ラプチャーによる侵略が開始してから、未知の敵に関する研究が盛んに行われ、少しずつではあるが人類はラプチャーについて理解を深めていった。
第一にラプチャーは、生物と機械の二つの要素を併せ持つ機械生命体である。それ自体は見たままであるが、そう見えるものが実際にそうであると明らかにするのは大切な事だ。
ラプチャーは動物のように人間を襲い捕食するが、生物と言うには、あまりにも機械的な社会を形成している。サーバント,マスター,ロード,タイラント,クイーンなどの階級に分類され、階層的な上下関係を持っているのだ。下位のラプチャーは上位のラプチャーの指揮下にあり、サーバント級はインプット機能しか持たない。
クイーンについては何もわかっていないどころか、現在までの調査及び戦闘でクイーンは確認されていない。ただボクが存在を提唱しているだけだ。証拠も何も無い状況でそんなことを言っても、子どもの妄想だと一蹴されるがそうはなっていない。というのも、何の間違いかボクはラプチャー研究の第一人者になってしまったのだ。
ある日、ラプチャーの研究グループが取材に来た。ラプチャーについて知るなら、一番近くで戦っているゴッデス部隊に話を聞くべきとのことだったのだが、調子に乗ったボクは原作知識で話しすぎてしまったのだ。気がついた時にはもう手遅れで、あれよあれよと御輿に乗せられていた。ラプチャー研究が進むのは良いことだけど、後ろめたい気持ちになるから褒めるのはやめてほしい。だってボクは知っていただけだからね。
最近はタイラント級のラプチャーが出現することが増えてきた為、ゴッデス部隊は大忙しだ。タイラント級ともなると、通常の軍では足止めすら困難であるため、出現と同時にボク達が緊急出撃することになる。そして戦闘の激化に伴い、リリーバイスが戦闘参加する事が増えてきてしまった。
これは由々しき事態だ、さすがにもう、"ボクも経験を積みたい"なんて通用しないし、指揮官の護衛もラプンツェルがいる。リリーバイスは最終兵器だからと言っても、タイラント級相手に温存するのはさすがに不自然だ。リリーバイスに力を使わせないための理由を新たに考える必要がある。
人類の戦いは厳しさを増しているが、一方で朗報もある。エブラ粒子が開発されたのだ。
ーーエブラ粒子。ゲーム中のメインシナリオでは、アークと地上の通信を妨害するデバフのような扱いを受けていたが、その本質はラプチャー同士の通信を阻害することにある。その効果は絶大で100年後の未来でも残存しており、地上派遣任務の際はオペレーターの支援を受けるために浄化することが必須となっていたほどだ。
ラプチャーは情報のやり取り、いやコミュニケーションを全て通信によって行なっている。例えるならば、目の前にいても、スマートフォンでやり取りしているようなものだ。よってエブラ粒子中で通信が遮断されると、ラプチャーたちは統制が取れなくなる。電波が入らなくなった現代人のようにね。基本的にはラプチャーの進軍を遅らせるためや、移動の際にカモフラージュ目的で使用する。エブラ粒子下では、特に下位のラプチャーは動きが悪くなり、ニケでなくても対処が可能となるのだ。あまりに高濃度のエブラ粒子に曝露するとニケにも影響がでるが、これは画期的な発明だといえるだろう。
後にラプチャーと意思疎通を試した変わり者がいたが、あれはエブラ粒子に対抗してラプチャーが進化した結果、言語のようなものを獲得したということだったりするのかな?あれはNIKKEには珍しいハッピーエンド(本人にとっては)だったから印象に残っている、ラプチオンだっけ。
ゴッデスに出撃命令が下った。
「ここより南西にある武器・弾薬の保管庫にラプチャーの群れが接近しているとの報告があった。ただちに出撃して足止めをしろとの指令だ」
「足止めだけでいいの?」
「ああ、上からの指示はな。上はまだゴッデス部隊の威力を過小評価しているようだ。当然、殲滅する。武器庫の位置はまだバレていないようだし、到達前に殲滅すれば、倉庫を移動しなくて済む。上層部に貸しを作っておいて損はない」
このままラプチャーが進軍すると武器庫が見つかり、保管されている兵器や弾薬などの資源が失われてしまう。だからそれらを移送するための時間稼ぎをしてくれ、というのが今回の任務内容だ。敵を掃討できるならそれに越したことはない。指揮官はボクらと目を合わせて、悪戯に口角を上げた。
「直ぐに出撃するぞ、準備はーーなんだこんな時に」
指揮官の言葉を遮るように、入電が入る。通信機の近くにいたドロシーが応答し、みんなの注目がそちらに集まった。
「…タイラント級ラプチャーが出現しました。北方司令部からゴッデスへ出撃要請です」
彼女の口から告げられたのは、新たな出撃要請。それも先の援軍要請とは殆ど反対方向だった。普通に考えれば先に頼まれて、既に受領済みの任務が優先される。しかし、片方を片付けてからではもう一方は間に合わないだろう。
「部隊を分けよう。私が北に行ってくるね」
リリーバイスが緊急任務を同時に処理するための提案をする。これまで例外はあれど、戦闘を伴う任務に関して部隊を分けたことはなかった。理由は指揮官とボクが反対していたからだ。
イレギュラーで負傷者が出ることも怖かったし、一度でも部隊を分けて任務をこなすと、それが常習化してしまうと思った。そしてその場合、戦力を均等に分けるために、ボクがリリーバイスと別行動になることは確実だ。リリーバイスに戦わせたくないボクからすれば、それは避けたかった。
「馬鹿なことをいうな、タイラント級だぞ。いくらリリスでもひとりで戦うのは無茶だ」
「そうだよ、そんな無茶させられない」
タイラント級ラプチャーは個体にもよるが基本的には超巨大だ。デカいやつが強いというのは自然の摂理で、単騎では戦いにすらならない。ゴッデスでも現状ではリリーバイスかボクじゃないと厳しいだろう。
「でも見捨てることはできない、でしょ?私たちは
「それならボクが行く!」
「だーめ。私の方が強いんだから、大人しく任せなさい!指揮官もそれでいいよね?」
「わかった。そちらは任せる」
「ちょっと指揮官⁉︎」
「ターリア、私を信じて」
指揮官に裏切られたことで、ボクはひとりで孤立した。
…わかっている、リリーバイスの言っていることは全て正論だ。わがままを言っているのは、客観的に見てもボクの方。
「…今回だけだよ。絶対に怪我しないで帰ってきて。無理もしないでね」
「うん…わかったわ。ターリアもみんなのことお願いね」
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リリーバイスと別れて、件の武器庫に到着したボクたちは、すぐに迫って来ていたラプチャーのもとへ出撃した。
敵の数は膨大だったが、指揮官の指示で少しずつ数を減らしながら、ラプチャーの進軍ルートを逸らしていった。ラプンツェルは、リリーバイスの不在のためか少しテンパっていたが、それでも損耗を抑えながら上手く戦えていた。普段、1番近くにいる仲間がいないのだから、いつもと勝手が違うのは当たり前だ、むしろ良くやってくれていると思う。
ボクが前線で剣を振るい、ドロシーは中衛でボクの支援と撃ち漏らしの撃破、そして指揮官とそれを守る形でラプンツェルを後方に置いて戦闘を続けていたのだが、突如として援護が止んだ。それまで均衡を保っていた力が弱まったことで、ラプチャーの大群に戦線を押し込まれる。
「ちょっと、みんな…急にどうしたの⁉︎支援遅いよ!」
「先ほどのラプチャーを撃墜した時に発生した衝撃波が
「私の髪のジャマーも機能しません!杖も…!」
「な…っ!」
仲間の報告に武器をライフルに変形させようと試すが、反応がない。EMPというのは本当のようだ。しかし剣モードの時に、固まってくれて助かった。弾が出なくなっても、これなら戦える。ボクは戦闘を継続したまま、少しずつ指揮官たちのところへと後退した。
「ボクがヘイトを集める、みんなもっと退がって!」
「私たちも近接戦闘に切り替えます」
「指揮官、後方に下がってください!白兵戦になります。そうなると指揮官をカバーできません!」
「ふざけるな、総員退却だ。銃が専門の君たちが、接近戦だと?」
「ですが、このままだと…!」
「わかっている。最大級の武器庫をひとつ失うことになるだろう。しかし、あれの中身を全て集めても君たちの戦術的価値には及ばない…君たちを失う方が危険だ。退却してくれ」
指揮官の判断は正しいと思った。
ボク達は軍人だ。軍の上層部の視点では、多大な戦果をもたらすものこそ優秀な指揮官だが、下に就く者にとってもそうだとは限らない。部下から見た時、優秀な上官とは、被害を最小限にできる人だ。ボクらの指揮官は、独断専行で強引なところもあるが引き際は間違えない。そんな指揮官だからこそ、信頼して命を預けられるのだ。
「…そうだね、退却の準備を」
ん?ちょっと待てよ…武器庫の防衛任務に、EMP爆撃…あ、これスノーホワイトの合流イベントだ!ボクがそこに思い至るのとほとんど同時に、彼女はやってきた。
「し、失礼します!武器を確認してもいいですか?」
「こんな場所に…どうして子どもが…?」
「ス、スノーホワイトです。フェアリーテイルモデルの4番です!ちゃんと挨拶したかったんですが、こんな状況なのでここで失礼します!」
「スノーホワイト!」
「じ、時間がないので、皆さん、武器を貸してください。私が直します!」
「退却しましょう、時間がありません」
「ひとまず、退がってから… !」
この場ではボク以外に、スノーホワイトとの面識がある人はいない。ドロシーとラプンツェルの戸惑いが伝わってくる。ひとつの判断ミスが命取りなこの状況下で、スノーホワイトを信じるか、否か。決断するのは指揮官の仕事だ。
「1分だけください!直せます!」
「…ターリア。1分、耐えられるか?」
「もちろん!ボクにはこの武器があるからね。リリーバイスの代わりは任せてよ!」
「スノーホワイト、1分だけだ」
「は、はい!」
スノーホワイトは早速、武器の修理に取り掛かった。さて、ボクも自分の言葉には責任を持たなきゃね。指揮官の判断が正しいだの言ったが、それは全て終わった後にわかることだ。そして指揮官の判断を正しかった事にするのは部下であるボクたちの仕事。
ーーもしもしミクちゃん?全力でいくよ。ぶっつけだけど、この前言ってたやつ試してみようか。
60秒間のリミッター第六段階を解放を行います。
戦闘可能時間を再計算…完了
リミッター第六段階解放後、5870秒の戦闘行為が可能です。
実行しますーー
これまでボクは、50%の出力に制限して戦闘を行っていた。自身の出力に耐えられなかったからだ。
しかしラプチャーが進化しているように、ボクもパワーアップしている。経験値的な意味でもそうだが、技術の発展によりニケのボディを構成する
数値上では小さな変化に見えるが、たかが10%とは侮ってはいけない。このステップをあと4回踏めばリリーバイスと並ぶ訳だし、ボクにとっては当社比1.2倍のステータスアップだ。
ただひとつ言うとするならば見た目に変化が無いのが惜しい、やっぱりパワーアップといえば髪の毛と瞳の色が変わったり、蒸気を吹いたりじゃない?
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「状況終了…ふぅ、みんなお疲れ!」
スノーホワイトの助けもあり、ラプチャーの進軍は停止した。戦果は上々だ。どっと疲れが押し寄せてくる、やはりリリーバイス抜きの戦場に挑むにあたって、必要以上に気を張っていたらしい。出力を上げたことによるボディへの異常は無さそうだ。ただ戦闘中、何度か空回りというか、力加減を間違えることがあった。これからはこの出力に慣れていかないとね。
「お疲れ様です」
「今回は危なかったですね」
「スノーホワイト、ターリアから話は聞いていました。ありがとうございます、今回は助かりました」
「い、いいえ」
「ところで、どうやってたった1分で直したのですか?」
「ふーっと息を吹けば直る程度の問題だったんじゃないか?」
「えっと…はい?そ、そんなに簡単な問題じゃなかったですが…」
「指揮官?それはボク達がその程度の問題も自己解決出来ないって言いたいのかな?」
「…いや、いまのは冗談だ」
「もっと面白い冗談を考えて!」
「はいはい、悪かったな」
冗談のつまらない指揮官を嗜めて、ボクはスノーホワイトの頭を撫でた。やっぱりフワフワだぁ、いつまでも触っていたい…役得って奴だね。
「助けてくれてありがとう、スノーホワイト!いまリリーバイスは居ないから、代わりにボクで我慢してね」
「えへへ、ターリアが無事でよかったです。リリスお姉ちゃんはどこへ?」
「んー、ちょっと別の任務にね。大丈夫、すぐ会えるから」
「スノーホワイトはリリスを知っているのか?」
「本当は私、ロールアウト直後にすぐ部隊に合流することになっていたんですが…どうしても自信がなくて、部屋に引きこもって武器ばかり作っていたんです。でも、リリスお姉ちゃんとターリアに勇気をもらって、ゴッデスに合流する決心がつきました。」
「だから、こ、これからよろしくお願いします!」
指揮官がまた懲りずに冗談を…と思ったが、彼はスノーホワイトと面識が無いんだったね。改めて考えてみれば、殆ど顔見知りが居ない戦場にやってきて、あれだけの啖呵を切った訳だからなかなかに肝が据わっている。それに宣言通り僅か1分で武器を修理してみせ、能力も疑う余地がないとくれば、歓迎しない理由はなかった。ゴッデスは実力主義なのだ。
「ところでターリア、武器の調子はどうですか?」
「そうだ、ボクの武器はまだ修理してもらってなかったね…あぁっ!ちょっと刃こぼれしてる!!」
スノーホワイトに武装を手渡そうとしたところ、昨日までは無かった刃こぼれを見つけてしまい、咄嗟に背中に隠した。
「こ、これは普段雑に扱ってるとかじゃないから!」
「?戦闘後なので、損耗は当たり前ですよ。早く見せてください」
「…怒らない?」
「怒りませんよ!」
「…イタズラがバレた子どもみたいだな」
「ふふ、かわいいですね」
「そうですね」
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無事リリーバイスと合流した。あれだけ劇的な別れ方をしておいて、少し
「リリーバイス、スノーホワイトを褒めてあげて!みんなの武器が使えなくて大ピンチだったんだけど、スノーホワイトが応援に来て、すぐに武器を直してくれたんだ!」
「そうなんだ。それは褒めてあげないとね」
スノーホワイトはリリーバイスに褒められて嬉しそうだ。こっちまで嬉しくなってくる。
「うんうん!リリーバイスにみんなの事頼まれてたのに情けないよ。いやぁスノーホワイトが来てくれて良かった〜」
ボクがスノーホワイトを賞賛していると、リリーバイスがボクを抱き寄せた。
「え?い、いや、ボクじゃ無くてスノーホワイトを…」
「頑張ったのはスノーホワイトだけじゃないでしょう?みんなの事守ってくれてありがとう」
「…うん。えへへ…リリスも無事でよかった!」
ゴッデスにスノーホワイトが加わった。あと二人でフルメンバーである。ボクは改めて、気合を入れ直した。
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誤字報告もありがとうございました。