ヴィアベルバトル後のフェルンパーティです。
フェルン、ユーベル、ラントのパーティは、戦闘を終え他のパーティから隠れながら森の中を歩いていた。
「ねーねー、もっと教えてよ。シャドウと会ったときのこと。」
「またその話ですか……もう一通り話しましたよ。」
フェルンはこの一次試験中、ユーベルからシャドウと会ったときの話をたびたびせがまれうんざりしていた。
「もっと知りたいな~。信じられないような魔法ばかりなんだもの。」
「わ、私としても正直あんなことができる存在がいるのには驚きましたが……正直結構迷惑な存在です。何考えてるのかさっぱり分からなくて、対処が難しいので。」
「じゃあ私が一緒に、シャドウのセリフの意味を考えてあげるよ。ほらほら、最初に会ったときの会話を思い出して。」
「もうかなり忘れてしまいましたよ……ラント様。ユーベル様に何か言ってくださいよ。このままだと、ユーベル様はずっとこのままな気がします。」
フェルンは、理知的な性格に見えるラントに助けを求めた。
「……まあ、迷惑してるのは理解する。……ただ正直、僕としてもその話は興味があるな。」
「ら、ラント様まで!?裏切られました……」
「いや裏切ってはないだろ。……でもほら。数か月前の、あの莫大な魔力の光。君、あれを間近で見たんだろ?その話は興味があるな。」
「……どうしてですか?」
「あの光の柱、僕の故郷からでも見えたんだ。しばらくの間は、地元では天変地異や厄災の前触れとかで大騒ぎになってね。僕も最初は、あれは地震や噴火みたいな魔力の自然災害かと思った。でも、その後で大陸魔法協会の人が来て、シャドウという個人によって放たれた魔法だって説明されたときは本当に驚いたよ。……神話にある荒唐無稽な魔法は、ああいうものなんだろうな。」
シャドウの放った
ちなみに、ラントの地元であったような噂話の収束の為に、大陸魔法協会の所属者はしばらくの間ブラック労働を強いられたという別の話もある。
「……まあ、そうですよね。でも今まで話した通りで、仕組み自体は単純ですよ。大量の魔力を極限まで圧縮し、常時爆発させ続けることで魔力を連鎖的に増幅し続ける魔法です。」
「……本当に元は圧縮しただけなのか?……いや、すまん。こんなこと聞かれても困るだろうが、どうにも信じられなくてな。」
「だよね~。生きたスライムを服や武器にしているとか、体内で魔力の圧縮と爆発を繰り返して増幅しているとか。まるで自分が死ぬことよりも強くなることの方が大事みたい。」
「改めて口にされると、本当に荒唐無稽だ。少し失敗しただけで即死するはずなんだがな。何か魔法術式で安全装置を用意したりしていたのか?」
「うーん……そう言った様子はなかったですね。」
「う~ん、何を目指した結果の強さなんだろうね、それは。」
「そうですね……ある種求道者に近い雰囲気はありましたから、ひたすら上を追い求めた結果ああなっただけでしょうか?」
「いやー、それだけじゃないと思うなあ。世界にあんな系統の強さを持つ人、歴史上多分いなかったよね。」
「……というと?」
「つまり、魔法はイメージの世界。イメージ出来ない魔法は行使できない。でも、聞いた話じゃシャドウという男は、その馬鹿みたいに精密かつ大胆なコントロールが必要な戦闘用魔法を、実戦レベルでやってのけている。つまりシャドウは、そんなことをする存在や、そうしないと対抗できない敵をすでに知っているってことだよね。」
「……あそこまでやらないと倒せない敵。……ゼーリエ大魔法使い以外思いつかないな。」
「でも、そのゼーリエ様本人は全く心当たりがないと言っていると聞きます。」
「ゼーリエに知られないまま修行を重ね生きてきたという可能性もあるが……それも違和感がある話だな。あれほどの実力を持った存在が今まで知られていなかったというのが、本当に不可解だ。まるでこの世界に突然現れたかのようだ。」
「……それ、あり得そうだね。ナイスアイデアだよメガネ君。」
「半分冗談だぞ。そんなことを認めだしたら、世の中の謎なんでもかんでもそれで片付けるつもりか?」
「え~?夢が無いなあ、メガネ君。」
「……でも、直感的にはそれでもあまり違和感がありませんね。再現しようとしてみると、本当になんでこんなことをやろうとしたのか全く分かりません。」
フェルンがそう言うと、ユーベルが目の色を変えてフェルンを見た。
「待って。再現しようとしているってほんと?」
「え、ええ。再現できれば大きな力になるということで、フリーレン様と協力して時々試行錯誤しています。」
「……君も大概だな。仕組みを聞く限り、一歩間違えれば爆発事故を起こすんじゃないか?」
「ええ、そこを何とかしようというところが今のところの課題で、とりあえず魔法術式による補助をたくさんして、威力をあれの千分の一に設定することでやっとなんとか安全にできる、という感じです。」
「え?再現できるの?」
ユーベルは、フェルンの顔に一歩近づいて質問した。
「……まあ、本当に小規模な再現ですけれど。」
「本当に!?見たい。見せて!」
「……え、ここでですか?」
「もちろん。」
「いや、だめですよ。」
「えーなんで?」
「試験中じゃないですか。他の受験者に私たちの居場所がバレたらどうするんですか。」
「大丈夫だよ。もう私達魔法使ったもん。近くに他の、私たちを襲う気があるパーティがいるなら、さっきヴィアベルたちと戦った後に私たちに奇襲をかけてる。」
「……いや、でも……」
「やってくれたら、試験後におやつのドーナツ一週間分買ってあげる。」
「……」
「さらにその間、夕食後に私がパフェをご馳走してあげる。」
「ユーベル、彼女は流石におやつなんかでつられる歳じゃないだろ。」
「……………………仕方ないですね。」
「えっ」
「目立たないように、試験区域の端に移動しますよ。」
「おいおい、試験中だぞ?本気か?」
そう言いながらフェルンのパーティは目立たないように試験区域の端にやってきた。
「じゃあ、一度だけですよ。ユーベルさん、約束は絶対守ってくださいね。」
「もちろん。」
「じゃあ、これから魔法の準備をするので、私から放出される魔法を隠蔽するようにしてください。それと、私の周囲を警戒し続けて、私に攻撃魔法が飛んできたときには必ず防御魔法をお願いします。」
「いや、そんなことがあれば、そもそも魔法の発動を中止してよ。」
「すみません、無理です。私はこれから、本当に、本当に集中しなければなりません。3分くらいはあの魔法以外は使えなくなると思ってください。」
「おっけー。任せて。」
「……大丈夫かな。」
ラントは不安になりながらも、ユーベルとともに周囲の警戒に当たる。幸い、魔力探知した限りでは他のパーティは近くにはいないようだった。
フェルンは目を閉じて集中を始める。杖は、試験区域を囲む大結界に向けられていた。大量の魔法陣が展開され、それぞれが高速で回転を始める。杖先に、大量の魔力が少しづつ蓄積し始める。それは、
その蓄積されていく魔力を、ラントとユーベルは感じ取った。
「おお、すごいねー!私はこんなに大量の魔力を扱ったことなんて今までなかったよ。」
「……これで『本当に小規模』なのか。恐ろしい魔法だな……」
そうして3分が経過し、ついに魔力の蓄積が終わる。フェルンは杖を掲げ、その日なぜかはっきりと聞こえた魔法の名前を口にした。
「……
直後、フェルンの杖先からとてつもなく圧縮された魔力の柱が放たれ、結界に注がれた。まるで、魔力の固形物のように感じられる魔力の光。進路上の物体を、その魔法で強制的に書き換えるような、理外のエネルギー。大結界に阻まれて止められる部分が見えなければ、その魔法は魔力の塊というよりも、それ自体が莫大な魔力を放つ円柱状の物体のように感じられるものだった。
10秒ほど、その魔法は照射された。
「はぁ、はぁ……ユーベル様。これで良いですか?」
「うんうんすごかったよ!なるほどこんな感じなんだね!いや~本当に魔力が連鎖的に増幅されていたよ!」
「……こ、これがあの日、あの規模で放たれたのか……。シャドウは一体何者なんだ……。」
ユーベルとラントがその魔法の威力に驚いた。無論様々なお膳立てがあって今の魔法が行使できるのだが、何をどうやっても射線上の物体が必ず消滅してしまうであろうという確信は、大きなインパクトを与えるものなのであった。
「さあ、ここから離れようか。他のパーティが今のを感知した可能性がある。まったく、なんでこんなリスクのある行動を僕は許したんだ……」
「メガネ君、頭が固いよ。良いもの見れたじゃん。」
「確かに貴重なものが見れたが……どうしたんだ?」
ラントは、自分たちについてこないフェルンに向かってそう言った。
「……あの、あれ……」
ラントとユーベルは、フェルンが見ていた方向を見た。そこにはゼーリエが張った、いかなる物体も、魔法も通さないと言われる大結界があった。
しかし目を凝らすと、ラントは信じられないものを発見した。罅だ。その罅は少しづつ大きくなっていた。
「……いや、まさか。ゼーリエ大魔法使いの張った結界だぞ?」
「ふふふ……世の中に絶対なんて無いんだよ、メガネ君。えいっ。」
「あっ、おい!」
ユーベルは、興味をひかれたのかはたまた面白半分か、その罅に向かって石を投げた。
そして、ガラスの割れるような音を立てて、石は結界を貫通した。
大結界に空いた小さな穴。そのひび割れは少しづつ拡大していき、やがて結界全体を崩壊させた。結界に阻まれた雨が、彼らを打ち始める。
「今日はツイてるね!面白い出来事の連続だよ!」
ユーベルははしゃいでいたが、フェルンは焦っていた。
「……あの、これ、大丈夫でしょうか?」
「…………結界の外に出ることは失格行為だが、結界を破壊する行為が失格とは言われていなかったはずだから大丈夫だ。」
そういうことを聞きたいんじゃないんだろうなと内心思いつつ、ラントは答えた。フェルンパーティは、気まずくなったかのようにその場を離れた。
◇
試験官である一級魔法使いのゲナウとゼンゼは、試験区域内の見晴らしのいい高台でティータイムをしていた。
あるとき、ゼンゼが言った。
「ゲナウ。結界を攻撃している奴がいる。」
「問題ない。あり得ないことだ、天地がひっくり返っても。」
「いや、もう破られる。」
「は?」
ゼンゼがそう言った直後、ゲナウは結界の一部から罅が広がっていくのを視認した。さらに広がっていき、最終的に結界は崩壊した。
罅の発生源の思われる場所にいた紫髪の魔法使いを確認し、ゲナウは驚いた。
「……彼女は、確かフェルン3級魔法使いか。確か一般攻撃魔法を主体に戦う魔法使いだと記憶しているが、それでどうやって結界を……いや、あれは別の魔法か?使われた魔力が大きすぎる。」
「聞いた話だが、彼女は最近私達を過労死寸前まで追い込んだ例の忌まわしい魔法を再現しようとしていた様子が見られるという。それを撃ったんだろう。」
「
一級魔法使いのゲナウやゼンゼから見ても、
「縮小版のようだが、あの魔力と破壊力を個人で運用できるのか。本当に頭のおかしい魔法だ。考案者は星でも破壊するつもりなのか?」
「ゼーリエ様は喜びそうだな。たしか、フェルンはフリーレンの弟子で、フリーレンはフランメの弟子。だから、フェルンはゼーリエの曾孫弟子、になるのか。そんな彼女が自分の作った結界を打ち破ったんだから、なかなか愉快なことになりそうだな。」
「……俺の仕事が増えなければ何でもいい。」
ゲナウは、ここ最近までの忙しい毎日の再来はやめてくれと切に願うのだった。
◇
「いえーーーい!!!雨最高!!!」
フリーレンパーティのカンネは、
「うわ、明らかに調子に乗ってる。」
「今が好機!フリーレンもいるし、ここで他の隕鉄鳥を捕まえたパーティに仕掛けようよ!」
そして偶然にも、彼女たちは隕鉄鳥を見つけたパーティを発見していた。
「フリーレンもいいよね?」
「あ、うんまあ……。あのパーティなら3人でかかればなんとかなると思う。」
消極的に同意しながら、フリーレンは興奮状態のカンネに着いて行く。
パーティ単位で見れば、カンネとラヴィーネにとって有利な状況となる雨というのは歓迎するべきなのであるが、フリーレンとしては素直に喜べないのであった。
(……一つだけ魔力の無い水たまりを作って、そこに隕鉄鳥をおびき寄せるつもりだったんだけど、全部おじゃんになっちゃったな。……まあ、雨の中ならカンネとラヴィーネが強いだろうし、私がある程度サポートすれば大丈夫か。)
勝手に結界を破壊したフェルンを後で問いただそうと思いつつ、フリーレンはカンネ達について行くのだった。
・カクになる魔法
変換間違いではない。フリーレン世界に核はないので。
正直に言いますと、ここから先の展開を思いついていません。まともに小説書くの初めてなんで、プロットとかほとんど用意してないでここまで来たんですが、とうとうネタ切れが発生してしまいました。本当にどんな展開にすれば面白いんだろう……
ユーベルとラントが本誌で登場中なのもあって、ここから先の更新は時間がかかる可能性大です。思い付き次第書く、みたいな感じです。
ただ書きたい欲自体はあるので、外伝的というか、別の小説を出そうという気持ちになっています。(同じく陰実×フリーレン的なのを)