いやあ、さっきのアウラvsフリーレンたちのバトルはまさにお手本のようなボス戦だった。
特に何も指示させないままにアウラを戦わせていたら、フリーレンの魔力量からして楽勝っぽかったからね。せっかくなので、いい戦いになりそうな指示を事前にいろいろ出しておいた。そうじゃないと、僕の出番の時に僕の実力がイマイチ分かりづらくなるからね。「あの苦戦した敵を意のままに操るアイツは一体何者なんだー!?」って感じにならないと。で、その結果実にいいバトルができたんではなかろうか。シュタルクとフェルンが助けに来たところなんか本当に王道展開だったよね。
そうそう、あのアウラって魔族だけど、僕は彼女を、陰の実力者の配下の才能は無いけど、努力はできる魔族だと評価を改めようと思う。あの戦いを見る限り理想には程遠かったけど、元々の言動からすれば十分に頑張っていたんじゃないかな。理解は結局全然してくれなかったけど、前世での周囲の人間よりは僕の理想の『陰の実力者』についての話に耳を傾けてくれた。というわけで、アウラには今後は僕の陰の実力者プレイを何らかの形で手伝ってもらうことにした。僕は『陰の実力者』プレイがやりやすくなる、アウラは
で、今回の『陰の実力者』プレイの方針だけど、主に二つある。一つ目は、アウラという強敵を裏から操っていたという強者ムーブ。そしてもう一つは。
「七崩賢アウラを退けたか、興味深い。貴様らには果たして『資格』があるのか、見せてみよ。
「……フェルン!一緒に防御!」
僕は強めに圧縮した
そこで、僕は呟く。
「……なるほど。お前たちならば、『力』を得るに値するかもしれない。」
……決まった!今の僕は最高に『陰の実力者』だった!
そう。今の僕は、『これからの苦難に対抗するための力を得るに値するか見定める系陰の実力者』なのだ。資格が無ければ、例えばその強大すぎる力に逆に飲み込まれて暴走してしまったり、私欲のために使い果たし本来の使命を忘れてしまうような、人の身に余る力。そしてその力を管理し、相応しい者たちに預けることを目標とする『陰の実力者』。それが僕なのだ。このフリーレンたちの旅もそろそろ中盤に入るだろうし、そういう話が出てきてもいい頃合いだ。
……え、具体的にその力って何かって?うーん……なんだろう?僕もこの世界でそういうのは発見していない。必要になったらどうしよう?僕の開発した『圧縮と爆発を繰り返すことで魔力1000倍理論』でも教えようかな?まあ、勇者パーティの強化イベントなんて定番だし、探せばなんかあるでしょ、多分。
「……随分な挨拶だね、シャドウ。今度は何の用?」
「フ……見定めに来たのさ。お前たちの未来をな……」
僕は彼らに向かい、腕を横に軽く開いた。特に意味はない。
「先ほどのアウラの戦いはなかなかに見ものだった。さすが、元勇者パーティといったところか。」
「……私たちの戦いは見世物じゃないんだけど。」
「だが、まだ弱い。魔王城に行くのだろう?この先、貴様らには多くの試練が待ち受けていることだろう。」
「……どこで知ったの?私たちの目的地を。私達のことをついて回ってるの?」
「フ……なに、お前たちの言動からおのずと察せられることだ。」
いや、推測も何も勇者パーティの目的地なんて魔王のいるところ以外ないと思うんだけどね。
「……アウラを操って私達と戦わせていたのは、私たちの実力を測るため?」
「フフ……半分正解といったところか。もう半分は、我自身の……興味かな?おっと、そうだ。敗者にはもう用はない。"アウラ、自身の首を切り落とせ"」
「……は、はあ!?お、お前、言った通りにしたら生かすって!」
その通りだ。僕は今、アウラの首筋に繊細に魔力を通している。アウラの首にある血管や神経を魔力の線でうまく接続しているのだ。この状態で首を切り落とされても、2分くらいは持つだろう。
「……あ、ありえない、あり得ない!私の最期が、こんな奴に、こんな雑に……!」
アウラは涙を流しながら、自分の首を切断した。まあ、後で生き返らせるから、ちょっと騙しちゃったことは勘弁してね。というか、このプロセスを踏まないと、フリーレンたちがアウラを死んだと認識しなくなる。するとどうなるかというと、この先で起こる色々な事件が僕のせいになる可能性があるのだ。
というわけで、フリーレンたちにはアウラを死んだと認識してもらう。僕はアウラから注意をそらすためにちょっと威圧感を出しながら言った。
「……愚か者が。なぜ敗北を受け入れないのか。」
そうしてフリーレンたちがちょっとビクッとなった隙にスライムスーツを使ってアウラを回収。幻影魔法をかけて見えなくして首を接続し、遠くの方に放った。2kmくらい。大魔族だし、投げ飛ばしても生きてるでしょ。なんとなくアウラの悲鳴のようなものが聞こえた気がしたけど、まあ許してほしい。
それよりも、この後のことだ。フリーレンたちは、見たところ傷は負っているけれどまだ動ける。僕は彼女たちに向き合った。さあバトル開始だ!僕はここで彼女たちに底知れない実力を見せつけ、ほどほどのところで「やはり見どころがある。面白い。また会おう。」とか言いながら去るのだ。
フリーレンたちは僕をにらみつけている。さて、どんな攻撃をしてくるのかな……?
……
…………
あれ?全然動かない。おーい?
「……どうした?仕掛けてこないのか?」
「……私たちは不利な状況で先に攻撃するほど馬鹿じゃない。」
え、え?なんで?僕が先に、君たちを攻撃したよね?そこは反撃するところでしょ?
「……攻撃を貰っておいて、悔しくないのか?」
「私とフェルンは魔力量が心もとないし、シュタルクは傷ついてる。お前だってそのくらいわかるでしょ?……悔しいけど、これ以上用が無いなら去ってほしいな。よく分からないけど、その『力』を得るに値するかもしれないことが分かったんでしょ?じゃあもう、目的は達せられた……ってことでいいのかな?」
「本当に、それでいいのか?」
「……私たちは自分たちの命の方が惜しいからね。」
ど、どうしよう。前世でやっていたRPGゲームだと大抵ここで「謎の男 シャドウが現れた!」ってバトル開始するはずなのに。この人たち思っていたより野心が無いのかもしれない。
僕と彼らとの間に変な沈黙が流れる。どころか、フリーレンたちなんか後ずさって退却しようとしているよ。いやでも、客観的に見て僕が攻撃しないなら逃げるべき……場面、なのか?いやでも、ちょっとくらい応戦するもんじゃないの?僕の圧倒的な実力を認識してくれての行動なのかもしれないけど、それが裏目に出てしまったのだろうか。
うーん、どうしよう。僕としてはバトルする気満々だったから、このまま終わるのは拍子抜けだ。いっそもう僕から攻撃してみる?うーん、でも、まあまあ消耗している相手に仕掛けるって言うのもなんか弱い者いじめみたいだし。……いや、彼女たちがボロボロになっても魔力で治せば問題ないかな。あ、いやでも、そうしたら最初から自分が戦えばいいじゃんということになり、アウラをけしかけたのは単なる見栄と見なされる可能性があり、うーん……
……あ、ヤバいこのままだとフリーレンたちが本当に退場してしまう。ここは場を持たせるために、何か声を掛けねば。えーと、えーと、あ、そうだ!
「……ここにある数多くの死体を、貴様らはどうするつもりだ?」
「え?……どうって、後で弔って埋葬するけど。」
「……本当に、それでいいのか?」
「……?」
時々、僕はこの世界が死体を土に埋める風習なのを疑問に思っていたのだ。火葬の方が良くない?だって、この世界にはアンデッドと呼ばれる、死体から生まれる魔物が実在するのだ。村の墓地の遺体がゾンビになっちゃったから討伐してくれ、という感じの話は割とよくある。じゃあ、死体は最初から焼いた方が良いよね?って僕は思うんだ。たまにこの世界の人にそういう話をするけど、なんか人の遺体をなんだと思ってるんだみたいな反応が返ってきて全然取り合ってくれないけどね。
「もっと良い扱いが、あるのではないか?」
「……良い扱いって?」
「こんな話を知っているか?」
僕は、前世のファンタジー物語にあった話を、適当に脚色して伝えた。
「遥か昔、力を追い求めた魔法使いがいた。彼は生涯をかけて最強を求めたが、才能が無く、何の成果もあげられないままに老いた。しかし彼には妻がいた。その妻が死んだとき、彼はその妻の死体に宿る魔力反応に気づいた。それは、彼女の魂が解放されたときに発生する魔力だ。彼はその現象に目を付け研究した。すると、人間の魂を用いることで莫大な魔力が手に入ることに気が付いたのだ。」
「……聞いたことが無い話だ。」
「彼はその力に飲まれた。死に際の人間を欲した彼は、罪の無い人間を拐かすようになってしまったのだ。程なくして彼は討たれたが、その技術は今もこの世界のどこかに眠っているという……。」
ここまで話し終えると、フリーレンは険しい顔になった。おっ、もしかして心当たりがあるのかな?いやー、さすが長命種だ。いろいろなことを知ってるんだなあ。これなら、フリーレンたちは土葬するのを止めるなり、何か対策をしてから埋めるなりするだろう。
そんなことを考えていると、フリーレンに低い声でなぜかこんなことを質問された。
「……ねえ、お前、今までその力を得るために罪もない人間を……どれだけ犠牲にしてきたの?」
「フッ……それを聞くのか?……」
勿論僕は罪のなさそうな人は殺していない……と言おうとしたところで、ふと思った。果たして、僕は今まで本当に罪のない人間を害していないだろうか?と。
確かに人間を殺したり、物を盗んだことはある。盗賊とかと汚職をしてた人間からだ。『陰の実力者』プレイをする上では、どうしても必要なものがあるからお金は必要だ。どうせ『陰の実力者』をやっていくうえで法律を破ってしまうことは避けられないんだから、一応罪の有りそうな人たちから(修行も兼ねてるけど)金を巻き上げてきた。でもよく考えてみると、彼らだって自分の夢だったり、生きるためにそういうことをしていたのかもしれない。そういう人間から金を巻き上げるのは、果たして『陰の実力者』としてふさわしい行動なのか?うーんでも、陰の実力者が地道に働くってどうなんだ?いや、地道に働いてこそ陰の実力者と言えるのだろうか?でもそうして修行の時間がとられるのもアレだしな。……今までまともに考えてこなかったな。『陰の実力者』がどうやって活動資金を得るべきなのかを。
「……前に、『人間を愛している』って言っているのは何だったんですか……!?」
「ふむ……」
なんかフェルンが前の僕の発言を問いただしてくるけど、突然どうしたんだ?というよりも、今僕は『陰の実力者』としての在り方という人生の重大問題を考えているんだから後にして欲しいなあ。うーん、『陰の実力者』らしいお金の稼ぎ方、うーん……
「……
突然フリーレンが僕に
「ほほう。どういうつもりだ?」
「……私は、魔法がほどほどに好きだ。でも好き度合いで言えば、シャドウ。お前の方が全く持って上なんだろうね。いや、私よりもはるかに、効率的に、魔法を探求しているんだろう。」
「フム。当然だ。」
「でも、その為に他人の命を、魂を犠牲にする?そんな馬鹿げたことをする人間は見たことが無かった。」
「……うん?」
「シャドウ。お前は大馬鹿だ。力を得るために、その力で守るべきものを自分から捨て去ってしまったんだ。」
「…………え?」
「今のお前は、まるで魔族だ。……いや、魔族以上に馬鹿だ。残念だけど、もう人間には戻れないのかもしれない。……だから、せめてここで、お前を止める。」
「???」
そうしてフリーレンたちは、僕に向かって杖と武器を向けてきた。全員仇を見るような目で僕を見ている。
……………………なんでぇ?
・圧縮と爆発を繰り返すことで魔力1000倍理論
フリーレン世界に魔力を増やす魔法とか技術ってないみたいだから、フリーレンたちから見るとヤバい技術である。
・なんで土葬
真面目に考察すると、アンデッド実在するなら火葬の方が良いよね(日本人並感)
・……と言おうとしたところで、ふと思った。
ここで黙るのはアカーン!
・その為に他人の命を、魂を犠牲にする?
ご、誤解なんですぅ!シド君はちょっと盗賊を殺してお金稼ぎしたり魔族を修行の踏み台として殺しまくるだけの人間なんですぅ!
・魔族以上に馬鹿だ。
フリーレン的には最上級悪口である。
というわけで、次からはフリーレン一行vsシャドウのバトルがはじまります。大体シド君が悪い。