なんかここまで来ちゃったらもうとっとと試験終わらせるまで頑張りたいね。
高評価、感想、誤字報告ありがとうございます。
「第二次試験はダンジョン攻略だ。君たちには零落の王墓の攻略を行ってもらう。合格条件はただ一つ。零落の王墓の最深部まで辿り着くことだ。」
へー、ダンジョン攻略かあ。案内された場所に来た時から思っていたけど、いかにもって感じの場所だなあ。横にいたおっさんの話によると、今までの冒険者の中で帰ってきた者はいないんだって。いやー、中にどんな強力なモンスターがいるのか楽しみだなあ。ガーゴイルとかミミックとかいるのかな?ボスはドラゴンとか、ゴーレムとか、あとサンドワームってのもありがちだよね。……あ、ゴーレムは今渡された。緊急脱出用だって。
でもまあ、さすがにあのゼーリエくらい強力な魔物はいないと思うから、中にいるモンスターは大体何とかなるだろう。万が一いたらまあ、その時考えよう。試しに魔力探知をしてみると……おお、フリーレンレベルの魔力反応があるぞ。さすが今まで冒険者を帰さなかったダンジョンだ。楽しみだなあ……!
デンケンさんが協力すべきとか言うのを後目に、僕はそそくさと中に入っていった。さて、このダンジョン攻略という場において、僕は陰の実力者として、どう行動するべきかに頭を働かせ始める。
ケース1: 第二次試験に挑む受験者たち。ダンジョン内の数多の強力な敵たちに悪戦苦闘しつつも、ついにダンジョンボスにたどり着く。幸いにも他にモンスターの姿はないものの、しかしその実力差は圧倒的で、じわじわと追い詰められてゆく。そのうちの一人があわや殺されるというところに、今まで姿を見なかったジミナが現れる。彼の参戦により生まれた隙を突かれ、ボスは一気に弱点を突かれ打倒された。そして、ジミナが一言「ふう……ここの魔物は修行相手にちょうどいい連中ばかりだ」。まさか、ボスモンスターの周囲にモンスターがいなかった理由は……!?
ケース2: 険しいダンジョンを進む受験者たち。彼らは協力しつつも何とか最深部へたどり着く。しかしその瞬間、ダンジョンの罠により床が抜け、底は針山であった。あわや死亡かと思われた瞬間に現れたジミナ・セーネン。落ちた受験者を救い出し、お礼を言われると、彼は言った。「すまん。ここの罠は見逃していたようだ。」まさか、彼はとっくにここへたどり着き、後に来る受験者の為に罠の解除をしていたのか……!?
うんうん、いろいろできることがありそうだ。でも、こういう場だと必要なのは調査なんだよな。ダンジョンがどんな構造なのか、どんな敵がいるかを把握していないと、不測の事態が起きかねない。というわけで、僕はさっさとこのダンジョンの奥に行って、何があるかを把握する必要があるんだけど……
「…………」
あのー、試験監督のゼンゼさん?なんで僕についてくるんですか?なんか雰囲気がピリピリしてるから、ちょっと魔物を嗾ける程度じゃ追い払えそうにない。お陰で僕は今のところ、妄想をしながら歩いているだけになっちゃってるよ。
うーん……仕方ない。とりあえず陰の実力者プレイをしつつ様子を見ようか。
◇
元から口数の少ない二人は、当然のように無言でダンジョンを進んでいた。時々魔物やトラップが2人を襲うが、ジミナは妙な魔法を使うこともなく堅実に対処していた。
ガーゴイルを一般魔法で対処し終わったたとき、ジミナは気だるげに、しかし目に多少の苛立ちを含ませながら口を開く。
「……なぜ俺についてくる。こう見えて俺は迷宮の攻略に忙しい。そっとしてもらえると助かるんだが。」
「私は一人があまり好きではなくてね。この試験では、どこかのパーティに着いて行こうと元から決めていた。」
特によどみなく答えるゼンゼ。しかし感情が一切籠っていないことから、適当に良い繕っていることは明らかだ。
「……そうか。」
そう言って再び歩き出す二人。しかしここで、珍しくゼンゼが口を開く。
「ところで……お前は高速で移動する魔法が使えると小耳にはさんだが、使わないのか?ここは長い一本道。私など気にせずさっさと先に行けばいいじゃないか。」
「無駄に魔力を消費する必要はない。期限は明日の夜明けだろう?このペースでいけば、最深部までは十分間に合う。」
「そうか。……先ほどのガーゴイルとの戦い、お前は一般攻撃魔法しか使わなかったな。フェルン受験生のように、お前の得意魔法はそれなのか?」
「いや、そういうわけではない。俺の魔法の中では……平均的な練度のつもりだ。」
「……ここの横の道の奥に、魔力防壁が強固にかけられている扉が見えるだろう?」
ゼンゼが指さした先には、5m程の高さの大きな扉があった。魔法に詳しい者ならば、あの扉にかけられている防御術式は、一般攻撃魔法とは相性が悪いことが一目でわかる代物だった。それ以外にも様々な魔法的攻撃が必要となるあるだろう。
「あるが、それがどうした?」
「勿論私は手を貸さんが、ああいう強固に守られた扉の奥には金銀財宝があると相場が決まっている。試験とは関係ないが、お前があの扉を開けられば、その中身は全てお前のものにしていいぞ?」
「…………それはどうも。試験が終わったら取りに戻ろう。」
「いや……この試験が終わったら、ここには魔法協会の者達が入り込む予定でな。諸々の権利関係から、そうなったら、開けてもお前の持ち分はかなり減るぞ。やるなら今だ。」
「いや、やらん。魔力の無駄だ。それに持ち運びしなければならん分、動きに影響が出る。」
「そうか。まあ片手で持てる程度の物なら私が持ってやっても良いぞ。」
「ほお。随分優しいんだな。だが、不要だ。そもそもいいものがあるという確証はない。」
「随分と魔法を使いたがらないんだな。」
「随分と俺に魔法を使わせたいんだな。」
「……」
しばらく二人はにらみ合っていたが、やがてジミナが眉間にしわを作りながら視線を切り、話は終わりだと言わんばかりに再び歩き出した。
「……これは、試験であるからには言わなければならないことだが。」
「ん?」
「第二次試験では、何度も言うように試験官である私は当然手を貸さない。受験生の適性を測るためにな。……そしてその逆もしかり。受験生は、試験官に向かって『そこにいると、試験の邪魔だからどいてくれ』と言う権利がある。試験官はそれを認めなければならない。」
「ならさっさとどいてくれ。試験の邪魔だ。」
「ふむ?今の今まで全くの余裕だったじゃないか。見た目に反して。」
「そう見えるだけだ。さっきから気が散って仕方がない。」
「……まだ話は終わっていない。受験生の近くに試験官がいるというのは、受験生にとってデメリットだけというわけでもない。最たるものは、自分が潔白であることを証明できることだ。一級試験は、その権威から、不正をしてでも受かろうとする輩が一定数いてね。そして残念なことだが……冤罪を被せられたものもいた。だから、試験中に試験官に『近くで見ていてくれ』と頼むことは、十分理のある行為と言える。実際にそう頼んできた受験生も過去にいた。」
「俺の不正を疑っているのか?」
「……そんな安物の杖を持ってきておいて、一次試験を突破したんだ。疑わない方がおかしいだろう?」
ジミナは自分の持っていた杖をちらりと見たが、すぐに目線を戻した。
「……まあ、疑うならば好きにすればいい。不正が確定したならば、この試験が終わった後にでも一級魔法使いの称号をはく奪すればいい話だ。だがこの試験自体は最後までやらせてもらうぞ。だからもうついてこないでくれ。」
ジミナは少し早足になり歩き出す。不機嫌を隠そうともしなくなり、露骨な拒否の色が含まれていた、
だがゼンゼは、同じく早足になりジミナに着いて行く。
「待て、まだ話は終わっていない。」
「俺から話すことなど何もない。」
「お前には魔族の疑いがかけられている。」
ジミナは立ち止まった。ゼンゼも同様だ。
「……ほほう。どういうことだ?」
苛立ちの色は消え、少し愉快そうな声だった。
「これは表には出していない話だが……ここのところ、オイサーストとその周辺で魔族特有の魔力反応が検出された。それが、オイサースト内の購買店にもあったのだ。都市内部には当然協会員の魔法使いが警備をしているが、魔族の発見報告などなかった。その協会員は3、2級の魔法使いもいるにもかかわらず、だ。つまり、大魔族と呼べるレベルで隠蔽に長ける魔族が、このオイサーストに侵入している。」
「……」
ジミナは黙って聞いていたが、すこし眉をひそめているようにゼンゼには見えた。
それを見て、ゼンゼは畳みかけるように話した。
「そして、その魔力痕跡を探してみると、特定の裏路地においてもそれが集中していることが判明した。その周辺で、魔力検知や聞き込みといった調査を行った結果……その場所で最も滞在時間が長かったと判明した人物がいた。ジミナ・セーネン、お前だ。」
「……ククク、それで?」
ジミナは、口元を釣り上げた。ゼンゼはそれを真正面から受け止めつつも話を続ける。
「もちろん、現段階では状況証拠だけだ。それに他にも候補はいる。……だが、はっきり言って、今協会員のほぼ全員はお前が怪しいと思っているぞ。まあそれが無くともお前は怪しいがな。お前の身元を調べてみたが、お前の出した身元証明は見事に偽造だった。」
「フン。」
「このままいけば、お前は試験関係なく面倒なことになる。そうだろう?」
「関係ない、と言ったら?」
明らかな挑発発言だ。ゼンゼは少し気圧されそうになったが、一級魔法使いとして経験してきた修羅場の緊張感に比べれば、この程度は耐えられなければ恥ずかしいというものだ。
「どうもしない。が、お前は夜道に気配を感じることは増えるかもしれんな。」
「俺には関係ないさ。」
「そうだな。それができるほどに、お前は実力を備えているらしいな。私達は受験生から色々聞いて回ったんだ。実力的には一級魔法使いにも届くデンケンがいるパーティに対して一人で圧倒したらしいじゃないか。それに記憶を読み取ったらしいエーデルはお前のことに関し頑なに口を開こうとしない。しかも、第一次試験中はずっと封魔鉱で出来た重りをつけていただのという信じがたい話まであったぞ。それほどの実力の持ち主が今まで知られていなかったなど、まるでお前は人間の世界で生活していなかったかのようだ。」
「……それで、俺をどうするつもりだ?」
ジミナは杖を構えつつ、不敵に笑い名がそう言った。杖先に魔力を集中させており、まさに一触即発といったところである。
しかし、それに対しゼンゼは戦闘態勢を取る訳ではなかった。
「だから、私が着いて行こう、ということだ。」
「……なんだと?」
ゼンゼの声からは、緊張感が少し消えた。
「私は平和主義者でね。争いは好まん。だから、人間同士の内輪揉めが嫌いだ。お前が魔族であるという可能性は当然考慮し、今までお前に警戒しつつ共に行動してきたが……お前は鬱陶しそうにはすれど、私に攻撃はしてこなかった。お前が魔族ならば、このダンジョンという閉鎖空間は私を殺す絶好の機会だっただろうにな。」
「……」
ジミナは、また不愉快そうにゼンゼを見た。むしろ、「さっさと殺しておけばよかったかもしれない」とでも言いたそうに鬱陶しげだった。
「もしお前がこのまま試験をクリアするか、私の前で瓶を割って途中退場したならば……ひとまず、私からはこの場での無罪を証言してやろう。」
「はぁ……くだらん。」
ジミナはまた歩き出した。ただし、先ほどと同じ速度で、普通に歩けばついていける程度のスピードだった。
「俺は、怪しい奴で構わん。」
「……念のために言っておくが、今のままでは一級魔法使いとして得られる栄誉や利権は、ほぼすべて受け取れないぞ?魔法協会は、いわゆる公的機関という奴だからな。身元が分からん奴は受け入れられんのだ。得るのは称号だけ。いいのか?」
「俺は、自分の実力を確かめに来ただけだ。そのようなものに興味はない。」
「……ここまで浮世離れした人間とはいたとはな。だがまあ、お前の実力はどうやってもこの試験でバレるぞ。」
「……何?」
ジミナは足を止めていぶかしげにゼンゼを見た。
「お前はまあ、ここの深部に何がいるのかは知っているだろう?」
「フッ……当然。お前達魔法協会の人間が何をするかなど、大体の予想はつくというものだ。」
「そうか。なら、深部にいる奴のことを考えれば、その理由も当然わかるはずだ。」
「フッ……なるほどそういうことか。確かに奴は強敵だ。俺も全力を出さざるを得んかもな。」
やはり知っていたか、とゼンゼはジミナがそれを知っていたことに特に驚かなかった。
「差支えなければ教えて欲しいものだが、お前はあれをどうやって攻略するつもりだ?」
「どんなに強い魔物でも、『本人』が持つ隙というものがある。生き物である以上、絶対にな。」
「お前、あれが一応魔物であることを知っているのか。いったいどこで聞いたんだか。それに、『本体』が隙を持っているなども初耳だな。」
「なに、今までの記録、そしてこの場の魔力から、論理的にかつ常識にとらわれない推論を重ねただけだ。」
「……さすがだな、と言うべきなのかな。」
ジミナとゼンゼは、周囲の魔物やトラップを適度に処理しつつ進んでいた。ジミナに、ゼンゼに対する拒絶の色は、今のところない。
「最初にお前の前に来るのは誰だと思う?」
「さてな。」
「私としては、私自身が来てほしいな。戦いの参考にしたい。」
「うん……?」
ゼンゼは気づかなかったが、ジミナは不思議そうに彼女を見た。言っていることが分からないというように。ゼンゼはそのまま続けた。
「水鏡の悪魔……まったく。魔物の魔法というのはデタラメだ。見た目の色以外、実力や思考傾向が完全に一致する複製体を作るなど、私でも厄介な話だ。しかも私は平和主義者であるというのに、私の『力』をそのままコピーして、純粋に殺すことだけを考える人形を作り出すなんてな。ジミナの複製体に、他の奴らが殺されていないといいのだけれど。まあそうならないよう脱出用ゴーレムを渡したんだが……」
「……え゛っ。」
◇
「ひぃぃぃ~~~~~~お助け~~~~~!!!もうダンジョンは嫌だああ!!!」
「無理無理無理!針付きの落ちてくる天井とかふざけんじゃないわよ~~~!!!」
「う、うわあ、哀れな声……」
ゴーレムに抱えられて入口の方向に消えてゆくシケーニとピタリヨを哀れに思いながら、デンケンのパーティはダンジョンを進んでいた。二人はデンケンのパーティに入れてもらっていたが、ラオフェンの複製体との戦いの最中、シケーニは複製体の攻撃により負傷し、ピタリヨはトラップにより部屋に閉じ込められてしまったのである。
「……徒党を組んでいて正解だったな。対処できる手段も増える。」
そう言いつつ、デンケンのパーティは進んでいく。
「複製体ですが……他の受験者のもいるのでしょうか?」
「そう考えるべきじゃろう。」
「そうか……見えない敵のことを考えても仕方ないかもしれませんが、デンケンさんは誰の複製が最も脅威であると思いますか?」
「まあ、フリーレン、ゼンゼ……と、ジミナだな。」
メトーデ以外はその答えに頷いたが、彼女は疑問符を浮かべた。
「フリーレンさん、ゼンゼさんは分かりますが、ジミナ・セーネンですか……あの男の妙な話は耳にしますが、本当なのですか?」
「少なくとも儂ら3人を相手に引き分け以上の結果じゃった。そして……明らかに何か隠していた男だ。とにかく底が見えん。」
「あんななりで……カモフラージュか何かのつもりなのでしょうかねえ。」
「ジミナの考えていることは輪をかけて分からんが……それに加え、奴はスピードと、気配を消すことが脅威だった。つまり、奇襲の可能性が高いということだ。本当にジミナの実力を模倣できているならば、知らない内に首がおさらばしていることも覚悟しなければならん。」
奇襲を受けるというのは、誰に対しても起こりうる話ではあるが、ジミナの気配を消す能力はあまりに奇襲向きであると言わざるを得なかった。パーティの面々に緊張が走る。
そのとき、ふと、リヒターが前方を指さす。
「……おい、あれ!」
「……!!!」
そこにいたのは茶褐色の人間……そしてそのボサボサの髪からして、ジミナ・セーネンの複製体であることには間違いなかった。
「……奇襲は受けんかったのは幸運か。皆、瓶の用意はしておくのだぞ?」
全員が杖を構え、複製の挙動に極限まで集中する。すこし複製体が動いただけで魔法を発動しかけてしまうほどに。
だが。
……ボカン!
「……え?」
次の瞬間、ジミナの胴体は膨れ上がり、彼は自爆した。
妙な空気が、その場をかなりの時間支配した。
彼らは知る由もなかったが、これはジミナ、つまりシャドウの魔力増幅法に起因する現象だった。簡単に言えば、彼の魔力制御は緻密過ぎた。爆発と圧縮による魔力制御により魔力を増幅させることなど、水鏡の悪魔を作った者たちが想定しているわけがない。なので、水鏡の悪魔に与えられた魔力制御機構はあくまで悪魔を作った者が考える「人間が可能である範囲」で実行するものとなり、それ以上の精度で制御をすることは「人間ではありえない」としてしまったのだ。結果、ジミナが魔力を増幅しようとした瞬間、それは制御を失い、暴発してしまった、というのが事の真相である。
以後、受験者の前に、現れては自爆を繰り返すジミナという、さらに彼の怪しさを増す現象が発生するようになった。
このことを、少なくともジミナ・セーネンはしばらくは知ることは無いだろう。何故なら複製体は、その持ち前の魔力探知能力を生かし、
「うーん、とりあえず弱い奴から確実に倒しに行くか!」
と、強者である自分自身を後回しにしてしまうからである。
・金銀財宝
心の中ではガッツポーズ。試験が終わったら全力で取りに戻る心づもりだった。
・ゼンゼ
「なんだコイツ怪しすぎる」
残念でもなく当然の反応である。
・大魔族レベルの魔族
ナントカウラがやらかしてますね
・水鏡の悪魔
「こんな方法で魔力を増幅するなんて人間じゃねえ!」
というわけで、ジミナ君の複製はそのままだと大惨事なのでナーフ処理だ!
ただ、複製体がこのまま出番なしというわけではありません。