魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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高評価感想誤字報告ありがとうございます。

最近ゴタゴタしてて感想返す気力が無い。すまぬ……


あまりにも弱そうな男、『ジミナ・セーネン』

今日は一級魔法使いの第一次試験の日。私たちは大陸魔法協会の施設内で説明の時間を待っています。

オレオールに行く途中には北部高原があり、そこを通るために2級以上の魔法使いの同伴があります。私は3級、フリーレン様は無資格の闇魔法使い。なので試験を受ける必要があるわけです。なので、別に2級魔法使いの試験を受けてもいいのですが……日程的にこっちの方が早いのと、フリーレン様の勧めもあり受験する運びとなりました。まあ、落ちたとしても2級の方を受ければいいので、気は重くありません。周りの実力のある魔法使いの方々を見るとちょっと緊張しますけど。

 

「……き、君。本当に1級魔法使いの試験を受けるのかい?」

「その通りだ。何度同じことを言わせるつもりだ。」

 

……どうしたのでしょうか?何やら受付の方が騒がしいです。

興味が湧いたのでちょっと覗きに行ってみると……受付に、40歳くらいの男の人が居ました。その人は……その、こういうことを言うべきではないのかもしれませんが、すごく弱そうでした。猫背で、なで肩で、無精ひげを生やしていて、とにかく覇気を感じられません。持っている杖は……う、うわあ、最低限の機能しか持っていない安物、いや最安の杖です。一級魔法使いが行使するような高い魔力の魔法を使ったらすぐに壊れてしまうような杖です。

 

「……そ、そのね。確かに君は5級魔法使いの資格を持っているし、今ちょうど受験料を払ったから受験資格は確かにある。ただね、5級から1級に受かった例なんて実際はない。それに加え、そこの試験官の人から聞いたんだけど、君1か月前の5級魔法使い試験だって本当にギリギリ合格だったそうじゃないか。そしてそこから……その、実力が伸びているようには見受けられない。はっきり言って今の君の魔力量は9級魔法使い並だ。この試験は毎年死傷者が出る。正直言うと、君は受験したら確実に死んでしまうよ。」

「それがどうした。俺がどこで生きてどこで死のうが俺の勝手だ。」

「い、いやそうじゃなくてね。別に私達としても死傷者が出ることは残念に思っているわけでね、ジミナ・セーネンさん……」

 

……このジミナさんは、一級魔法使い試験を受験しようとして止められているようです。まあそりゃ止められます。明らかに実力不足です。このまま試験を受けたら確実に死んでしまうでしょう。

 

「あ、あのぉ……私もやめておいた方が良いと思いますよ。」

 

この茶髪の女の人は……あ、そうだ。エーレという人だった気がします。さっき待っていた時に会話を少しだけ耳にしました。確か魔法学校を主席で卒業した優秀な2級魔法使いだとか。

 

「その、えーと、私はウーワズミ魔法学校から来た者です。私の2つ上の先輩の話ですが、その先輩は将来宮廷魔法使いになることが期待されているほどに優秀な2級魔法使いでした。しかし3年前、この一級魔法使い試験の二次試験で、受験者同士の戦いで亡くなってしまいました。そのくらい危険な試験なんです。その……見た目的に……あなたは魔力量からして、その先輩よりも強いと思えません。……ええと、少なくともその杖、見習い魔法使いに与えられる安物ですよね?装備も整えられない人が来るところではないと思います……」

 

ああ……分かります。この人、「あなたすごく貧乏そうで貧弱な見た目をしていますね!」と言いたいのを、失礼だろうから抑えて説得してるんですね。声がものすごく遠慮がちでした。なのにわざわざ忠告するなんて、親切な人です。

この真摯な説得なら、ジミナさんもちょっとは思いとどまってくれるはず。

 

「……はぁ。」

 

……なんかすごい呆れたようなため息を吐かれましたが、どう考えても呆れの正当性はこちらにありますよね?

 

「人を見かけで判断するのはやめておけ。」

 

えぇ……なんでそうなるんですか……。確かに人は見かけで判断できない部分がありますが、あなたの場合そもそも見かけをまともにする重要性を理解していませんよね?そんな人が、あの親切な説得に対してなんて失礼な回答を……も、もしかしてあまりにお馬鹿で今の人の話から何も感じ取れなかったのでしょうか?

 

「え、え、いや、あの。その、せっかくの忠告なのでもう少し耳を傾けても……」

「俺には必要ない。」

 

いや絶対あなたには必要ですよ?

 

「おいおいおっさん。人の忠告には素直に従っとくべきだぜ。」

 

今度は銀髪の青年みたいな人が来ました。彼は……ああ、そうでした。ヴィアベルという名前の、北部魔法隊の隊長です。長い間魔族と戦ってきた経験豊富な方だと聞いています。

 

「……おっさんはやめてもらおうか。俺は18だ。」

 

…………20歳くらい老けて見えるんですが……。え、病気とかじゃないですよね?どんな不健康な生活習慣だとあの見た目になるのでしょうか?毎日夜遅くまで起きて食事の栄養のバランスを全く考慮せず魔法以外に身体を動かさなさそうですね。

 

「…………お、おう、悪かったな兄ちゃん。でもな。はっきり言って、このまま試験を受けると確実に死ぬぜ。戦場でもそうだが、最初に死ぬ奴ってのは、だいたい修羅場の渡り方を知らない素人だ。兄ちゃん、聞いたところ一か月前の5級試験に受かったばっかりなんだってな?5級試験は正しく試験だが、はっきり言って1級試験は、殺し合いの場だ。俺は殺しが好きってわけじゃないが、対人戦でお前に当たったら、容赦なくお前を、殺す。ただ今お前が大人しく去るってんなら、俺はそんなことをせずに済むんだがな。」

 

途中からヴィアベルさんがジミナさんに杖を向け、すごく底冷えする声になりました。これが殺気というものなのでしょうか。私もちょっと嫌な汗をかいてしまいました。まあ、おそらくは脅して帰ってもらうということなのでしょう。初めてこのヴィアベルさんを見たときは乱暴そうな印象を受けましたが、この人も人が良いみたいです。

この殺気を前にすれば、ジミナさんも気楽に受けられる試験ではないことが分かってくれるはず……

 

「俺を殺す?笑わせる。少なくとも、お前よりは強いさ。」

 

いや、何をどう考えたらそうなるんですか?……いや、もしかして、フリーレン様の魔力制御のように、実力を隠しているとか?少し魔力が揺らいでいる気がしますし。……試験の場でそんなことをする理由が分かりませんが……。

 

「……なら、俺が簡単なテストをしてやろう。」

 

そう言うと、ヴィアベルさんは一般攻撃魔法をジミナさんに放ちました。……でも、発射速度も威力も弱いです。おそらくは手加減。一級試験を受けるならこれに対処できて当然でしょう。

さてジミナさんは、隠された実力でも見せてくれるのでしょうか。

 

「……」

 

……普通に喰らって吹っ飛ばされました。えぇぇ、本当に見た目通りの弱さなんですか……。ヴィアベルさんも本当に抵抗されずに喰らうと思っていなかったのか、少しあきれ顔になっています。

 

「ほれほれ、どうした?俺より強いんじゃねえのか?」

 

そう言ってヴィアベルさんはジミナさんを攻撃し続けます。ジミナさんは反撃すら見せるそぶりもなく、黙ってボコボコにされています。

本当はこの施設内では攻撃魔法は使用禁止なのですが……協会の人も黙って見てますね。まあヴィアベルさんは周囲の物を壊さないように節度を持って攻撃していますし。ここで痛い目を見た方がジミナさんのためでしょう。

しばらくして、ヴィアベルさんは攻撃を止めます。

 

「おいおい、ビビッて手も出ねのか?ちっとは反撃したらどうなんだ?」

「俺の魔法は、こんなところで使うほど、安くないんでね。」

 

多分それ、安すぎて買う人がいない魔法ですよ……。

 

「はぁ、まだ足りねえのかよ。」

「あの、ヴィアベルさんに皆さん。そろそろ試験の説明が始まりますので、お気持ちは分かりますがその辺で。」

「……そうか。いいか兄ちゃん。最後の警告だ。地元に帰ってつつましく暮らしとけ。試験ではあの10倍強い魔法が飛んでくるからな。」

 

そして、ヴィアベルさんや皆さんは説明の会場へ向かっていきます。私も向かおうとして、最後にチラとジミナさんの方を見ると、ゆっくり立ち上がるところでした。

 

 

 

……あれ?あんなに無防備に攻撃を受けたのに、傷が全然無いような……?……あ、私ももう行かないと……。

 

 

 

 

このジミナ・セーネン君の姿は完璧だ!

この姿は、僕が前に魔族に襲われていた青年を真似たもの。あまりに弱そうだったので、転写魔法を使って姿を記録しておいたのだ。その姿を元にアウラに用意させた特殊な材質を用いて作った顔マスクをかぶり、幻影魔法を入念にかけた姿が今の僕、いやジミナ・セーネンとしての姿だ。そして、事前にアウラに用意された見習い魔法使い用の杖を持っている。見習い向けの中でも特に安物で、魔法行使のためよりも杖としての用途の方がポピュラーな代物だ。

そして、試験当日となった今日。僕はあえて、試験直前に申し込みをするべく、受付に向かった。多分今頃、試験を受ける人たちが集まっているだろうからね。せっかくの変装姿も、人に見てもらえなかったら意味がない。

協会の施設に入るまで、僕は全く注目されなかった。試験に来る2,3級の魔法使いは割と尊敬の目で見られるけれど、雑魚である今の僕にはそんな目は一切向けられない。そして施設に入り、受付の人に話しかける。周囲には、1級を受けるであろう魔法使いたちがいた。皆、さすがに1級の試験を受けるだけあって、高い実力を持っているようだ。そして受付の人は、見たところ知らない人だ。僕が前5級に受かった時もものすごく驚かれたからね。それすら知らずに1級を受けると言われれば、いい反応が期待できるだろう。

 

「失礼。試験を受けたいのだが。」

「はい。こちらは大陸魔法使い教会です。直近の9級試験は一週間後、8級は2週間後に予定されています。まずは身分を証明できるものをお出し願えますか?」

 

よしよし、いいぞぉ。僕が強者であるなんて微塵も思っていない反応だ。そして僕は、わざと周囲に聞こえる声で発言する。

 

「いや、俺が受けるのは今日から開催される1級魔法使いの試験だ。」

「はい……ん?んん!?え、1級!?」

 

受付の人が、発言から一瞬遅れて目を丸くした。100点満点のテンプレリアクションだ。

 

「そうだ。1級の受験手続を頼みたい。締め切りは30分後と聞いているから、今から申し込んでも問題ないだろう?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ちたまえ。君正気か!?は、はっきり言って君のような……その、見習い魔法使いが受けたら確実に死んじゃうよ!?」

「見習いとは失礼な。さあ、これが受験資格となる5級魔法使いの証。そしてこれが受験料金だ。」

「い、いや君5級だって……う、うむ。確かにこの5級魔法使いの証は……いや、ちょ、ちょっと確認をとるから、ここで待っていたまえ。」

 

そしてその人は裏方に入っていった。おそらく僕が本当に5級試験に合格しているのかの確認だろう。

そして周囲を見渡してみると……

 

「……え?なんだあの人。1級を受けるとか言ってなかったか?」

「いや……明らかに……弱いだろ。何から何まで。」

「私が戦ってきたどの魔法使いよりも弱いんじゃないの……?」

「5級に受かったことも信じられんな。魔力量が少なすぎる。」

「……あの杖、貧乏な見習い魔法使いに与えられることである意味名高い杖よね。実力はおろか最低限のお金も持ってないのかしら……」

「あれで1級試験を受ける?じ、自分の実力を見誤るにもほどがある……」

 

と、モブ実力者魔法使いたちが……いや、全員ネームドかもしれないな。ともかく、こんな感じで奇異の目で僕を見ていた。ククク、僕が試験に進んだ時の彼らの反応が今から楽しみだ。

そうしていると、さっきの人が戻ってきた。

 

「……そ、その、確かに5級に合格していることが確認されました。……ぎりぎりの成績で。」

 

そうそう。5級の時はなるべく合格ラインギリギリの成績になるように調整した。もちろん来るべき時のために実力を隠すためだ。

ただ、僕はこれから「コイツ5級すらまぐれ合格なんじゃねーの?」と思われるようにしないといけない。そうじゃないと誰も僕を侮ってはくれないだろうから。そのために、僕は5級を受けたときは最高級の杖や、魔道具を使った。

こうすることでだ。

 

「あの、5級の時の装備はどうしたんですか?」

「ああ、あれは友人からの借り物。今持っているこれが、俺が普段使う杖や魔道具だ。」

 

5級受かったの高級装備のお陰じゃね疑惑を持たせられるのだ!さらに借り物である発言から、実はその杖に細工してたんじゃね疑惑もプッシュだ!5級はそこまで厳格な試験じゃないからね。時々そういうズルが発覚して資格の取り消しになることがある。でも1級では、そんな小細工が効くような試験じゃないのだろうから、そういうことが問題になるという話は聞かない。

 

「え、借り物?じゃあ5級受かったのそれのおかg……と、とにかくですね。1級試験の受験は推奨されません。」

 

そうして、この人は僕に受験をやめるよう説得を始めた。1級試験は毎年死人が出るとか、死んでも法律的に自己責任扱いになるとか、そもそも5級でも魔法使いとして十分暮らしていけるとか、そんな感じだ。まあ確かに、自殺志願者にしか見えないのかもしれない。協会としても無駄に死人を増やすつもりはないのだろう。でも、僕としてもここで引くわけにはいかない。

そうして問答を続けていると、茶髪の女性の魔法使いの人が話しかけてきた。

 

「あ、あのぉ……私もやめておいた方が良いと思いますよ。……その、えーと、私はウーワズミ魔法学校から来た者です。私の2つ上の先輩の話ですが、その先輩は将来宮廷魔法使いになることが期待されているほどに優秀な2級魔法使いでした。しかし3年前、この一級魔法使い試験の二次試験で、受験者同士の戦いで亡くなってしまいました。そのくらい危険な試験なんです。その……見た目的に……あなたは魔力量からして、その先輩よりも強いと思えません。……ええと、少なくともその杖、見習い魔法使いに与えられる安物ですよね?装備も整えられない人が来るところではないと思います……」

 

なるほど、もっともな話だ。声色からして、本当に親切で忠告しているのだろう。この正論に対して、返すべき答えはこれだ。

 

「……人を見かけで判断するのはやめておけ。」

 

まさに傲岸不遜。弱そうなこの見た目に対するギャップが凄まじいだろう。これを言った瞬間、周囲の人々が呆れ顔になった。

 

「え、え、いや、あの。その、せっかくの忠告なのでもう少し耳を傾けても……」

「俺には必要ない。」

「おいおいおっさん。人の忠告には素直に従っとくべきだぜ。」

 

おっとぉー!典型的なヤンキーがエントリー!

しかしおっさんかあ。この見た目は、弱さに加え老いも感じさせる見た目なのだろうか。もともとジミナ君が何歳だったかは知らないけれど、話し方的には割と若そうに見えたんだよなあ。

 

「……おっさんはやめてもらおうか。俺は18だ。」

「…………お、おう、悪かったな兄ちゃん。でもな。はっきり言って、このまま試験を受けると確実に死ぬぜ。戦場でもそうだが、最初に死ぬ奴ってのは、だいたい修羅場の渡り方を知らない素人だ。兄ちゃん、聞いたところ一か月前の5級試験に受かったばっかりなんだってな?5級試験は正しく試験だが、はっきり言って1級試験は、殺し合いの場だ。俺は殺しが好きってわけじゃないが、対人戦でお前に当たったら、容赦なくお前を、殺す。ただ今お前が大人しく去るってんなら、俺はそんなことをせずに済むんだがな。」

 

途中から殺気を出して僕を脅してきた。うーん、この人はヤンキーっぽいし、僕みたいな雑魚が同じ土俵にいるのが気に入らなかったんだろうか?

なら、僕の返答はこれだ!

 

「俺を殺す?笑わせる。少なくとも、お前よりは強いさ。」

 

強烈な「俺はお前より強いと思ってるぜ」アピール!こうして挑発することで僕をボコボコにしてもらい、黙ってそれを受け入れることで僕はさらに周囲に強さを隠すための弱さをアピールできるのだ!

 

「……なら、俺が簡単なテストをしてやろう。」

 

そう言うと、この人は僕に攻撃魔法を撃ってきた。

 

……

 

…………あ、あれ?思ってたのと違う。もっと怒りが乗った攻撃魔法が飛んでくることを予想していたのに、実際にはかなり弱めの攻撃だ。もしかしてこのお兄さん、本当に忠告のつもりで僕に攻撃しているのか?

うーん、僕としては、1級試験だからもっとこう、ギラギラして殺伐とした人たちが集まっているもんだと思っていた。さっき忠告してきた人だって、実際のところ「お前みたいな雑魚は帰ってママのおっぱいでも吸ってろバーカ!www」くらい言われるかと思っていたんだけどなあ。そして、そこで僕が「はあ……本当に、程度が低いな。」とか言うことで精神的優位性を出してやるとか思ってたんだけどね。なんというか、育ちが良い人が多いのか?

 

「ほれほれ、どうした?俺より強いんじゃねえのか?」

「俺の魔法は、こんなところで使うほど、安くないんでね。」

「はぁ、まだ足りねえのかよ。」

 

うん。やっぱり忠告の為に攻撃していたらしい。この人も良い人みたいだ。

ここで、受付の人が割って入った。

 

「あの、ヴィアベルさんに皆さん。そろそろ試験の説明が始まりますので、お気持ちは分かりますがその辺で。」

「……そうか。いいか兄ちゃん。最後の警告だ。地元に帰ってつつましく暮らしとけ。試験ではあの10倍強い魔法が飛んでくるからな。」

 

そうしてお兄さんは去っていった。その後、受付の人は「もうどうなっても知りませんからね?」と言って投げやりに受験手続をしてくれた。

いやあ、ほぼ完璧なエントリーだったな!品の悪い人が予想より少なかったという想定外はあったけれど、殆ど誰も僕の弱さを疑わなかった。でも周囲を注意深く見ると、僕が全く怪我をせずに立ち上がったことに気付いた人もちらほらいるようだ。よしよし、こういう「誰もが認める雑魚。しかし一部の人間は、彼の異常さに気付いた!?」要員が小数いるという、まさに理想的な状況。そういう人にはチラと視線をやって、意味深な視線を投げかけておいた。

 

僕の「あれ?実はコイツ強いんじゃね?」ロードはここから始まるんだ!

 

 

「今年は粒ぞろいですなあ。」

 

大陸魔法協会所属の一級魔法使いファルシュは、感心したようにつぶやいた。

ファルシュは受験者を見渡す。この場にいるのは、北部魔法隊隊長のヴィアベル2級魔法使い。血みどろの権力争いに勝ち抜いたデンケン2級魔法使い。史上最年少で3級をトップの成績で合格したフェルン3級魔法使い。また、2年前の試験で試験官を殺害し、失格処分となったユーベル3級魔法使い。彼女もまた、倫理面に問題があるかもしれないが、有望であることに間違いはない。

 

「……あと有望そうなのは……あれ誰?」

 

ファルシュはフリーレンを見て、隣に居るゼンゼに聞いた。老魔法使いのような魔力をしているが、彼の知らないエルフだったからだ。

 

「知らん。」

 

ゼンゼはそっけなく答えた。

 

「そうか……まあ、粒がいる反動なのか、なんかおかしなのが居いますが……」

 

ファルシュは、ジミナ・セーネンを見て言った。

 

「一応5級魔法使いというのは本当らしいです。……が、その時に使っていた杖や魔道具は、試験官によると非常に性能の良いものだったそうで。しかもそれが、他人から借りたものらしい。……5級ならそういうゴリ押しで受かることもできるかもしれない……のか?」

「まあ……運が良ければ通るかもね、5級なら。」

「ゼンゼ。率直に聞きますが、あのジミナ・セーネンは一次試験でどうなると思います?」

「……開始と同時に同じチームの人に拘束されて、誰にも見つからないような場所に試験が終わるまで幽閉される。」

 

一次試験はチーム戦であり、チームメンバーが死亡するとそのチームの人間は全員失格というルールがある。あまりにも弱そうなジミナ・セーネンは、ライバルを減らすために、無防備ならば真っ先に狙われる可能性があるのだ。

 

「まあ、そんなところですよねえ。あれと組むことになる受験者は、なんというか、ご愁傷さまという感じです。今回の結果次第では、受験資格が4級以上になるかもしれませんな。」

「はぁ……ここは命を投げ捨てる場所じゃないんだけどね……。死人が出ることに関して陰で色々言われてることくらい知ってるんだよ……。」

 

面倒を増やされることによる愚痴を言い合っている二人に、近づいてくる魔法使いがいた。

 

「今年は粒ぞろいのようで。皆さん将来有望で喜ばしいことですね。」

「レルネン様……。」

 

レルネン1級魔法使いは、1級魔法使いの中でも特に実力が高い魔法使いであり、魔王軍との戦いの時代に生まれていればその名を残していたであろうと言われるほどだ。

 

「まあ、見ての通りです。今年は複数合格者が出るかもしれません。……その反動なのか、逆にあまりにも期待できない者もいますが……」

 

ゼンゼはチラとジミナ・セーネンを見た。

 

「いえ、この中に、少なくとも実力的に残念な者などおりません。」

「……い、いや、レルネン様。その、先ほどもちょっとした騒ぎになったのですが、例えば彼は、その、あまりにも……」

 

ファルシュはジミナを見て、失礼だとは思いつつも、あまりにも弱そうな彼に関してそう言及した。

しかし、レルネンはジミナを見ると、むしろ愉快そうな声で言った。

 

「いえいえ、本当に有望な者ばかりです。特に……彼はジミナというのですかな?彼のような才のあるものが居れば、人類の魔法の未来は明るいものになるでしょう。この老いぼれも安心して後を託せるというものです。」

 

ゼンゼとファルシュは、どう返していいか分からず顔を見合せた。




・ウーワズミ魔法学校
勿論オリ設定。この章はこんな感じの名前が割と出てくるかもしれません。

次回はチーム戦の都合でオリキャラが出ます。(まあ大した役割はありませんが)
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