部隊にスノーホワイトが合流しない…仲良しの技術者の人たちから、スノーホワイトをロールアウトしたとの報告は受けていたので、すぐに会えると思っていたんだけどね…今は閉じこもって武器の開発に専念しているらしい。そういえば原作でもそうだった。
スノホワ印の武器は非常に高性能であるため、生産数が増えるのはありがたいが、ボクはリリーバイスとスノーホワイトの絡みがみたいのだ。
早速スノーホワイトを引っ張り出すために、リリーバイスを送り込むことにした。
正直なところ、スノーホワイトと早く話してみたくてウズウズしているけど、彼女に戦う理由と勇気を与えるのはボクじゃない。それは我らがリリスお姉ちゃんの仕事だ。
リリーバイスは快活で非常に親しみやすい女性である。彼女に任せておけば、スノーホワイトの一人や二人、すぐに引っ張り出してくれるだろう。頼りになるのは戦闘だけじゃないのだ。
それにボクは、リリーバイスをお姉ちゃんと慕うスノホワを見たいのである。
過干渉はダメ、絶対。
リリーバイスを送り込むために、頼んだりする必要はない。スノーホワイトの事を何となく伝えれば、勝手に接触してくれるはずだ、面倒見の鬼だからね。ボクがお願いしても行ってくれると思うけど、その場合見返りとして、ボクに『お姉ちゃん』と呼ばせたがるのだ。リリーバイスが喜ぶならなんでもしてあげるけど、それだけはできない。みんなの妹ポジションはスノーホワイトのものだからね。
リリーバイスはボクの狙い通り、話をしたその日のうちにスノーホワイトに会いに行った。行動力おばけ!
そしてそれから毎日、スノホワの工房に足を運んでいる。会話は当たり障りの無いものだが、最初は戸惑っていたスノホワも、慣れてきたのか、少しずつ会話になるようになっていた。
…何でボクがそんなことを知ってるかって?そりゃあ当然、バレない様に見守っているからですが何か?
因みに耳に着けているこれは盗聴器では無い。開発局に頼まれて、ニケの聴覚を拡張する為のデバイスをテストしているだけであって、これっぽっちもやましい考えはない。
しばらくして、リリーバイス的に仲良くなれたと感じたのか、スノーホワイトが作っている武器のテストをさせて欲しいという話になった。
いつも作っていた武器は進捗がよくない様子だったから、気分転換にもなるし良い案だと思う。
リリーバイスが使う武器なんて、ボクには想像も付かないが、実際に形にならなくても、その過程は無駄にならないと思う。何を成すための武器なのか、誰の為の武器なのかを考えながら作るというのも、モノづくりには大切ということだろう。
さすがリリーバイスだ。ボクには到底できない提案を、平然とやってのける。そこにシビれる!憧れるゥ!
案の定、リリーバイスの武器作りは難航した。いやね、スノホワは悪くないんだよ。
銃を作れば、握っただけでひん曲がったり、銃身が破裂してテストにならないし、剣を振れば一振りで粉々に粉砕してしまう。
それはスノホワ製の武器が脆弱な訳ではなく、リリーバイスの出力が異常な上、その制限が下手くそなのだ。ラプチャー相手に手加減は必要ない為、これまで上達しなかったのもあるだろうけど。
スノーホワイトはタイラント級の攻撃にも耐えられるように作ったのに!と驚愕している。
スノホワさんは剣も作れるのかー、そっかぁ…ボクにも作ってくれないかなぁ。剣ってカッコいいもん。今のところボクは全ての武器に適性があるため、剣も使えるんじゃないかなと期待している。肝心の剣がないからまだ試せてないんだけどね。
ひと通りの武器をダメにしたリリーバイスは少し諦めモードだが、スノーホワイトの職人魂に火がつき、武器製作は続行することになった。
あ、ちょっと待って!リリーバイスがスノーホワイトの頭をなでた!『諦めないでくれてありがとう。カッコいいよ、スノーホワイト』だって!くぅぅ…ッ!良いものみたぜ!スノホワも満更でも無さそうだし、コレはリリスお姉ちゃん呼びが聞ける日も近いかもね!
ふむふむ、食堂でご飯?もちろんついていきますとも…コッソリね?
食い意地はってるスノホワも可愛いよ、ぺろぺろ。
数日後、新作のリリーバイス用武器のテストをする事になった。
だが銃剣といっても、ライフルに申し訳程度のブレードがついている様な形ではない。ボタンひとつで形を変える、スノホワ印の変形武器だ。かっこよすぎて、身を乗り出して眺めてたらバレそうになったわ。危ないアブナイ…あれはもう新しい芸術作品だね。スノーホワイトにはぜひ個展を開いてほしい。
コレから試し撃ちをしてみようというところで、空気の読めない警報が鳴り響いた。この基地にラプチャーが迫っている事を知らせる警報だ。
よりによってタイミングか…新武器のテスト前だったのもそうだが、今日は指揮官とドロシー・ラプンツェルが別行動で任務に出ているので、基地にはボク達しかいない。任務とはいっても、広報任務なので危険なことになる心配はないけどね。
あの二人は育った環境のためか、風格があるのでこういった任務にはうってつけなのだ。ボクもドロシーが合流する前には何度か行った事があるが、向いていないのか落ち着かなかった。何というか、勝利の女神っぽさがないんだよね。
広報任務の主な内容は、民衆に向けた
さて、ラプチャーの襲撃だったね。リリーバイスは丁度良いと言って、軽く素振りをしている。どうやら実戦で試してみる気らしい。豪胆だなぁ。
スノーホワイトもいきなりの実践は、心配なようで止めようとしているが、こうなったリリーバイスは止まらない。ボクも早くこの場を離れ、出撃の準備をしないとね。リリーバイスが出るなら必要ないだろうけど、サポートしない理由にはならない。
「ターリア、出撃するよ!」
コソコソと離れようとしたところを突然呼びかけられて、心臓が止まりそうになる。変な汗も出てきた。
「え…い、いつから気づいてたの…?」
「いつからかな?でもその話は後、行くよ!」
絶対最初からバレてたじゃん、その言い方は。穴が入ったら入りたい気分だ。スノーホワイトにも怪訝な目で見られている気がする。初対面がこんなことになるなんて最悪…でもリリーバイスの言う通り、話をしているひまはない。簡単な自己紹介をして、ボク達は急いで戦場に降り立った。
「はじめまして、ボクはターリア、フェアリーテイルモデルの1番だ。あとで話そうね!」
ここからだと、リリーバイスとスノーホワイトがよく見える。ボクは二人と分かれて、狙撃地点に到着していた。いつもなら近くで一緒に戦うけど、今回はスノーホワイトにリリーバイスという勝利の女神を魅せる必要があったため、敢えてこうした。
原作でスノーホワイトの原点は、自身がリリーバイスの武器になる事だった。武器職人として世界一といっても良いほどの技術を持つスノーホワイトだが、リリーバイスという完成された存在に武器は必要ないと結論づけることになる。そして、リリーバイスに武器が必要ないのであれば、自身がリリーバイスの刃となり、盾となる事でリリーバイスを支えるというのがスノーホワイトの最初の目標となるのだ。
「試し打ち、いや試し斬りかな?」
リリーバイスが銃剣による一閃を繰り出すと、迫り来るラプチャー達が紙のように吹き飛んだ。以前テストしていた剣はコレで壊れたが、今回の銃剣は壊れなかった。
「おー、すごい!壊れなかったよ。確かここをこうして…」
続けて、リリーバイスが武器を操作すると、不穏な音と共に剣から銃へと形が変わる。そこまではよかったのが、その引き金を引くと銃声と共に銃身が弾け飛んだ。
「あらら、壊しちゃった」
「お姉ちゃん!後ろ!!」
武器を失ったリリーバイスに、ラプチャーが迫る。
ボクは引き金を引き、そのラプチャーのコアを正確に射抜く。動きが停止し、コアの赤い光が消える。
うん、背中合わせで戦うのも良いけど、こういうのも悪くない。
「…!あんなところから狙撃を⁉︎しかもラプチャーのコアをピンポイントで狙い打つなんて…っ!」
リリーバイスから通信が入る。
「ありがとう、ターリア。助かったよ」
「どういたしまして。そんな事は良いから目の前の的に集中して」
ボクがカバーしなくても、大丈夫だっただろうけど、リリーバイスからお礼を言われて悪い気はしない。ただ、スノーホワイトから見て、ボクがどう写っているのかが心配だ。
できることなら、頼れる先輩として慕われたいけど、スノーホワイトが憧れるのはリリーバイスであり、背中を預けるのはレッドフードで無くてはならない。異物として、変な影響を与えたくはない。
ただ、そんな心配は杞憂に終わる。
「これが勝利の女神、ゴッデス…ッ!」
スノーホワイトはどうやら原作通り、リリーバイスの圧倒的なチカラに、勝利の女神と呼ばれる所以を感じ取ったみたいだ。
当の本人は気にしていないようなので、わざわざ口を挟みはしないが、人に作ってもらった銃火器を壊れたからといって、鈍器として扱うのはどうかと思うけども。しかも製作者の目の前でなんて。
だから指揮官にメカゴリラとか言われるんだよ。あの武器、ボクも一回変形させてみたかったのに…
「本当に最高です!どうしてお姉ちゃんが人類の希望って呼ばれているのかわかりました」
ラプチャーの反応が完全に消失したため、二人と合流するとスノーホワイトが興奮した様子で話していた。ボクには気づく気配がない。
…ちょっと待って、いつの間にお姉ちゃん呼びになってる!
「どんなニケとも…ましてやラプチャーとも、比べものにならない力…!だから、お姉ちゃんに合う武器が無かったんです。存在するだけですでに完璧な…完成した存在だから!」
「ちょっと誉めすぎじゃない?」
「いいえ!そんなことありません。お姉ちゃんが戦う姿を見て、一目でわかりました。お姉ちゃんの手に、武器があったらダメなんです。どんな武器も邪魔になってしまう…前提から間違ってました」
「ふ〜ん、そうなんだ?…ねえ、気づいてる?さっきの戦いから、私のこと、お姉ちゃんって呼んでるって」
「!!!」
「やっと呼んでくれた」
「さっきは焦ってたし…も、もともと武器が完成したら…よ、呼ぼうと…思ってて。でも、お姉ちゃんには武器が必要ないって分かったから…今を逃したら、もう呼べなくなる気がしたから…」
「ふふ、そうだったんだ?かわいい〜」
「うう…かわいくありません…」
「誰かさんもスノーホワイトを見習って、お姉ちゃんって呼んでくれないかなー?」
リリーバイスは誰かと言いながらも、がっつりボクと目を合わせながら聞いてくる。
「だから、呼ばないって。何で呼ばれ方をこだわるかな」
「ターリアお姉ちゃん…!いつの間にこっちに来たんですか?」
「スノーホワイトがリリーバイスを褒めちぎってた時からだよ…たーりあおねえちゃん…?」
「あ…だ、だめでしたか?リリスお姉ちゃんの妹なら、ターリアお姉ちゃんかなって。私と変わらない歳で、リリスお姉ちゃんの背中を預けられているなんてすごいです!」
「ぐはっ…!」
聞き間違いかと思い、聞き返すと再度衝撃を受けた。上目遣いでお姉ちゃんと呼ぶスノーホワイトの破壊力が高すぎて、意識がとびかける。この子、絶対 妹属性の火力型だ。
「ほら、お姉ちゃん呼び嬉しいでしょ?」
「死ぬ゛ほど嬉し゛い…けどボクには刺激が強すぎるから、呼び捨てでお願い…!」
これは劇物が過ぎる。これに耐えれるリリーバイスすごい。最強のニケの名は伊達ではないということか…名残惜しいけど、命には替えられない。
いつかスノーホワイトに朝起こしてもらいたい。『ターリアお姉ちゃん、いつまで寝てるの?早く起きて!』みたいな。そんなこと言われたら二度と目覚めなくなってしまうだろうけど、悔いなく天国にいけるだろうね。
「うーん。でも、ちょっと残念。私のために武器を作ってくれるの、すごく楽しかったし、嬉しかったのに…もう終わっちゃうのね」
「…これからも作り続けます」
「えっ?でもさっき私に合う武器はないって言ってなかった?」
「私がお姉ちゃんの武器になります。ターリアおね…ターリアみたいに!」
「「…!!」」
「戦闘能力はあまりありませんが…でも、武器は作れるから。私が作った武器を自分でまだ使えば、少しは役に立てるんじゃないかと…。そうすれば、私の武器を作ることがお姉ちゃんの武器を作ることにもなるし…」
「わ。感動しちゃった」
リリーバイスがスノーホワイトの頭を何度もなでるので、ボクも少し混ざって一緒になでさせてもらった。…特別に教えてあげましょう、ふわっふわです。
「う…あのっ!お姉ちゃんっ…⁉︎」
「ふふ…感動したの。心から。…そうね、いつか。あなたが私の最高の武器になってね」
「…はい!」
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投稿時にどうなっているか分かりませんが、お気に入り登録100件頂きました!感謝!
【挿絵表示】
AI様のお力を借りて、ターリアを描いてみました。最近の技術は凄いですね。パソコン要らずでちょちょいのちょいですから。ちなみに普段ゴッデスに囲まれている時は、もっとだらしない表情をしています。