先週くらいに投稿するはずが、モ⚪︎ハンの体験版のせいで遅れました。
おのれ、カプ⚪︎ン…ッ‼︎
さて、本作ですがエイブ、レッドシューズ、リトルマーメイド、ヘルグレは登場しません。ご了承くださいませ。
「綺麗だねぇ。全く神々しいにも程があるよ」
夜も更けるころ、眠っている二人のニケを前にため息を漏らす。純白という言葉が相応しいシンデレラと、黒を基調としたカグヤヒメ。対照的ながら並ぶと絵になる素晴らしいデザインだ。
…いや身体のラインが出過ぎでは?製作者は変態に違いない。
噂をしていると、白衣を纏った女性がコツコツと床を鳴らしながらやってきた。ニケ制作の第一人者、オルドリンである。
「来たか…」
「いやいや、来たのは君だから。呼び出しといて待たせるってどうなの?」
まさかの第一声に思わずツッコミがでる。オルドリンに呼び出されたボクは5分前に到着していたのだが、当の本人は30分も遅れてやってきたのだ。
「時間守らない人はドロシーに嫌われるよ」
「私がドロシーを待たせるわけが無いだろう」
コイツ…ッ!せめてもの皮肉のつもりだったが、全く効いていない。ここまで行くと清々しいまである。別にいいけども。
「はぁ…それで用件はなに?」
「ヘレティックとやらとやりやったらしいな。そしてそのままタイラント級2体と交戦…大暴れじゃないか。リリーバイスに並ぶ日も近いか?」
「えっへへ、そうかな?急にどした?そんなに褒めても騙されないぞ!遅刻の埋め合わせはしてもらうからね」
「…褒めてる訳じゃない。忠告はしていた筈だ。お前、リリーバイスに近づく意味がわかっているのか?」
なるほどそういう話か。態々こんな時間に呼び出したのはドロシーに聞かせないためだったようだ。この時間ドロシーは何かない限り絶対寝てるからね。全く、ドロシー関連に関しては本当に気が回るんだから。それを他にも実践してほしい。
「……そうだね、わかってるよ。でも忠告してくれた時にも言ったでしょ?そのくらい許容範囲だよ。ボクは目的に向かって進み続ける」
「お前の検査結果がでた」
「あ、それが本題だ!結構良い結果だったでしょ?なんか最近調子良いんだよねぇ」
検査とは人間ドックの様なものだ。身体の状態を診てもらって、悪いところがあれば交換する。ニケも己の状態を完全には理解していない為、定期的なメンテナンスが必要となる。ここに到着した折、せっかくオルドリン博士の研究所まで来たのだからと、ドロシーと共に診てもらうことになったのだ。ドロシーの結果は早々に出て、良好だった訳だがボクは後回しにされていたのだ。
「コアが非常に不安定な状態になっている。NIMPHによる制御でギリギリ持ち堪えているが、いつ崩壊してもおかしくない」
「…はい?」
晴天の霹靂、想像したものと真逆の結果を告げられ耳を疑う。頭の中で何度反芻しても、聞き間違いや解釈違いは見つからない。ただ淡々と無機質に言葉を羅列するオルドリンの表情からも何も読み取ることはできなかった。
「あ、あぁ冗談ね。全く分かりずらいなー…そんな訳ないでしょ?いまだって絶好調なんだから!」
「体温が以前より上昇しているのも気付いていないのか。…恐らく感覚器官が鈍くなっているのだろう。調子が良いのではなく、自分の調子に鈍感になっているんだ」
冗談であるという答えに辿り着いたボクは話を流そうとしたが、どうやら冗談ではなく、ボクの状態は悪いと言うのはホントらしい。そういえば、最近湯たんぽ代わりにされる事が増えていたが、まさかそんな理由があったとは驚きだ。
…みんなに揉みくちゃにされるの最高だったな。おっと、これじゃまるでボクが変態みたいじゃないか。今のナシね。
コホン…ッ!しかし、不幸中の幸いという奴だ。やっぱり自分のことって自分じゃ気づけないもんなんだね。
「うへぇ…いやぁオルドリンに診てもらってよかったよ。どのくらいで直る?近々大規模作戦があるから早めで頼みたいんだけど」
「直らない。お前とリリーバイスのコアは特別性だ。修復する事は出来ない」
「え?」
「もう戦うな…お前は十分やったよ。シンデレラやカグヤヒメだけじゃない…第二世代もこの先増える。お前はもう戦わなくて良い」
「いやいや、ちょっと待ってよ!ニケは脳さえ無事なら助けられるんでしょ?コアが特別だとしてもそのコアを作ってくれればいいじゃん」
予想外の宣告に固まっていると、オルドリンは慰めるように言葉を紡ぐ。まるでもう戦力外とでも言いたげな物言いに、ボクは異議を唱えた。
コアが普通と違うというのはわかった。ならそれを用意すれば良いだけの話だ。リリーバイスが
「わかった、説明するから落ち着け。…ニケのコアがどこにあるか知っているか?」
「…ここじゃないの?」
少し考えてからボクは胸に手を当てた。ドッドッと血のめぐる鼓動を感じる。厳密には心臓ではないし、流れているものも血液ではないがそれは今はどうでも良い。
「半分正解だ。ニケのコアは胸の中心辺りにある。2人の例外を除いて。ターリアとリリーバイス…お前たちのコアは脳の中にあり、脳と一体化している。お前の言うとおりコアの複製は可能だが、交換が出来ないんだ」
他にも色々と説明を受けたが、難しい理屈は途中から右から左へと抜けていた。ただ頭の中、それも脳と一体化したコアを取り出すことが不可能であることは直感的に理解できた。人の脳はNIMPHと同じくらい未開拓領域が広いと聞いたことがある。
何はともあれボクの時間は余り残っていないようだ。だがそんな事はどうでも良かった。
「リリスは?リリスも同じ状態なの?」
「それはない。お前の状態は出力を変動させていたことによるものだ。常に全開のリリーバイスには起こり得ない」
「なんだ、よかったぁ…!」
最大の懸念が一蹴されて、ボクは脱力した。
「何も良くはないだろう。私はお前の話をしている」
「まぁそうだねぇ…治らないんでしょ?出来ないことは考えてもしょうがないよ、なるようになるさ。ところでこのことはまだ報告してないよね。これからするの?」
「あぁ、これからだ」
「ふむ…さてオルドリン博士。ここでひとつ、お願いがあるんだけど…」
「ダメだ、報告する」
オルドリンは"お願い"の内容がわかったのか、キッパリと拒絶した。
「まだ何も言ってないじゃん。合ってるけどさ…あ、ちょっと待ってってば!」
取り合う間もなく立ち去ろうとしたため、ターリアは旗めく白衣の裾を掴んだ。
「ボクは最後までみんなと戦いたい」
「はぁ……お前はゴッデスの中心だ。死なれたら困るんだよ…士気が下がる程度では済まない。人類の希望である自覚を持て。何も剣を振り回すだけが戦いではない。そうだな…私の助手にでもなればいい。一生面倒を見てやる」
「心配しすぎだって!戦う力がなくなった訳じゃないし、死ぬと決まった訳でもないでしょ?あ、もちろん死ぬつもりもないよ。だけど誰だって戦場に出れば、そういう可能性はあるんだ。ボクだけ逃げるわけにはいかない」
「後方に下がっても誰も責めない。そんな奴が居たら私が黙らせてやる」
「あぁ、言い方が悪かったね。ボクが望んでるんだ。みんなにはボクの背中を魅せていたい。それがボクの生きる理由だから」
「くだらない。捨ててしまえ、そんなもの」
吐き捨てるようにそう言ったオルドリンはどこか、ボクの選択をわかっていたようだった。
「むむ…それは聞き捨てならないな。生き甲斐とか生きる意味とか、哲学は大事だよ。オルはボクに死んだように生きてほしいの?」
「…ッそれは………卑怯だ」
「ふふ…ごめんね?好きだよ。君のそういう合理的なところ」
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3人で囲んだテーブルには、オルドリンが用意したカラフルなケーキが並んでいる。私生活のズボラさを知っているボクからすれば、オルドリンが作ったとはとても思えないが、何度か手伝ったことがあるので間違いない。彼女曰く、料理は科学らしい。
「可愛い!美味しそう!」
「ふふ、そうですね」
「私はドロシーの為に用意したんだ。食べても良いが慎めよ」
「やだなーそんなに沢山食べないよ。スノーホワイトじゃあるまいし」
ジリリリリリリ…
どれにしようかと眺めていると、今日日聞かない黒電話の呼鈴で水を刺された。
「え?ここ電話繋がるの?」
「有線の個別回線だ。傍受や探知の恐れはない」
知らなかった、そんなのあるんだ…ボクはわざわざ下手くそな字で手紙書いたってのに。因みにドロシーには愛嬌のある字だと言われたが、そのドロシーはめっちゃ字綺麗なんだよね。
「お前に用があるそうだ」
「なんでだよ」
何度か面倒そうに相槌を打つと、オルドリンは受話器を寄越してきた。色々とツッコみたいところではあるが、待たせるのも良くないので手渡された受話器を耳に当てる。
電話は人類連合軍のお偉い様からだった。
「どうかしましたか?」
「北の戦線が突破された。近くの都市に、ラプチャーの軍勢が向かってきてるみたい。ボクとドロシーに出動命令だって」
「わかりました。準備します」
「しなくていいよ。行かないから」
ボクの言葉にドロシーは目を丸くする。そんな彼女につられてボクも目をぱちくりさせた。
確かにボクをご指名だったが、この命令はゴッデスを通していないものだ。ボクらがここにいることを知ってることから、かなり上からの命令であることは確かだが、それでも指揮系統を守ってくれないと困る。ボクは現在ここの防衛任務に就いているため、任務の重複となるのだ。船頭多くして山を登るという言葉があるように、現場の混乱を防ぐためにも守るべき規則である。
指揮系統を無視しての命令ということは、三大企業かV.T.C.から圧力でもかかっているのだろう。近くに大きな生産工場でもあるのかな。
「これは正式な指令じゃないし、ボクらはここを離れるわけにはいかない」
「あ、あぁ、なるほど。量産型のニケが防衛しているんですね?私たちが行かなくても問題ないと判断したと」
「いないと思うよ?話振りを聞く限り、緊急性は高そうだ。ボクたちが行かないと壊滅するだろうね」
「壊滅って…助けを求めている人を見捨てる。あなたはそう言ってるのですか?」
今動かなければ、人が大勢死ぬ。それは間違い無いだろう。でもその隙にシンデレラたちを奪われれば、その何十、何百倍の人が危険に晒されるのだ。合理的に考えれば答えはすぐに出ていた。
「トロッコ問題だよ。多くの命とより多くの命、どちらを取るべきかなんて明白でしょ?」
「前提が違います。今動けばどちらも助けられる可能性がありますから」
ボクはドロシーも同じように考えると思っていたが、彼女の答えは想像とは真逆だった。
まぁドロシーの言うこともわかる。かもしれないとリスクに怯えて、明確な危機を対処しないのは愚かに思えるだろう。しかし、ボクは確信しているのだ。シンデレラさえ無事であればゴッデスは勝利すると。
目の前にゴッデスを輝かしい未来へ送り届ける方法がある。その為なら、ボクは助けを求めて伸ばされた手だろうと払いのけられる。
「連絡によると敵の数はそれほどでもない。ボクたちが行けば直ぐに対処できるかもね。移動を考えてもここを離れるのは数時間ってところかな」
「それなら…!」
「でも、その数時間でここを攻められたら人類は負ける。リスクが大きすぎるんだよ。確率じゃなくて被害の話ね?これはボクの指示だから、君が心を痛める必要はないよ」
人類が負けた場合、原作ルートを通るなら一番苦しむのはゴッデス、そしてドロシーだ。当然そんな結末は認められない。一番頑張っているゴッデスは誰よりも報われるべきなのだ。
「…わかりました」
「うん、ありがと「ですが私は問題ないでしょう?」
わかってくれたと安心したのも束の間、ドロシーは被せるようにボクを突き放した。
「本来ならアナタ1人の作戦、私がここに居なくても問題ない筈です」
「…いいや問題だ。ドロシーはボクを守るためにここに来たでしょ」
「その通りです」
「ならちゃんと守ってよ。ボクのそばにいて」
「……その言葉を文字通りに受け取るほど、私は馬鹿ではありません。守られるつもりなんてない癖に」
そのまま受け取れば、SOSのサインだがドロシーにはそれが方便だと理解できた。ドロシーはターリアと別れ1人で出撃するつもりであり、それに対してトゲが立たない様に引き止めるための嘘である。要するに"手の届かないところへ行くな"ということだ。
「…ボクは君が理想を叶えるためなら、なんでもしてあげる。けど君自身を危険に晒すのは看過できない」
「アナタがそれを言うのですか?」
「ボクはいいんだよ」
「…ターリアが自己犠牲を止めるつもりがない事はわかっています。ならせめて私の命も一緒に使ってください!」
何をムキになっているのかわからないが、ドロシーも譲る気はないとみえる。平行線な議論が続き、互いに感情的になってきていた。
…失敗したな。ドロシーに電話の内容を伝えるべきでは無かった。ボクは彼女の高潔さを見誤っていた。まるでラプンツェルと話しているようだ。
「…自己犠牲?買い被りだよ。ボクはそんな立派な人じゃない。ただ自分のやりたい事をやってるだけの自己中だよ」
「そんな訳…ッ !貴女はこれまで全部救って来たじゃないですか!」
「はは、面白いこというね。それが出来てたらこの戦争はとっくに終わってるよ」
「…よく分かりました。これ以上話しても埒が明かない」
「うん、そうだね。早く諦めてくれると助かるよ。ボクは絶対認めるつもりはないから」
「いいえ、アナタの許可など必要ありません。私の上官は指揮官ですので」
そう言ってドロシーは装備を整え始めた。ボクがどれだけ声を掛けても、その手を止める様子はない。慣れた動作で銃の動作確認を行い、遂には用意を整えて出撃しようとしたため、強引に手を掴み引き留めた。
「ちょっとドロシー‼︎」
「…手を離して頂けますか?」
咄嗟に掴んだ手に、ドロシーは不快感を示した。ターリアは初めて向けられた視線に手の力を緩めてしまう。いつもと違う他人行儀な作られた表情。固まった口からは言葉が出ることはなく、遠ざかっていく背中をただ見る事しかできなかった。
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怒りと哀しみはよく似ていて判別が付きにくい。或いは似ているが故に混ざり溶け合うのかもしれない。少女は自分の感情もわからないまま、わからないからこそ自分の内面と向き合っていた。
自慢ではありませんが、私はニケになるまで、いいえ…なってからも何不自由なく生きてきました。両親は立派な方でしたし、たくさんの機会を与えてくれました。そして私も期待に応えるべく努力を積み重ね、結果を出しました。
普通の家庭よりは厳しかったかも知れませんが、それに不満はありませんでした。私は環境と才覚に恵まれていたのです。ですからニケの適合検査を受けた時も、良い結果が出ることを確信していました。
ニケになりゴッデスへ配属された時、私はターリアと出会いました。部隊へ配属されたからと言って、必要以上に仲良くするつもりはありませんでしたが、気さくで愛らしく、どこか世話の焼ける彼女に絆されるまで時間は掛かりませんでした。
ターリアは優秀でした。私が嫉妬を覚えるほどにです。戦場での振る舞いなど覚えがありませんでしたから、私はターリアから見て学びました。幸いなことに、彼女は言語化が得意でしたのでこれ以上ない教師となりました。ですのでニケになる前のターリアが私より年下で普通の学生だったことを知った時は、とても驚いたことを覚えています。
ターリアの清廉で博愛の精神は、私に多大な影響を与えました。彼女が私の理想となっていったのは必然と言えるでしょう。彼女と並び立つために私はこれまで通り努力を重ねました。
私とコンビを組んでいる時が一番強いと言っていた時、憧れに近づけたようで本当に嬉しかった。
ターリアが否定されるのが許せなかった。例えそれがターリア自身であったとしても。
ターリアは何一つ見捨てなどしない。彼女は誰よりも人のために行動する人でした。自分のことなど二の次で、どれほど危険な戦いでも常に先頭を走っていました。重責と使命をその小さな背中に背負って。私はターリアに頼ってほしかった。
……あぁ、そうか。私は怒ってるんですね。ターリアに並び立てただけで満足していた自分に。ここにいたのがリリスなら、あの子も二手に分かれることを提案したかも知れない。
ドロシーは心に立ち込めたモヤモヤの名前を見つけて、ストンと腹に落ちた。
「はぁ…」
自分の怠惰にため息が漏れる。頼ってくれなどと口で言うだけなら誰にでもできる。ターリアがリリスに認められるため、頼られるためにどれだけ努力を重ねてきたか、一番近くで見ていた筈なのに。
えぇ、私がすべきことがよく分かりました。
証明しましょう。私もゴッデスの一員であり、ターリアが背中を預けられる存在であることを。それから、ターリアに謝って仲直りをすれば良い。そうと決まれば早く終わらせて帰らなくては。
ドロシーは晴れやかな顔をしていたが、翼を広げて戦場に降りたつと表情が引き締まった。
「
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