魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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高評価・誤字報告ありがとうございます。

また前編のようなものです。こういう普通の戦闘描写が書いてて一番難しい……


『陰の実力者』は主人公を見極めたい!

ここのところ、僕はフリーレン一行が本当に主人公パーティなのか、疑う時がある。

それは、彼らの強さのことじゃない。少なくとも彼らは、僕と比べて……はともかく、この世界の平均的な魔法使いや戦士よりも全然強い。これからも成長していくのだろう。また、性格が悪いというわけでもない。行く先々で人助けをしているのをよく見かける。まさに主人公的行動だろう。

じゃあ何が問題なのかというと、必死さ、そして目的意識の無さだ。前の海岸線の滞在の時からその片鱗はあったけど、彼女たち、寄り道しまくるんだよね。

いやまあ、僕はフリーレンたちがそもそもどういう認識で魔王城に向かっているのか知らない。だからもしかしたら、彼女たちは別に急がなくてもいいと思っているのかもしれない。というかそうなのだろう。実際、魔王が復活したなんて話は全然ないからね。生きているうちにたどり着ければいいと思っていそうだ。

でもそれはそれとして、君たち主人公パーティにしてはゆっくりしすぎてない?毎日のトレーニング的な事はしてるけど、三食食べるために修行を中断したりするし、毎日8時間くらい睡眠を取るし、人助けをした後も何日かそこに滞在したりすることもざらだ。

彼女たちだって自分たちを超える魔族の敵などが存在することは承知しているだろう。もっと力が欲しいと思わないのだろうか?例えば、魔王城に新たな強い魔族がいることくらいは思い至るだろう。だから今以上の力が必要なのはわかっているはず。だとしたら、修行の時間を捻出するために、食事の回数を減らしたり睡眠時間を圧縮しても平気なようにする方法をまず第一に考えるべきじゃないのか?少なくとも僕は実践していることだけれど……

……思い返せば、彼女たちが重大なネームドキャラクターであることは間違いないけど、だからと言って主人公ポジだとするのは早計だったかもしれない。実は主人公と同時期に旅をしていたライバルパーティである可能性だって十分ある。……でも、僕は彼女たち以上に主人公っぽい存在を知らないのだ。まあ、彼女たちより強い存在はいる。でも、そういう人たちって大都市で重役についていたり、北方の対魔族の戦争での主力として活躍しているなど、なんというか、強者としてありきたりの仕事についているのだ。彼らは、その仕事以上のことをしないだろう。その観点からいえば、強者の中で最も自由に動いているのがフリーレン一行なのだ。

……つまり、何が言いたいのかというと。

 

「……その魔法は、もう見切った。」

「3方向からの同時圧縮魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を受けられるなんて……!」

「どうした。この我を止めるのではなかったのか?」

「……止める。せめて封印まで持っていく。何としても。」

「お前みたいな外道を野放しにできるわけないだろうが……!」

「そうか。だが甘い。」

 

僕はここで周囲に魔法により衝撃波を放ち、彼女たちを散らして言った。

 

「どうした。まだまだこんなものではないのだろう?」

 

僕のこういった発言は、割と僕の願望だということだ。

彼女たちの中では、僕は自分の力を高めるために人を殺しまくっているということになっているらしい。なんでそうなったのかは分からないけど、とにかくそういう理由で攻撃を受けている。ということで、今の僕は「負けイベント系陰の実力者」として彼女たちの相手をしている。

まあそれはともかく、今の僕にはもう一つ、このバトルにおいて目的がある。それは、彼女たちが本当に主人公なのかを見極めることだ。それで、今のところの観察結果だけど、正直言ってちょっと、いやかなり怪しい。確かに彼女たちは全力で僕を止めようとしているけれど、まあなんというか、やっていることが強い力を持った凡人のやることなのだ。なんか知らないけど、僕は大悪党なんでしょ?ならもっと必死にできないの?フリーレン……は、元から感情が薄いっぽいけど、フェルンとシュタルクは種族的にいってもっと頑張れる、というか怒れると思う。怒りのあまりに、魂を削る代わりに超高威力の魔法に目覚めるとか、全身の筋組織を破壊する代わりにすべてを断ち切る一撃とかないの?主人公ってそういう常人にはできなことをするものじゃないのか?うーん、煽り足りないのかなぁ……

 

「閃天撃!」

「斧を手にしている割には、軽いな。」

「な、なんでそんな細い剣が、閃天撃を受け止められるんだよ!」

「どうやら、お前を殺しても大して利はなさそうだな。」

「こ、この野郎!」

 

こんな感じでちょくちょく煽ってみてるんだけど、やっぱり隠された力を覚醒するみたいな様子が無い。そして彼女たちは少しづつ疲弊していってるけど、命を削るほどの攻撃もしてこない。このままじゃ僕が体力勝ちだ。それじゃ面白くない。

……うーん、これは、どうしたもんかなあ。本当に主人公じゃなかったんだろうか。でも、彼女たち以外に陰の実力者プレイをできそうな相手って、もう大魔族を相手にするか、南側諸国の戦争に介入するしかないんだよなあ。前者はそれ主人公のやることじゃない?感があるうえに、そもそもそれができる数なんて限られてくる。後者は、そもそも僕その戦争に関係ない立場なんだから、まずは何に対して味方するかを考えなきゃいけない。手あたり次第攻撃した結果、一方に戦局が有利になって、僕がその国に味方する何かだという扱いになるのは、なんだかなあ。

僕は、もうあと10分くらい戦ってみて、見込みがなさそうだったらもうこの人たちにストーカーするのはやめようと考えている。そうすると陰の実力者プレイがとてもやりにくくなるので、残念だけどね……

 

 

これほどに悔しい思いをするのは、人生で初めてです。

シャドウは、恐るべき人殺しでした。今までは、とても強いけど悪いことをしているようではないからなるべく関わらないように……と思っていました。しかしもう、そんな温い態度は取れません。

あろうことか、このシャドウは、自分の力を高めるために人の魂を使ったというのです。人の魂をそんなことに使うなど恐るべき禁忌。しかも、あの強さを鑑みると……今まで何人もの人々が犠牲になっているのか考えたくもない話です。

私達は、なんとしてもここでシャドウを止めなくてはならない。でも……私たちの攻撃が効いている様子が、まったくありません。こんなことならもっと魔法の修行をしておけば……などという後悔が湧き出てきますが、そんなことは湧き出る怒りにすぐにかき消されます。

 

「人の魂を……人を、なんだと思ってるの?」

「人?ああ、本当に素晴らしいものだよ。愛しているというのは嘘ではない。」

「……愛してるなら、なぜ尊重しないの?」

「尊重しているとも。だからこそ、無駄にしない。これが魂の最も有効な活用方法だからな(どうせ凡人など生きていても何も成せない)。」

「……お前!」

 

これは、ダメです。この男は、人間を……利益という尺度でしか見ない。フリーレン様が見たことが無い程にお怒りです。シュタルク様も、先ほど戦ったことが嘘のように攻撃を続けています。

ですが……私達はシャドウに一行に有効打を与えられていません。それどころか、まともな反撃すらしてこない。私とフリーレン様の魔法攻撃は全て防御魔法で防がれ、シュタルク様の斧攻撃は、黒くて細い剣で危なげもなく防がれてしまいます。

 

「……殲滅せよ。漆黒旋。」

 

シャドウがそういうと、魔力の乗った黒い……水?それとも刃?のようなものが私達を斬りつけます。このように時々繰り出されるシャドウの攻撃を、私たちは全力で防御しなければなりません。

今の魔法?は……なんでしょう?シャドウの持っている黒い剣が伸びたように見受けられました。そしてそこには、ただひたすらに尋常ではない魔力が乗せられていました。

 

「……フリーレン様、今の魔法?は、何なのか分かりますか?私にはあの剣が伸びたように見えました。」

「私にもそう見えた。……魔力を通すことで、どんな形状にもできる武器、と考えるべきだね。その変形スピードも相当なものだ。」

「おいおい……変形自由とかズルすぎるぜ。あれじゃ、本気を出されたら俺はどうやっても攻撃される……」

「……シュタルク様のスピードでも、対応は難しいのでしょうか?」

「フェルン……どんな形にもできるんだったら、受けるということが多分無理だ。あの剣で受け止めたときに、即座に槍に変形させて俺を突き刺すことだってできたはず。それをされてないってことは……多分、俺達今まで遊ばれてる。」

「……そ、そんな……」

「フェルン、シュタルク。諦めちゃだめだ。……もう少し耐えるんだ。」

 

おそらくフリーレン様は、封印魔法の準備をされているのでしょう。シャドウにバレないようにするために口には出さないようです。このまま負け戦のフリにシャドウが付き合ってくれれば、勝機はあります……そうあってほしいものです。そのことはシャドウも気づいているのではという疑惑には、今は蓋をします。

 

「敵を前にお喋りとは、中々に余裕のようだな。」

 

しかしシャドウも黙って私達を見ているわけもなく、こちらに人間を殺す魔法(ゾルトラーク)の……亜種?のような魔法を撃ってきます。私は防御魔法で応戦しますが……魔力の消費が大きいです。あと4回くらいしか防げないでしょう……。

しかし次の瞬間、信じられないことが起きました。

 

「そこだ。」

「フェルンあぶねえ!」

 

シュタルクがそう叫んだ瞬間、私の真後ろで重い衝撃音が響きました。後ろを見ると、シュタルク様とシャドウが、つばぜり合いをしていました。シャドウに後ろから襲われた?でも人間を殺す魔法(ゾルトラーク)のような魔法は続いています。こんなの、シャドウが二人いないとできない芸当のはず……?

 

「一度発動させるだけで何秒も人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が継続するなんて……!」

 

フリーレン様が、突然そう仰いました。少しずつ人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が収まってきて視界がよくなると、私はその意味を理解しました。この魔法、一度発動するとその発動地点に魔法発射機構のようなものが設置され、それが自動的に敵に人間を殺す魔法(ゾルトラーク)を敵に撃ち続けるのです。その間、発動者は自由に動ける。こ、こんな高度な魔法技術は聞いたことがありません……!

 

「クソ……フェルン!フリーレン!俺は二人への近接攻撃の対処に専念するから、二人は魔法への対処を頼むぞ!悪いけど、今のを見せられたんじゃ、俺は攻撃には回れない!」

「わ、分かりました!」

 

そういって、シュタルク様は私たちの近くに立ちました。……この会話中、シャドウは攻撃してきませんでした。遊ばれているというのは事実なのでしょう……。

私とフリーレン様は、魔法でシャドウを攻撃し続けますが、シャドウはただ防御魔法で対処するだけ。私達と同じく体外に放出される魔力を制限しているためか、残魔力量も読めません。

それでも、時間を稼ぐために攻撃を続けます。途中、フリーレン様が私も見たことが無いような攻撃魔法をいくつか使ってましたが……やはり効いている様子がありません。

そうしていると、シャドウが口を開きました。

 

「貴様らにもわかるだろう。このままでは先に魔力が尽きるのは、そちらだ。逃げるならば、命は見逃してやってもいいぞ?」

「ふざけんな!お前みたいな奴を逃がすわけないだろ!」

「逃げる……?フッ。」

 

その瞬間、私達3人は何かに叩きつけられ、大きく吹っ飛ばされてしまいました。……おそらく骨が何本か折れました。痛い……

狼狽えている私たちに、歩いてきたシャドウは言います。

 

「逃げる必要が、どこにある?」

 

少しの当てつけを含んだ声でした。プライドを傷つけたのでしょうか……?

 

「……誰が?どこに?……何故!」

 

そういうと、シャドウの剣先から何かの魔法が放たれました。紫色の光が周囲を一瞬覆い、消えました。今のは一体……?

 

「……そんな。」

 

横にいたフリーレン様が、聞いたことが無い程弱気な声を出しました。

 

「…………今まで仕掛けてきた封印魔法が、完全に解除されてる……」

 

……そ、そんな……。魔力は完全に隠蔽されていたはずなのに……!

 

「……フ、フリーレン。他に手立ては無いのか!?」

「……少なくとも、私には分からない……」

「……フェルン、フリーレンと相談して、なんかアイデア出してくれ!」

「そ、そんな無茶言わないでくださいシュタルク様!」

「俺が盾として何とかして時間を稼ぐから!頼む!」

 

そう言うと、シュタルク様はフリーレン様に駆け出していきました。

シュタルク様はシャドウに切りかかります……が、シャドウは特に苦労する様子もなく剣で受け止めます。シュタルク様の猛攻を涼しげにいなす、シャドウの余裕綽々とでも言わんばかりの態度には腹が立ちますが、ともかく次の手を考えないといけません。

私とフリーレン様で、邪魔にならない程度にシャドウを攻撃しつつ、周囲に最大限警戒したまま会話をします。

 

「……フリーレン様。他に何か有効な手はありますか?」

「…………………………」

「……フリーレン様?」

「……逃げる。」

「えっ?」

「…………あんなこと言った手前情けないけど、正直勝てる未来が見えない。」

 

フリーレン様は、苦虫を嚙みつぶしたような顔でそう仰いました。でも、放っておいたら新たな被害者が……!

 

「そ、そんな!あんな悪人を放っておけません!放っていた時間の分だけ、被害者が!」

「ここで私たちが倒れたら、もっと被害者が出る。……私は、あのシャドウは魔法使いとして優れていると思っていた。……でも少し違った。奴は何においても優れていたんだ。戦う前はパーティ単位でならさすがに何とかなると思っていたけど……まさかヒンメルやアイゼンのような接近戦も上手だったなんて。……前に旅したとき、あのシャドウほどではないけど、そういう万に秀でる格上の強い魔族と出会ったことはある。クヴァ―ルとかね。そういう時は決まって逃げるか封印をするかしたんだ。……でも、その封印が通用しないとなると、もう……」

「で、でも……」

「フェルン。逃げるのは恥かもしれないけど、私達は死ぬ訳じゃない。今回の件で、シャドウは危険なだけじゃなく、人間の敵ということが分かった。大陸魔法協会……だっけ。とにかくゼーリエとか偉い人たちが働きかけて大陸中でお尋ねもの扱いしてくれるはず。」

「なかなか面白い話だ。だが。」

 

……!シャドウがこちらの会話に割り込んで来ました。シュタルク様は……?

 

「はたして、その程度でこの我を止められるとでも?」

「ウグッ!」

 

うめき声が耳に届いたと同時に、私に赤い何かが叩きつけられました。

……!

 

「シュタルク!大丈夫ですか!」

「……う、うう……」

「……出血が激しいです。おそらく、折れた骨が内蔵に刺さっています。いったん私とフリーレン様で応戦しますから、傷の回復に集中してください!」

「……フェルン。俺が前に出ないとだめだ。」

「シュタルク。無理しないで。シャレにならない傷だ。」

「その程度で膝を突くとは。前に出て仲間を守る者の姿とは到底思えんな。」

「黙ってください!人を切り捨てたあなたに言う資格はありません!」

「……シュタルク。応戦じゃなくて逃げる準備をして。」

「ダメだ、フリーレン。俺は……俺にはやらなきゃいけないことがある。」

「……シュタルク?」

 

そう言うと、シュタルク様はフラフラしながらも立ち上がり、シャドウに向き合いました。

 

「さっきからずっと引っかかっていたんだ。その究極の剣捌き、俺は見たことがある。なあ、俺たち、前に会ったことがあるだろ?」

「さて?強者であれば忘れるはずはないが……。果たしてその時、お前を記憶する価値はあったかな?」

「俺は、覚えてるぜ。なあ……」

 

シュタルク様は、シャドウを正面から見据えて、言いました。

 

 

 

 

 

 

「お前、スタイリッシュ・魔族・スレイヤー、だろ!?」

 

 

 

……は?




・この人たち本当に主人公なのか?
シド君「この人たち、主人公にしては毎日三食と睡眠をしっかりとる健康で文化的な生活をしている……妙だな……?」

人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が継続するなんて
要は人間を殺す魔法(ゾルトラーク)のファンネル攻撃。原作にそんな魔法の描写はなかったので、披露したら驚かれる……はず。(相手のそばから魔法を出すのはあったけど、その間は術者は動けないっぽいので多分ノーカン)



フェルンとフリーレンはシュタルクにスタイリッシュ魔族スレイヤーのことは教えてません。
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