シュタルクの描写について、改変……というか、原作にはない状況下での行動が含まれるので、そこでシュタルクがどう動くのかは完全に想像で書いてます。違和感あったらすまん。
追記:
シュタルクの故郷襲ったのリヴァーレだったの指摘されて初めて知った……すまねえ。この世界線ではリヴァーレ以外の魔族ってことにしておいてくれ……
俺は昔、故郷の村が魔族に襲われた。その時の俺は弱くて、何かするべきだと思っても何もできなかった。
「逃げろ。シュタルク。お前は逃げるんだ。」
村が燃える中で、魔族に立ち向かおうとした兄貴にそう言われた。俺は情けなかったけど、それ以上に怖くて、結局魔族に立ち向かおうともせずに逃げようとした。
でも、兄貴に背を向けて逃げようとしたその時だ。
「ヒャッハーーー!!!」
突然、知らない人間?がどこからともなく現れて、目の前の魔族を切りつけたんだ。
「……な、なんだお前は?」
「やいお前ら!ちっとは人間の金貨を持ってないのかぁ!?魔族は倒しても金をドロップしないから金欠なんだよこっちは!おいそこのお前!ちょっと飛び跳ねてみろ!」
「え、えぇ……?(ぴょん)」
「あほらお前今チャリーンっつったな!なら最初に死ぬのはお前だぁ!!!」
「い、いや今のは魔道具の音で、う、うわああああ!!!!!」
そいつは叫びながら、剣一つで魔族を次々倒していった。
「逃げるやつは魔族だぁ!」
「こ、コイツ早すぎて魔法が当たらん!?ヒ、ヒィ!」
「逃げないやつは、よく訓練された魔族だぁ!!!」
「なんだこの人間!?人間にこんなこと言う風習なんて、う、うわあああああ!!!」
「ほぉら!スタイリーッシュ・ソォード!!!」
「こ、これは魔力の塊か!?グ、グアアアアア!!!」
そうしてそいつは、瞬く間に魔族を殲滅した。本当に強い、そして美しい剣筋だった。兄貴よりも強い奴をその時初めて見たんだ。そして俺以外の村の奴も、兄貴も含めてただ唖然としてその剣舞を見ていた。そいつにはこの時以降遭遇しなかったが、その時の記憶は俺の頭に強く焼き付いた。ある種の憧れってやつだ。
「……なあんだ、コイツら大していいもの持ってないな。せっかく遠征してきたのに。」
そいつは襲撃した魔族の持ち物を漁っていたようだけど、そこで兄貴が声を掛けた。
「……ええと、助けていただき感謝する。この村を代表して礼を言わせてくれ。」
「ん?村の生き残りか。いやー、災難でしたねー。」
「……見事な剣だった。俺が見た誰よりも素晴らしい剣だった。その強さ、いったいどうやって……」
「あ、はい。……ああ、そうだ。もしかしたら僕はここで復興の手伝いをするべきなのかもしれないけど、残念ながら僕は時間が限られているのでこれで失礼しますね。」
「……そ、そうか。なら簡単にお礼でもさせて欲しい。」
「えー、なんか面倒だな……あ、そうだ。僕のことは誰にも言わないでくださいね。」
「……分かった。誰にも言わないと、村を代表して約束しよう。」
「はーい。じゃあね。」
そう言って、そいつは去ろうとした。お礼も受け取ろうともせずに去るなんて。きっと大きな被害を受けた俺達を気遣ってくれたんだろう。気高い人なんだろうなと、その時の俺は感じた。
「ま、待ってくれ!せめて名前を教えて欲しい!」
兄貴が去り際のそいつに沿う声を掛けると、そいつは振り返りもせずにこう言った。
「僕?そうだなぁ……。まだ修行中の身だし……
通りすがりのスタイリッシュ魔族スレイヤーってところかな。」
これが、俺がスタイリッシュ魔族スレイヤーに会った時のことだ。そいつのお陰で、俺の兄貴は生き残り、村の皆も……死んでしまった人もいるけど、生き残ることができた。その後は、あの剣に少しでも追いつきたくて、アイゼンに弟子入りするとかいろいろあって、今に至るってわけだ。
そう、俺は、ずっと憧れていたんだ。人々を守り、魔族を次々とうち倒した、あの剣に。あの強さに。なのに、なんで……!
「なんで、なんで人の道を踏み外してしまったんだ!スタ……いや、シャドウ!!!」
「……」
今目の前にいるシャドウは、俺を見つめたまま何も言わない。
「俺の村を助けてくれたこと、本当に感謝している。あの頃のお前は、魔族から人々を守りたくて、仲間すら伴わずに一人孤独な戦いを挑んでいた。見返りも求めずに。そうだろ!?」
「……くだらん。」
「くだらなくなんか、ねえ!!!」
俺は痛みを押してシャドウに斧を振る。折れた肋骨が肺に刺さって尋常じゃない量の血が出るが、そんなことよりも俺はシャドウに言わなきゃいけないことがある。
「今は道を踏み外してるけど、昔のお前は違ったんだよ!人を守りたいという、まるで勇者みたいな気持ちがあったんだ!くだらなくなんかねえ!」
「お前に、この我の何がわかると?」
シャドウの細い黒剣に相変わらず閃天撃を防がれるけど、そこから体を中心に斧を一回転させて横から斧を振るう。……さっきの俺の言葉、少し挑発みたいになってたから怒らせるかと思ったけど、やっぱり反撃されずに防がれるだけだったな。そして今の言葉にも、わずかな困惑が感じ取れた。
「今のお前がなんで人を守るのを止めたのかは分かんねえ。……でも、その力を得るために、とてつもない努力を重ねたことくらいは分かるぜ。お前の剣はただ力が強いだけじゃない。技量からしてもとんでもない高みだ。お前は、どうしてそこまで努力ができたんだ?」
「……我には成すべきことがある。そのために、それ以外を犠牲にしてでも力が要る。それだけだ。」
「そうか……でも、その成すべきことの為に、人を犠牲していい訳がないだろう?」
「……貴様に言われる筋合いは無い。」
「グアッ!」
そう言って、シャドウは俺を切りつけ、吹き飛ばした。フリーレンとフェルンのところまで転がっちまった。
「シュタルク!無理しないで。」
「……シュタルク様。私が魔力譲渡による回復を続けていたら、長くは持ちません。ここは逃げましょう。」
「ダメだ。俺は最後まで戦う!俺の……俺の恩人が道を踏み外しているのを放っておけない!フリーレン、ヒンメルなら助けられた借りは必ず返す。そうだろ?」
「……そうだね。ヒンメルなら、借りは忘れない。……けど、あんな力を持った存在に私たちの説得が届くとは思えない。」
「フリーレン、シャドウは魔族じゃないんだろう?そして、言葉があるんだ。なら、話し合いで解決できる。違うか?」
「………………」
フリーレンは何も言わなかった。賛成も反対もしづらいってことか?……どうしようか。このまま俺一人が意地張っていても迷惑かもしれないけど、このまま引き下がるなんて御免だ。
「…………シュタルク様。私が魔力を出し惜しみせずに魔力で強化すれば、あと2分くらい戦えます。その間に何とかしてください。」
「フェルン……!」
「このままだとシュタルク様は吶喊して死んでしまいそうなので。あと、防御魔法は一応張りますが、見ての通り私の機動力が非常に落ちるので、シャドウの攻撃から私を絶対守ってくださいね。」
フェルンがいつも通りひでえけど、いつも以上の出力の魔法で俺を援護しれくれるみたいだった。これでまだ少し戦える。
「フェルン……そこまでやるの?シュタルク、さっきから出血が止まらないんだけど。」
やっぱりフリーレンは反対気味のようだった。まあ確かに、フリーレンの言うとおり、俺達がここで粘っても勝率が上がるなんて思えない。フリーレンはこれ以上俺たちが傷つくことを望んでいなんだろう。……けど、それでも、ここは戦わなきゃいけないんだ。
「……シュタルク様が珍しく弱音を吐いてませんから。さすがにここで引き下がるのは無粋でしょう。」
「…………分かった。私も出し惜しみしないで行くよ。魔法攻撃は私が対処する。どうせ向こうが逃がすつもりが無かったら魔力があろうがなかろうが変わらなそうだからね。……シュタルク、本当に二分の間で決着をつけるよ。」
「……分かった。何としてでも決着をつけてみせる。」
◇
「セヤアアアアアア!!!!!」
「……フン。」
「クッ……このぉ!!!」
俺はシャドウに何度も斧を振るった。フェルンの魔力で斧の振りはより力強くなったけど、シャドウの細剣に相変わらず防御される。けれど、さっきまでと違って俺に攻撃するようになっていた。シャドウの攻撃は速すぎて、全部俺に当たる形になっちゃってるけど、それでも諦めるわけにはいかない。
「やっと攻撃をするようになったか、シャドウ!どういう心境の変化だ?」
「……なに、只の戯れだ。」
「ウグッ!……へっ、戯れの割には随分と思いの籠った一撃じゃねえか?」
俺みたいな前衛が仕事の人間は、敵と殴りあっていたり斬りあってたりしていると、相手が今どんな気持ちで戦っているかがなんとなくわかる。そして今のシャドウの感情は、『困惑・不快』だ。
「俺の斧はお前には届かねえかもしんねえけどな、お前の心には届いてるぜ!なあそうだろう!?シャドウ!」
「……フン。確かに、お前の言葉に不愉快にさせられたかもしれんな。だが。」
「……!ゴハッ!」
「!シュタルク!」
シャドウの剣が俺の腹を貫通した。い、痛え!多分、残り時間が10秒くらい減っちまったな……
「それは、お前が『上』だということにはならない。我も昔は未熟だった。それだけのこと。」
「違う!今のお前は未熟どころか腐りかけだ!」
俺は、突き刺した剣を持つシャドウの腕をつかみ、もう片方の手で斧を振るう。こっちもシャドウのもう一方の腕で防がれるが、俺は構わず力を込め続ける。
「なんで今お前が不愉快になったか、俺には分かる。恥ずかしいって、情けないって思っているんだろう?見返りも求めずに、馬鹿みたいに人助けをしていた昔の自分が。でも、何かの拍子にそれが嫌になったんだろ?そして、この世界では結局力が全てだと思うようになってしまった。何があったかはわかんねえ。シャドウ。お前は誰かに裏切られたのか?」
「どうでもいいことだ。誰がこの我を信じていても、誰が我を信じなくても。我は、我の道を行く。」
「よくねえんだよ!シャドウ。この世界の人間はな、人を信じない奴ばっかりじゃないんだ。」
「ふん。なぜ分かる。」
「俺が人に信じられているからだ!だからこんなにボロボロでも戦える。シャドウ、今のお前にはできないことだ!」
「なるほど、道理かもしれん。だが、結局は力で負けているぞ?」
「……へへ、フェルンとフリーレンの力はまだまだこんなもんじゃねえよ!うおおおおおおお!!!」
俺はそう言ってさらに力を込めた。呼応するように、フェルンからの強化が大きくなった。さっきから妨害で
頼む、届いてくれ俺の斧!ここで負ける訳にはいかねえんだ!
「腹を貫かれたまま動いたせいで内臓がグチャグチャのようだな。」
「へん!こんな傷、戦士なら当たり前だっつーの!」
「なぜそこまで我を打ち倒さんとする?彼我の戦力差が分からぬほど愚かではあるまいに。」
「俺の人間としてのプライド、そして昔の借りを返しているんだ、シャドウ!」
「面白い冗談だ。恩を斧で返すとは。」
「違う!俺はこの斧で、お前を人間に戻すために殴るんだ!お前は今でも、心のどこかでこんなやり方で力を得たくないと思っている。その証拠に、自分の所業をどこか後ろめたく思っているお前は、俺を殺す攻撃ができないんだ。違うか?」
「貴様は我に何を望んでいる?」
「俺のことを助けてくれた時のように、人に戻ってくれ、シャドウ!お前はきっと戻れる!お前の奥底には人の心が眠っている!剣と斧を交えた俺が信じてやる!」
「……貴様の生殺与奪は我にある。そのことを教えてやろう。」
「……!う、グアアアァ!!!」
さ、刺さっている剣から新しい剣身が生えてきて、さらに体に穴が開く。でも、でもなあ!
「あ、甘いぜシャドウ。俺はまだ動ける。むしろ痛みで頭が冴えたぜ!」
「シュタルク、もう限界だ!多分もう体の血の半分が抜けてる!逃げるよ!」
……フリーレンがどうやら本気で俺をシャドウから取り返して逃げるつもりらしい。もう俺が何を言っても連れていくつもりだろう。
「……シュタルク様、これが最後です。」
フェルンが俺に魔力を一気に送り込んできた。これで終わりにするということなんだろう。
ああ、この一撃が、俺の全力だ。
「最後の一撃だ。よく味わえ、シャドウ!」
「面白い。それほどまでに我が間違っていると言うならば、成し遂げて見せよ。」
「人を取り戻せ、シャドウ!」
俺は斧を上に振りかざした。そして、血まみれの腕を全力で振り下ろした。
「閃、天、人、撃!!!!!!!」
その一撃は、シャドウの剣を砕き、体を切り裂いた。でも、それが限界で、その後俺はフリーレンに回収されてその場を後にすることとなった。
身体が限界で、意識が朦朧とする中、シャドウは俺にこう言われた気がした。
「見事。」
・シュタルク村
スタイリッシュ魔族スレイヤーのお陰で大ダメージは負ったけど存続しました。
・金欠
魔族はほぼお金を持っていないので原作より金欠。陰の実力者コレクションも大して集められていない。
・シュタルク
陰実のローズ枠に少しなってもらった。昔見たカッコいい存在が今では道を踏み外しているのに我慢ならなかったようです。
・フェルン
シュタルク視点では描写してないけど、なんとも言えない目でシュタルクとシャドウを見ていた。
・閃天人撃
閃天撃より強い斧での振り下ろし攻撃。人に助けてもらいながらの攻撃なので名前に人をつけてみました。
……改めて考えると閃天撃って単なる掛け声的な意味なのか、それとも特別な技術なのかよくわからないね。
シュタルク君、思い入れがある状況とはいえこんなに叫ぶのかなぁ……と思いながら書いてました。まあ弊フリーレン世界のシュタルクはこういう性格だということで……。
というわけで、あとはエピローグ的なものが続いてからこのエピソードはお終い。ここが個人的に一番書くの難しいと予想していた部分なので筆者はひと安心です。何とか書けた……はずだ、多分、きっと!