魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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お前ら、笑うでない!儂は過酷な詠唱をしなければならないのじゃ!

「まず……お前は、目線を合わせるだけで相手に何かしらの魔法をかけられるだろう?」

 

これは、さっきから彼女の魔力を観察して確信を得たことだ。時々目に魔力を集中させている。でも、普通の魔法使いなら発動を気づかせないレベルだった。

 

「へ?あ、ま、まあ……」

「ならば……その魔法と共に歩むこと、それは茨の道であったはずだ。俺には分かる。」

「…………」

「お前はそれを……『魔眼』と、そう呼んだのだろう?」

「……は?」

 

目を合わせることで、対象に魔法をかける。この世界ではありそうで割とない魔法だ。話では聞いたこともないことは無い、程度。多分、彼女は魔法の修行をするときは、それはもう目にいろいろしたのだろう。

しかし諸君、眼だ。眼だぞ?こんな魔法を使えるなら、僕なら手で方陣とか作りながら『我が呪われし魔眼、第一段階解放……!』とか言いながら魔法を発動するの、絶対やる。……うおお!考えただけでカッコいい!今度僕も練習しようかな?

まあとにかく。そんな感じで、彼女は……見た目成人っぽいけれど、子供の頃でも、思春期でも、少しはそういうことに凝ったことがあるはずなんだ!魔法の訓練なら、魔法陣による補助とかで目の周りに魔法陣とかやりそうだよね?そういうのに惹かれることは、大人になって夢を諦める前に、絶対少しはあるはずなんだ。

……だけれど、現実は非情だ。本当に実行すると大抵、バカにされる。おそらく、そのような眼に関する修行をしていると、多かれ少なかれ、

 

「うわっどうしたのその派手すぎるメイク!?……え?魔法の為に必要?そ、そう。でも私達と一緒に居るときは止めて欲しいな……」

「いい年して何やってんだ……?ああいうのをお転婆って呼ぶのか?」

「うはwwwww魔眼からwwwwww魔法、マジでやるのかwwwwwワロスwwwwww」

 

……なんてことを言われたことがあるはずだ。本人は真面目にカッコいいと思ってやっているのに。……おっと、ちょっと私情が出ちゃったな。まあそんな感じで、彼女は目による魔法が嫌いになってしまったのではないだろうか。そうなら、彼女が「目を合わせることでかけられる魔法」なんて強力な魔法をを使ってこなかったことにも、眼を使わない魔法が僕に通用しなかったというだけで逃げ出そうとした理由にも、筋が通る。つまり、今の彼女は、もう僕に通用する有効な魔法が無いと思い込んでいるのだ。

さて、そんな彼女を前に、僕は何をすべきなのか?それは。

 

「使うがいい……その、『魔眼』を。何も恥じることは無い。」

 

そう、「心の壁を壊し真の力を取り戻させる系陰の実力者」だ!

圧倒的実力を見せながらも、その堂々とした行いにより偏見や恐れがいかに無意味なものであるかを気付かせる。そして戦いの後、それまで自分の魔法に対し卑屈であった彼女は、自信をもって『魔眼』を使うようになるのであった。これが、今回のシナリオだ。

さて、今エーデルさんは……ドゥンストさんとブライさんと何やら目線を送りあっている。うーん、まだ僕のメッセージを理解できていないのか、それとも心理的抵抗が高くて「私の『魔眼』を使うなんてとんでもない!」と思っているのか。

 

ならば、僕が行動で示してやろう。

 

「我が杖よ、オーダーを下す。嘲笑も、常識も、全て飲み下したる花を咲かせよ。諧謔の詔は、今ここに結実する。」

 

詠唱はロマン優先で長くして、特に意味はないけど意味深な魔法陣を大量に展開する。ボサボサの長い髪(カツラ)を魔力で浮き上がらせて目を軽く光らせ、ついでに杖の周りに特に意味はない大量に魔力を出す。さらについでにこれが他のパーティに感知されないための魔法も展開する。魔力を無駄に消費するのはあんまり好きじゃないけど、今回は一見地味だがスタイリッシュな魔法はグッと我慢。

そして、器用に杖を3本指で持ち、片方の腕を無駄に上げながら、魔法を放つ。

 

「識るが良い。『あの頃の記憶が故の魔法』!」

 

……ま、一般攻撃魔法をエフェクトマシマシにしただけの魔法なんだけどね。威力は強めだ。

その結果……うん、3人がかりで防御魔法を貼ったみたいで、それがちょうど僕の魔法を相殺したみたいだ。

 

「な、なんだ今の魔法は……!?全く聞いたことのない魔法だ!」

 

ドゥンストさんが知らない魔法だと警戒しているけれど、ここまで仰々しくやれば、エーデルさんなら僕の真意に気付いてくれるはず。中二病は、決して恥ずべきことじゃないと。

しかしエーデルさんは……うーん、今尻もちから起き上がっているところなんだけど、何が何やらという顔だ。

 

「え?な、なんじゃ今の魔法は……?」

 

そっちまでドゥンストさんみたいなことを言わないでほしかったなあ!シナリオがなかなか進まないよお!焦りを感じた僕は、少しだけ挑発的な言動をした。

 

「この程度で全力防御とは……一級魔法使いを目指しているとは思えない体たらくだ。そもそもやる気が無いのか?」

「好き勝手言いやがって……」

「事実だろう。エーデル、お前は目を合わせることで対象に魔法をかけられる魔法を使えるのに、使わなかった。受かる気が感じ取れん。」

「はあ?何言ってんだ……エーデルの本気はそんなもんじゃない。お前もさっき感じtモゴッ!」

 

……またエーデルさんがアッパーして黙らせた。意外と肉体派なんだな。

 

「あー、あー!うむ!おぬしのことを、な、舐めてなどおらんぞ!先ほどの……混乱魔法が最も強力だったのは本当じゃ。」

「だが……それ以外を用いないというのも滑稽だ。何故他の魔法を使わなかった?」

「え?いや、だって儂、物理的な攻撃魔法は得意じゃないし、目を合わせる魔法はどうせせいk」

「それだ……なぜ、決めつける。何故卑屈になる。お前自身の力を……出しきらずに打倒せるほど、俺が弱く見えるのか?」

「ん?え、うん?あ、いや、えーと……わ、儂の……プライベートに、口を挟むでない!儂のその魔法は……訳あって、この状況下では効き目が薄いのじゃ。先ほどの魔法の方がまだ勝算があるというものじゃわい。」

 

多少どもりながらも、エーデルさんはそう誤魔化した。この反応……やっぱり、エーデルさんは眼を使った魔法に心理的抵抗があるんだ。

先ほどの魔法の方が強いって言ってたけど……そういえば、結局あれ何で僕に効かなかったんだろうな?まあその点ちょっと怖いけど、ここはエーデルさんにあの接触式の魔法は通用しないことを分かってもらおう。

 

僕は一撃攻撃魔法を彼らに放ちひるませた後、一気に接近し、エーデルさんと手を合わせた。

 

「ククク……どうした?お得意の魔法を使ってみたらどうなんだ?」

「なっ!?い、いつの間に……え?なんじゃこれは?……は、はあああああああああ!?」

 

う、うおう。突然大声を出された。そんなにビックリすることだったのか?まあとにかく、さっきと同じ魔法を使われた感覚があったし、これでもう接触式の魔法が無意味だということは分かってくれただろう。僕は手を放し、バックステップでエーデルさんたちと少し距離を取った。……結局、なんでこの魔法僕に効かないんだろうなぁ?僕はこういった精神魔法に対しても強くなりたいから戦っているのに、原因不明じゃ無駄足なんだよなあ。

 

さて……エ、エーデルさん?なんかうつむいたまますごくわなわなしている。漫画的表現をすると、目元が暗くなってるアレだ。そんなに通用しなかったのがショックだったのか?この人、おとなしそうに見えるけど結構感情豊かなんだなあ。

 

「……………………こ、この、これを、儂に、やれと……?」

 

躊躇いがやたら強いけど、とりあえず『魔眼』を使えというメッセージは受け取ってくれたみたいだ。さあエーデルさん。君の『魔眼』の魔法は、なにも忌むべきところなんてない。僕に全力でぶっ放して来るんだ!

 

「……こ、く、」

 

おお、なんか眼に魔力が集まりだしたぞ!カッコいい魔法陣的なのが周囲に現れ、眼の周囲の皮膚には紋様が浮かび上がっている。おおお、かっこいいぞ、エーデルさん。今こそ心の殻を破るんだ、エーデルさん!

 

「く……黒より黒く闇より暗き漆黒に我が魔法の混淆を望みたもう。 覚醒のとき来たれり。 無謬の境界に落ちし理性。 無行の歪みとなりて現出せよ! 踊れ踊れ踊れ、 我が力の奔流に望むは発狂なり。 並ぶ者なき狂気なり。 万象等しく無為に帰し、 無垢より来たれ! これが人類原初の心象風景、 これこそが究極の精神魔法、精神を完全に破壊する魔法(デンフェリゲツェアシュテンク)!」

 

ついにエーデルさんは、僕に向かって魔法を放った。……なんかどっかで聞いたことある詠唱だなぁ。どこだっけ?

まあ、ともあれ。ついに僕に向かって魔法を放ったエーデルさん。カッコいいエフェクトマシマシの素晴らしい中二病っぷりだ。防御のために全身に魔力を巡らせつつ受けてみると……うおおおおお!脳や神経にダイレクトに攻撃してくるのを感じる!今まで僕が受けてきた精神魔法の中でも最強クラスだ!さっきの接触式の魔法よりも全然威力があるぞ!

 

……でも、残念ながらこれでやられてあげるわけにはいかない。僕にもプライドというものがある。僕の苦手分野の第一人者の全力魔法攻撃、僕は効率的な対処ができず、少しの間膝を突いて動けなくなってしまった。あの魔法には物理的な攻撃力も相応にあったらしく、周囲の土が巻き上げられていた。それが収まろうかという時、僕はゆらりと立ち上がった。

 

「な……!?」

「なんだと!?」

「バカな!?なぜあれを食らって動けている!?」

 

テンプレ通り「これを受けて立っているだと!?」反応も貰って僕はもう満足だ。ここでエーデルさんは多分もう通用する手がなくなってしまったと思うが、ネームドキャラならば負けん気を発揮して「それでも私は……!」って立ち上がるところ!

 

「……はー、も、もう無r……」

 

……んん?なんかすんごい疲れてる?ネームドキャラじゃなくて労働に疲れた終電のおっさんみたいになってないか?

 

「……っ!あ、えー、ま、まだじゃ、儂の魔法はまだ……!」

 

おお、光に満ちた目だ。なんだ、僕の勘違いだったのか。

 

さて、ここからの展開だけど……まあ僕はもう一通りやりたいことは出来たし満足だ。適当なことを言いながら去ろうかな……あ。この人たち、まだ隕鉄鳥をGETしてないんだった。うーん、せっかく一皮むけたネームドキャラなんだし、このまま次の試験にも進めさせてあげたいが……。

……お!向こうにモブ度の高いパーティーがいる!遠巻きに僕たちを見ているな。しかも隕鉄鳥持ってる!やった、ラッキー!

 

「今のお前ならば……この第一次試験を突破できるだろう。」

 

僕はそう言って、そのモブパーティに軽く攻撃する。エーデルさんたちもそのモブパーティに気が付いたみたいだ。注意を僕からそのモブパーティに向けた。

 

「……ではな。」

 

そう言って、僕はエーデルさんたちに背を向け歩き出した。つまり僕はここで退場だ。後でエーデルさんは、「あの時のジミナは儂の能力を……!?」とでも振り返ってくれることだろう。……おお。早速さっきの『魔眼』らしき魔法を使ってくれているのが感じ取れる。気合の入った叫び声も聞こえるぞ。これなら隕鉄鳥は確実に奪えることだろう。

さて、僕たちはこれで第一次試験は終わりかな。……おっと、気絶してるシケーニとピタリヨを連れていかないと。モブ度の高い2人のことはついつい忘れてしまいそうになる。危ない危ない。

 

 

「お前は……自分の魔法が嫌いなのか?」

 

…………????????

 

普通に愛着があるのじゃが。儂の一族は精神魔法を売りにしているからの。儂も何年も修行をしてきた身じゃ。相応に誇りというものがある。

 

「まず……お前は、目線を合わせるだけで相手に何かしらの魔法をかけられるだろう?」

 

……なぜ知られておるんじゃ。儂はジミナの観察にしか魔法を使っていないはず……ま、まさかそれを感知されたのかの……?

 

「へ?あ、ま、まあ……」

 

……驚いて、驚くほど素直な回答をしてしまった。いかん、もっと慎重な回答を心がけねば……

 

「ならば……その魔法と共に歩むこと、それは茨の道であったはずだ。俺には分かる。」

 

い、いや、どうしてそうなるんじゃ?確かに人並以上には魔法の修練を重ねたつもりじゃが……

 

「お前はそれを……『魔眼』と、そう呼んだのだろう?」

「……は?」

 

マガン?……もしかして『魔眼』かの?確かに儂の目から放たれる魔法を故として、儂の目をそう呼ぶ者も……片手で数えられる程度にはいた。……でも肉眼では何もわからん魔法じゃぞ。そのように仰々しく呼ばれるものではない。

 

「使うがいい……その、『魔眼』を。何も恥じることは無い。」

 

何も恥じとらんぞ?おぬしのボサボサの前髪のせいで効果が薄くなりそうであったから使わなかっただけじゃ。…………いかん、嫌な予感がする。儂は今、このジミナの考えることを何も理解できておらん。元よりこやつは異世界(?)から来た存在である……以上に、『陰の実力者』とやらに人生の全てを賭ける狂人。おそらく儂が考えもつかないような勘違いが発生したに違いない。このすれ違った状態のまま会話を続けていたら……何が起こるか分からん。記憶を見る限りは、こやつはある程度自らの実力を見せつけたところで満足して去るつもりのようじゃったから、適当に「うわー、なんて強さじゃー。おぬしは一体何者なのじゃー。」とか言ってやり過ごそうと考えていたのじゃが……。

……なんとかしてもう一度接触して記憶を読み取り、ジミナの考えていることを読み取りたいところじゃが、一度あの魔法を見せた以上、そう簡単には近付けさせてはくれんじゃろう。

と、悩んでおると、ジミナがつを上げ……なぜか器用に3本の指で妙なポーズを取りながら詠唱か何かを始めた。

 

「我が杖よ、オーダーを下す。嘲笑も、常識も、全て飲み下したる花を咲かせよ。諧謔の詔は、今ここに結実する。」

 

……な、なんじゃ!?凄まじい数の魔法陣と魔力!?儂は咄嗟に全力で防御魔法を展開した。ドゥンストとブライも同様。つ、ついに儂らを消し去る気か!?

 

「識るが良い。『あの頃の記憶が故の魔法』!」

 

ジミナの杖から攻撃魔法が放たれた。威力は非常に高く、防御魔法に全力で集中する。……うん?この魔法、多少のアレンジはあれど、普通の一般攻撃魔法じゃな。無論威力が非常に高いが……。でもこれだと、先ほどの大量の魔法陣や、魔力の奔流は不要なはずじゃが……?

防御魔法が崩されるギリギリでジミナの攻撃は終わった。

 

「え?な、なんじゃ今の魔法は……?」

 

つい儂はそう口走った。『あの頃の記憶が故の魔法』ってなんじゃ?おそらくジミナが生み出した魔法じゃが……効果が全くわからぬ。ただの一般攻撃魔法とは思えんが……。

 

「な、なんだ今の魔法は……!?全く聞いたことのない魔法だ!」

 

ドゥンストとブライも同様のようじゃな。……まあ当然の反応じゃろう。あれほど仰々しく魔法陣を展開した結果が、強力なだけの一般攻撃魔法だったのじゃったから。

 

「この程度で全力防御とは……一級魔法使いを目指しているとは思えない体たらくだ。そもそもやる気が無いのか?」

 

挑発のようじゃが……何か焦っておらんか?やはり先ほどの魔法で何かを察してほしいということじゃったのか?……こやつのある種頭が空想に浸っているような発想からの思考が、儂に推測できる訳ないじゃろう……。

 

「好き勝手言いやがって……」

「事実だろう。エーデル、お前は目を合わせることで対象に魔法をかけられる魔法を使えるのに、使わなかった。受かる気が感じ取れん。」

 

……儂の眼からの魔法を使ってほしいということなのか?な、なぜじゃ。使ってもどうせすぐ抵抗されて解除されるというのに……。

 

「はあ?何言ってんだ……エーデルの本気はそんなもんじゃない。お前もさっき感じtモゴッ!」

「あー、あー!」

 

ええい余計なことを言うでない!特に記憶を読み取る魔法のことは!……何度も殴りつけていることは申し訳なく思っておる。後で謝っておかねば……。

……とにかく、ジミナは、儂が眼による魔法を使わないことをひどく訝しんでおるようじゃ。

 

「うむ!おぬしのことを、な、舐めてなどおらんぞ!先ほどの……混乱魔法が最も強力だったのは本当じゃ。」

「だが……それ以外を用いないというのも滑稽だ。何故他の魔法を使わなかった?」

 

なぜそれほど執着するのじゃ……考えが読めな過ぎてひどく混乱してしまう。

 

「え?いや、だって儂、物理的な攻撃魔法は得意じゃないし、目を合わせる魔法はどうせせいk」

「それだ……なぜ、決めつける。何故卑屈になる。お前自身の力を……出しきらずに打倒せるほど、俺が弱く見えるのか?」

「ん?え、うん?あ、いや、えーと……」

 

……つまり、ジミナの中で、儂が眼による魔法を使うことに引け目を持っていることは決定事項のようじゃ。何故なのかさっぱりわからんが。……変に否定して話を拗らせたくもない。ここはそういうことにしておいて、話を進めるしかあるまい。

 

「わ、儂の……プライベートに、口を挟むでない!儂のその魔法は……訳あって、この状況下では効き目が薄いのじゃ。先ほどの魔法の方がまだ勝算があるというものじゃわい。」

 

そういうと、ジミナはしばらく黙り込んだ。……不気味じゃ。力を持った個人が何を考えておるのか分からんと言うのは、こうも恐ろしいのか。

しかし沈黙に耐え切れず、儂はジミナから目を離し、ドゥンストとブライの様子をうかがった。2人とも訳の分からないという顔をしておる。……その瞬間。

 

「なっ!?い、いつの間に!?」

 

あの瞬間移動じみた移動で、突然儂の前に現れおった。こ、今度はどんな攻撃じゃ!?

 

「ククク……どうした?お得意の魔法を使ってみたらどうなんだ?」

 

……なんじゃ?儂と手を合わせておるのじゃが。なんだかよくわからんが、好都合。記憶を読んでこやつの意図を……

 

「……え?なんじゃこれは?」

 

ええと、まず今のこやつの頭の中にあるのは『中二病』という概念で、これが何かというと……

……???!?!?!?

 

「は、はあああああああああ!?」

 

『中二病』とは、少年少女がする特異な行為を指す言葉らしい。……いや、まあ、年頃の少年少女というものは、多感じゃ。儂も……恥ずかしいが、覚えがある。こっぱずかしい手紙を書いたり、「私は芸術の道を歩む!」と、無茶な宣言を突然したり。

しかし、このジミナの考えているような奇っ怪なことを口走ったり、魔法関係なしに紋様を作り出したりなどはせんわい!おぬしの世界は何なんじゃ。娯楽が多すぎる!なぜポンポン作品の情報が出てくるのじゃ!え……なんじゃ?情報社会?いや……全然わからんぞ。社会形態がこの世界と違いすぎる。

それで……『眼』に関する話は『中二病』によくあるもので、儂がそれに関する魔法を使えるはずなのに使えないから、儂が『中二病』を発症したときのことを恥じて使わないでいると?それで、「ここはエーデルさんが過去のしがらみを乗り越えて、『魔眼』で有効なダメージを与える場面だ!」じゃと?いやいや、そんなこと言われてもどうしようも……。というか、あの長ったらしい詠唱や魔法陣は特に意味がある訳ではなかったのか。改めて思い返してみると酒に酔った魔法使いが悪ふざけで宣うような詩じゃったな、あの内容は。

……しかし、ジミナは儂が「過去を乗り越え『魔眼』を使った」と、そう判断したなら、そこで自分の役割は終わりだとして退く、という心づもりらしい。お、おお!退いてくれるのか……!

え、あ、いや、でもちょっと待つのじゃ。となると……

 

「……………………こ、この、これを、儂に、やれと……?」

 

儂、こやつの頭の中にあるこっぱずかしいセリフとか、無駄に装飾の凝った紋様を再現しなければならんのか?い、嫌じゃ。ものすごく恥ずかしい。酒の席ならばまだいいが、このような緊張するべき場所で大真面目に実行したら変な噂を立てられるに決まっておる。ドゥンストとブライもおるのに。

……あ、いつの間にかジミナが距離を取っておった。もう2度と記憶を読み取ることはできないと考えるべきじゃろう。……いや、儂、どうすれば良いのじゃ?他にこやつを退かせる方法はないものか?…………まったく、思い浮かばない。ジミナは、人生をかけて『陰の実力者』になっている男。今ジミナは、この場で『陰の実力者』としての行動を全うするために全力じゃ。そして、儂らにその全力を打ち破るだけの力は……ない。……なんじゃろうか、そう考えると、謎の敗北感が込み上げてくる。これが「僕を応援してくれた家族のためにも、ここは退けない!」という感じならばまだ納得できるのじゃが……『陰の実力者』とは本当になんなんじゃ?男子がよく言う「カッコいい存在」ではあるらしいが……うう、よくわからん。とにかくこのようなふざけた信念に敗北するなど……ああ、いや、本人は決してふざけてなどおらず、多大な努力によりあそこまでの高みへ上りつめていることは本当に称賛に値することなのじゃが…………ううううう!なんというか、上手く表現できぬが、とにかく、ものすごく、納得いかんのじゃ!ああもう、なぜこんな奴に消耗させられねばならんのじゃあああああ!!!

 

(……つん)

 

ひっ!……あ、ブライに杖でつつかれた。い、いかんいかん。考え事に集中しすぎた。

……ええい、このまま燻っていても、おそらく状況は好転せん。儂の評判より命が大事。腹をくくるのじゃ!

 

「……こ、く、」

 

……「中二病っぽい詠唱」ってどんなものじゃ?この世界に存在しないから何を言えばよいのか……そうじゃ、こやつの記憶にあったアニメ?のなかに、それらしいものがあったな。これを使うのが良いかの。記憶を読み取ったことがバレないように内容を改変して……ううう、なんじゃこれは、恥ずかしい。……と、とにかく後のことなど考えてはいかん。今この場を凌ぐことを最優先にしなければ。

とにかく、儂は無駄に魔法陣を展開して眼の周囲に魔力で紋様(特に意味はない)を描きながら、言った。

 

「く……黒より黒く闇より暗き漆黒に我が魔法の混淆を望みたもう。 覚醒のとき来たれり。 無謬の境界に落ちし理性。 無行の歪みとなりて現出せよ! 踊れ踊れ踊れ、 我が力の奔流に望むは発狂なり。 並ぶ者なき狂気なり。 万象等しく無為に帰し、 無垢より来たれ! これが人類原初の心象風景、 これこそが究極の精神魔法、精神を完全に破壊する魔法(デンフェリゲツェアシュテンク)!」

 

……

…………

……あああああああああ!恥ずかしい!なんじゃ!なんでこのようなことを儂が言わねばならんのじゃ!

儂は時々、積極性が足らんとか、もっと大胆になれといわれることがある。多少奥手なところは自覚しており、儂自身改善したいと思っていた事実はある。……し、しかしじゃ。いくら何でも落差がひどすぎる!儂にも、えーと、ジミナの世界でいうキャラというものがある。明るいとは言えん儂が突然このようなことを口走れば……絶対にひと月は茶化される!変な噂間違いなしじゃ!

ドゥンスト、ブライ、その目はなんじゃ!変なものを見る目をするでない!二人とも、試験後にこのことをおちょくりながら話したら許さぬぞ!儂のこの負担を肩代わりできぬくせに「何故エーデルはこの試験の場で突然ふざけたことを……?」などと思っているのではあるまいな!?あああもう、顎を殴りつけたことの謝罪は取り消しじゃ!

 

儂は、羞恥で荒れ狂う心のままに、眼を合わせることによる服従の魔法を放った。「跪け!加えてもう人前に出ず一生魔族と魔物だけ狩っていろ!」と。その瞬間、魔力が膨れ上がり、ジミナに魔法が衝撃のようなものを伴って襲い掛かる。……この魔法、物理的影響がない魔法のはずなのじゃが?直感じゃが、服従の効力も段違いだった気がする。今までの人生の中で最高威力であった。……もしかして、儂自身の感情に呼応しての現象……?いや、二度とやらぬぞ、儂は。

……しかし、この威力なら、ジミナも流石に動けないはず……!?

 

「な……!?」

「なんだと!?」

「バカな!?なぜあれを食らって動けている!?」

 

う、嘘じゃろ……ジミナが立ち上がってしまった。うう、純粋な魔力量の差で押し切られたようじゃな……腐っても今魔法協会を騒がせている男というわけか……。

 

「……はー、も、もう無r……」

 

もう疲れたのじゃ……記憶の読み取りに先ほどの大威力の魔法。もう魔力が殆ど残っておらぬ。儂の方が倒れそうじゃ。もう付き合いきれん……

と思いつつ、ジミナを見てみると、何やら怪訝な顔をしている。はっ、いかん!ジミナの中では『ネームドキャラ』とやらは、ここで不屈の意思を見せるものらしいのじゃった。ここで儂が本当はこのような茶番から一刻も早く脱したいなどと思っていると判断されれば、今までの努力は全て水の泡じゃ!

 

「……っ!あ、えー、ま、まだじゃ、儂の魔法はまだ……!」

 

そう言うと、ジミナの表情が戻った。良かった……。

……しかし、ここからどうすればいいのじゃ。もうあと魔法を一回打てるかどうかしか魔力が残っておらん。もう、ジミナの考える『ネームドキャラ』を演じ切れる自信はない。

するとジミナは、

 

「今のお前ならば……この第一次試験を突破できるだろう。」

 

と言って、攻撃魔法を明後日の方向に発射した。……うん?その攻撃先に遠巻きに観察していたと思しきパーティがいた。……しかも隕鉄鳥を持っておる。でもそれは正直どうでもよいからこの場を脱することを……

……うん?なにか話しておるな。なんじゃ……?

 

「うわ、危なかったな。とっさに防御魔法を貼れてよかった。」

「まあ大丈夫でしょう。あの女の人は魔力がほとんど残ってないし。」

「しっかし、さっきの魔法の前に言っていたアレは何だったんだろうな?」

「『覚醒のとき来たれり 』とか言っていたわよね。……なんか変わってるかしら?」

「いや、特に変なところは……」

「なんか酔った魔法使いが言いそうなことだよね。」

「『万象等しく無為に帰し』って……万象と出るなんて、見た目に寄らず傲慢なところがある人なのかもしれませんね。」

「『 人類原初の心象風景』……w」

「『究極の精神魔法』(笑)」

 

……

………………

…………ああああああああああ!いっそ殺してくれええええええ!!!

 

「う、うお!こっちに来たぞ!!!なんだ!?魔力が跳ねあがって!?」

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が魔法の混淆を望みたもう! 覚醒のとき来たれり!無謬の境界に落ちし理性!無行の歪みとなりて現出せよ! 踊れ踊れ踊れ、 我が力の奔流に望むは発狂なり! 並ぶ者なき狂気なり!万象等しく無為に帰し、 無垢より来たれ! これが人類原初の心象風景、 これこそが究極の精神魔法、精神を完全に破壊する魔法(デンフェリゲツェアシュテンク)跪け!そして笑うなああああああ!!!!!




一次試験終わりぃ!

・詠唱
フリーレンの世界に詠唱の概念あるのかな……

・手を合わせる
アニメ版のエリザベート戦の時の距離くらい接近していた。

・魔眼
エーデルの『魔眼』魔法は、エーデルの精神を犠牲に協力になったとさ。

もう語る機会がないのでここに書きますが、エーデルは試験中はジミナの正体について口外するつもりはありません。下手に周りに話してバレたらどうなるか予測がつかず、刺激したくないからです。全ての試験が終わったら、コッソリ魔法協会に報告するつもりのようです。
それと、感想欄に「エーデルが記憶を読み取ったことがシドにバレたら殺されるのでは」というのがちらほらありましたが、これについての筆者の解釈は今後少しだけ出す話の予定なので、ここでは伏せさせていただきます。とりあえず、エーデルが記憶を呼んだことがシドにバレる展開になる予定はありません。そもそもシド君他人に興味ないから、いちいち敵キャラのことを調べたりしないからね。この場でバレなかったので、相当な偶然が無い限りは今後もバレないと思います。
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