魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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ユーベルとシド君に対する大量の独自解釈・独自設定が含まれます。

正直キャラブレしてる可能性があり+人によって好き嫌いがはっきり分かれるであろう内容不安ですが、どうしてもこの話は出したかったので投稿しちゃいます。あなたの中のユーベルやシド君と違う?解釈違いということで許してほしいッピ。


なんかよく分からなかったけど、怒ってる様子は無いな。ヨシ!

僕は、袋一杯の金貨をゲットしてニコニコしていた。いやあ~、大量大量!……あれ、こういう時は大漁だっけ?まあともかく、これでしばらくは陰の実力者用軍資金に困らないぞ!僕がひそかに企んでいる、「高そうな美術品に囲まれながら高そうなワインを飲み、街を見下ろす系陰の実力者ごっこ」に一歩近づいたかもしれない。

というのも、これは第二次試験でゼンゼと別れた後、全力ダッシュでかき集めた金銀財宝を換金したのだ。僕がジミナの姿なせいでちょっと怪しまれたけど、まあ試験が終わるまではこのことは多分他の受験生にはバレないだろう。

まあそれはそれとして、僕は二次試験でちょっとギミックに振り回されっぱなしだったことを反省していた。攻略するだけならともかく、陰の実力者ムーブするならもっとちゃんと下調べというものをするべきだった。というわけで、先ほどちょっと魔法協会の内部に忍び込んで、第三次試験について調べてみたんだ。例年ではこれが最終試験。実施内容は毎年変わるけど、大体が一級魔法使いとのバトル的なことをする傾向があることが分かった。協会の人たちも「今年は誰が担当しようか……?」みたいな話し合いをしてたし。誰が担当するかはまだ決まってなかったっぽいけど……。よーし、第三次試験はまさにジミナ君の実力を見せつけるチャンスだと言えるだろう。

さてさっそく、当日までに第三次試験ではついにジミナ君の真の実力が!?をするためのプランを考えよう。……あ、そうだ。ダンジョン内でゼンゼさんが言ってたけど、アウラが魔力偽装をミスって協会の人に見つかったっぽいんだよね。うーむ、アウラにまだ修行が足りなかったのか。こういう時は……罰でも与えればいいのか?魔族に罰というものが効くかなんてわからないけど。あー、でも内容考えるのめんどくさいな。とりあえず「魔力増幅率1000%達成まで人間あげません!」とでもしてればいいかな?飢餓感とかで集中力が増すでしょ、多分。

……なんてことを考えてると。

 

「あ、やっと見つけたよ。ボサ髪君。」

 

そう言われて振り返ってみると、緑色の髪をした女の人が居た。……あれ、この人、一級試験の受験者じゃなかったっけ?名前は、えーと……ダメだ、まるで今まで接点が無くて思い出せない。

とりあえず、僕は振り返らずとも分かってる感を出して返事をしてみた。

 

「……ここでお前が来るとはな。」

「そりゃね、探したんだから。ダンジョンの中で、君の複製体がどんなことしてたか知ってるの?私のパーティの前に現れたら、突然ボン!って爆発して消えてったんだよ?他のパーティのところにもそんなのが出たんだって。知ってた?気になるのも当然だよね。なんであんなふうになったのか心当たりあるでしょ?」

「……フン。」

 

まあ、気になるのは当然かあ。でもあれ、正直想定外の現象だから、あんまり突っついてほしくないんだよなあ。まあここは、「お前に話すことなど何もありませんよ」オーラを出しながら歩き出すのが正解だろう。

 

「もー誤魔化さないでよ。そんなふうに隠されたら、気になって気になってつい追いかけたくなっちゃうじゃん。あんまり冷たくされるとつい殺しちゃうかも。」

「……フッ。面白い冗談だ。」

 

うーん、この人は僕をストーカーするつもりか。こういう場合のイメージトレーニングはしてあるぞ。何も言わないふりをしつつ、時々「ん?コイツいま何か重要なヒントを出さなかったか?」的な意味深なことを言うのが、一番陰の実力者っぽいのだ。まあ、しばらくは黙って歩くかな。

 

「…………」

「ねえほらさ。君って試験開始前はボコボコにされても何もやり返さなかったよね。でも実はとっても強いって聞いたよ?あの態度、どういう心境なのかな?」

「……試験のどこかで、対人戦をするという話を聞いていた。だから、実力を隠していたかった。それだけだ。」

「どうせすぐばれるのに?ダンジョンで、君の複製体が爆発する前にちょっとだけ戦っただけだけど、その片鱗を味わったよ。目の前にいる状態で大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)を無傷で回避したのは君が初めてだよ、おめでとう。目線に合わせて動くことで、常にイメージの『刃先』から逃れるなんて攻略法は、私でも思いつかなかったなあ。」

「……俺の複製ならばその程度は当然だ。」

「ほら、あんまり隠す気ないでしょ?ねえねえなんで黙ってボコボコにされてたの?」

「力を使う必要が無かった。それだけだ。」

「うーん、本当かな?私の予想だと……ムキに反撃するやつはバカっぽいから、って思ってない?」

「……そうかもしれないな。」

「うーん、ちょっと外れたかな……?今までいろんな人に出会って来たけど、君みたいな人は初めてだよ。」

「……物珍しさか。俺は見世物ではない。」

「そこは希少価値があるって考えなよ。」

 

よし、ちょっとだけ実力者っぽいことを言ってみよう。

 

「くだらないな。価値とは自分自身で作りだすものだ。」

「あ、怒らせちゃった?ごめんね。でも、なかなか本心を出さないボサ髪にも非はあるんじゃないかな。」

「……なぜ俺に構う?」

「うーん……単純に興味があるのは確かなんだけど。」

 

そう言うと、緑髪の人は魔法を発動した。僕の身体に光の輪のようなものがまとわりついた。うーん、拘束魔法の一種かな?……まあとりあえず、これは「おっ喧嘩か?ククク俺に勝てるかな?」ってパターンだな。

 

「……何の真似だ。」

見た者を拘束する魔法(ソルガニール)。ヴィアベルが使っていた魔法だよ。」

 

ヴィアベル……誰だっけ?うーん、思い出せない。受験者全員の名前なんて覚えきれないよ。まあそれはともかく、この人は他人の魔法をコピーするタイプの魔法使いなのかな?中々に強力だ。ネームドキャラクターであることは間違いなさそうだ。

 

「……コピーか。面白い。」

「その人が得意とする。魔法は人生や人間性に大きく係わっている。私は昔からそうなんだ。共感できることでその魔法が使えるようになるし、共感できない魔法は使えない。ボサ髪君。君の魔法は私が見てきたどの魔法使いよりも精密で、強かった。」

「つまり、俺に共感して、俺の力を得たいということか。」

「現金すぎない?うーん、まあそういうのも無いとは言わないけど……。私は、ボサ髪君が何を思ってどんな人生を歩んできたのか、それを知りたいんだ。」

 

よし、ここは「実は過去に実力を追い求めた悲しい事件があったけどもう俺にはそんな過去など必要ない」系のアピールをしておこう。

 

「過去……俺にはもはや必要ないものだ。」

「えーなにそれ?絶対何かあるんじゃん。教えてよー。」

「……さて。あったとして、お前に喋る義理はない。」

「あー、じゃあ、そこの店に入ろうよ。ボサ髪君何かすんごい言いたそうに見えるし。」

 

この人が指さす先には、よくあるテンプレレストランがあった。ゆっくりお話ししましょうってことか。まあジミナ君的にはここはそっけなく拒否……あっちょっ腕引っ張らないで。

 

 

結局強引に、一緒に入店させられてしまった……。結構品の有りそうな感じの内装だな。

 

「で、で?ボサ髪君は何頼むの?」

 

えー?そうだなあ。僕的には、強いて言えばオムライスが好きなんだけど、見た目が派手でジミナ君には似合わないだろうし……うーん。僕普段こういうところ入んないからわかんないよ。まあ、ここは長年の修行生活を思わせるような質素なメニューが良いだろう。

 

「……この焼き魚定食を頼む。」

「ふーん。意外だなあ。決めるのに悩んでた割には。」

「……どういう意味だ。」

「うーん……私が今まで見てきた中だと、こういう場では味さえよければ何でもいいって言う人と、いやいやせっかくのお店なんだからできるだけ美味しそうなものを食べようとこだわる人が居る。それで、さっさとメニューを決める人はたいていそういう定食系を頼むもので、後者の人は時間をかけて色々細かく注文する人が多い。この店結構いいもの扱うメニューもあるからね。で、ボサ髪君は時間かけた割にはそれを頼んだから、珍しいなーって。」

 

……そうなの?

 

「……そうか。」

「あ、ちなみに私はせっかくだから、約50年前にここの料理人がヒンメル一行に振る舞ったらしいこの料理を注文するね。一次試験の後、そういう話を小耳に挟んだんだ。」

「そうか……」

 

この人よくしゃべるなあと思いつつ、僕たちはメニューを注文した。

 

「で、さあ。前に、ボサ髪君が一次試験で一緒だったらしいシケーニとピタリヨって人に話を聞いてみたんだけど、ボサ髪君めちゃめちゃ態度悪かったんだってね。あの二人の何が気に入らなかったの?」

 

この人いろいろ用意周到なんだなあ。えー、でも、その二人についてなんてもう覚えてないよ。なんかモブまあまあ優秀魔法使い、みたいな感じだったかなあ。それしか思い浮かばない。まあ僕の記憶はともかく、ここは陰の実力者っぽく、僕は俗世から離れているので他人の評価なんて気にしませんよ的な感じを出すのが良いだろうか。

 

「……別に嫌いではない。」

「えー?本当?聞いた話だと、むしろちょっと嫌ってくれみたいな感じの態度だったって聞くよ?」

「他人の評価など……俺には必要ない。」

「……ふーーん?」

 

……なんかジト目でニッコリしてきたぞこの人。「平静を装いつつ言外の隠された意図を探ってますよ。」感があってなかなか陰の実力者っぽい態度だ。僕も負けてられないな。

 

「もっと知りたくなっちゃった。ボサ髪君はさあ。なんでこの試験に来たの?他人の評価が不要なのにわざわざ人に実力を測ってもらいに来るなんてね。」

 

ん?後半話がよく分かんないな。……まあそれはともかく、ここは「ただひたすら高みを目指している系実力者」アピールだ。

 

「……ひたすらに高みを目指している。登っても登っても頂は見えない。俺はただ、この試験が頂へ至るための糧になるかもしれないと考えただけだ。」

「ふーん……ボサ髪君は、あらゆる手段を使ってでも強くなりたいんだ。」

「……フッ。」

「北部魔法隊隊長ヴィアベル。彼はどう思う?」

 

その人のことは知らないんだってば。でも、明らかに「お前ヴィアベルを知らないわけないよな?」だったので、ここは当然知ったかぶりする。

 

「彼か。隊長というだけあって、なかなかに鍛えられている男だ。」

「ふーん……他には?」

「……やめておけ。俺に意見など参考にならん。」

 

もちろんこれは、ジミナ君という圧倒的実力者から見れば、「自分の真似をしてもお前のレベルでは身にならん」的なメッセージだ。

 

「一級試験の受験者の中で、君の戦闘スタイルに一番近いのが彼じゃないかな。武闘派だからね。」

「かもしれん。だが……俺から話すことなどない。」

「んー、ボサ髪君的には彼から学ぶことなんてもう何もない的な感じ?」

 

んん?なんで僕が学んでいる側になってるんだっけ?そんな話したかなあ。

 

「探せばあるだろうな。」

「へー、気まずくなって誤魔化すくらいの気遣いはできるんじゃん。」

 

……?何の話だ?

 

「…………」

「もー、機嫌治してよ。あ、ほら料理来たよ?食べないともったいないよね。」

 

あ、ほんとだ。僕のところに来たのは実によくあるテンプレ定食だった。対してこの人のところに来たのは、パンとかスープとかステーキとかがいろいろついてる結構豪華な感じの料理だ。

 

「いただきます。……へー、あのヒンメルのパーティが注文したって言うから、味濃いめの結構ボリュームある料理だと思ったのに、オーソドックスにおいしい料理だ。味に癖が無い。」

「……そうか。」

「それでさあ。私、今まで話してて……ボサ髪君は聞いていたほど他人が嫌いっていう風には感じないんだよね。」

 

ほほう?ジミナ君の「当たりの悪い態度はそもそも他人に高評価を求めていないから」設定に乗ってくれたぞ、この人。よしよし、僕の陰の実力者ムーブは上手くいっているようだ。

 

「……フン。くだらん。」

「うーん。時々さ、『聞かれたことに対し答えるんじゃなくて、相手の思っていることや、感情を言い当てるなんてやめるべき、建設的じゃない。』なんていう人が居るけど、私はそれこそ面白いと思うんだよね。ボサ髪君もそういうクチ?私は相手の感情がとっても気になる。それこそが言葉をやり取りする醍醐味だって思わない?たとえ私が嬉しくなっても、嫌に感じても、私はこれを止めるつもりはない。ボサ髪君はどうかな?ちなみに、ボサ髪君が同じことをしてきても私は怒るつもりはない。不公平だからね。」

 

……???なんでそんな話をしてくるのか全然分からない。というか内容もあんまりわからない。僕、何か変なこと言ったか?ま、まあ何とかなるだろう。

 

「…………そうだな。そうかもしれん。」

 

これは、僕が反対意見を出すとめっちゃうるさくなる姉さんとの会話における対処法として、僕が編み出したモブ式奥義「とりあえずあいまい同調」だ。それっぽく、「うん!」「そうだね!」って言っておけば、どんな問いかけでも大抵はその場を凌げるのだ。

 

「…………うーん、私に興味がない?おかしいな、私の反応は確かに気にしているっぽいんだけどなあ。」

 

また言ってることがよく分からないけど、頼むよ、これで流してよ~、と僕は心の中でお祈りをした。

 

「まあいいや。」

 

よっしゃあ!通じた!

 

「話は変わるけれど」

 

お、おう。さっきから本当に良くしゃべる人だな。というか正直会話が面倒になってきたぞ。さっきからところどころこの人の言うことよく分からないし。

 

「第三次試験は何か知ってるかな?」

「知らんが、まあ入手できる情報から推測を立てることは難しくない。」

「前回までだと、一級魔法使いと戦わせる試験が多いみたいだね。」

 

なるほど。僕の下調べは正しかったようだ。

 

「そのようだな。」

「仮にその形式だとしたら、誰に一番採点してもらいたい?……いや、違うな。誰が一番採点者にふさわしいと思う?」

「……ゼーリエだ。」

 

一番強いからね。

 

「もー、それを出すのは反則でしょ。ゼーリエ以外に決まってるじゃん。」

 

えー。僕協会の人なんてほとんど思い出せないし。うーん、ぱっと思いつくのは二次試験まで一緒だったゼンゼさんだけど。陰の実力者としてはどう返すべきなんだろう?……よし、ここは。

 

「俺は……そんなことを気にするつもりはない。誰に見てもらおうが、やることは変わらない。」

 

ジミナ君の『誰が相手であろうと全力を出すことには変わらない』アピールだ。

 

「えー、ホントにないの?そういうの。」

「俺には無意味だ。」

「多少の好き嫌いも?戦闘スタイルの相性とかは?」

「確かな実力を見せれば、評価は自ずとついてくる。」

「うーん……ボサ髪君は不安に思ったこと無いの?どんなに強くても、嫌われたりしたら、実力がどんなにあっても評価されないんじゃないかって。人間なんだし、自分の嫌な奴が強かったら余計に嫌だよね?」

「そうだな。だが、真の実力とはそのようなものを超えてくるものだ。」

「そうかな?でも、だからって態度を悪くする理由もないよね?ボサ髪君、見た感じ精神的に落ち着いてるから子供みたいな癇癪で反抗するタイプじゃないでしょ。」

「……俺には他人の好意も評価も不要。……それだけだ。」

「えー?なら、そもそも試験受ける必要なくない?合否は最終的に協会の人が下すんだよ?あれ。あ、もしかしてそもそも協会の人たちを信用していないとか?単に負かすことを考えてる?」

「いいや。彼らは……確かな実力者だ。」

 

協会の一級魔法使いの人たちは確かな鍛錬を積んでるみたいからね。その点では、同じく実力者として、僕は彼らに敬意を払ってる。まあ僕、ジミナ君はその遥か先を行っているけれどね!

 

「え?協会の人たちのことは認めてるんだ。」

 

なんかすごい意外そうな声を出された。……ジミナ君が他の魔法使いに敬意を払うことがそんなにおかしいのか?

 

「……あ、分かった。ボサ髪くんは、名声じゃなくて勲章が欲しいんだ。一級魔法使い試験突破っていう、実力の証が。例えば大魔族討伐という勲章を得るためには、自分以外の人々の感情なんて関係ない。それと同じように考えてるんだ。で、試験自体が感情に判断されるようなものだったら、そもそも受からなくていい。そう考えてるんじゃない?」

 

うん……うん?名声じゃなくて勲章?ま、また分からない話だ。まあとりあえずここも奥義「とりあえずあいまい同調」で凌ごう。でもせっかくだから、少しひねくれた感じを出してみようかな。

 

「フン……余計な話を。」

「お、ちょっと当たったかな?いやー、この会話でもっとボサ髪君が機嫌悪くなっちゃうかと思ってたけど、案外こういうところでは怒らないんだ。私もなんだか楽しくなっちゃって、結構ずばずば聞いちゃった。うーん、でも、そうなると。別に上を目指すということに対してボサ髪君の核心がある訳じゃないのかあ。感情が出てこないってことは。うーん……どういうことなんだろう?ねえねえ、もっとボサ髪君のこと聞かせてよ。」

「……俺の話など聞いてもつまらん。それにもうすぐ食べ終わる。」

 

そろそろいい時間だし、僕は毎日の日課の、夜の魔族狩りや盗賊狩りをしたいんだ。あとは第三次試験に向けてコンディションの確認もしたいしね。

 

「そうかあ。んー、でも私はもっと話したいな。まだまだ君に共感するには程遠いし、何を考えてるのか分からない。私が人を見るときには、その人の行動と、どういうときに感情が出てくるかを一番よく見るようにしている。でも今回、ボサ髪君は殆ど怒ったりも喜んだりもしなかったね。一応私の反応は無視しない、大体無関心だけど。『他人の評価など俺には必要ない。』って言ったときにちょっと喜んでたくらい。」

 

そ……そうなのか?へ~……?

 

「あ、そうそう。そのボロい服、やっぱりわざと着てるの?」

「服は服だ。機能しているから問題ない。」

「協会の人にどう思われてもいいのかな?その身なりだと、仲良くしてくれないことくらいは分かるよね?」

「仲良く、か。俺には眩しすぎる。」

「………………」

 

なんかまたこっちを見ながら黙りこくっちゃった。よく分からないけど、今のうちにさっさと飯を食べ終わってしまおう。

でもしばらくすると、また話しかけられた。

 

「ボサ髪君って。」

「ん?」

「自信に満ちているよね。」

 

う、うん?まあそうかな?また突然どうしたんだ。

 

「今日の会話で、多少考えていることはあったにせよ……言ったことに対しては後悔している様子が無い。眩しいと言っておきながら、でも自分を卑下したりしている様子が無いし、やっていることに罪悪感を覚えている様子もないんだよねー……。」

 

そりゃ、ジミナ君はひたすら高みを目指しているからね。過去を振り返らないし後悔もしない男なのだ。でもこの人はなんか腕組みして考え込んでる。そ、そんなにジミナ君のキャラが分かりにくかったかな?

 

「その服も、まさにそれが正解だって確信して着ているみたい。でも自分が弱い立場であると認めるつもりは無く、しかし協会の一級魔法使いのことは認めている……?」

 

正解だって確信して着ている……?この人の言うこと難しいよー。なんかお腹いっぱいなのも相まってちょっと眠くなってきた。

 

「あー、えーとさ。私、君のこと『ボサ髪君』ってずっと呼んでるよね。正直これ、私はかなり罵倒寄りの呼び方だと思ってる。」

「……自覚があるならやめてくれ。」

「うーん、いやでも、ボサ髪君、そう呼ばれても全然不愉快そうじゃなかったからさ。私は、私に注意を引いてもらおうとわざと言った……かな。ボサ髪君が怒ったらすぐにやめようかと思ってた。でもボサ髪君は、むしろすごいしっくりした呼び方に感じてたみたいだったから、やめなかったんだ。」

 

おっと。ちょっと嫌がり方が足りなかったか?……うーん、風貌的には正しいからね。つい当たり前に感じてしまっていた。ジミナ君的には、この呼び方を止めるべきか……うーん、わからん!まあ、多分呼び方でキレるほどジミナ君は心は狭くないでしょ、多分。

 

「……ねえボサ髪君。今何悩んでるの?」

 

……なんかすごい怪訝そうな顔で覗き込まれてた。ちょっと変だったかな?

 

「ん?い、いや、別に。」

「まさか……ねえ……ボサ髪君。」

「ん?」

「その服、味があるよね。一見質素だけど機能性に優れている。その杖も、特別な機能とかはついていないけど、作られるべきところは作られた、まさに使用者の実力を引き出すことに長けた杖だね。」

 

おお、それに気づいてくれたか!そうなんだよ。「見た目は安物だけど動きやすさは随一!」をモットーにアウラに材料を調達させて四苦八苦しながら作った服なんだ。この杖も、見た目は見習い向けのものだけど、その実使用者の多大な魔力に耐えられるよう改造された杖で、まさに無駄を削ぎ落したスタイリッシュな杖なんだ!いやー、よく気付いてくれたよ!

 

「フッ……その通りだ。」

「…………ボサ髪君。」

「うん?」

「……今すごい喜んでたね。」

「そうか?」

「……私、殺人に忌避感が無いってことをよく言われてるんだ。10年前のあの事件のせいでこうなった。それ以来こんな感じだけど、私自身実はこれじゃいけないんじゃないかって思う時もある。ボサ髪君はどう思う?」

 

お!ここは「過去にとらわれるな。お前の道はお前自身のものだ!」的なことを言って勇気づけるシーンだ!

 

「あの事件……確かに数多くの惨劇を生み出した。だがそれを引きずっているのは、まさに奴らの思うつぼだとは思わないか?お前の道はお前自身のものだ。他の誰でもない、お前自身のな。」

「……………………そう。」

 

…………なんかすごい悲しそうな声で言われたんだけど。え?僕なんか選択ミスった?多分魔族に襲われたとかそういう話だよね?

 

「そろそろ……私も食べ終わるかな。」

 

あ、この人もほとんど食べ終わってる。うーん、怒ってはいないみたいだ。ならまあいいか。

 

 

というわけで、僕たち二人は支払いを済ませて外に出た。今回の僕は60点くらいってところかな。まあまあ陰の実力者っぽいセリフはできたけど、時々この人がよく分からない返答したんだよなあ。それがちょっと気がかりだった。

まあともかく、ここは実力者っぽく「お互いに何か通じ合うところがあった」感のある会話をして去っていくのがそれっぽい。

 

「……ねえ、ボサ髪君。」

「なんだ?」

「殺人に忌避感が無いって、私さっき言ったよね?」

「うむ。」

「これ、人から軽蔑されたり、異常者みたいに扱われることもあって、でも私、なんでそこまで大げさに反応するんだろうって思ってた部分もあった。別にその人のことを殺そうって言ってる訳じゃないのに。でも……人としての重要な共感能力が欠落した人間って、外から見るとこういう感じなんだね。うーん、確かにちょっと怖いかも。私、あなたのお陰で過去のそうだった人たちに共感出来ちゃった。この点は感謝しておくよ。」

 

おお?……半分くらいは話が分からないけど、この人は僕との会話で新しい発見があったということはわかるぞ!

 

「そうか。……よかったな。」

「……それ皮肉じゃないんだね。」

「ん?うむ、そうだ。」

「……ボサ髪君にとって、私ってどんな感じだった?」

 

どんな感じって、そんなこと言われてもなあ。よく喋る人?まあ僕の感想はともかく、ここは「同じ実力者としてお前のことは覚えておくぜ!」的な雰囲気で返しておこう。

 

「……お前のことは覚えておこう。それだけだ。」

「覚えておく……ねえ。」

「ん?」

「そうだね。多分私たちは試験以降は二度と会わないと思う。それに私はあなたに共感できなかったし、これからもできないだろうね。」

「……俺の魔法は、コピーしようとしてできるものではないだろう。」

「…………でも、あなたのことはよく覚えておこうと思うよ。ジミナ・セーネン君。」

 

なんか最後すごいねっとり言われた。どうしたんだ?

 

「私の名前はなーんだ?」

 

ちょっとニヤつきながらそう言われた。え?名前?あ、把握してない。ま、まあ何とかそれっぽいことを言って誤魔化そう。

 

「勿論知っているさ。お前の噂は俺も耳にしていた。」

「……………………」

「……なんだ?」

「いーや。やっぱり私は有名人なんだなあ~って。」

 

お、変な間はあったけど納得してくれたっぽいぞ。

 

「じゃあねボサ髪君。バイバーイ。」

 

そう言って僕たちは別れた。腑に落ちない部分もあったけど、この人との会話の中で僕は陰の実力者っぽいことをちょっと言えて、僕はちょっと満足した。でも結局あの人、何が言いたかったんだろう?




・ユーベル
おそらく人間観察大好き。人間の本質を見抜く力がクッソ高い。シド君が会話中どう感じているかを、ジミナ演技をある程度貫通して感じ取っている。他受験生の話を聞いて、どんな人間かワックワクしながらジミナ君に話しかけたが、ジミナ君の行動原理の何かを感じ取り、「ええ……何この人、『人』で遊んでる……」と引いてしまった。

ユーベル視点は自分には書けないので、ある程度の本文の内容解説を載せます。

> 君の戦闘スタイルに一番近いのが彼じゃないかな。
何としてでも強くなりたいんだったら、他人の技術を積極的に知るべきだよね。わざわざ独力でやろうとする意味ないよね、という考え。しかし、戦い方が近い他の魔法使いのことを聞いても具体的な感想が出てこないので不思議に思っている。

> うーん、私に興味がない?おかしいな……
普通心の内を言い当てられたりしたら人は動揺したり怒ったりするのに、ジミナ君が何も感情を変化させなかったから「なんで?」ってなってる。

> だからって態度を悪くする理由もないよね?
その態度の悪さはわざとだと確信している。

> え?協会の人たちのことは認めてるんだ。
今までジミナ君は「態度が悪いのはわざとだ。それで評価が下がっても構わない」と言っていたのに、突然「協会の魔法使いのことは認めている」と言い出したので、何言ってんだコイツ……?となっている。

> 仲良く、か。俺には眩しすぎる。
ここで心の底から「マジで何言ってるんだコイツ?」となり、そもそも頭のおかしい奴なんじゃと思い始める。

> 10年前のあの事件
ユーベルのでっち上げ。「コイツ事実の有無よりも格好つけること優先なんじゃ?」と思い試しに言ってみたら、本当に事実ガン無視の回答が返ってきてしまった。

> うーん、怒ってはいないみたいだ。
怒っているのではなく呆れている。

> 私の名前はなーんだ?
覚えておくって言った人間の名前を把握していないんだ。ふーん?

> やっぱり私は有名人なんだなあ~って。
噂になっているんならなんで私の名前知らないんじゃあ!の意。

Q: 今回の話を要約すると?
A: シド君はユーベルに本質を見抜かれフラれましたとさ。

この話はかなり前からずっと書いてみたかったです。賛否両論になってオレンジになっちゃった評価がさらに下がりそうだけど、余は満足じゃあ!
というわけで次回から第三次試験、もといバケモノ同士の大戦争の始まり始まり。
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