暇だ。
「クッ……北方向にヴィアベルのパーティがいる。向こうはどうだ?ピタリヨ。」
「ダメね。西方向にも誰か……なんか魔力放出がすごいあのエルフがいるわ。でも、東方向なら大丈夫そうよ!」
「……なあ、おい。俺の感知では東方向にも誰かが」
「ええいしつこい!信じられっかよ!行くぞ!」
さっきからこいつら、全力で逃げ隠れしている。お陰で全然他のパーティとエンカウントできない。しかも誘導しようとしても、ジミナとしての能力を信用してもらってないせいで全然乗ってくれない。これ以上に強引に他の@パーティに引き合わせようとしたら、多分僕がわざとそうしていることがバレちゃうだろうな……。この2人にバレないように他のパーティを突っついてみたりもしたけど、少し僕らの方をうかがった後に無視されてしまう。それもそのはずで、僕たちは隕鉄鳥を隠しているからだ。つまり、「なんか攻撃された気がするけど隕鉄鳥を持ってないなら無視だ無視!」ってこと。ええい君たち、魔法使いとしての矜持は無いのか!?試験に通過さえできればいいなんてレベルで満足しないでくれよ!……はあ、まあ仕方ない。モブならそんなもんか。
「いやあ、それにしてもあの水の魔法使いが暴れてくれているおかげで助かったぜ。」
「……力に任せて暴れているだけだぞ?ああいうのは魔法使いとして……あまりクレバーではない気がするが。」
今、この地には雨が降っていて、どこかのパーティの魔法使いがその雨水を使って大暴れしてる。目についた他パーティの魔法使いを片っ端から「ヒャッハー!!!」しながら攻撃してる感じだ。見た感じ水があるところでは最強みたいな感じなんだろうね。他のパーティはその魔法使いの動向に常に気を使わないといけなくなって、それ以外への警戒がおろそかになっているから、我らがモブパーティも今まで逃げおおせているというわけだ。
さっきまではこの場にはバリアっぽい魔法が張られてて、雨が中に入って来なかったんだけど、僕の
……まあそれはともかく。目下問題なのはこの暇過ぎる状況だ。あと2時間もしないうちに試験終わっちゃうよ。バトルができたのあのおっさんのパーティの時だけで、あとはちょっと魔物を追い払ったりしたくらいだ。いやほんとどうしよう。
「クレバーとかどうでもいい。あと一時間とちょっとで俺たちは試験突破だ。ジミナも、あの水の魔法使いが他の魔法使いの注意を引き付けてくれて嬉しいだろ?」
全然うれしくないんですけど。もっと注目が欲しいんですけど。
「正直1次すらダメだと思ってたけど……これは本当に千載一遇のチャンスよ!どんなに不格好でも、ルール内で生き残れば私達の勝ちよ、ジミナ!」
いや僕にとってはかなり『負け』なんだけどなあ!君たちにとっては1次を生き残るだけでも十分すごいってのはさっき聞いたけどさあ!
「よし……向こうのパーティには今回も気づかれなかったわね……いい調子。このままいけば一次試験はとブハッ!?」
……お?
「い、一般攻撃魔法だと!?しかし東方向には何もなかったはず……はっ、まさか潜伏か!?」
ピタリヨは攻撃により気絶させられ、シケーニは東方向を警戒している。多分潜伏していたパーティが攻撃を仕掛けたんだろう。
おお、ついにバルトチャンスか?と心躍らせつつ、僕は冷静に陰の実力者としてのセリフを口にする。
「……言ったはずだぞ。東方向にも誰かがいると。」
「~~~っ!!!あ゛あ゛そうかよ!せっかくのご忠告を無下にして大変申し訳ありませんでしたねえ!!!あと今余裕ぶっこくのやめろ!今3対2でピンチなんだぞ!」
「……な、なんじゃ。仲の悪いパーティじゃのう。」
潜伏していたパーティが姿を現した。髭のおっさん、ハゲのおっさん、若い女の人のパーティだ。男二人はまあまあくらいで……女の人は、なんか腕っぷしが弱そうだな。絡め手メインの匂いがプンプンする。
「……まあ、悪く思わないでくれ。俺達も試験に受かりたいんでな。拘束させてもらう。それに命まで取るつもりはない。」
「お、俺たちを捕まえても良いことなんかねえよ!隕鉄鳥を捕まえてないんだからな!本当だぞ!」
「それが本当かどうかをこれから確かめるんだ。別にお前たちが隕鉄鳥を持っていると思って襲ったんじゃないぞ?幸運なことに、潜伏してたらお前たちが気付かずにこっちに来てくれただけだ。」
「はあああ!?ふ、不幸だあああ!!!」
いやあ、僕がこのパーティで隕鉄鳥を捕まえた時点で十分幸運だと思うけどねえ。
まあそんなこんなで、向こうのおっさん二人がシケーニに攻撃を開始した。僕にも警戒はしてるけど、弱者判定されてるから「まずは一方を集中攻撃して数を減らすぞ!」作戦をしてるのか、攻撃はしてこない。
「おいジミナ!なにボーっと突っ立ってるんだよ!何でもいいから援護してくれよ!」
「ずっと言っているだろう。俺一人で十分だ。俺からすれば、お前は不相応の役割を勝手に請け負って消耗しているだけだ。攻撃の隙をついて俺の後ろに下がれ。」
「あああああそうですか!お前に協調性を期待した俺がバカだったよ!チクショー!!!」
勿論シケーニは従わない。まあ、実際のところはさっさと君たちには気絶なりしてもらって、僕は1対3でのバトルで実力を見せつけつつ勝利したいからなんだけどね。……あと全然バトルしてくれなかった君たちへのイライラも正直ちょっとある。まあこの1次試験には通過させてあげる予定だからそれで許してほしい。
そういうわけで、しばらく静観していると、シケーニは次第に押されていき、ついには
「グアア……ジミナァ、覚えてろよ……!」
とか言いながら気絶させられてしまった。
「……気絶させた2人は持っていませんね。魔法がかけられた様子もありません。」
髭のおっさんが、ピタリヨとシケーニを見ながらそう言った。戦いながら分析してた感じかな?
「で、残るは……この、確かジミナとかいう奴か?まあこんな弱そうなやつに隕鉄鳥を預けたりするはずもないが……」
「……ブライ。見た目で判断するでない。」
女の人がこちらを睨みながらそう言った。おお、僕の隠している何かに気付いている様子。やっぱりこの人は頭脳派キャラか?
「……まあ、そういう話は分かりますがね。試験開始前の話は聞いたでしょう?さすがにあの事実を聞いたうえでコイツが強いとか考えるのは流石に……」
「ある。」
「……と、言うと?」
「2人とも……儂の精神魔法には、多少なりとも信頼がある……かのう?」
「ええ、まあ。エーデルさん以上の精神魔法使いは知りませんよ。」
なるほど……混乱とか魅了とかの状態異常をかけるタイプの魔法使いなのか。
「感謝するぞ。……それで、さっきの攻防の間儂はずっとジミナを解析しておったのじゃが。」
「ああ……なんで攻撃しないと思っていたらそんなことをしてたんですか。」
「うむ……まず、あやつは隠蔽か何かの魔法を行使しているようじゃ。」
「……隕鉄鳥、持ってるってことですか?」
「おそらくな。そしてもう一つ。奴には感情の乱れがない。」
「……めちゃめちゃ落ち着いているってことですか。確かに先ほどから全く動揺が見て取れませんね。」
「……どんくさくすぎて何も考えてないだけでは……?」
「ええい奴を侮るのもいい加減にせんかい。心の内にも全くそういう様子が無かったんじゃ。ずっと魔法で分析していたから間違いない。お前たち二人があの男を倒したときも全く乱れる様子が無かったのじゃ。……つまり、この状況を奴は全くピンチと見なしていない。」
「……なにか隠していると考えるべきということですか。」
「そうじゃ。というわけでお前たち、打ち合わせ通りに頼むぞ。」
女の人がそう言うと、おっさん二人が一般攻撃魔法を僕に打ち始めた。僕は適当に防御しつつ、様子をうかがう。話からして何か仕掛けるつもりのようだけど……
……おお!女の人が、攻撃に紛れて僕にコッソリ近付いてきてるぞ!手には魔力が感じられる。つまり、おっさん2人の攻撃に紛れて彼女が状態異常攻撃を僕にかける、みたいな感じかな?近づいているということは、触れることが発動条件なのか。
僕は気づいていないフリをしながら、その場に立ち続けた。あと数秒もしたら彼女は僕に触れるだろう。まあここで僕が彼女を吹っ飛ばすなり、高速移動することで対処することは簡単だけど……僕はあえて受けてみることにした。理由は、彼女がそれ以外の攻撃方法に長けていなさそうだったからだ。そうじゃなきゃ、コッソリ近づく必要なんてないしね。彼女がせっかく僕に対して得意分野で勝負しに来ているんだから、それに真正面から対抗しなければ、実力者とは言えないだろう。
「……取った!」
ついに彼女が僕に触れた。お、おお!なんか僕の頭に魔力が流れてくる!さあ一体どんな攻撃を仕掛けてくるんだい!?
……
…………
あ、あれ?彼女が動かない。表情は……なんか唖然としている。ど、どうしたんだろう?明らかに想定外の何かが起こったって顔をしている。うーん……僕、今は爆発と圧縮による魔力増幅は控えめにしているから、魔力状況を感じ取られてもそんなに驚かれないと思う。いったいどういう魔法なのだろうか……
◇
儂の名はエーデル。儂らのパーティは、いまだに隕鉄鳥をとらえられておれん。しかも今、なんかやばい魔法でここを包んでいた結界が割られたことで雨水が入って来、それにより水を操る魔法使いが大暴れしておる。あそこまで派手に暴れられたら、絶対ここの隕鉄鳥全部逃げだしたじゃろう、これ。はっきり言ってピンチじゃ。
正直ダメもとで、不意を突いてどこかのパーティから奪えないかと潜伏し続けておったが、まさか襲撃の機会が本当にめぐってくるとは。しかもあのジミナのパーティとはのう。たしかあのジミナ・セーネンは、試験前にちょっとした騒ぎを起こして話題になった男。「俺はお前より強い」と宣いながら、ヴィアベル隊長に反撃も出来ずにボコボコにされ、「俺の魔法は、こんなところで見せるほど安くはない」とか宣った男じゃ。……喜劇か何かかのう?
「……言ったはずだぞ。東方向にも誰かがいると。」
「~~~っ!!!あ゛あ゛そうかよ!せっかくのご忠告を無下にして大変申し訳ありませんでしたねえ!!!あと今余裕ぶっこくのやめろ!今3対2でピンチなんだぞ!」
不意打ちで一人片付けたことを確認して、あやつらに近付く。……なんか喧嘩しておるの。忠告をしたのになぜ聞き入れなかったのかで揉めておる。つまりもう一方の男は、ジミナに信頼がない。本当に弱いのじゃろうか……。そんなんでよくここまで棄権せずに残っておれたな。ドゥンストとブライも呆れ顔じゃ。
「……な、なんじゃ。仲の悪いパーティじゃのう。」
そう声をかけて、あやつらがこちらを向く。……ジミナ・セーネン。少なくとも表面上からは強さが全く読み取れない。もう一人は……まあ普通じゃのう。ドゥンストとブライでかかれば確実に倒せるじゃろう。
とりあえず、向こうに投降の意思がなさそうじゃったので、ドゥンストとブライにまずジミナではない方の男を攻撃してもらった。まあなかなかやるようじゃが、2対1には厳しいようで、次第に二人が押していく。……なぜかジミナは何もしない。本当になんなんじゃろうか、こやつは。
さてその間、儂はジミナの方を悟られないように気を付けつつ解析する。儂の得意分野は精神魔法。他の肉弾戦などの分野は正直できないが、この分野にかけては一級魔法使いに引けを取らないと自負しておる。相手に接触すれば記憶を読み取ることなども可能じゃ。
さて今、儂はジミナの感情を読み取っている。……なんというか、弱そう過ぎて逆に怪しいのじゃよ、こやつ。そして、その疑惑は確信に変わった。ジミナは、まったく緊張をしていない、平常心であったのじゃ。もう一人のパーティメンバーが倒されても。大抵の人間は、多かれ少なかれ仲間がやられたら動揺するはずじゃ。それが無いとなると……まあ、こやつの頭がおかしい可能性も0とは言わんが、この状況は奴にとって全く危機ではない、ということなのじゃろう。実力を隠しているか、何か奥の手があるのか……。
ともかく。見た目通りの弱者と判断するのは時期尚早じゃろう。
……あ、精神状況とは別に、こやつ隠蔽魔法を行使しておるな。隕鉄鳥を持っている、と考えるべきじゃろう。
ドゥンストとブライにこのことを説明して、
「そうじゃ。というわけでお前たち、打ち合わせ通りに頼むぞ。」
事前に打ち合わせた作戦を実行することになった。まあとは言っても、ドゥンストとブライが攻撃している間に、儂が潜伏しながら近づいて接触し記憶を読み取って、弱点や有効な攻撃を知る、というシンプルなものじゃ。儂もその場から動いていないかのように見せかける幻影の魔法など、いろいろ小細工はしてるがの。人の記憶を勝手に読み取るのは礼儀がなっておらんことじゃが……儂らだって試験には受かりたい。この試験はそもそも殺しが許されている故、この程度の倫理の無さはお目こぼし願う。
まあ儂、眼を合わせれば命令させられる魔法も使えるんじゃが……ジミナは髪がぼさぼさで、前髪に隠れて目元があんまり見えんのじゃよな。……そんなんだと印象悪いぞ?ジミナとやら。せめて清潔感くらい出したらどうなんじゃ?
まあそれはともかく、ドゥンストとブライの攻撃でジミナが倒れればそれでよし、そうならなかった場合は儂が記憶を読み取るという段取りじゃ。そしてジミナは、まったく危なげなくドゥンストとブライの攻撃を捌いておった。やはり、弱者ではないな?こやつは。5級魔法使いらしいが、この二人の同時攻撃を捌く時点で2級魔法使い並の実力があると見るべきじゃな。
しかし、儂が近づいていることには気が付いていない様子じゃった。潜伏しつつ、読み取るための魔法の準備をしながらジミナに近付いていく。
あと3m、2m、1m……!
「……取った!」
よし!接触に成功じゃ!さっそく記おk……????????????????????????????????????????????????????????????????
(゚Д ゚)???????????????
とりあえず一次試験は終わらせたい