魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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もっと治安が悪い所にしておくべきだった……

そんなこんなで、ジミナ・セーネンとしての第一次試験は終わった。シケーニとピタリヨは結局試験終了まで気絶から回復せず、僕は2人を抱えながら一次試験の合格と、2次試験の説明を聞くこととなった。

それにしても、その時の周りのぼくを見る目は本当に満足できるものだった。何せ、試験前に見たボコボコにされるだけの明らかな雑魚が、気絶した2人を抱えながら試験を突破したんだからね。試験官のゲナウさんが僕のパーティを呼ぶときにめちゃめちゃ不審な目で僕を見ていた。他のパーティの人々は大きく分けて2種類の反応をしていて、僕が戦ったパーティを除くと「は?なんでお前らが受かってるんだ?不正しただろ?」的な視線と、「コイツ……弱そうに見えて実は強者なのでは?」という視線だった。実力のある魔法使い程後者が多い印象かな。よしよし、ジミナのイメージ作りは順調だ。

さて僕は、シケーニとピタリヨを協会の人たちに引き渡して退散した。帰り際に「あ、あの……ちょっと待っていただけますか?」って言われたけど無視だ。普通にボロが出かねないしね。角を曲がって見えなくなったところで、僕は超スピードでその場を離れた。今頃、その辺を探して「あれ……?確かにここを曲がったはずなのにな?」と思いながら僕を探すという、実にテンプレな光景が繰り広げられていることだろう。

 

この後、2次試験まではジミナモードではなく、シドとしてこの町に滞在する予定だ。理由は、他の参加者が僕の話をしていないかを観れるかもしれないから。他の参加者が僕のことをどう考えているかを把握したいのは当然だ。実際、そう都合よく僕の話をしているところに出くわすなんてなかなか無いと思うけど、まあいわゆるワンチャンを狙ってって感じだ。

……と、そのとき。

 

「……こんなところにおったのか、ジミナ・セーネン。」

 

後ろから声をかけられて振り返ってみると……ジミナとして最初の方に戦った、確かデンケンっていう名前のおっさんがいた。

 

「……まあそう警戒しないでくれ……いや、実際今お前は警戒しているのか?相変わらず覇気が感じられん風体だな。」

「……喧嘩を売っているのか?」

「い、いや。流石に今のを煽りだと思うのならば鏡を見た方が良いぞ。本当に。」

 

……なんか普通に忠告されちゃったな。このジミナ・セーネンのコンセプトは「全てを捨て、力だけを追い求める系実力者」だ。だから身だしなみとかは超無頓着。パッと見は浮浪者に近いようにした。だから、このような純粋な忠告に対して、僕がすべき回答は。

 

「……この恰好のことか?これ以上良くする理由は無い。」

 

こんな感じで、「魔法のこと以外はカケラも興味を持てません」アピールだ。

 

「え?はぁ……まあいい。ひとまず置いておこう。儂はお前に言うべきことがあってな。」

 

うーん、冷たい反応。僕の用意したジミナのバックボーンはまだ感じ取られていないみたいだ。まあ、さすがにこの短い時間では無理か。

 

「言うべきこと?」

「ああ、まず……儂はお前の実力を見誤っておった。」

「……気にすることは無い。よくあることだ。」

「そして……お前の実力は本当に目を見張るものだった。お前はどうせ知らないのだろうが……これでも儂は宮廷魔法使いをしている2級魔法使いだ。パーティメンバーのラオフェンとリヒターも確かな腕を持った魔法使いだ。」

「……そうだな。」

「その、儂ら3人を同時に相手取りあそこまで翻弄するなど……。一級魔法使いではない儂がいうのもなんだが、試験に居たあの大魔法使いフリーレンに匹敵する実力の持ち主ではと思っている。流石にフリーレンは知っておるな?魔王を倒したパーティにいた魔法使いのことだ。」

「フリーレン……話は知っているが、それだけだ。」

「……それだけなのか……。そしてお前のような若造があのフリーレンに届くなど……。まさに驚嘆に値するべき実力といえるだろう。」

「……ふん。」

「そして、お前のような実力の持ち主が今まで無名であったなど、信じられん。他の参加者に少し聞いてみたのだが、ジミナ・セーネンのことを知っている者は皆無だった。お前は……何者だ?なぜそれほどの実力を欲した?」

 

多分ジミナ君は、人知れず各地を転々としてひたすら修行してたと思うから、そういう質問に対しては適当に誤魔化すのがベターだろう。

 

「どうしてだったか……きっかけは覚えてないな。気が付いたら、ひたすらに高みを目指していた。」

「言う気が無いか。……まあいい。それは本題ではない。」

 

……え、本題じゃないの?てっきり「お前は一体何者なんだー!?」とか、「その力をいったいどこで手に入れた!?」って問い詰められるパターンだと思ってたんだけど。

 

「ジミナ・セーネン……もう人の世界で生きる気が無いのだろう?」

 

お、おおお!デンケンさん、よくぞ僕の用意したバックボーンを感じ取ってくれた!そうそう、僕、ジミナ・セーネンは魔法の探求以外に興味が無い修行僧のような存在で、人の華やかな世界に一抹の心残りを見せつつも目標の為にすべてを捨て去った系のクールな男なのだよ、デンケンさん!

 

「その気持ちは……儂もある程度は分かるつもりだ。儂は青かったころ……いや、今でも青いかもしれんな。ともかく、儂が宮廷に入った当初は、そこにはびこる不正や不合理に腹を立てたものだ。お前が嫌いであろう、人間関係に起因する無駄の数々がそこにはあった。人事は実力よりも好感度や派閥が優先され、会議の決定は根回しによって決まる……まあ、今でも不愉快ではあるな。」

 

……あれ?なんでこの人過去語りを突然始めたんだ?今そういう流れじゃなかったよね?政治の世界の話も関係ないはずだけど……

 

「だが……しばらくそこに居るうちに、儂は……悟ったのだ。人同士の関わり合いが、どうあがいても、最も重要なのだ。……たとえどれほど実力を持っていても、だ。」

 

……ん?んんん???

 

「まあ、お前には権力に屈した、誇りの無いジジイの戯言に聞こえるかもしれん。だがもう少し耳を傾けて欲しい。儂と同時期に宮廷入りをした魔法使いがいてな。彼は……儂よりもずっと実力のある魔法使いだった。入った当初は、彼は確実に出世するだろうと言われておった。当時の儂も……その実力に嫉妬しつつ、彼が権力を手にするべきだと思っていた。宮廷魔法使いの実力は国防に直結するからな。魔法使いとしての実力が最優先であるというのは、自然な発想だろう。」

 

「……それが俺に何の関係がある。」

 

いやホントに何の関係があるのデンケンさん?ジミナ君は政治家になりたいわけじゃないんだけど?

 

「まあもう少し辛抱してくれ。で、その彼はしかし……権力を手にすることなく、最終的には宮廷を追い出されてしまったのだ。彼には、足りないものがあった。話の流れで察しているだろうが……彼は人心を掌握することが不得手、いや、そもそも人心の重要性を理解していなかったのだ。彼はその実力を疎む者たちにのけ者にされた。無論彼はそうならないようにと努力はしていた。が、それは魔法使いとしての実力を高めるというものばかりで……人同士のつながりをどうこうしようということには無頓着だった。」

 

……え?もしかして、それ、僕?

 

「実力が最重要のはずの宮廷魔法使いの世界でさえ、こうなのだ。自分で言うのもおかしいかもしれんが、その彼から学び、人心というものに気を使ってきた儂は、まあ、宮廷の中でもそこそこ上手くやってこれたと自負しておる。ジミナ・セーネン。お前は宮廷魔法使いになるつもりはおそらくないのだろうが……しかしお前がどこに行くにしても、そこが人の世である限り、人の心というものはどうしてもついて回ってくるものだ。一度戦ってみて感じたが、お前は一見すると本当に堕落した若者だが、しかしそのうちには何か目指しているものがある。そうだろう?そうでなければ、それほどの実力を手にできるほどまで鍛錬をすることなどできないだろうからな。それが何かは、言いたくはないのだろう。それはまあいい。しかしだ。はっきり言ってお前は……儂の話した彼以上に、人というものに対して労力を割かなすぎだ。むしろ、それに割くエネルギーすらを魔法の鍛錬に充てたことにことに誇りすら持っているように見える。だがそのままではいずれ……彼のように迫害され、人の世から追放されてしまうかもしれん。ジミナ。お前には類を見ないほどの才能がある。彼を超えるかもしれない程の……。そして、それを生かすための努力を、誰よりもしているのかもしれん。しかし、その魔法の為に費やしている努力を、少しばかり人に向けてみる気はないか?このままでは、お前は何も悪いことをしてなくても、無駄に敵を増やしてしまうかもしれん。お前とて、それは嫌だろう?」

 

……この人、ジミナ君に向かってマジ説教してるよ!それもブチギレとかじゃなくてマジで心配してるパターン!え、何この人、なんでこの見るからに普通の生活をする気がなさそうな人にわざわざそんな忠告してくるんだ。え、このデンケンさんが本当に人が良いだけ?マジで?政治に関わってる人とか損得最優先で動く偏見持っていたよ、僕。

どうしよう。このままじゃジミナ君が「全てを捨てでも力を追い求めた愚か者」じゃなくて「魔法使いとしての実力以外に価値を認めない青臭いガキ」になっちゃう!くそ、こんなところで陰の実力者としての試練が訪れるとは……。

……よし。第一作戦発動!

 

「人の世?フッ……俺には、明るすぎた世界だ。」

 

俺だってやろうとしたけどできなかったんですよアピール!ジミナ君は人というものを諦めてでもやらなければならなかった哀愁を匂わせるのだ!決して、人間関係を軽視してたわけじゃないんですよデンケンさん!

 

「……そうか。……ならば、儂の知り合いを一人紹介しよう。魔法使いとしての実力があれば、そのほかのことはあまりに気に留めない、ガサツで寛容なやつだ。話が合うかもしれん。」

 

う、うわー!!!この人「友達を作ってあげよう」をしてきたよ!マジでジミナ君に肩入れしてるんだな。そ、そんなに親切にされたらめっちゃ断りにくいんだけど。えーと、第二作戦発動!

 

「そうか……しかし、すまないな。俺には、約束がある。それを果たすまでは……その手は取れない。」

 

いやーすいませんね、申し出はありがたいんですけどこっちに自分以外も関わる事情があるんですよアピール!ジミナ君は、決して、人間関係など無駄だと考えてるガキじゃないんですよデンケンさん!

 

「……だが、それは少なくとも実力が無ければ成し得ないことなのだろう?なぜそれを全て自分の力でやらねばならない?今のままで、その約束とやらは、本当に果たせるのか?例えばあのフリーレン達と敵対したら……いくらお前の実力でも、相当に面倒なことになるぞ?実力でも、それ以外でも。」

 

え、えーと。多分今デンケンさんは僕の態度を、『約束』を達成するためにはむしろ悪い方向になっているという話をしていて、でも設定ではジミナ君は『約束』の都合上それはできないという話で……

……あれ?『約束』って具体的になんだっけ?え、えーと確か語句がでっち上げたもので?……あ、頭がこんがらがってきた。どうしよう。このまま話しても多分こじれるか、最悪「あれ?このジミナ・セーネンはそもそもまともに話す気があるのか?」疑惑を持たれてしまう!何とかしないと……。

……あ、そうだ!ここは、アレをやってうやむやにしよう!

 

「フリーレンと敵対して、困る?ククク……」

「……何がおかしい?」

 

僕は、手甲を一つ外して、デンケンさんの目の前に持っていく。

 

「これは、俺を封じる鎖。」

 

そしてそれを地面に堕とす。どしんという、およそ手甲とは思えない思い音とともに、地面にめり込んだ。

 

「遊びは終わりだ。」

 

デンケンさんは、驚愕に染まった顔で、その手甲を観察した。

 

「こ、これは……何という重さだ。しかも、封魔鉱で作られている!?試験中にこれをつけて行動していたというのか……!?」

 

そんな感じでデンケンさんが気を取られている間に、僕は全力で気配を消しつつその場を去った。

しばらくした後にシドモードでその場に戻ってみたら、見失って探していたデンケンさんがいたので、多分大丈夫だろう。

あ、危なかった……。治安が良い所に居る人がジミナを見ると、忠告するという行動をとることは、事前に想定できなかったな……。うーむ、これは僕のミスだ。試験前の時も、受ける暴力が想定以下だったしなあ。次にジミナ君をするときは、もっと治安が悪い所でやることとしよう。

 

 

そんなアクシデントもあったけど、おおむねジミナ君の評判は想定通りだった。参加者は、

 

「あのジミナが第一次を突破?いや絶対不正だろ?」

「でも俺は見たぞ。ジミナ・セーネンが一般攻撃魔法を打ちつつとんでもないスピードで移動する様を。」

「はあ?でもそれじゃ、奴は一級魔法使いに匹敵するということに……」

 

みたいな感じで話していて、僕は聞いている間口元がニヤニヤしっぱなしだった。

特にシケーニとピタリヨの反応は面白かったな。この二人とデンケンさんのパーティが集まって食事をしている場面を偶然見つけたんだけど、

 

「……というわけで、ジミナ・セーネンはものすごい実力の持ち主だったというわけだ。」

「な、なんだってー!それほどの大立ち回りを俺達二人に悟らせずに完遂したジミナ・セーネンは一体何者なんだー!?」

「いやあ、本当になんなんだろうねあれ……」

 

なんて会話を聞けたときは、本当に今までの苦労が報われた気分だったね。

 

そんなこんなで、次は第二次試験か。一体どんな試験なんだろうなあ。

 




・デンケン
レルネンと同じ末路をたどるのではと心配している。


次から2次試験ですが、内容が3割くらいしか決まってないのでまた遅れそうな気がします、ごめんッピ。あと作者が影の地に行っているから

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