ゴッデスの欠番ちゃん   作:またろー

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ボクがゴッデスの欠番ですか?

ーー起動シーケンス実行。

内部エネルギー補填…完了

Neuro-Implanted Machine for Protecting Human……正常

記憶域の整理を実行…完了

calling signal……認識終了

フェアリーテイルモデル01,コードネーム・ターリアーーアクティブシミュレート…完了

内部エネルギー過剰及び出力過多により、実行後5秒以内に自壊します。

実行しますか?ーー

 

 急に頭の中に流れ出した機械音声に、起こされる様に目が覚めた。ただ目が覚めたと言っても、身体は動かないし、目も開かない。

 ただ真っ暗な空間に文字の羅列が浮かんでいる。それはまるで瞼の裏側をスクリーンとしたエンドロールの様だった。これが走馬灯のエンドロールだったとしたら、ボク、大事な走馬灯の本編、寝過ごして見てないんだけど!

 まぁ冗談はさておき…何だって?起動シーケンス、内部エネルギー…難しいな。改めて一行ずつ読んで行くが、何のことだかよくわからない。もっと簡単な言葉使えよ!

 えっと次は、にゅーろいんぷらん…はは、ダメだ。どこかわかるとこは無いかな…

フェアリーテイルモデル01…フェアリーテイル01…ッ⁉︎

 ターリアという名前は記憶にないが、フェアリーテイルモデルについては覚えている。

勝利の女神:NIKKEの作中には、そのタイトルにもなっている勝利の女神の名を冠する部隊が存在する。

作中の世界でも、プレイヤーの中でも嫌いな人はいない伝説の部隊'ゴッデス'だ。当然、ボクも大好きだった。

 そのメンバーは殆どが、隊長である最初のニケをモデルとしていて、フェアリーテイルモデルと呼ばれる。後に生まれる量産型ニケと比較すると、次元の違うスペックを誇るワンオフのボディである。なお、そんなフェアリーテイルモデルでさえ、リリーバイスには歯が立たないらしい。試作機(プロトタイプ)と書いて最強と読む、そんな感じだ。

 

 作中で登場したフェアリーテイルモデルは4体いた。

 

02-ドロシー

03-ラプンツェル

04-スノーホワイト

05-レッドフード

 

 そして肝心の01は、欠番だった。確かリリーバイスをまるっきりコピーしたら、出力に耐えられなくて大破した…とかいう話だった筈だ。イベントでリリーバイスが墓参りをしていたから、間違いない。

 

……あれ、これもしかしてボク、ニケになってない?それもフェアリーテイルモデルの欠番(けつばん)ちゃんに?思い返してみれば、モダニアとの戦闘中にラピがレッドフードを起動した時、似たような映像が流れていた気がするし、なんかそうとしか見えなくなってきた。

 

 男は拒絶反応が出てニケになれないみたいな、設定はどうなったんだよ!まぁこの世界でボクは女だったし、そんな変なことでもないのか?

 

 問題ここからだ。実行しますか?って聞かれてるんだから、答えないと先に進まないのだろう。でも実行した場合、5秒で自壊する原作ルートを通る事になるらしい。

 そんなの選択肢無いのと一緒じゃん。

 

「いいえ!実行しません!」

 

ーー外部からのアクセス確認。再度プロセスを実行します。

 

フェアリーテイルモデル01,

コードネーム・ターリア

ーーアクティブシミュレート…完了

内部エネルギー過剰及び出力過多により、実行後5秒以内に自壊します。

実行しますか?ーー

 

 

 は?なんだよ外部からのアクセスって!嫌だって言ってるでしょ!

 

「No!」

 

ーー外部からのアクセス確認。再度プロセスを実行します。

ーーー(中略)ーーー

実行しますか?ーー

 

 無限ループだこれ、詰んだ。恐らく外ではボクの起動実験が行われているのだろう。起動すれば、ボクが大破するのは確定事項。それを外で見てる科学者が知っているのかどうかはわからないが、何としても起動させるつもりらしい。

 実験なんて、トライアンドエラー。ミスっても次に活かせばいいもんねってそんな訳あるかー!エラーにされる側の気持ち考えた事あんの?ふざけんな!…はぁ、はぁ…

 

 ひとりでノリツッコミをしても反応は帰ってこない、ただこの暗闇には無感情な機械音声が繰り返される。

 

 

実行しますか?ーー

 

 うるさいな!お前もシミュレートで失敗するって出たなら、改善策を考えろよ!何のためのシミュレーションだ!出力に耐えきれないなら内部でリミッターを設けるとかさぁ…

 

ーーリミッターの作成に成功しました。10段階での出力制限が可能です。

デフォルトは1に設定。

再度アクティブシミュレートを実行…完了

内部エネルギー過多により、実行後30日以内に崩壊する確率が98%存在します。

実行しますか?ーー

 

 

 え、マジで?出力問題解決したっぽいんだけど。それでも30日か…

 内部エネルギー過多って事は、エネルギーを排出出来ればいいんだよね?

 簡単に思いつくのは、メティスみたいに外部の兵装にエネルギーを流す事だけど…現在の科学力でそんなものは用意できるかわからないし…

 あ、アリスみたいに発熱したら外部にエネルギーを放出できるのでは?

 

ーー外部からの冷却を前提とした、発熱によるエネルギー発散メソッドを開発

…成功しました。

再度アクティブシミュレート…完了

内部エネルギー量…安定

100年以上の活動が可能です。

実行しますか?ーー

 

ーーーーーーーー

 

白い部屋だ。私はベットに寝そべっていた。

 

「おはよう、気分はどう?」

 

「み゜」

 

 突然顔を覗き込まれ、驚いて跳ね起きたボクは、声を掛けてきた人に思いっきり頭突きをかました。ゴンと大きな音が部屋に反響する。

 

「痛ゥ〜〜ッ」

 

 思わず頭を抑えるがそれほど痛くない。冷静になって相手の心配をする。

 

「あ、ごめんなさい!大丈夫ですか…?」

 

 

 リリーバイスだ!間違いない。いま目の前にリリーバイスがいます。原点にして頂点、ゴッデス部隊のリーダーであるリリーバイス!美しさと可愛さを兼ね備えた最高のデザイン。ショートヘアは好みじゃ無かったんだけど、彼女のせいでボクの価値観が音を立てて崩れ落ちたのは記憶に新しい。瞳がキラキラしているのも素敵だよね、勿論大好きポイントです。

 

「私は大丈夫。どうしてココにいるかわかる?」

 

 CV.田村ゆかりの耳に染み込む様な声に、何があったかを思い起こすため、記憶の泉に石を投げる。どうして…何でかは思い出せない。ただボクは人類連合軍の基地を目指していて、あと少しの所でラプチャーに…そう、腹を貫かれた。

 お腹に穴が空いていた事を思い出して、恐る恐る手を伸ばす。

 

「あれ?何ともない…」

 

痛くもなく、それどころか傷すらない。

 その様子を見て、リリーバイスは丁寧に説明をしてくれた。

 基地付近に出現したラプチャーを殲滅するため、出撃したこと。そこで死にかけているボクを回収して、治療を試みたこと。そして、身体が死んだため脳をニケの材料にしたこと。

 

 そこまで聞いて、さっき見ていた夢のことを思い出す。あれは夢じゃ無かったってこと?あれは頭の中の出来事で、ニケの起動プロセスの様なものか?

 そうだと仮定すると、ボクは原作には存在しないはずの、ターリアとかいうニケになったという事になる。

 

 …それってマズくない?だって原作ではリリーバイスのコピーとしてボクを設計したが、その高すぎる出力に耐えられず爆発四散した。

 はやい話が開発失敗だ。しかしそれを糧に、次から出力を抑えてボディを制作する事になり、フェアリーテイルモデルの初の成功作、ドロシーが誕生したのだ。つまり、ボクが爆発(失敗)しなかった今、このまま行けばドロシーが爆散する事になるのでは?

 そんなの嫌だ、ボクはドロシーも大好きなんだ。ハーフアニバでガチャを回しまくったおかげで、Lv.160の壁を突破した。その後もモールドとかすり抜けでいっぱい引けたおかげで、初めて完凸した思い出深いニケなのだ。どうしよう、このままだとドロシーが死んでしまう可能性が高い。

 ボクが色々説明しても、実際に目撃しないと納得しない気がする。転生とか、科学者には絶対受け入れられないだろうし、そもそも説明するリスクが高すぎる。

 ドロシーにツケが回るなら、原作通りボクが爆散した方がいい。

 

 そこまで考えて頭の中で、念じる。さっきの夢を思い出しながら。

ーーリミッターを解除、なるべく周りに被害が出ないようにできる?

 

 

解ーーボディパーツの一部の出力制限を解除することで、部分的に出力過多による自壊を再現可能です。

実行しますか?ーー

 

 おお、ダメで元々だったが、本当に交信できた。というか何それ、死ななくても良いってこと?最高じゃん。

ーーイエスで。

 

了ーーリミッターを部分解除、右腕の出力を100%に上昇しました。

カウントダウン開始、崩壊まで5秒。4,3,2…

 

 怖い怖い!本当に大丈夫なんだろうな!

頭の中に告げられる恐怖のカウントダウン。それがゼロになると同時に、ボクの右腕は爆発し木っ端微塵に弾けた。

 突然の事態に現場は大混乱、部屋の中には私とリリーバイスしか居ないが、分厚いガラスの向こうでも慌てている様子が見えた。苦労して開発したニケが無事に起動したと思ったら、爆発したんだから当たり前の反応ではある。

 

「え、え⁉︎どうなってるの?大丈夫…ではないわね!」

 

「あ、ご心配なく。もう安定しました。私はリリーバイスのコピーモデルですね?どうやらリリーバイスのスペックを許容できずに、爆発した様です。次からは安全性と安定性を考慮し、ある程度スペックダウンする事をお勧めします。今回は奇跡的に起動出来ましたが、私も一度スリープすると次は起動出来るかわかりませんので」

 

 嘘をつく時は真実を少し混ぜると良いらしい。リリーバイスがハイスペック過ぎて、爆発したのは本当だが、後者はでまかせだ。

 ボクという成功例を解析して、次に繋げるのは良いけど、頭を開かれるのは困る。

 ニケの記憶はニンフとかいうナノデバイスのお陰で、覗くことが出来るが、[リリーバイスたん、かわいい。首輪着けて飼われたい…]とか考えてるのがバレるのは絶対嫌だ。

 それにボクの不確定な未来の記憶が漏れるのは困る。ただでさえ、ボクというイレギュラーで、未来がどうなるかわからないのに、人類連合軍の動きまで変わってしまったら、何が起こるかわからない。これはそのための楔である。

 

 

 ボクは右腕をスペアパーツと交換してもらい、そのままゴッデスに所属する事となった。不相応だとも思ったが、ゴッデスのためのフェアリーテイルモデルな訳だからと強引に納得した。別に不純な目的がある訳じゃないんだからね!

 そして、コレからの目的を二つ決めた。昔のことを思い出す事とゴッデスを救うことだ。

 まず、ボクの今の頭の中はカオスめいている。勝利の女神NIKKEというゲームをしていた男の記憶、この世界に生まれてこの人類連合軍の基地を目指した女の子の記憶の二つがあり、それらが混ざり合うように一つになっているのだ。

 そして、ニケになる前に死にかけたからか、この世界ので過ごした記憶がほとんど無い。それを思い出すことも目的のひとつだ。

 もうひとつはゴッデスを救う事、こっちがメインクエストだ。これから、メンバーが増えていくゴッデスは、その名の通り、人類を救う勝利の女神になる。

 原作、つまりボクの居ないゴッデスは、数々の勝利を納め、最終的にとして、人類の生存に偉大な貢献を果たした。

 ただし、彼女らに大きな傷跡を遺して。

ボクがいなくても、ゴッデスは勝利の女神たりえた。ならボクは彼女たちを救ってみせよう。ただの自己満足だと言われても構わない。折角チカラを得たんだ、少しは自分のために使ってもいいよね。

 

 

 

 原作知識も碌に活かせず死にかけたボクだったが、なんとニケになることで命を繋いだ。しかも、量産型ではなくネームドである。

 フェアリーテイルモデルの欠番、ターリアとなったのは、ゴッデスファンとしては嬉しい。彼女たちの活躍や普段の様子を近くで観察することができるから、当然だ。

 ただ、ボクがどういうニケだったのか情報が何もないため、どういうキャラクターでいけばいいのかがわからない。

 

 まず見た目は、悪くない。ニケなんだから当たり前ではあるが、もしボクがゲームをしていた時に実装されていたら、ガチャをぶん回していたと思うくらいには好みだ。

 …これ側からみたら、自分の容姿を自画自賛している事になるのでは?ちょっと変な気分。

 顔はリリーバイスを気持ち幼くした感じだろうか。紫紺の瞳であることは一緒だが、残念ながらキラキラはない。

 髪は深い緑色で、長さはセミロングくらい、インナーカラーでピンクが入っている。リリーバイスとお揃いだ。そして身長はリリーバイスより低い、160cm弱。

 リリーバイスと並んでいても、多分姉妹には見えない。ボクよりスノーホワイトの方が、妹に見えるだろう。やっぱり髪色って大事だわ。

 

 まぁ外見は良いよ、どうしようもないし。問題はボクの内面というか、中身で、謎の機械音声が存在することだ。

 ニケは比較的自由に身体の機能を弄れる印象があった。アニス達は嗅覚センサーを任意でオフにしていたし、食事もしてもしなくてもどちらでも良いなんて話もあった。

 でもそれは何というか、スイッチのオンオフが可能であるだけで、ボクのそれとは違う気がする。

 例えば、ボクも嗅覚センサーを切ることはできる。でもそれはーー嗅覚センサーをオフにしたいんだけど。

 

ーー嗅覚センサの入力を遮断します。

味覚への入力精度も30%に低下します

実行しますか?ーー

 

ーーじゃあやっぱりいいや。

 

 とこんな感じで、頭の中の声と会話するプロセスを踏む必要があるのだ。アニスたちにはそんな様子はなかった。描写がなかっただけと言われればそこまでだけどね。

 唯一、作中で似たものがある。それがラピのレッドフードだ。

 ラピはレッドフードを起動する時、まさしく頭の中で誰かと話しているようだった。

 

 そこで仮説としては、ボクに2つの記憶があった事に原因があるのではないかと思う。

 ラピとの共通点がそれくらいしか考えつかないだけでもあるのだが。ラピの場合、ラピとレッドフードの二人の精神がひとつのボディを共有していた。

 

 人間の脳についてはよくわかっていない部分が多いのと同様に、ニケの脳内に存在する

NIMPH(ニンフ)も、まだ明らかになっていないことの方が多い。

 もしかすると、脳内のこの声は人格が二つある事で、起こる何かしらの不具合を避ける為、NIMPHによって生成されたシステムなのかも知れない。

 考えても分かることでもないし、このシステムがなかったら、原作通りボクは死んでるから幸運だったと思っておこう。

 

 ボクが生存している事で、ゴッデスの戦力は格段に上がるはずだ。単純にひとり増える事になるからね。そうなれば、きっと未来は良い方向に傾く。

 でもボクの代わりにドロシーが死ぬ事になったら話が変わってくる。ドロシーはリリーバイスを除けば、ゴッデスで1番強かったみたいだし、指揮能力もかなり高い。失うことによる損害は計り知れない。

 何より、もしそうなってしまったら、ボクはボクを許せない。

 

 そこで次のフェアリーテイルモデル、つまりドロシーボディの設計図を見せて貰い、頭の中の声に問うてみた。すると、出力は抑えられており、正常に動作する可能性が高いとのお墨付きを頂いた。

 少しホッとしたけど、慢心はせず、念のために最終チェックをさせてもらう事にする。

 

 ボクの腕を吹き飛ばしたことに責任を感じているのか、これらの'お願い'は簡単に聞き入れられた。

 まだこの時代には、ニケに対する差別の様なものが無く、寧ろ敬意を持たれている事も大きかったと思う。

 ともあれドロシーの件は、何とかなると思いたい。

 

 あとはボクの記憶についてだ。取り扱いに注意すべき情報だが、協力者は多い方が良い未来へ辿り着ける可能性は高くなるように思う。

 指揮官とリリーバイス辺りには共有したいが、もう少し信頼関係を構築してからにすべきだろう。初対面でニケになったばかりの奴が、突然前世の記憶がどうの言い出せば、頭がおかしいと思われるのがオチだ。

 それに誰にどの情報を共有するのか、整理する必要がある。原作の記憶も、どれほど正確な物なのかも確かめなくてはならない。

 原作改変は上等である。原作からして曇らせ多すぎるからね。でも、それぞれの関係性は変えたくない。スノーホワイトとレッドフードの仲の良さとか、紅蓮とドロシーが反発しながらもお互いのチカラを認めている関係など、尊いものはそのままに、悪いイベントは全部へし折る。

 

 そのためにボクの目指すべきは、なるべくメインキャラと関わらず、暗躍するモブキャラ的存在かな…?

となるとやはり、ゴッデスには入らないべきか?でもそれだと動き辛くなる気がする…

 ま、フェアリーテイルモデルである以上ゴッデスに入る事は、多分決定事項なんだけどね。

 よーし、がんばるぞー!

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