

俺は目を見開いて抵抗するも、どうにもすることができない。

 

首を絞める強さは少しずつ上がっていく、このままではうまく呼吸ができない。

 

 

 

 

『がッ――』

 

 

『死にたかったんだろ? だったら俺が手伝ってやる』

 

 

 

甚爾さんの顔は本気だ、本気の殺意がこもった顔つきをしている。

 

 

俺は必死に暴れた、脚で甚爾の体を蹴ってもびくともしない。

このまま暴れても離すわけもなく、このまま首を絞められて俺は死ぬだろう、だがそれもいいかもしれない。

この男が楽にしてくれるのなら、それもいいかもしれないと。

 

 

だけど……なぜ俺の体はこんなに暴れている。

本能というものなのだろうか、死んでもいいと思っているのに体は否定している、洞窟の時もそうだ、あの時の俺も死にたくなかった。

 

 

ああそうだった、何度も忘れてしまう。

俺が生きたい理由―――

 

 

生きたいと思える理由は、みんなのためだ。

 

 

 

私は戦う この場所を守るのが私の使命だからだ! 

 

 

……大丈夫よ、お姉さんに任せておきなさい。

 

 

 

テメェなんざ何1人守れねぇ雑魚だろうが! 雑魚なのに……どうしてそこまで抗える!?

 

 

 

貴方様は生きてください

 

 

 

脳裏によぎる記憶の一部、それを鮮明に思い出して、また涙を流してしまった。

俺はやはり死にたくないのだ。

俺はこんなところで死ぬわけにはいかない、みんなのためにも、俺は。

 

 

何を甘えていたんだ。

俺にはやるべきことがある、辛いことから逃げて逃げて、楽な道を進もうとした――そんな俺でも、ただ一度だけ自分の道を踏み外したことがある、踏み外せば何かが変わると思ったからだ。たがそれも失敗した、失敗したからこそ、俺は楽な道でしか生きられない人間だと思っていた。

 

 

だが、俺は一度の失敗を受け入れ、変わらなければならなかった、何度も何度も道を踏み外そうとも、俺は目的を果たさなければならない。

 

 

俺の生きる意味は、そこにあると。

 

 

 

 

『死にた……くッない!! 俺には……やるべきことがあるんだッ!!』

 

 

 

『………いい面構えになってるじゃねぇか。さっきよりもだいぶマシな面になったな』

 

 

必死に首を絞められても、生きたいという意思と、何かを決意した顔付きに甚爾さんはニヤついた表情を見せて、力を抜き、将宗の首を離す。

 

 

本当にギリギリだった、咳が止まらず、呼吸も荒くなってしまった。

立ち直るまで数十分はかかっただろう。

 

 

あのまま首を離されずにいたら本当に死んでいた。

 

 

『テメェのこと気に入ったぜ…面倒で乗り気じゃなかったが仕方ねぇな』

 

 

『……なんの話です』

 

 

『今日からテメェを鍛えてやるって話だよ』

 

 

 

『は?』

 

 

『ジジイから結構な額はもらったからな、変わりてぇんだろ? なら変わらせてやる』

 

 

『マジ……ですか?』

 

 

『おおマジだ』

 

 

ご当主様が何故?と疑問に思った。

突然といわれたもんだから、この時の俺はかなり焦った、いや―相当焦ったね。

自分なんて見向きもされていないものだと思ったけど、甚爾さんの顔をみれば冗談ではないことがわかった。

 

 

俺の目的を果たすためには強くなるしかなかった。

この男を利用してでも、俺は強くなってやると、ここで決意したんだ。

 

俺は立ち上がり、拳を握りしめて初めて人を睨んだ。

 

 

『てことでよろしくな餓鬼、俺が鍛えてやるんだ、勝手に死ぬなよ餓鬼』

 

 

『餓鬼じゃない……』

 

 

『あ? 餓鬼だろどう見ても』

 

 

 

 

 

俺は 禪院将宗だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はここで禪院甚爾という男、師ができた。

 

 

 

地獄のような修行の日々が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




終わりましたー。


次回は修行編となります。
色々今回は伏線めいたことをバラまいたなので、本編に変わり次第回収していきます。

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