魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

10 / 43
ここ書くのめっちゃ楽しかった。


『陰の実力者』は服従ではなく理解が欲しい!

「……え、いや、え?天秤が、え、お前の魔力、え……?」

 

いや、「え?」は僕だって言いたいよ!勝手にモブである僕に服従してシナリオ崩壊させないで欲しいな!

ああー、今日は本当に不覚を取ってしまった。まさかこんな初歩的なミスをしてしまうなんて。まだまだ修行が足りないということなのか。

 

「わ、私が、この私が、こんなポッと出の人間に、服従する……?」

 

目の前のアウラはなんかぶつぶつ言っているけど一旦無視。僕は君に対してちょっとだけ怒っているんだ。まあミスをしたのは僕もそうだけど、アウラが相手のことを良く調べもせずに間抜けに天秤にかけてシナリオ崩壊を起こしたことに対する怒りだ。

 

「……あ、ありえない。ありえない、この私が……」

 

これからどうしよう。この状態のままアウラをフリーレンたちに押し付けたら、それこそ僕が魔族に与する存在になってしまう。そして、僕のことを服従させにかかってきたあたり、少なくともこのアウラは和睦を望んでいないようだ。いや、こういう逆境を乗り越えるために、今まで血の滲む努力をしてきたんじゃないか。考えろ。この状態から僕が陰の実力者として活躍できる素晴らしいシナリオにするにはどうすればいいのかを。

……ん?あ、いや、なんだ。

 

「あ、僕が『無かったことにしろ』とか、『ここでのことは忘れろ』って命令すればいいのか。なぁんだ、緊張して損した。」

「!!!そ、そうよ!ここで私を見逃せば、もうお前が二度と他の魔族に襲われないようにしてあげるわ!」

「ん?別にいいよ、そんなこと。」

 

そういうわけで僕は心に余裕ができた。うーん、せっかくこの大魔族が何でも言うこと聞くんだから、ちょっといろいろ試してみるか。

 

「どうせだからいろいろ聞かせてもらうね。君は断頭台のアウラで間違いないよね?」

「え、ええ。そうよ。」

「今回はどういうシナリオだったの?」

「し、シナリオって何よ……?」

「えーと、今回の和睦の目的は何?」

「さ、さあね。私も知らないわ。私は偶然ここを通りがかっただけよ。」

 

あれ、質問に答えないな。……あ、質問に答えろって命令しなきゃいけないのか。

 

「"君は今から僕の質問にすべて正直に答えろ"」

「……せっかく誤魔化せそうだったのに……和睦という体でグラナト領に部下が入り込み、街の防護結界を解除する手はずになっている。そうしたら私の不死の軍勢がグラナト領を攻め滅ぼす予定だったのよ。」

「……和睦の予定はまったくないの?」

「魔族が人間と仲良くするわけないじゃない。」

 

えー……このシナリオ、魔族は結局悪だったシナリオだったのか。うーん、これはちょっと予想外。

どうしよう……このシナリオでの陰の実力者の最適ムーブは、和睦の締結直前に魔族の真の企みを暴き、和睦を阻止することだ。でもなあ。このままアウラに命令して街へ連れて行って、すべてを話させる、なんてすごいアッサリ風味だ。バトルも発生せずに終わってしまう。

僕はしばらくうんうん考えた。その間、アウラは何とも言えない目で僕を見ていた。なんか恐れの中に物凄い不信感が混ざった目だったな。何考えてるんだろう?……あ、これも直接聞けばいいのか。

 

「"今君が考えていることを話せ"」

「……こんな変な奴に服従してる事に対してはらわたが煮えくり返ってる。そして、なんとかしてこの場を脱したいと思ってる。そのためにお前を言葉で欺けないかといろいろ考えているけど、さっきから言っていることが、今まで見てきた人間の誰よりもわけわからなくて悩んでいるわ。」

 

まあ、そんなもんか。というか、服従している間も意識はあるんだね。でも言ってることがわけわからないなんでひどいなあ。

……そういえば、前世でもそんな感じだったな。陰の実力者になりたいって誰に言っても、何を馬鹿なことをとか、早く大人になれとか言われたもんだ。サンタさん(に扮した親)に『陰の実力者になりたいです!』ってお願いしても、帰ってきたのは強くなるためのトレーニング機器とかスポーツ用品だった。まあ、きっと僕の親もそんなこと言われて困ったんだろうと思ったけど、それでも失望したものだ。

……そうだ。どうせなら、アウラには僕の陰の実力者の配下になってもらおう。人間と精神構造が違うらしい魔族なら分かってくれるかもしれない。僕は雰囲気と姿だけシャドウモードになった。

 

「ふふふ……こうなっては仕方がない。教えてやろう。この世界の真実を。」

「え、いや、真実?え、何?」

「君は魔物という生き物の本質を考えたことがあるか?あの魔王ですら、寝返りそうな人間を自陣に引き入れることなく、すべての人を敵と見なしたのだ。まるで、魔族そのものが人間を襲わなければならないという呪いのように。」

「……?」

「そして驚くべきことに、創世記の女神は数々の強力な魔法を残したにもかかわらず、魔族や魔物を滅するための魔法は残さなかったのだ。」

「…………???」

「ここから導き出されるのは、魔族、魔物を生み出し、女神を使わせた上位存在。その名は、魔神ディアボロス。」

「え、え……?」

「魔神ディアボロスは人間と魔族の戦いを宿命づけた。なぜか。それは一万年前に発動されたこの世を終わらせる魔法(ラグナロク)を完遂させるためだ。奴は生きとし生けるものすべてのエネルギーを吸い尽くし、多次元世界を支配するつもりなのだ。」

「?????」

「アウラ、お前は選ばれた。この世を終わらせる魔法(ラグナロク)に対抗し、この呪われた闘争の定めから人間と魔族を解き放つために、我とともに来るがよい。」

 

そういって、僕はアウラに手を伸ばした。まあ、全部出まかせなんだけどね。僕ほど陰の実力者としての妄想を重ねた人間ならば、世界を裏から支配せんとする存在の創造などたやすいのだ。さて、アウラはどんなプレイを見せてくれるのかな……?

 

「……い、いや。魔神ディアボロスなんて聞いたことが無いわよ。そもそもそんなすごい存在があるなら、私たちはとっくに全部奴隷になってるわ。そもそもなんでエネルギーが欲しいのに闘争させるのよ?言ってることが上から下まで意味わかんないわ。」

 

……ああ、だめだ。このアウラという生き物には、夢を描く力が無いんだ。まるで前世の僕の夢を否定してきた大人のようなことを言う。こんなのが配下になっても、何も面白くない。

せっかく服従してるけど、別にいいや。服従させるなら僕が無理やり魔力で操れば結構何とかなるから、天秤も正直いらない。それよりも敵対されている魔族を管理する方が面倒だ。アウラは僕の陰の実力者プレイの為に、主人公と盛大にバトルして華々しく散るボスになってもらおう。

 

「はぁ……。仕方ない。」

「声と姿が元に戻ってる……。なんか私、選択を間違えた気がするわ。」

「アウラ、君は天秤とゾンビアタック以外にどんな戦闘用の技能が使える?」

「ええと、大したものは使えないわ。魔族なら皆覚えられる基礎的な魔法しか使えない。私の魔力量で出力は高いけど、練度はあまり高くないはずよ。」

「ええ……なんかこう、君自身は剣術とかないの?」

「な、ないわよ。私はこの500年、ずっと魔法の修行をしてきたんだから。」

「……ゾンビ兵はどれくらい強い?」

「私の魔力が通ってるから元より強くなってる。」

「なるほど。何体同時に連携させられる?」

「……制御が難しいから、複雑な動きをさせる場合は同時に2体が限度。でも歩かせるだけとかだったら同時にたくさんできる。」

「ええ……それ、空飛ばれたら終わりじゃん。」

「いや、私の兵の中には弓兵や魔法使いが居るから、それで大体対抗できるでしょ。」

 

そうかな……ま、まあフリーレンたちも空を飛ぶ能力は高くないっぽいけど。

 

「……ね、ねえ。なんで私の戦力を聞くのよ。あなた、私をどうしたいのよ?」

「ん?ああ、君はこれからフリーレンたちと戦ってもらう予定だ。」

「???え、あなた、人間よね?フリーレンと敵対してるの?」

「別に敵対はしてないよ。ただ、彼女たちは僕が陰の実力者プレイをするうえで最適な主人公たちだからね。」

 

……あれ、言っちゃった。僕は心のうちにある大切なことは誰にも言わないようにしてるんだけど。まあ、アウラはどうせもうすぐ死ぬし、どうせ理解できないだろうしいいか。言葉の通じない外国人に向かって話すようなものだ。

 

「陰の実力者……?」

「そう、『陰の実力者』。物語に陰ながら登場し、実力を見せつけていく存在。僕は『陰の実力者』になるために日々努力しているんだ。アウラ、君は『陰の実力者』の引き立て役になってもらうんだ。」

「物語……?え、ここは現実よ……?」

 

はいはい、どうせそんな答えだろうと思ったよ。まあ、いちいち反応する義理なんてないか。

 

「大魔族アウラを裏から操っていた陰の実力者。中々にカッコいいが、ここはもうひとひねり欲しいところだ。さてどうするか……?」

「……『ここでのことはなかったことにしろ。敵対するな』って私に命令すればいいじゃない。」

「えー、やだよ。いつ上書きされるかもわからない不安分子をこの世に置いておきたくないよ。」

「なんでそういうところは冷静なんだお前は……」

「えー?僕はいつだって冷静だよ。」

「……あなた、何者なのよ?」

「我が名はシャド……いいや、君相手にやってもなんか興ざめだ。通りすがりのスタイリッシュ魔族スレイヤーってことで。」

「……な、名前はともかく。どこで生まれたの?何年研鑽を重ねているのよ?あの魔王様ですら、お前ほどの魔力を持っていなかった。」

「僕は北方諸国のカゲノ―一家の次男だよ。あ、ちなみに僕は異世界からなぜか転生してこの世界に来たんだ。前世を合わせると年齢は30歳。研鑽を重ねたのは合計20年ってところだね。」

「へ?転生?異世界?え?いや、それよりも、20年?あなたの修行期間、たった20年?たったの20年でその領域にたどり着いたの?」

「そうだけど?」

「ふ、ふざけるな!わ、私は500年生きて、そのほとんどを魔法の研鑽に費やした大魔族だ!それが、こんな、こんな……!」

「そんなこと言われてもなあ……。まあ、僕の方が25倍以上効率的に修行出来たってことじゃないの?」

「……わ、私の、私の誇り、魔力が……」

 

……なんか、手を地面につけてプルプル震えだした。いや、そこまでならなくても。今まで長く生きてきた中で自分より上の存在なんて沢山見てきただろうに。見た感じ、魔法に対する探究は真摯なものが見て取れるから、やり方を間違えなければもっと上に行けたとは思うんだけどなあ……。

 

「……私に、お前が『陰の実力者』になるための引き立て役を求めている、だったわよね?」

「え?うん。」

「じゃあ、私がこれからの戦いで『陰の実力者の引き立て役として有能な魔族』であることを示してあげる。そうしたら私を生かす価値が生まれる。そうでしょ?」

「えー、まあ。上手だったらね。」

 

でも君、さっきの問答を聞く限り、そういうアドリブ力全然なさそうだったじゃん。本当にできるのかなあ……。

 

「だ、だから、その『陰の実力者』って言うのを、もっと私に教えなさいよ。」

 

えー。君、物語とか興味なさそうじゃん。そういうやつに言ってもどうせ分からないよ。……まあ、この後のバトル時に反映できるかもしれないから、一応話してみるけど、正直期待は全然できない。

まあそれはともかく、僕がこれからする行動も、アウラをどうするかももう決めてある。おそらくフリーレンは、アウラの魔力を感じ取っているはずだから、じきにここへ来るだろう。その時のアウラvsフリーレンのバトルが、そしてそこで陰の実力者がどうなるのかが、だ。そのために、アウラにいろいろ命令しないとね。

 

「じゃあ、アウラ。これから僕の命令を集中して聞いて、フリーレンとのバトル時に間違えずに実行するんだ。アウラ、




・アウラはどんなプレイを見せてくれるのかな
『陰の実力者』についてまったくの説明なしに勝手にプレイを初めて、理解してもらえるはずが無いのである。そしてアウラは何をすべきなのかまったく理解できず、シドに勝手に期待されたのちに勝手に失望された。ひでえ話である。

・アウラへの好感度
シャドウとの会話にうまく乗れなかったので下がっている。

・『陰の実力者』を教えなさい
アウラも生き残るために必死である。おそらく今までの登場人物の中で一番必死にシドを、そして『陰の実力者』を理解しようとしているのがこのアウラ。しかしシド君が狂人なので土台無理な話である。


最後の括弧が途切れているのは仕様です。

次は長くなるうえに力の入れどころな気がするので遅れるかもしれん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。