ゴッデスの欠番ちゃん   作:またろー

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新章追加!まだ読めないけど‼︎
新キャラのエレグいい子で好き。
今回短めです。


侵食

 変な時間に目が覚めてしまったので、水でも飲もうかと歩いていると人の気配を感じた。

 

「ラプンツェル…?」

 

 首から下げたロザリオを握りしめて、天を仰ぐラプンツェル。窓から差し込む月明かりを浴びて、金色の髪が煌めきを放っているように見えた。グリム童話の一節がそこにあった。

 

「ボクもお祈りしてもいい?」

 

「えぇ、もちろんです」

 

 特に深い理由はない。ただ目も冴えてしまっているため、二度寝するのも勿体ないと感じたのだ。ラプンツェルに倣って、隣に跪き、手を合わせたところで、自分が何かに祈った経験がないことに気がついた。祈るって何だろう?形から入るのは大事だと思うが中身が全く伴わないのも空しいものだ。そこでラプンツェルは何を祈っているのかと考えて、聞いてみることにした。

 

「ラプンツェルは神様に何をお願いしてるの?」

 

「お願いとは少し違います。祈りとは神様との対話です。宗派にもよりますが、利他の精神と言いまして自分の為に祈ることはしないのですよ。私は世界の安寧と戦友たちの無事を祈らさせて頂いています」

 

 いくら神様とは言っても、みんなを助けてくれるわけじゃないってことか。意外とケチ…おっと、こんなこと考えたら怒られるかな?唯一神っていうくらいだし、神様もワンオペだったら大変だよね。

 

「こんなに祈っているのに、ラプンツェルのことは助けてくれないの?ちょっと意地悪じゃない?」

 

「そんなことを言ったら(バチ)が当たってしまいますよ」

 

「うーん…そうだ!ならボクがラプンツェルの為に祈るよ、そうすればみんな神様に護ってもらえるもんね」

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

 祈りは神様との対話か…ならボクは決意表明でもしよう。

 ボクは必ず、人類を勝利に導いてみせる。だから、どうか。どうかゴッデスのみんなを護ってください。

 

 祈りが届くかはわからない。でもボクが成さねばならぬことははっきりしている。しばらくの間、ボク達は静かに祈りを捧げていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 人生とは選択の連続だと、偉い人が言ってた。確かシェイクスピアだったか…なんてボクは何かの引用で知ったため、原文は知らないけど。

 恐らく、選択に悩む若人に向けた悟りを与える言葉だと思うが、そう意味でボクは恵まれているのかもしれない。何故ならボクの次の選択は、レッドフードを助けることで、悩む必要はないから。

 しかし選択の日は、いつやってくるかわからないものだ。そして往々にして、突然やってくる。

 

「くっ…随分数が多いな…っ!」

 

「落ち着いて、対応できてるよ、順番に!」

 

 ラプチャーによる大規模攻勢。かつて無い敵軍の規模に、ゴッデス部隊の面々にも疲れが見え始めた頃、奴は現れた。

 

「新手!新型ラプチャーです‼︎推定、タイラント級!!」

 

「新型だって…⁉︎まさか…」

 

 通信で新型のタイラント級ラプチャーが出現したという知らせが入り、緊張が走る。

 巨大な体に相応の重装甲、クワガタのような銀色の鋭い大顎に、二対の透明な翅、そして毒々しい色の毒袋。昆虫を思わせる数々の特徴は、ボクが最も警戒し、そして最も会いたく無かったラプチャーのものと一致していた。

 

「…ウルトラ!!」

 

「⁉︎知ってるのか、ターリア?」

 

「あ、えっと…うん、そんな感じ」

 

 しまった、思わず漫画の見開きページばりに叫んでしまったけど、一応初めて見るラプチャーという事になっているんだった。咄嗟にラプチャー進化論や分類の話で適当に誤魔化すと、それ以上の追求はなかった。長々と話している時間がないため当然ではあるが。

 そして、恐らくここが運命の分岐点。ウルトラの出現がわかっていれば、レッドフードを待機させるなり、別の仕事を割り振っていたのだけど…たらればを言ってもしょうがない。今からでも侵食に対して万全を期すために、彼女には撤退して欲しい。でも今からレッドフードを退げるのは…無理だろうね。あまりにも不自然だ。

 

「レッドフードはリリーバイスの方を援護しに行って」

 

「はぁ?この状況でそんなことできる訳ないだろ」

 

「…だよね」

 

 隣の戦場ではリリーバイスが戦闘中なので、そっちに誘導する作戦は失敗に終わった。試しに言ってみただけだが、やはりこの状況でレッドフードが抜けるのは無理がある。戦力的にも、性格的にも。レッドフードが抜ければこちらの戦線が崩壊する可能性すらあった。

 

「取り敢えずみんな距離をとって!」

 

 "ウルトラ"との戦闘が始まった。まずは様子見、ミドルレンジで防御よりに立ち回る。ゲームと違って他にもラプチャーは残っているため、それらを片付けながら攻撃パターンなどを見極めることになるが、時間制限が無いことでプラスマイナスはゼロといったところか。

 ウルトラは『デカい』『硬い』『速い』の三拍子が揃ったラプチャーであり、雑魚ラプチャーとは比べ物にならない巨体と重装甲、そして、二対の透明な機翼による機動力の高さは一体で戦況を一変する威力を持っている。それに加えて、毒や汚染物質を撒き散らし、初の侵食誘発まで持っている欲張り具合は歩く疫病と呼ばれていた。

 注意すべき攻撃は毒液と衝撃波だ。そして、侵食誘発の効果を持っている攻撃だけは絶対に被弾は許されない。

 

 ウルトラが何か溜めているような姿勢をとったため、攻撃を阻止するべく動く。

 ドロシーと一瞬のアイコンタクトを交わして、ウルトラとの距離を詰める。その間の道を塞ぐラプチャーはドロシー達に任せて、ボクは一直線に突撃した。目眩し代わりに正面に銃弾をばら撒きながら接近した後、抜剣し一撃で決めにかかる。しかし首元の毒袋を狙って振り下ろした剣は、鋼の大顎に阻まれた。

 

「…ッ硬い!」

 

 金属同士がぶつかる甲高い音が戦場にこだました。破壊できなかった毒袋から、大量の毒液が噴出され、間一髪のところで近くの岩陰にハイドする。見ると毒液のかかった部分はドロドロに溶けてしまっていた。

 当れば酷いことになりそうだが、近距離でも避けられるなら大した脅威にはならない。それよりも、いま庇ったな…?

 

「指揮官っ!」

 

「あぁ!あの赤い毒袋が脆そうだ、全員一斉射撃!」 

 

「そんなこと言われてもあれだけ動かれたら、狙い辛いって!」

 

 口では文句を言いながらも、しっかり命中させてくれるゴッデス各位。さすがですワ!

ウルトラの毒袋が破壊されたこのタイミングで、もう一度アタックをかける。周囲のラプチャーはウルトラを除いてほぼ掃討しており、あと残っているのはリリーバイスの方にいる奴だ。機動力さえ奪えれば、全員の集中砲火(フルバースト)で削り切れる。

 毒液攻撃が使えないウルトラは、ボクの接近を嫌がってか、大顎と爪を使って襲い掛かってきた。それらを捌ききったボクは、ウルトラの体を飛び越えるように跳躍し、すれ違いざまに右の二枚の羽を切断した。

 低空飛行を続けていたウルトラだったが、半分の翼を失ったことでバランスを崩して落下した。

 

「今だ、撃て…ッ!」

 

 指揮官の号令の下、ボクらの銃が火を噴いた。最初は防御姿勢を保っていたウルトラだったが、分厚い装甲が削れ、剥がれ落ち、やがて赤く光るコアは輝きを失った。

 

「対象…沈黙!」

 

 

 ウルトラの生体反応は消失したことを確認し、胸を撫で下ろす。ちょうどリリーバイスの方も片付いたようで、これで作戦終了だ。

 ウルトラは強敵だった。ボクが侵食を最大限に警戒して、慎重になっていたことを差し引いても、人類を殲滅する為には明らかに過剰戦力だ。

 機械生命体であるラプチャーは進化スピードが生物とは桁違いに速い。それは近年のロボット、AIなどの発展を見るに明らかだ。つまりあれは対ニケを想定して進化したという事だろう。

 しかし、勝てた。レッドフードが参戦した時には、肝が冷えたけど結果オーライだ。原作でどんな流れで侵食を受けたのかはわからないが、初見でなければ、レッドフードが遅れをとることはないだろう。今回、ウルトラとの戦闘経験を積めたことは大きな成果といえる。ボク以外は接近しなかったからか侵食関連の攻撃はしてこなかったが、何はともあれ、肩の荷が降りた気分だ。

 別方向からのラプチャーを迎撃していたリリーバイスも戻ってきた。

 よし、すぐに解体して、侵食の解析と毒の抗体を作成を進めよう。技術開発局の人たちも喜ぶだろうな…

 

 

「…ッ先輩!そいつまだ生きてるぞっ!」

 

「へ?」

 

 突然、声を上げながら走ってきたレッドフードに突き飛ばされ、尻もちをついた。何が起こったのがわからず、状況が飲み込めないまま起き上がると、ボクがさっきまで立っていた場所で、レッドフードが膝をついている。

 その腹部からは、背中から貫通しているであろうラプチャーの触手が伸びており、くねくねと蠢いていた。電力ケーブルのようにも見える黒い触手は、身震いする危険な気配を纏っている。

 

「〜〜〜ッ!」

 

 反射的に背中に担いでいた武装を抜剣し、触手の根元を両断する。すると触手は動かなくなり、今度こそ完全に沈黙したが、傷口の周りの血管が浮かび上がり、激しく脈打っているようだった。

 少しずつ状況を咀嚼し、呑み込むにつれて血の気がサーっと引いて顔が青ざめていく。実際にはほんの数秒、しかし圧縮された思考によって、ターリアにはとても長い時間に感じられた。そして目の前の状況を説明できる答えに辿り着く。

 

 あ、あぁ…れ、レッドフードが、侵食されっ…ボクを庇ったから、ボクのせいで…っ!

 

 ようやく動き出した思考が再び停止し、その瞬間フラッシュバックしたのは失われていたニケになる前の、力無き少女だった頃の記憶。身を挺したレッドフードの行動は、奇しくも自分を庇って命を落とした両親を思い出させてしまった。

 

「レッドフード!大丈夫ですか!?」

 

 スノーホワイトを始めとして、ゴッデスのメンバーが二人に駆け寄る。レッドフードは問いかけに答える余裕はなく、苦しそうにうずくまった。そして、その隣でも息遣いの荒いニケが一人。

 

「ターリアも被弾したのですか⁉︎いったいどこを…」

 

 ドロシーは急ぎターリアの身体を調べるが、細かいすり傷はあれど目立った負傷は見当たらなかった。しかし彼女の取り乱し方は尋常ではなく、普段とは掛け離れた様子に困惑していた。

 

ーー"警告"

思考の著しい乱れを検知。この状態が持続すると、出力制限の維持に支障が出る可能性があります。

直ちに精神の平静を図ってください。ーー

 

「あ゛、ォエ…はっ、はぁ…ぼ、ボクはまた…っ!ハッ、ぇは…ひッ、ゴホッ」

 

「落ち着いてください、ターリア!」

 

は?は??何これ、なにこれ、ナニコレ??

ボクは何をしてるの?

何してたの??

何のために生きてるの??

盾になるならお前だろ、守られてんじゃねぇ。居なくてもいいお前が死ねよ。死んじまえクソ野郎…ッ!

あ゛あ゛ああぁぁぁぁっ!!

 

ーー"警告"

思考の著しい乱れを検知。この状態が持続すると、出力制限の維持に支障が出ると判断しました。

周囲状況を確認…

…半径5m以内に試作機(プロトタイプ),個体名"リリーバイス"を確認。安全は保障されると判断、強制的にシャットダウン及びクリーニングを実行しますーー

 

「ターリア…⁉︎しっかりしてください!」

 

 

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