魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

6 / 43
シド君はフリーレンやフェルンを呼び捨てにするのか正直自信ない


『陰の実力者』は教訓を残したい!

アイゼンと合流したフリーレン一行は、アイゼンの探し物である大魔法使いフランメの手記を探す為にフォル盆地を訪れた。

 

「本物の手記はフォル盆地のどこかにある。フリーレン、お前なら知っているはずだ。」

「生臭坊主め…そこまで調べていたのか。わかった。」

「ああ、それと、これはついでだがな。最近このあたりで妙な魔族を見かけるんだ。」

「妙な魔族?……この辺って最近は魔族なんて出ないって聞いてたけど。どんな感じなの?」

「なんというかな……。身の丈に合わん魔力を持っている、と言えばいいのか?俺は魔法のことは良くわからんから、なんとなくの感想になってしまうがな。攻撃は威力は高かったが、動かない俺にすら当たらないほどコントロールがなっていなくて、足元もおぼつかないという感じだった。とにかく、健康ではなかった。」

「うーん……魔族がそんな状態になるなんて聞いたことが無いね。……アイゼン、そいつらは全員殺してる?」

「今のところはな。雑魚ばかりだった。だが、そういうのがちまちま俺のところに現れるもんだから、最近ちょっと参ってるんだ。お前も知っての通り、俺はもう斧を振れる歳じゃないんだ。このまま無理を続けていたら、俺は不健康な雑魚魔族に殺されるという不格好な最期を得ることになってしまう。」

「分かったよアイゼン。並行してその原因も探そう。まずは大きな木を探そうか。」

「大きな木か。途方もないな、たくさんあるぞ。」

 

アイゼンがこう言うと、フェルンは露骨に機嫌を悪くした。以前、フリーレンが探し物の為に、一つの村に六ヵ月も滞在したことを思い出したからだ。エルフの時間感覚では短くとも、人間には長い時間だ。フリーレンはフェルンを見て、やはり短くすることと決めた。アイゼンは、以前よりも他人を気に掛けるようになったフリーレンを微笑ましく思った。

 

 

探索を続けていると、フリーレンが不意に立ち止まった。

 

「……あれかな?」

「……ああ、間違いない、あれだ。」

 

フリーレンが見る方向には、一体の魔族が歩いていた。子供の人型だが、魔族に特徴的な痣がある。病人でももう少しまともであろうというような不自然な歩き方で、フリーレン一行に向かっていた。

そして、フリーレンとフェルンはその魔族の特異性を感じ取った。

 

「これは……魔力が、度を過ぎて不安定です。病気か何かなのでしょうか?」

「どうだろう……私もこんな魔族は見たことが無い。」

 

ある程度のところまで近づいたところで、その魔族は足を止めた。顔が確認できる距離だったが、それは歪に破顔していた。

 

「アア、ア、こ、これが俺のま、まあ、魔力、くらええええええ!!!!!」

 

そう言って魔族は手をフリーレン一行に向け、魔力を集中させる。フリーレンでも一目おく魔力量だった。その魔力が、フリーレン一行に向けて放出された。だが、一行は防御魔法を展開するそぶりも、避けるそぶりもなかった。

なぜならば。

 

「……まるで重い武器に振り回される戦士見習いだな。」

 

打ち出された魔力は、一行の5m程横に逸れた。フリーレン一行は何もしていない。本当に、ただこの魔族の魔力コントロールが悪いだけだった。挙句、撃った後の魔族は反動のせいか膝をついてしまっている。

 

「多分、病気じゃないと思う。魔力量が増える病気だったら、魔族がこんなところに放っておかないで、徹底的に研究して自らの魔力を増やすことにつなげるんじゃないかな。何らかの外的要因によるものだ。とりあえず捕まえて調べてみる。"眠らせる魔法"、"手足を縛る魔法"」

 

フリーレンがそう言うと、魔族は眠り、縄で厳重に縛られた。

フリーレンは、調べるために魔族に近づいた。しかし、その魔族に触れようかという時。

 

「……まだ居るね。次のは骨が折れそうだ。」

 

一行の警戒度が上がる。ドシドシという足音を立てて5m程の身長を持つ大型の魔族が姿を現した。

 

「アアアアアア!!!俺の魔力はついに魔王様並ダアアア!!!お前ら人間なんかゴミ屑ゥゥゥゥゥ!!!」

 

先ほどの魔族の三倍ほどの魔力を持つ魔族だった。周囲に無茶苦茶に魔力を打ち出し、木々は硬いものであるとは思えないほどに簡単に破壊されていく。コントロールは同じく無茶苦茶だったが、この魔族は魔力量が大きすぎて、放つ魔法の余波の対応でも軽く防御魔法を張る必要があった。

 

「……あの状態で魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を打ち込んだら、魔力で無理やり避けられたり防がれたりするかもね。フェルン、防御魔法をいつでもアイゼンの前に貼れるようにしてね。アイゼン、一発くらいは耐えれる?」

「……本当に一発だけだぞ?その後に腰がやられるのは確実だな。」

「じゃあ、よろしくね。あと、お前の魔力は確かにすごいけど魔王には全然届かないよ。」

「黙れクソクソクソオオオオォォォォ!!!!!」

「おい、挑発はやめてくれ。こいつ手にバカみたいな魔力を集めだしたぞ。ぶつけられたら爆発する。」

「そのためのフェルンだよ。」

「分かりました。」

 

フリーレンはフェルンとアイゼンから下がった。アイゼンは大型魔族の前に立ち、斧を構える。

大型魔族は、異常に発達した筋肉を持つ腕を上げ、アイゼンめがけて振り下ろした。握られた拳には莫大な魔力が込められており、いくらアイゼンが元勇者パーティの前衛といえども当たったらひとたまりが無いことが予想された。しかし。

 

「……ここです。」

 

大型魔族の拳がアイゼンに当たる直前、フェルンがアイゼンの目の前に防御魔法を張った。それにあたった拳は爆発を起こし、大型魔族の拳は半分ほどが欠けてしまった。その爆発でフェルンの防御魔法は破壊され、ボロボロの拳はアイゼンに届くが、アイゼンはその拳を危なげなく受け止め、打ち返し、大型魔族は体勢を崩した。

 

「……いてててて。腰が痛い。しばらくは歩きたくないな。」

「アイゼン、やっぱり動けるんじゃないの?"魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)"」

 

いつの間にか上空に浮いていたフリーレンの魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)により、大型魔族は撃破された。

 

「お見事です。フリーレン様。アイゼン様。特にアイゼン様、よくあんなに大きな拳を受け止められましたね。衰えているとは思えません。私の防御魔法、本当に必要だったのでしょうか?」

「まあ、直前に爆発したおかげで勢いが殺された上に、力も抜けていたからな。前の旅の時はこうやって威力を殺してもらう事がよくあった。」

「……アイゼン、いつも思ってたんだけど、あれ本当に必要だったの?竜の手の打ち下ろしに防御魔法を張っても、100が99になるくらいの効果しかなかったと思うんだけど。」

「いつも言っていたはずだが、助かってたぞ。あれで方向がわずかにずれるから、力を受け流しやすくなるのだ。」

「いや、私が見た限り全然変わってなかったけど。」

「変わったぞ。一度くらい。そういう意味では、フェルンの防御魔法も悪くなかった。フリーレンが弟子にしただけはあったぞ。」

「……アイゼン様もフリーレン様と同様大変な方なのですね。」

「大変とはなんだ。ちょっと頑丈なだけだ。」

フェルンは、それがいかに異常かについて話そうとした。その時。

 

「……おい、待て。誰かいるぞ。なんだこいつは。」

 

不意に、アイゼンが言った。フリーレンとフェルンは全く気付いていなかったが、アイゼンは戦士としての気配のようなもので感知した。

フリーレンとフェルンがアイゼンの見る方向を見ると、そこには、あの男がいた。

 

「……まったく魔力を感知できなかった。今もだ。本当に訳が分からない魔力操作技術だよ。」

 

フリーレンは、わずかに悔しさをにじませつつそう言った。

 

「アイゼン様。この男が、この前話したシャドウという男でございます。」

「なるほどな。フリーレン、まず一つ言っておくが。」

 

アイゼンはその男から目を離せない。シャドウは全くこちらを見ていないにもかかわらず、アイゼンの神経に集中させることを強制させた。

 

「この男、明らかに魔王より強いぞ。」

 

 

ここまで想定通りに事が進んでいることに、僕は大満足していた。ここまでに僕や、僕が調達した改造済み魔族が見つからないことが一番の関門だったけど、隠し通せた。

ここにいる皆が僕に注目したところで、倒された魔族さんを見ながら、僕は意味深につぶやく。

 

「お前も、力に負けたのか。」

 

フッ。決まった。哀愁が出ていて最高にカッコ良い……!

説明しよう!今の僕は「身の丈に合わない力を安易に手に入れることを戒める系陰の実力者」なのだ!強大な力を持つ存在を前に、なんとしてもそれを超える力を欲する主人公たち。いつしか彼らは目を曇らせ、安易に手に入るけど実は罠になっている系パワーに手を出そうとする。しかぁし!ここで現れるのが「身の丈に合わない力を安易に手に入れることを戒める系陰の実力者」だ。彼は単に求められたからという理由で力を他者に与えるが、与えられた方はその力を制御しきれずに暴走してしまう。その有様を見た主人公たちは、安易に力を手に入れようとした己を反省し、愚直に努力を積み重ねるようになる。

うんうん、まさに陰の実力者は「実力者」であることを体現するようなシチュエーションだ!

 

ここ最近の彼女たちを見ていて気付いた。弟子のフェルンは同年代の魔法使いと比べると強いとはいえ、師匠であるフリーレンとは大きな実力差がある。なのに、例えば町に滞在している間、フェルンは大して修行している様子が無かった。まあ、僕も四六時中彼女たちに張り付いている訳じゃない。日中は自分の家でやらなきゃいけないことがまあまああるからね。僕が様子を確認できるのはコッソリ夜に家を抜け出したとき、それと休みの日だ。だから、得られる情報は断片的だけど、フェルンが魔法の修行に割いている時間が少ないのは明らかだった。彼女たちは夜は普通に眠らないといけないみたいだし、日中は清掃の仕事をしなければならない。

フェルンは、自分の実力を伸ばしたくてウズウズしているはずだ。僕だったら海岸の清掃をサボってでも修行するね。でもフリーレンも、まったくとまではいかないがそこまでフェルンに魔法を教えている様子が無いのだ。それどころかフリーレンの身の回りの世話をさせている節がある。だけど、かつて勇者パーティに居た魔法使いが、弟子にヌルい修行をさせるわけが無いのだ。

これはどういうことか?おそらく、答えはこうだ。フリーレンの魔法の修行の思想は「日常の仕事にこそ真髄がある」スタイルなのだ。要するに、自分の身の回りのことをおろそかにする奴が魔法を極められる訳ねえ!ということだ。僕としてはそれでいいのかなあという気はするけど、まあとにかくフリーレンはそうなのだろう。

フェルン、僕には君の気持が、そしてこれからどうしてしまうかが手に取るようにわかるぞ!魔法に関係ない仕事をさせられる日々、師匠と比べ一向に実力が上がらない自分。それはもう焦っているはずだ。この状態で、「これをすれば簡単に力が手に入りますよぉ~!」とか言われれば、安易に飛びついてしまうに違いない。

そこで僕という陰の実力者が、わざと身の丈に合わない魔力を与えられた魔族を見せることで、フェルンに自省を促しつつ、僕は魔族より圧倒的に強い存在ですアピールができるのだ!

改めてフェルンの様子を見てみると、自分の杖をじっと見つめていた。うんうん、心当たりがあるよね。

 

「……この魔族の状態はシャドウ、お前が用意したの?」

 

おっと、フリーレンに話しかけられた。僕は陰の実力者っぽく悲しみを含ませた声で返答する。

 

「魔族。彼らは魔力を、力を求める。だからくれてやったのだ。だが、その末路がこれだ。」

「……お前、魔族の味方か?」

「さて?我は魔族に与するつもりはなく、しかし人類に与するつもりもない。我の味方は、我のみだ。」

 

人間にだけ味方するスタンスもなんか違うよね。それだったら僕は陰の勇者だよ。まあ実際に魔族に味方するつもりなんてないけど。

 

「私には分からないな。シャドウ、お前は魔族ではないよね。なら、魔族の有害さは分かってるはず。滅ぼすことが愚かとか言わないよね?」

「……人は、魔族を滅ぼしたいがために力を欲する。魔族も、生涯をかけ魔法という力を欲する。」

「……何?」

「だが、その果てにあるものは何だ?人も魔族も、身の丈に合わぬ力を欲する者がいる。」

 

フェルン、君のことだぞー!まあどうせ仮面で見えないだろうけど、僕は視線でフェルンにそれとなく訴えた。

 

「……」

 

フェルンはなんか深刻そうな顔で杖とフリーレンのことを見ている。やっぱり図星だったか。

 

「その末路がこれだ。ああ、なんと愚かしい存在なのだ。」

「こ、これは……」

 

僕は、魔法で拘束した残りの魔族さんたちを、これ見よがしに取り出した。今まで魔法で僕の背中に隠ぺいしていたのを取り出したので、皆ビックリしているな。どこからともなく物を取り出すという、地味だけどちょっとした実力者ムーブができたことに僕はちょっとだけ満足した。

 

「う、うギギギ……」

「ク、苦しい……」

「助けて……僕には家族が……」

 

え、魔族にも家族っているの?初耳だなあ。僕はいろいろな魔族を見てきたつもりだけど、親子の魔族は見たことが無い。

……まあいいか。仮に子供が仇討ちに来たら、その時は世界の為に殺しの罪を受け入れる陰の実力者ムーブをするとしよう。

あ、フリーレンさんたちがなんか話しているのを聞き逃しちゃった。まあいいや。僕のやることは変わらない。

 

「我が魔力よ、爆ぜろ。」

 

僕は、魔族さんたちの体内にある、譲渡した魔力を爆発させた。魔族さんたちはなかなかグロテスクなことになりながら消えていった。

 

「今、くれてやった魔力を我の手によって爆ぜさせた。与えられた魔力をコントロールできていない証拠だ。お前たちも、こうなりたいか?」

 

フェルンは、しばらく呆然とした顔で見ていたけれど、やがて締まった顔になった。よしよし、もう大丈夫だろう。これからは地道に自分の実力を着実に伸ばしていくことだろう。安易に得る力の危険さを分かってくれたはずだ。

さて、もう僕にできることは無いだろう。そろそろ帰るか。

 

「シャドウ。お前は、人間のことが好き?」

「人間?フッ、愛しているに決まっているだろう?」

 

帰ろうとしたらフリーレンにそう聞かれた。この世界の人間は魔法が使えたり、鍛えることによる肉体の強化幅が前世より大きいからね。この世界の人間の肉体には感謝している。ということで、別に好き嫌いを隠す必要はないので素直に答えた。

 

「さらばだ。お前たちに未来を切り開く力があるのならば、また会おう。」

 

最後に僕なりの応援を残して、僕はその場を去った。いやあ、今回はなかなかいい陰の実力者ムーブではなかっただろうか。実は、彼らと戦ってはみたかったけれど、アイゼンというおじいちゃんがいたし、フェルンは実力がまだまだだから今回はパスで。でも、いつかは戦うつもりだ。その時の最高の陰の実力者ムーブはよく考えておかないとね。




・シドのフェルンの考察
もちろんすべて的外れである。

・大して修行している様子が無い
シド君基準です。

・最近出る変な魔族
シャドウ様がおじいちゃんでも勝てそうな魔族をちまちまスポーンさせていた。

・大型魔族との戦闘
原作で一回くらいはアイゼンとフェルンとフリーレンのパーティの戦闘が見てみたかったので入れてみた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。