魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

2 / 43
クヴァ―ルイベント開始です。

クヴァ―ル戦はシャドウ様の魅せプレイの為に大幅に盛られました。


刮目せよ。『陰の実力者』の初舞台を!

16歳になった僕は、順調に実力を伸ばしていた。

僕は姉さんに「成長しないわね……」と半ば飽きられつつも、家の方の騎士としての仕事は一応真面目にこなしていた。仕事の内容は、まあもっぱら魔族退治。森の調査に来ている。この世界では一人前扱いだ。僕は家の恥にはならない程度のモブ騎士として仕事をしている。今は、領地の近くに魔族の目撃証言が出たので、いかにも余りの人員感のある下っ端のモブ従者を1人引き連れて、その魔族の退治に向かっている。まあ、僕に回される仕事は大して難しくない雑用じみた仕事ばかり。出発時は討伐が難しそうだったら無理せず帰れよとか言われた。それに比べ、姉さんは一つの村を滅ぼしたらしい魔族の討伐隊のリーダーを任される程度には人々の信頼を集めているらしい。領地で姉さんと一緒に居るときに、声を掛けられるのはいつも姉さんだから。

ただその姉さんなんだけど、最近僕のことを気に掛けることが多い。曰く、「なんで才能があるのに実力が伸びないのかが不思議」らしい。そりゃ隠してるから当然だよね。でもそんなことを知るはずもなく、最近姉さんとの訓練が激しさを増している気がする。まあ実際は楽勝なんだけど、僕はモブを演じ切らないといけない。訓練の激しさに比例して泣きわめく演技を強めるようにしないとね。

で、魔族退治の仕事だけど、実はもう終わっている。僕の魔力探知ならば、視界内の森の広さならば簡単に魔族を探知できる。モブ従者君がよそ見をした隙に、スライム弾で1km遠方に居た魔族の首をスナイプして終わりだ。実に簡単な仕事だ。でもこれで帰ったりはしない。どうせならこの付近に強い魔族でもいないかなあと思っている。魔族って、人間の魔法使いに比べて面白い魔法を使っていることが多いからね。特に北方に居る魔族や魔物は強力なのが多くて、僕も大いに参考にさせてもらった。というわけで僕は、武器の手入れをするという名目で、モブ従者君を宿に置いて散歩に出かけた。散歩といっても、大体30kmくらい離れたところを歩いている。仮に戦闘になって騒ぎになったとしても、このくらい離れとけば僕が関わったことは疑われないだろうしね。僕は全力ダッシュすれば時速1200kmくらいで移動できるので、移動時間が長くなって帰りが遅くなるなんてこともないだろう。

こんな風に、僕は最近、夜の抜け出し以外にも仕事の隙を見つけては陰の実力者プレイのための活動をしていた。しかし、順調の伸びていく僕の実力とは別に、今の僕にはもう一つ探し求めているものがある。

 

陰の実力者としての活躍の機会だ。

 

いやね?最近の人類VS魔族の戦況が、ほとんど膠着状態なんだよ。小競り合いは起きているけど、大魔族と呼ばれるネームドボスを倒そう!みたいな大勝負が全然発生しない。最近やっている陰の実力者っぽいことと言えば、森の中で魔族に襲われている人を陰からの一撃で救出して見せたりとかだ。それでもまあまあ満たされてはいるけど、やっぱりもっと大きな舞台が欲しい。

まあ、僕が大魔族に直接出向いてバトルを仕掛ければ活躍はできるだろうけど、それじゃ陰の実力者じゃなくて表の実力者だ。こういうのは、勇者ヒンメルに憧れた勇者フォロワーが、旅の途中で遭遇する強キャラとして倒されるべきなんだ。そして彼らがバトル中にピンチになったときに颯爽と現れる陰の実力者。彼は主人公たちが苦労していた相手をいともたやすく葬り去り、「貴様らは勇者ヒンメルの遺志を継ぐべきなのかもしれない……」とか言いながら去っていく。これこそが陰の実力者としてのあるべき姿だ。

でも、そんな存在が現れるのを待っている間に僕が寿命を迎えてしまったら、本末転倒だ。一応、魔力操作による身体機能の向上で、200年ほどは生きられる目途がついているけど、それでも不安だ。100年くらいしてもこのままだったら、もう自分で討伐に向かおうかなあ。それとも南側諸国の戦争に介入することを検討しようか。

 

 

そんなことを考えながら歩いていると、興味深いものを見つけた。デカい魔族の像……?のようなものだ。

いや、像じゃないな、これ。封印魔法が施された魔族のようだった。なんだっけ、確か倒せそうにない魔族は討伐ではなく封印という手段を取る、という話があったような。時々、こんな感じの封印された魔族を見かけることがある。まあ、封印された魔族なんて倒しても面白くないし、トラブルが発生したら嫌だから全スルーしてきたけど。

それにしても割と強そうな魔族だなあ……と思いながら観察していると、ふと気が付いた。

 

封印、弱まってない?

 

後1年くらいでもしたら解けちゃいそうじゃないかこれ。封印の管理人はどうしているんだろう?というか、封印した魔族を野ざらしにして大丈夫?別の魔族が封印解いちゃわない?

こういった状況を踏まえ、僕は7秒くらい熟考した。う~ん。

 

よし、決めた。

 

封印を解いて僕が倒しちゃおう。

 

どういう事情があるのかは知らないけど、この状態で放っておくなんておかしい。封印の管理人的な人が消えちゃったのかもしれない。このままだとこの凶暴そうな魔族が野に放たれちゃうだろうし、そもそも遅かれ早かれこの魔族は倒さないといけないだろう。僕がこの魔族を倒せない可能性はあるけど、まあその時はその時だ。正直今の僕に勝てる魔法使いはほとんどいないと自負している。

それに、僕は最近強者に餓えていた。初めて北方の強力な魔族や魔物を相手にしたときは結構苦労したけど、最近では余裕で勝ててしまう。一応、魔王城は健在でそこにはもっと強力な魔族がいるかもしれないけれど、そこに入るのは物語の終盤、次世代勇者パーティの役目だろう。この世界の強力な魔法使いに喧嘩を売ってもいいかもしれないけれど、後が面倒くさそうだし、そもそも僕には『悪いことをしてなさそうな人はなるべく殺さない』っていうマイルールがあるからね。陰の実力者は単なるバトルジャンキーではなく、節度を持って戦うべきなのだ。

でもそれはそれとして、僕は強い敵と戦いたい。最近僕は、陰の実力者としての姿である「シャドウ」としての衣装を完成させたところで、これを使う機会が欲しかった。つまり、ここが僕の陰の実力者としての本格的な初舞台というわけだ。それに、ヌルい戦いばっかりしてると腕が鈍りそうだしね。結局勇者パーティは見つけられなかったけど、僕はそんなものが無くても陰の実力者に成れることを示してやる。

 

刮目せよ。これが陰の実力者の初舞台だ。

 

 

「……儂の封印を解いたのは貴様か?」

「如何にも。」

 

クヴァールは目の前の男を測りあぐねていた。自らの封印が解かれるときは、魔族が戦力増強のために復活させるか、自らを完全に討伐する算段を立てた人間が万全の準備の元杖を向けてくるか、その2択だと想定していたからだ。しかし実際に解かれてみると、目の前には見知らぬ黒づくめの男が一人。角が無いことから人間であるとは思われるが、杖も持たず、大した魔力を持っているようにも見えない存在が、自分ほどの実力を持つ魔族を前にたった一人で立つ理由は彼には思いつかなかった。

 

「たった一人か?」

「そうだ。」

「魔王様は今どうしておられる?」

「さあ?そんな話よりも、我ともっと有意義な事をしようではないか。」

「ふむ……。人間、交渉とは力関係が拮抗して初めて成立するものではないのか?」

「交渉?何を言う。我はただ、貴様がここで封印され暇を持て余しているであろうことを哀れに思っただけだ。」

「……フン。その結果、お前はこれから儂に殺されるのだぞ?」

「なるほど。貴様の魔法を見てから引導を渡すのも一興だ。」

「ほざけ。"人間を殺す魔法(ゾルトラーク)"」

 

クヴァールは己の代名詞ともいえる魔法を放つ。白黒に明滅する貫通レーザー攻撃は、目の前の男に直撃したかに見えた。今まで、物理的に回避するしか対処法が無かった、まさに「触れれば死ぬ」魔法。しかし。

 

「……なるほど。確かに言うだけの実力はあるようじゃのう。」

 

目の前の男は無傷だった。人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が着弾する直前、直径1m程の六角形のバリアが展開された。それに人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が触れた瞬間、魔法は霧のように消えていくのだった。

 

「魔力が感じられないにもかかわらず、その効力か。どうなっている?」

「さてな。しかし確かに言えることは、真の強さとは力ではなく、その在り方だ。」

「なんだと?……いや、そうか。貴様、魔力を制限しているな?儂ら魔族を欺くために。」

 

クヴァールは、過去の戦いでフリーレンというエルフの魔法使いが同様のことをしていたのを思い出した。

 

「ようやく気付いたか。遅いな。」

「貴様、名は何という?」

 

そういった瞬間、今まで大して動かなかった男の口角が初めて上がった。

 

「我が名はスt……いや、我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩るもの。」

「シャドウ……。知らぬ名だ。」

「当然だ。表には決して出さぬ名だ。そしてこれからもな。」

「フン……。だが、儂は腐敗の賢老と呼ばれたクヴァールだ。この程度では終わらんよ。」

「えっ」

 

そう言って、クヴァールは空に手をかざす。すると、クヴァールの周囲にいくつもの魔法術式が現れた。そして、それらが同時に人間を殺す魔法(ゾルトラーク)を撃ち始める。それらは馬鹿正直にシャドウを狙わず、途中で軌道を複雑に変えていく。前、横、後ろからシャドウに人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が殺到する。

しかし、シャドウは動くことは無かった。まるで人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が自分の意思で攻撃をやめていくかのように、着弾直前で魔法は霧散してしまう。途中、人間を殺す魔法(ゾルトラーク)以外の魔法もいくつか試したが、まるで通じていない。

クヴァールはそれを見ながら、シャドウの防御魔法について思考を巡らせていた。

 

人間を殺す魔法(ゾルトラーク)の防御術式が仮に完成したならば、人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が跳ね返る、逸らされるといった反応になることは予想していた。だが霧散するということはどういうことじゃ?見る限り奴の防御術式は単純な構造に見えるが、あれほど単純な構造で人間を殺す魔法(ゾルトラーク)が打ち破られるならばとうに人間に発見され広められているはず。さらに見たところ、大して魔力を消費している様子もない。彼奴は何をしている?)

 

すると、シャドウがクヴァールに向かって歩み始めた。口元に笑みを浮かべながら、散歩でもするかのように進んでいく。しかし距離が近づくにつれ、クヴァールはシャドウの防御魔法の魔力動態が良く見えるようになってきた。

 

(……やはり構造は「壁を張る」というだけの役割の単純なもののようじゃ。だが、その「壁」に流れる魔力が複雑に変化している。)

 

しかしそれでも観察を続けていると、クヴァールは一つのとんでもない仮説に行きあたった。

 

(……ま、まさか、人間を殺す魔法(ゾルトラーク)を構成する魔力のみを正確に消しているのか!?)

 

魔法使いが一度はしたことがある妄想。攻撃魔法の魔力をすべて見切って、それに同調する魔法のみを正確に撃つという、理論上最小魔力で最大の防御効果を得ることができるであろう魔力操作技術。燃える木材の燃焼部分にのみ水を当てれば、効率よく消化できるように。しかし、実際にはそんなことは「川の中で針を指に立て続けてみろ」とでも言うべき無理難題であった。特に人間を殺す魔法(ゾルトラーク)などという、魔力量も複雑性も半端ではない魔法でそれをするなど考えもしなかった。

だが現実問題として、このシャドウという男はそれをやりのけている。このまま魔法で攻撃し続けるのは分が悪いだろう。

 

(……ならば物理攻撃だ。"鉄球を打ち出す魔法")

 

シャドウの頭上に棘付きの鉄球が数十個生成され、シャドウに降り注ぐ。それぞれが半径2mはあろうかという大きさ。しかしそれ自体には魔力はないので、迎撃にはどうしても魔力を消費して物理的に返す必要があるはずだ。人間を殺す魔法(ゾルトラーク)と並行して行使しているので、魔力消費は重いが、出し惜しみができる相手ではなかった。

しかし、クヴァールはまたしても常識外れの魔法技術を目にする。シャドウの漆黒の服が突如として変形し、鉄球を打ち払ったのだ。

 

「な、なんじゃその装備は!?……いや、まさか、スライムか!?生きたまま魔力で支配しているだと!?」

 

魔力で魔物を支配する。これができるだけで、人間の魔法使いとしての強さの証となるだろう。それを武器のように扱うなど、クヴァールは見たことがない。あの魔王でさえも、だ。

ここに至って、目の前のシャドウという存在は格上であると、クヴァールは認めざるを得なかった。

 

「シャドウ。この戦いを最期の一興だと思うのならば、本当のことを言っても構わんだろう。貴様の正体は何だ?何年魔法の研鑽を重ねれば、その領域に至れるのだ?」

「我が名はシャドウ。この名この身こそが我が真実。研鑽の長さなど虚栄の中の戯れに過ぎない。」

「……そうだな。魔法使いとは研鑽の長さではなく魔力を誇るべきだのう。」

 

そう言うと、クヴァールは最高出力で魔法を放とうとした。しかし、そのために前方に伸ばしていた右手が、突如として切断された。そして。

 

「……グッ!?奴はどこだ!?」

 

クヴァールは痛みの中でも、冷静に左手からの魔法で目の前のシャドウを打ち抜こうとした。しかし、忽然と消えていた。慌てて魔力探知をすると、信じがたいことにシャドウの魔力を背後から感知したのだった。

 

「……次は何の魔法だ。儂は目の前をずっと見据えていたはずだ。幻影系統の魔法か?」

「貴様は、雨粒の一つ一つを認識できるか?」

「……なんだと?」

 

クヴァールには言っている意味が解らなかった。シャドウが雨粒になったとでも言うのだろうか?

 

「クソ……何!?」

 

咄嗟に生成した剣で背後を薙ぎ払うが、スライムで形成された剣により受け止められた。

 

「魔法にかまけて、武術の修行はしなかったのか?」

 

クヴァールの剣が打ち払われる。美しい剣筋だった。クヴァール自身も、魔法程ではないが武術の心得はあった。だからこそ理解してしまう、その練度。専門ではないので自信はないが、あの軍神リヴァーレに匹敵するのではと思えた。

 

「ふん、この程度か。」

「……死にたくないなどという恐怖により、全力を出すのは生まれて初めてかもしれん。」

「良いだろう。貴様の最後の足搔き、見届けてやる。」

 

もはや言葉は不要とでも言わんばかりにクヴァールは全力の魔法術式を展開した。人間を殺す魔法(ゾルトラーク)をメインに、物理的な刃による斬撃攻撃、鉄球による質量攻撃、炎、氷、雷などによる多属性攻撃の同時展開。魔力が枯渇した後のことなどまったく考慮に入れていない、まさに自らの全てを賭けた攻撃。それらがカラフルに空間を彩り、シャドウに何らかの破壊をもたらさんと向かう。

それに対し、シャドウはついに受けるのをやめ、避けるという対処を取った。その動きを見て、クヴァールは目を見開く。加速時や減速時の重力負荷などどこ吹く風の、とんでもない速度の回避を連発していたからだ。まるで短距離の瞬間移動だった。

だが、今までの攻撃は全てブラフ。真打は、体内にため込んでいた魔力による圧縮爆発型人間を殺す魔法(ゾルトラーク)。その威力や速度は通常人間を殺す魔法(ゾルトラーク)の5倍程もある。今までの動きを見るに回避される可能性があるし、今まで撃つ機会がほとんどなかったために練度の不安もあるが、もはやこれしかない。

 

「最期の一撃だ、シャドウ。よもや貴様のような魔法使いがいるとは思わなんだ。」

「我は魔法使いではない。実力者だ。」

「なんだそれは……。まあいい。受けてみよ、シャドウ。」

 

そうしてクヴァールはシャドウに向かって左手を向け、魔法を打ち出そうとした。シャドウは戯れなのか、真正面から受け止めるつもりのようだった。

しかしその瞬間。

 

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

まったく意識していなかった方向から光線が飛び込んで、クヴァールの左腕を消し飛ばした。見ると、白髪のエルフが空に浮かんでいた。彼女はゆっくりと彼らに近づいた。

 

「……クヴァール、80年ぶりだね。それで、封印を解いたのはお前なの?」




・クヴァ―ルの人間を殺す魔法(ゾルトラーク)以外の魔法
全部オリジナル設定。

・シャドウの防御魔法
色々オリ設定とかを盛ったけど、要は一般防御魔法よりも制御がクッソムズイ代わりに性能が高い防御魔法

クヴァ―ルのセリフの崩し字みたいなフォントは探してみたけどどれかわからんかった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。