魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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オリキャラ注意


パーティに貢献しつつも実力を隠す男『ジミナ・セーネン』!

「俺はシケーニ・オチヤスシだ。得意魔法は、物体の重量を増やして浮いているものを強制的に地面に落としたり、人間を立てなくさせる"落下させる魔法(フォーラセン)"だ。よろしく頼む。」

「私はピタリヨ・サアキュ。得意魔法は、やる気を削がせて行動を阻害する、"努力を止めさせる魔法(ダラジラズェツ)"ね。よろしくお願いするわ。」

「ジミナ・セーネンだ。得意魔法は特にない。よろしく頼む。」

「……よ、よろしく……。」

「……あ、ああ。よろしく頼む。」

 

一次試験のチームが発表され、ジミナの属するパーティはそれぞれ簡単な自己紹介をしていた。しかし、ジミナ以外のテンションは低い。このジミナという男は見るからに弱いので当然と言える。シケーニとピタリヨは、どちらも

 

(うわあ、自分のチームは実質戦力が2/3じゃん……)

 

などと考えていた。

その後、試験会場の森に移動し、試験の詳細が説明された。隕鉄鳥を試験終了時に籠に入れて所持していること。パーティメンバーに死亡者が出たら失格となること、結界の外に出た場合は失格になることなどだ。

そして試験開始となり、パーティそれぞれが散った。

大抵のパーティは、この時点ではとりあえずお互いの簡単な紹介をしたのち、隕鉄鳥をどう捕獲するかなどの作戦を話していた。シケーニとピタリヨもそうしようとしていたが、他のパーティよりも士気は低い。シケーニはひとまずまともそうな人間に見えるピタリヨに話しかけた。

 

「……あー、その、ピタリヨさん。隕鉄鳥について何か知っていることはあるか?すまんが俺は何も知らなくてな。試験に使われる鳥だから、普通の鳥じゃないんだろうが……。」

「ごめんなさい、私も知らないの。……シケーニさんは"落下させる魔法(フォーラセン)"が得意なんですよね?隕鉄鳥の捕獲に役立ちそうですね。」

「ああ。細かく話すとこの魔法は、俺が目に収めた物体の重量を最大4倍に出来る。射程は10mってところだな。ただ、相手の魔力を抑えたりはできないから気を付けて。あと、体格と筋力の関係で、特に虫とか小動物には効果が薄い魔法だ。……まあそれでも、動きを鈍らせることはできるだろう。」

「そうね。私の"努力を止めさせる魔法(ダラジラズェツ)"なら、鳥の飛ぶ意思を削ぐことができるわ。こっちは射程7m位だけれどね。」

「ああ。とりあえず、隕鉄鳥を見つけたあとはいくらか取れる手段がありそうで良かった。後はどうやって見つけるかだが、何かアイデアはあるか?」

「うーん……ごめんなさい、普通に水場を探してみるとかしか思いつかないわ。」

「そうか。まあ俺もだ。場合によっては他のパーティから奪取することも考えないといけないのかなあ。」

「そうですね……でも、うちのパーティの戦力……」

 

ピタリヨはちらりとジミナを見た。会話に全く参加せず、少し先を歩いているだけだった。

 

「あー……その、ジミナさん。何か隕鉄鳥を捕まえるアイデアとか、役立ちそうな魔法はあります?」

「さあ……あるかもしれない。」

「かもしれないって……もっとまじめに考えてくださいよ。」

「すまないな。力の差がありすぎて、真面目に協力する気が起きないんだ。」

「は、はぁ!?あなたふざけてるんですか!?これはパーティ戦ですよ?もうはっきり言っちゃいますけど、あなたのような雑魚が入ってきてどれだけ迷惑な思いをしているか分かってます!?このパーティは実質戦力が他と比べて2/3ですよ!?」

「そいつは悪かったな。なに、一次試験は俺が合格させてやる。だから心配は不要だ。」

「は、はあ~~~?頭おかしんじゃないですかあなた!?あああもう、やる気なくなってきたわ……棄権したい……。」

「ピタリヨさん……もう彼に何言っても無駄ですよ。2人で何とかする方法を考える方が建設的でしょう。」

「そうですね。……あ、でも、彼が他のパーティに殺されたら、私達まで失格になっちゃいます。彼を守りながらとなると、さらに1人分の労力が必要になり、戦力が1/3です……」

「なるほど……ああ、なんてツイてないんだ俺たち。……はあ。ジミナさん。あなた本当に魔法使いなんですか?何でもいいので何か魔法を使ってくださいよ。」

「悪いな。味方相手とはいえ、手の内を無駄に明かすほど俺は愚かじゃない。」

「はあ?なんですかその負け惜しみ……いや、本当に魔法が使えないのを何とか誤魔化そうとしている……?」

「はあ、そこまで疑われたら仕方がない。一つだけだぞ。」

 

そう言うと、ジミナは安物の杖に魔力を集める。

 

「"杖先を光らせる魔法(ルミスバンディ)"」

 

ジミナがそう言うと魔法が発動し、杖の先が光った。

これで確かに、ジミナが魔法使いであることが証明された。……"杖先を光らせる魔法(ルミスバンディ)"は見習い魔法使いが最初に覚えるチュートリアル魔法という扱いだが。

 

「……え?他には?」

「悪いがこれが限界だ。来るべき時の為に、俺の使える他の魔法は隠させてもらおう。敵を騙すなら味方から。そういうことだ。」

「…………シケーニさん。もういいでしょう。あなたの言うとおり、彼に何を言っても無駄です。」

「……そうだな。」

 

シケーニとピタリヨは、ジミナとの会話を打ち切って歩き出した。もはやジミナは完全に仲間外れだ。シケーニとピタリヨは、ジミナから離れて歩きながらひそひそ話し出す。

 

(隙を見てジミナを拘束して、どこか人目のつかない場所へ拘束しよう。)

(それしかありませんよね……。でも、2人でこの試験を突破できると思います?私、正直言ってもう8割諦めの気持ちで……。)

(はあ。まあ、そういう気持ちになるのも仕方ありません。あのジミナが全て悪い。)

(せめて死なないように、他のパーティを見かけたら逃げることだけは忘れないようにしましょう。)

 

殆ど諦めモードに入ってしまった2人。そこへ、ジミナが無遠慮に声をかける。

 

「随分と諦めが早いんだな。1級魔法使いを目指すならばもっとあがいてみたらどうなんだ。」

「あ、あなたにだけは言われたくないですよ!」

「そうです!次余計なことを言ったら、攻撃して気絶させますからね!」

「面白いことを言う。お前たちにできるのか甚だ疑問だがな。」

「こ、コイツどこまでも……!」

「もういいですよ、やっちゃいましょうよシケーニさん!」

 

堪忍袋の緒が切れて、ジミナに杖を向ける二人。だがそこで、ジミナは初めて笑った。

 

「……ククク。」

「な、何がおかしい。」

「お前たちは本当に状況が見えていない。この程度の挑発で冷静さを失うとは。」

「はあ?状況?」

「俺をよく見てみろ。」

 

不気味に思いながらも、シケーニとピタリヨはジミナを見る。一見すると何もなさそうだが、ジミナが杖を持つ腕と逆の腕を上げると、二人の顔は驚愕に染まった。

 

「隕鉄鳥はもう捕まえたぞ。」

 

ジミナは、確かに隕鉄鳥の入った籠を持っていた。

 

 

二人は森の中でも特に鬱蒼としているエリアに入り、他パーティから身を隠していた。そして、シケーニはジミナにおずおずと声をかけた。先ほどの怒りは、困惑に変わっている。

 

「その……どうやって捕まえたんだ?ジミナ。」

「お前たちがひそひそ話している間に、俺は草むらに居た隕鉄鳥を見つけた。それに後ろから忍び寄り、籠をかぶせて捕まえた。簡単なことだったよ。」

「……その、隕鉄鳥は何か特別な抵抗とかしなかったのか?」

「いや?されなかったな。」

「そうなのか……なんだ。鳥自体は普通なんだな。」

 

ジミナへの怒りは消えたが、二人はジミナの実力を依然として認めていなかった。しかし、合格の可能性が出来たことでモチベーションは上がっている。

 

「生息数が限られる鳥なんじゃないかしら?つまり数が少ない鳥を奪い合うのが、この試験の本質。鳥の数だけパーティが合格できる仕組み、とか。」

「そうだな。ジミナが捕まえられたくらいだし。そういうことなんだろう。これからは他のパーティから逃げ隠れすることをメインに考えるべきだ。」

 

そこで、ジミナは初めてまともな意見を述べた。

 

「いや、魔力探知を抜けながら隠れ続けるのは容易ではないだろう。俺たちの存在は探知されてもいいが、隕鉄鳥を持っていることは探知されるべきではない。二人とも、物を隠す魔法は使えるか?」

「え、突然なんでまともに……ま、まあ私は少しだけ使えるけれど。でも上手くないわよ?」

「なら、ピタリヨが俺の持つ籠を魔法で隠し続けろ。やらないよりはマシだろう。そして、あたかも鳥を探し続けている演技をするんだ。」

「……ま、まあいいですけど。俺は消音の魔法を……こっちも上手くないですけど、やるだけやっておきますよ。隕鉄鳥の鳴き声を探知される可能性がありますからね。」

「ああ、頼んだ。」

 

そうして、三人は隕鉄鳥を探すフリをしながら歩き出した。

しかし、ただそれだけするのは苦痛であったのか、シケーニが口を開く。

 

「あー、どうせなら身の上話でもしないか。もちろん言える範囲でな。」

「まあいいですよ。どうせ暇になりそうですし。」

「よかった。改めて、俺はシケーニ・オチヤスシ。4級魔法使いだ。グラナト領の出身だ。一級試験を受けるのは今回が初めてだ。……まあ、元々は3級、2級を経てから1級になりたいと思っていたんだが、もうかれこれ3級試験に20回挑戦しているのに受からないんだ。実力的には自信があるんだがな……。それで、あんまりにも受かれないから思い切って1級を受けに来たんだ。まあというわけで、どちらかというと俺は記念受験組だな。受験者が集まったときに、『あ、俺この中だと下の方だな』って気づいたよ。……でも、俺の家族は割と俺に期待しているし、せめて一次試験くらいは通過したいと思ってるよ。地元では1級の一次試験を通っただけでも割と武勇伝扱いだしな。」

「に、20回も受けたの?粘り強いわね……。じゃあ私も改めて。ピタリヨ・サアキュ、3級魔法使いよ。北部高原にある町で生まれたわ。ヴィアベルさんは知ってる?あの人の部下……ってわけじゃないけど、対魔物、魔族部隊の後輩みたいな感じね。受験理由は……まあ正直私自身は3級で良いって思ってるんだけど、周りが『才能あるから1級も夢じゃない!』みたいにおだててくるから、流されて受けてみたって感じね。なんか周りの人たち私よりやる気がありそうだし、そういう面では私もあの中で下の方だわ。」

「そうなのか……3級でも俺にとっては羨ましい。」

「そう?まああなたも、魔力量だけで言うと悪くないと思うわよ?3級なら十分射程範囲だと思うわ。」

「そうか、ありがとう。」

「……」

「……あ、あの、ジミナさんはどうです?」

 

2人が雑談をしている間、ジミナは我関せずで歩いていた。ただ籠を隠すことに関しては真面目にしており、来ているボロボロのローブの中に巧妙に隠している。

 

「俺か?」

「そうですよ。……ほ、ほら。例えばどこから来たのかとか、どうしてこの試験を受けようと思ったのか、とか。」

 

いわゆるコミュ障なのかと推測し、会話を促すピタリヨ。

 

「……俺はジミナ・セーネン。5級魔法使いだ。受験理由は己の実力を測るため。それ以上でもそれ以下でもない。」

「……そ、そうか、自分の実力を知りたいのか。……その、そうだな。どこの魔法学校の出身なんだ?それとも師匠がいるパターンか?そうなら魔法の師匠はどんな人だ?」

 

シケーニは、「もし師匠がいるなら、そいつはなんで礼儀をお前に教えなかったんだ!」という言葉が喉まで出かかっていた。

 

「俺の身の上など聞いても呆れかえるだけだ。」

「……ま、まあいいじゃないか。言うだけ言ってみなよ。」

「……俺は魔法学校を出ていないし、誰かに師事したこともない。俺の魔法技術はすべて独学で、他人が使う魔法の技術を盗んだ。」

「そ、それは事実ならすごいな。でも、一人でってのは無駄が多いんじゃないのか?ほら、先人の知恵というものは重要だろう?」

「そうかもしれない。だが、俺の目指すもの今まで誰も目指さなかったものだった。」

「……へえ?」

 

ジミナは、二人に背を向けたまま語りだした。

 

「俺は、幼い頃に抱いた夢をどうしても諦められなかった。皆が子供の頃、例えば『俺はヒンメルのような男になる!』などと夢を見ていただろう。しかし年を取るにつれ、現実を見るようになっていった。……いや、違うな。ヒンメルのようになることよりも、大切なことができたんだ。家族、友達、恋人。そうして皆、ヒーローへの憧れを忘れていく。だが……俺は諦め切れなかった。ひたすらに高みを目指して修行を続け、それに不要なものは全て捨て去った。」

 

シケーニとピタリヨは、彼は夢を追い求めるタイプなのかと思った。大成する人間の中には、人々が普通諦めてしまうようなこと、馬鹿らしいなどと言って切り捨ててしまうことを追い求め、努力の果てに成し遂げる、という成功談や美談は時々聞くものだった。

しかしだからと言って、誰からも学ばず独力で魔法を学ぼうとするのは不合理に思えた。

 

「……しかし修行のために、師匠はいた方が良いのではないの?」

「そうだな……仮に例えば、ゼーリエへ師事することが叶ったのならば、彼女は俺に強力な魔法をいくつも教えてくれるのかもしれない。ゼーリエほどの実力を得られるかもしれない。だがその結果……『ゼーリエにより強さを得た魔法使い』となるわけだ。そして、その肩書は今後一生消えない。」

「???当り前じゃないか。」

「そうだ。だがそれではいけないのだ。……まあ、戯言だと思ってくれ。一応言っておくと、俺はゼーリエのファンという訳じゃないからな。ともかく、俺の目指すものなどお前たちからしたらくだらないことだ。」

「……そうか。割と面白い話だったよ。」

 

シケーニは、結局よくわからなかったが、少なくとも今の話はふざけた発言ではないように感じた。ジミナが無礼なことは擁護できないが、どこかで芯のある人間なのかもしれないと思った。

 

「さて、おしゃべりは終いだ。」

「?……!防御魔法!」

 

シケーニとピタリヨは防御魔法を咄嗟に全面展開した。直後、一般攻撃魔法が彼らを襲った。

 

「見つかったか……。くそ、あの距離からなんて威力だ!相手は受験者の中でもかなり強い方だな。タイマンで戦ったら確実に押し負ける相手だ!」

「方向からして4時の方角ね!……見つけた、あそこよ!」

 

その方角には人影があった。ただし一人だけ。他の2人はおそらく隠れているのだろう。

その人影は、ジミナのパーティにゆっくりと近づいてきた。シケーニは相手のパーティがどこなのかを悟ると、一気に冷や汗をかいた。

 

「マジかよ、デンケンのパーティじゃねえか!」

「デンケン?シケーニ、知っているの?」

「あの爺さんは、宮廷魔法使いデンケン。魔法の実力もさることながら、血みどろの権力闘争を勝ち抜いたことによる老獪さの持ち主だ。俺達の演技なんか速攻で嘘だと見抜くだろう……。」

「うぅ……なんで初っ端から強い人が来るのよ……!偶然すれ違うだけとかないかな……。」

 

しかし、デンケンは3人の方へ真っすぐ歩いてきた。そして3人に杖を向けて言った。

 

「下手な芝居なんぞ無意味だ。隕鉄鳥を魔法で隠しているだろう?悪いが渡してもらうぞ。」

 

 

一次試験はパーティ戦らしい。

もし相手が目立つ人だったらどうしよう……と思ったけど、幸いなことに、二人とも実力はあるけど目立たないモブとしての気質を備えた二人だった。まあ、彼らは地元では目立つ強さなのだろうけれど、ここでは普通かそれ以下レベル、そんな感じだ。1級試験合格の必要な実力は僕は詳しく知らない。ただ例えば、試験の説明をしていたゲナウって人は1級魔法使いらしいけど、その人をラインに考えるとまあ受かれなさそうな人たちだ。

で、試験内容は、隕鉄鳥という鳥を見つけて捕まえて、試験終了まで守り切るというもの。パーティ戦なので他のところから奪ってもOK。それでこの隕鉄鳥、僕の開発した高性能版魔力探知魔法で調べてみたところ、体内に物凄い魔力駆動機構があって、かなりのパワーを発揮するようだ。しかも魔力に対しかなり敏感らしく、僕が魔法で探知をしばらく続けていたら、勘づかれて逃げられてしまったほどだ。これはちょっと、二人が捕まえるのはかなり運が要るかな。この二人の魔法を届かせようとしても、探知されてすぐに逃げられてしまうし、行動を阻害するとなれば不意打ちかつかなり強力な威力にしなければならないだろう。

さて以上の状態を踏まえ、僕がやるべきこと。それは。

 

「なんか試験がすんなり終わると思っていたら実はパーティのあの雑魚のお陰だったなんて!?」作戦!

 

こう言っちゃ悪いけれど、この二人の実力は正直第一次試験でもかなりの幸運が無いと合格しないレベルだ。なのでどうせなら、僕の陰の実力者プレイに協力してもらおう。

僕は彼らからの会話に「見た目は弱そうだけど実は強者」の発言を心がけつつ、周囲に隕鉄鳥がいないかを調べ続けた。しばらくすると、前方100m先の草むらにある水たまりにいる隕鉄鳥を見つけたので、ソリテールの時に使った魔力糸を駆使して捕獲し、二人に見つからないようにコッソリ籠に入れた。この糸、魔力探知に全然引っかからないという特性があるうえに、うまくやれば接触した物体の魔力を吸収したりできるので結構使い勝手が良いんだよね。もちろん魔法を使って、隕鉄鳥の声や気配を消すことも忘れない。

そしてその後、彼らとの会話を続ける。ただし、「俺はお前達より強いと思ってますよ」アピールを忘れない。僕の発言を後で思い返してもらえれば「あ、あれは生意気な発言なんかじゃなくて本当に実力差があるから言っていたのか!?」と思ってもらえるかもしれないからね。そうして挑発していったところで、彼らは堪忍袋の緒が切れ、ついに僕に杖を向けた。

そして満を持して、捕まえた隕鉄鳥を見せびらかす。それに驚いた二人の顔はなかなか良かった。でもさらに良かったのが、二人は「隕鉄鳥を捕まえるなんてなんて実力だ!?」じゃなくて、「なるほど、この鳥は雑魚でも捕まえられる鳥なのかぁ~」と考えたことだ。こうなれば、隕鉄鳥の厄介さがあらわになったとき、「じゃ、じゃああの鳥をいともたやすく捕まえたジミナ・セーネンは一体何者なんだー!?」プレイができるからね!

でも、試験はまだまだ続く。その間、黙って隕鉄鳥を抱えながら逃げ回るつもりはない。僕は、二人にあえて習熟度が低い隠蔽魔法を使うように勧めた。彼らの隠蔽魔法の技量なら、フリーレンをはじめとした、受験者のトップ層には感づかれることだろう。彼らに見抜かれれば、当然怪しんで隕鉄鳥を奪いに来てくれることが期待できる。

もちろんそうなったときのバトルは楽しみだけれど、僕はその戦いにおいて目標がある。それは、相手のパーティにはジミナの異常さに気付いてもらうけれど、ジミナのパーティの二人には気づかれないようにする、ということだ。特に後者は重要だ。これが達成できれば、例えば試験後に、

 

「あのジミナってやつは実はすごいんだな。」

「え?アイツの何がすごいんだ?」

「だってあの時○○してしかも隕鉄鳥を捕まえるなんて!」

「な、なんだって!?一次試験がそんなに難しい試験だったなんて!俺たちに実力を悟らせずに俺達を守り抜いたあのジミナ・セーネンは一体何者なんだー!?」

 

が見れるかもしれないからね!

さて、そんな妄想をしていると、第一敵対パーティのお出ましだ。相手は純粋に強そうなおじいさん、格闘術が得意そうな女の人、なんか魔法使いというより商人みたいな格好のおっさんだ。目論見通り、二人の下手な隠蔽魔法に感づいてくれたようだ。

いやあ、どんな戦いになるのか楽しみだなぁ……!

 

 

「あ、あのジミナのパーティだ。」

 

ラオフェンはパーティ内の中でいち早くその存在に気が付き、彼らがいる遠くの方を指さした。彼女はパーティ内で最も若い、視力を要する民族の出身等の理由から最も視力が良い。

 

「ん?そうなのか。儂はもう年だから目が悪くてな。」

「……ジミナって誰だ?」

 

リヒターはジミナという名前が記憶に引っかからなかった。

 

「ほら、説明の直前に申し込もうとしてたとにかく弱そうな人。あんな弱そうな人は初めて見たから印象に残ってるよ。」

「……そうなのか。確かに騒ぎがあったことは覚えているが、俺は興味なかったから見ていないな。商売をしていると、まあ妙な人間なんていくらでも湧いて出てくるからいちいち気に留めなくなる。」

「儂はすこし見たが……何というか、試験以前の脅威にすら耐えられそうにないような男だった。覇気のないつまらん人間なんてのはいくらでも見てきたが、あの男はその中でも筋金入りだ。おそらく30歳程度であろうが、その間の人生で何の目標もなくダラダラ生きていたような風貌といった感じだったな。」

「……あの人自分のことを18って言ってたよ?」

「な、なんと……青春を生きる若者があの風貌?い、いくら何でもそれは……」

「……たまに、年齢に対して実績を出せなかったことを恥じて、自分の年齢を過少申告する人間を見たことがある。そういう心理なんじゃないか?」

「……うむ。その方が納得できる話だな。ラオフェンも……大丈夫だとは思うが、そういうつまらん人間にならんように日々を精一杯生きるんじゃぞ。」

「…………な、なんかすごく生々しい話だね。将来がちょっと怖くなってきた。まあ、彼には悪いけれどああいう感じには私もなりたく無いね。」

「なあ、そのジミナって男は、一応5級試験はパスしてんだろう?上から下までダメな人間なんてことは無いと思うんだが。」

「あーそれね。なんか対応してた受付の人が言ってた話なんだけど、その試験、ジミナはなぜかめちゃくちゃ高級な杖や魔道具を使った上で、ギリギリの成績で合格したんだって。」

「なんだそれ。結局その装備のお陰ってことじゃないか。まるで彼を擁護できる材料が無いぞ。」

「……ま、まあ、その高級な魔道具を扱うことができる魔法技術を持っていることは証明されただろう。試験官もそのことは考慮して合格を渡すはずだ。」

「それは5級じゃなくて9級魔法使いの必要技能だけどな。」

「それにしても、あのジミナと組まされる2人は不幸だね。モチベーションダダ下がり間違いなしだよ。うーん、見たところ、今三人で隕鉄鳥を探しながら歩いているのかな?……うん、ジミナ、見た感じ真面目に探してない。やる気すらないパーティメンバーとか、二人にとってはホントいい迷惑だろうね。」

「………………ラオフェン。ジミナのパーティは今3人で、ジミナ以外は隕鉄鳥を探しながら行動しているのか?」

 

デンケンは何かに興味をひかれているような声を出した。

 

「?そうだよ。」

 

それを聞くと、デンケンは10秒ほど考えたのちに、

 

「念のためそのパーティを軽く偵察するぞ。」

 

と言った。リヒターはその意図に気が付きすんなり了承したが、ラオフェンは理由が分からなかった。

 

「え、なんで?」

「ラオフェン。仮にお前がジミナのパーティに入れられた場合、どうする。」

「えー……まあ、一緒になっちゃったものはしょうがないから、とりあえず頑張るだけ頑張る。……まあジミナを戦力扱いは難しいだろうから、実質2人で頑張ることになるんだろうけれどね。」

「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である……という言葉を聞いたことは無いか?無能な味方というものは、かえって邪魔になるというものだ。数が多ければいいというわけではない。儂がジミナのパーティに入れられたら……力を隠していたとか言う場合はともかく、見た目の通りの弱さならばどこかに隠れてもらう。拘束してでもな。連携の取れない味方など同士討ちの危険があるからだ。仮に何もせずに大人しくついてきてもらうだけだとしても、彼は自衛できるかも怪しい。つまり、パーティの残りの二人に守ってもらわない限りは、他のパーティに殺される可能性がある。そうなれば、ジミナのパーティは全員失格となり、ライバルが減るというわけだ。」

「あー、なるほど……あり得る話だね。うわ、そう考えるとジミナが見た目通りの弱さならますます残りの二人が可哀そうになってきた。」

「それでだ。お前が見た限り、ジミナのパーティの残り二人は隕鉄鳥を探しながら、3人で歩いているのだろう?」

「うん、そう見える。……あれ?ジミナを守っていないんだね?」

「そこだ。しかも、ジミナが探していないのに、残りの二人はそれを咎めている様子もないのだな?おそらく何かあるぞ。」

「なるほどねえ。」

 

デンケンのパーティは、気配を消しながらジミナのパーティに近づいて行った。

 

「見えてきたな。……うわ、あれがジミナ・セーネンか。ラオフェンがあんなにボロクソに言う理由が分かったぜ。放出魔力量からしても明らかに素人に毛が生えた程度だ。」

「改めてみても常軌を逸した覇気の無さだね。見た目通りの弱さなら私の出身の部族に居たら部族の恥で白い目で見られてるよ。」

「残り二人は……魔力量だけ見れば受験者の中では下の上か下の中くらいの実力だ。あの二人も、奇襲でもされなければ俺達の敵じゃないな。……おや?」

 

リヒターは少し目を見開いた。

 

「リヒターも気が付いたか。奴らは今魔法を発動している。」

「……なんでだろう?何もない所で使うなんて魔力の無駄でしかないはずだけれど。」

「よく見ろ。奴らはアレを持っていないだろう?」

「うん?……あ、籠を持ってない!じゃあ、魔法で籠を隠しているってことなの?」

「もしかしてあいつら、隕鉄鳥を捕まえたのか?どうやったんだ……?」

「その可能性が高いな。近くで見て分かったが、あの探している様子も演技だ。……それにしても馬鹿な行動だ。魔力の揺らぎからして、奴らは隠蔽魔法に長けているわけでもなさそうだ。このような真剣勝負の場で慣れないことをするべきではなかろうに。」

「……じゃあデンケン。奴らを襲撃して隕鉄鳥を奪うということで決まりなんだな?」

「ああ。ラオフェンとリヒターは潜伏しながら奴らの背後に回り込め。儂は正面から攻撃して注意を引く。」

「うん。分かったよ。」

「分かった。」

 

そうして、3人は分かれた。デンケンは、彼らの動向に注意しつつ一般攻撃魔法で3人を攻撃した。

 

(ジミナ以外の二人は……まあ普通といったところだな。防御魔法の展開速度から見て、特殊な状況でもない限りは脅威とならないと見た。ジミナは……ん?防御魔法自体展開していないぞ?……ま、まさか二人が守ってくれるからと自分は何もしていなかったのか?それとも防御魔法自体使えない程に弱いとでもいうのか?馬鹿な。……いや本当に馬鹿だ。あまりにも弱くて逆に気を取られる手合いだ。)

 

そして、自分を捕捉されたことを感じ取ったデンケンは、一応罠を警戒しつつ彼らに近付いて行った。

 

(……やはり魔法で籠を隠しておるな。目論見通りの相手ならば、この段階で隕鉄鳥を確保することができる。大きなアドバンテージだ。……上手くいけばだが。)

 

デンケンは、隕鉄鳥をすんなり奪えそうなこの幸運な状況に対し、逆に不安を覚え始めていた。現状、相手が罠を仕掛けている痕跡や、隠し玉を持っている様子が見られないために、この状況が上手くいかなくなる根拠は何も見つけられていないのだが。

 

そうしてデンケンは、ジミナのパーティの前に立った。ジミナは相変わらず弱そうで、他二人はデンケンのことを知っているのか、杖を向けてはいるが明らかに尻込みしている。

 

「下手な芝居なんぞ無意味だ。隕鉄鳥を魔法で隠しているだろう?悪いが渡してもらうぞ。」




湖はまだ凍ってません。
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