僕は今、魔法都市オイサーストにいる。僕は数年に一回ほどしか使えないモブ式言い訳「素晴らしい魔法使いを見つけたので衝動的に弟子入りします!」を使って、長期でここに滞在予定だ。その中でも一番高い建物である大陸魔法協会の本部の塔の一番上に立ち、まるでこれから起こることを全てわかっているかのようにこの都市を見下ろしていた。
「さてアウラ君。陰の実力者として、僕はここでこれから何をすると思う?」
「……ええと、この都市は魔法研究が盛んだから……ここの権力者を殺すことで魔法の実力を誇示するとか?」
「うーん、確かにそれで実力を見せつけることはできるけれど、残念ながら悪いことをしていないのに殺すのはルール違反だ。アウラ。一か月後に開催される『アレ』のことは君も知っているだろう?」
「え、何かあったかしら。……そういえば、一級魔法使いとなるための試験があるって聞いたことがあるわ。……まさか出る気?」
「その通り!ほら、この都市のモブ諸君の会話を聞いてみなよ!」
そういって、僕は特定の人の会話と光景を魔法でアウラに届ける。
「アンタも、一級魔法魔法使いの試験を受けるのかい?」
「当然だ。一級魔法使いと言えば、大陸中から腕利きの魔法使いが集まってくるからな。」
「俺も、そうだ。5年前に2級魔法使いの資格を得て、ついにここに来たってわけだ。一人の魔法使いとして、この機を逃す手はあるまい。」
オイオイオイ、実力的にアイツ死ぬわ。
次に僕は、試験の受付らしきところからとぼとぼ帰っていく人をズームする。
「お、おい。行くときはあんなに意気揚々としていたのに、なんで諦めちまうんだよ?」
「現実を突き付けられたのさ……。俺には無理だ。」
「で、でもよ。知ってるか?一級魔法使いになれたら、どこの国のどんなところでも雇ってくれること間違いなし。それに聞くところによると、なんでも好きな魔法を一つ授けてくれるって噂だ。」
「ああ、でもよ。この試験、毎回死人が出るんだと……!」
「し、死人だあ!?どうして魔法協会はそこまで厳しい試験を課すんだよ!?」
「なんでも、魔王との戦争時代における強い魔法使いを求めているらしい。この試験程度で死ぬ奴なんか最初っから用なしってことだ。」
「そ、それは確かに怖いな。……でも、おい、待てよ……!」
お手本のようなモブ解説をありがとう。
僕は次に、都市のはずれで模擬戦闘をしているらしき二人、それとその野次馬達をピックアップした。
「模擬試合とはいえ、お前は容赦が無い、なっ!」
「勿論!試験前の肩慣らしだ!」
「おぉー、これが2級魔法使いの実力なのか!6級の俺とは比べ物にならないぜ!」
「いけー!」
「やっちまえー!」
……いや、アイツは強いぞ?
さらに僕は、都市の中にいる人々をズームする。
「魔法使いだ、たくさんいるー!」
「うおお、すげえ!」
「待って待ってー!」
「グラナト、フォーリヒ、トゥーアから来たやつもいるのか!」
「うお、すげえ魔力量だ。」
「う、な、なんか悪寒が……」
「おい、見ろ。あそこ。道の端。」
「アイツはいったい何者なんだ……?」
そこまで見たところで、僕はズームを止めた。
「フッ……ありがとうモブの諸君。お陰で僕がやるべきことを見出せた。アウラもわかっただろう?」
「…………」
アウラは黙ってうなずいた。そうだよね。ここまでヒントを出せば、勘づいてくれただろう。
「人種も国籍も関係ない。主催者も、受験者も試験官も、求める者はただ一つ。」
「……というと?」
「絶対的な強さ!魔法使いとしての高みを求める、一体感に満ちたこの祭りの中で、僕のやるべきこと。それは!」
「……それは?」
「実力を隠して試験を受験し、最初は周りに、『オイオイ死ぬわアイツ!wwwwww』と思われていたのが、段々『いや、アイツ強いぞ!?』ってなり、そして最後は『アイツはいったい何者なんだー!?』ってなるやつ!」
「え、えぇ……?」
「陰の実力者のやりたいことリスト上位にランクインする、アレだ!
乗るしかない!このビッグウェーブに!!!」
「…………でもお前、幻影魔法だけで変装してたら多分現地の魔法使いに見抜かれるんじゃないの?それに、シャドウの姿だって前のあのバカみたいな魔力の魔法のせいで結構知れ渡っちゃってるわよ?」
「あ、そのために僕は新しい変装姿を用意する予定なんだ。というわけでアウラ。今から言う物用意しといて。あ、明日僕は5級魔法使いの試験を受けるから、今日中に用意しといてね。」
「…………はぁぁぁぁぁぁ……」
・アウラは黙ってうなずいた。
多分分かってない。
というわけで、一級試験編兼ジミナ・セーネン編開始です。
--追記--
すまん、アウラは参加予定じゃないんだ……